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第23章 女神の聖地にて真相を
第1087話 大聖堂に到着して
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とりあえずオレが霊体を追い払ったので、護衛の人間もどうやら態勢を立て直したようだ。
「先ほどの攻撃はあっちからだぞ!」
「矢を射った奴はあそこだ!」
護衛の兵士たちも襲ってきた奴らに反撃を加えるべく、次々に動き出す。
相手が魔法使いを主体にした小人数なのは明らかで、まず霊体で襲撃して混乱させた隙に魔法や弓でオレを倒すつもりだったのは間違いない。
逆を言えばこちらの混乱が収まれば少数で魔力も一撃にかけて投入していたであろう襲撃者達は逃走するしかないはずだ。
「さすがはアルタシャ様です。あのような化け物や魔法すら軽くあしらってしまうとは正直、感服いたしました」
警護隊長がオレところに駆け寄ってきて礼を述べる。
「さっきの襲撃者はどうなりましたか?」
「逃走を図っている様子で現在、追跡させております。アルタシャ様はこの間に一刻も早く大聖堂にお向かい下さい」
「いえ。怪我をした方がおられたら治療させていただきたいのですが」
隊長の言っている事が正論なのは間違いないが、オレを守るために負傷した人間を置いて行くわけにはいかないのだ。
だがオレの言葉を聞いて隊長はその目を見開く。
「ご自身の安全よりも名もなき我らの身を案じて下さるのですか……本当にあなた様の慈愛は天に鳴り響き、海の底に届くかのごときものなんですね」
隊長は本当に感服した様子だった。
「それではすぐに治療を――」
だがここで隊長はオレの言葉を遮る。
「失礼ながら、それはなりません。ここであなた様の身に万一のことがあれば、我らにとっては死んでもそそげぬ恥となります。いかなアルタシャ様と言えど、この場では責任者である私の指示に従っていただかねばなりません」
隊長が合図すると兵士たちがオレの周囲に壁を作り、馬車へと案内する。
「さあ。急いで大聖堂に向かいください」
残念ながらオレの言葉を聞き入れてくれる余地は無いらしい。
ここでもめて時間を無為に過ごすのがもっとも愚かしい行為であるのは明らかだから、指示通りにするしかないな。
「分かりました。みなさんもどうかご無事で」
「ありがとうございます。アルタシャ様よりいただいた、我らを案ずるお言葉は決して忘れはいたしません」
そんなわけでオレを乗せた馬車は改めて出立する。
しばらく急ぐと、前の方から多数の騎馬兵が姿を見せた。その白い装束と上等そうな装備からして精鋭部隊らしいな。
それを見てアナーラは安堵の声をあげる。
「あれは大聖堂の防衛を担当する騎兵隊です。アルタシャ様の護衛に駆けつけてくださったのですね」
どうやらこれで大聖堂まではどうにかなるか。
もちろんどう考えてもその後の方が圧倒的に難題なのだがな。
大聖堂に近づくとすでに沿道の両脇には大勢の民衆が集まり、固唾を呑んでオレの乗った馬車を凝視している。
ただ兵士達が彼らを見張っており、熱狂的に叫ぶとかそういった騒ぎは起こさせないようにしている様子だ。
民衆にすれば『大陸中にその名を轟かせる英雄アルタシャが大聖堂を訪れる』と耳にしたので、一目見たいと思って押し寄せてきたのは間違い無い。
もっとも暗殺を目論む側とすれば、それで混乱が生じるのは絶好の機会だから、こちらの聖女教会も先に手を打っていたというところだな。
「あちらに見えるのが、このギルボック島における聖女教会の大聖堂でございます」
アナーラが指差した方向を見ると、小高い丘の上に純白の大きな建物がそびえ、その正面には手をさしのべる巨大な女神像が立っている。
オレが今まで見てきた中でもかなりの規模の寺院である事は間違い無い。
「あの丘こそが我らのイロール生誕の地です。まさに『聖女教会最大の聖地』にふさわしき場所でございます」
たぶんこれ以外の聖女教会にもそれぞれ治癒の女神イロールゆかりである『最大の聖地』があって、どこも『自分達の聖地こそがもっとも神に近い神聖なる場所』だと言い張っているのだろうなあ。
そんな事を考えていると、大きな門をくぐり抜けて大聖堂の正面に馬車が止まる。
周囲を見回せば白無垢の壮麗な建物が幾つもそびえ立ち、ここが紛れもない聖女教会の中枢部である事を示していた。
そして高位の聖女らしき女性が馬車を降りたオレに対して一礼する。
「よくぞおいで下さいました。我が女神の寵愛篤き英雄『輝ける者』のご訪問を心より歓迎いたします」
「え? 輝ける者ですか?」
今まで聞き覚えのない呼び名にオレは少しばかり困惑する。
「はい。聖女教会最高幹部会で定められた『選ばれし者』たるあなた様の称号でございます(133話)」
そんな称号をオレが受けた覚えはないが、この後に及んで呼び名を巡って争っても仕方ない。
「こちらにいらして下さい。当寺院の誰もが首を長くしてあなた様のお越しをお待ちでございます」
その首を長くしているのが、喜んで来訪を待っているのか、牙を突き立てる機会を待っているのか。
周囲はこれまで見てきた数々の寺院の中でも指折り数えられる程の美しさだけど、その中に潜んでいるものを想像してオレは少しばかり身を震わせた。
「先ほどの攻撃はあっちからだぞ!」
「矢を射った奴はあそこだ!」
護衛の兵士たちも襲ってきた奴らに反撃を加えるべく、次々に動き出す。
相手が魔法使いを主体にした小人数なのは明らかで、まず霊体で襲撃して混乱させた隙に魔法や弓でオレを倒すつもりだったのは間違いない。
逆を言えばこちらの混乱が収まれば少数で魔力も一撃にかけて投入していたであろう襲撃者達は逃走するしかないはずだ。
「さすがはアルタシャ様です。あのような化け物や魔法すら軽くあしらってしまうとは正直、感服いたしました」
警護隊長がオレところに駆け寄ってきて礼を述べる。
「さっきの襲撃者はどうなりましたか?」
「逃走を図っている様子で現在、追跡させております。アルタシャ様はこの間に一刻も早く大聖堂にお向かい下さい」
「いえ。怪我をした方がおられたら治療させていただきたいのですが」
隊長の言っている事が正論なのは間違いないが、オレを守るために負傷した人間を置いて行くわけにはいかないのだ。
だがオレの言葉を聞いて隊長はその目を見開く。
「ご自身の安全よりも名もなき我らの身を案じて下さるのですか……本当にあなた様の慈愛は天に鳴り響き、海の底に届くかのごときものなんですね」
隊長は本当に感服した様子だった。
「それではすぐに治療を――」
だがここで隊長はオレの言葉を遮る。
「失礼ながら、それはなりません。ここであなた様の身に万一のことがあれば、我らにとっては死んでもそそげぬ恥となります。いかなアルタシャ様と言えど、この場では責任者である私の指示に従っていただかねばなりません」
隊長が合図すると兵士たちがオレの周囲に壁を作り、馬車へと案内する。
「さあ。急いで大聖堂に向かいください」
残念ながらオレの言葉を聞き入れてくれる余地は無いらしい。
ここでもめて時間を無為に過ごすのがもっとも愚かしい行為であるのは明らかだから、指示通りにするしかないな。
「分かりました。みなさんもどうかご無事で」
「ありがとうございます。アルタシャ様よりいただいた、我らを案ずるお言葉は決して忘れはいたしません」
そんなわけでオレを乗せた馬車は改めて出立する。
しばらく急ぐと、前の方から多数の騎馬兵が姿を見せた。その白い装束と上等そうな装備からして精鋭部隊らしいな。
それを見てアナーラは安堵の声をあげる。
「あれは大聖堂の防衛を担当する騎兵隊です。アルタシャ様の護衛に駆けつけてくださったのですね」
どうやらこれで大聖堂まではどうにかなるか。
もちろんどう考えてもその後の方が圧倒的に難題なのだがな。
大聖堂に近づくとすでに沿道の両脇には大勢の民衆が集まり、固唾を呑んでオレの乗った馬車を凝視している。
ただ兵士達が彼らを見張っており、熱狂的に叫ぶとかそういった騒ぎは起こさせないようにしている様子だ。
民衆にすれば『大陸中にその名を轟かせる英雄アルタシャが大聖堂を訪れる』と耳にしたので、一目見たいと思って押し寄せてきたのは間違い無い。
もっとも暗殺を目論む側とすれば、それで混乱が生じるのは絶好の機会だから、こちらの聖女教会も先に手を打っていたというところだな。
「あちらに見えるのが、このギルボック島における聖女教会の大聖堂でございます」
アナーラが指差した方向を見ると、小高い丘の上に純白の大きな建物がそびえ、その正面には手をさしのべる巨大な女神像が立っている。
オレが今まで見てきた中でもかなりの規模の寺院である事は間違い無い。
「あの丘こそが我らのイロール生誕の地です。まさに『聖女教会最大の聖地』にふさわしき場所でございます」
たぶんこれ以外の聖女教会にもそれぞれ治癒の女神イロールゆかりである『最大の聖地』があって、どこも『自分達の聖地こそがもっとも神に近い神聖なる場所』だと言い張っているのだろうなあ。
そんな事を考えていると、大きな門をくぐり抜けて大聖堂の正面に馬車が止まる。
周囲を見回せば白無垢の壮麗な建物が幾つもそびえ立ち、ここが紛れもない聖女教会の中枢部である事を示していた。
そして高位の聖女らしき女性が馬車を降りたオレに対して一礼する。
「よくぞおいで下さいました。我が女神の寵愛篤き英雄『輝ける者』のご訪問を心より歓迎いたします」
「え? 輝ける者ですか?」
今まで聞き覚えのない呼び名にオレは少しばかり困惑する。
「はい。聖女教会最高幹部会で定められた『選ばれし者』たるあなた様の称号でございます(133話)」
そんな称号をオレが受けた覚えはないが、この後に及んで呼び名を巡って争っても仕方ない。
「こちらにいらして下さい。当寺院の誰もが首を長くしてあなた様のお越しをお待ちでございます」
その首を長くしているのが、喜んで来訪を待っているのか、牙を突き立てる機会を待っているのか。
周囲はこれまで見てきた数々の寺院の中でも指折り数えられる程の美しさだけど、その中に潜んでいるものを想像してオレは少しばかり身を震わせた。
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