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第23章 女神の聖地にて真相を
第1082話 迎えの聖女達とのやりとり
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オレを目の当たりにした聖女達は明らかに動揺しているというか、自分の目を疑っている様子だった。
これまでは幾度もニセモノに出会って、失望してきたので、どうせ今回も空振りだろうと思っていたところで思わぬ事態に直面してしまったというところだな。
「もしや……本当にあなた様が……」
「まさかとは思っていましたが……」
硬直しているふたりに対し、クレアは意外そうに問いかける。
「いったいどうされましたか?」
「あ……これは失礼しました。私はアナーラ、こちらはアルティアと申します」
二人の聖女は揃って頭を下げる。
どうやらアナーラと名乗った方が上役らしい。
「正直に言えば話を聞いたときは『またか』と思ったものでしたが……」
「もしやそちらのお方がクレア殿が報告された『アルタシャ様』でございますか」
アナーラの声は震えている。ほぼオレが『本物』で間違い無いと思っているのだろう。
まあ見た目はともかく、オレの魔力を真似できるのは神様だけだからな。
「はい。です。つい先ほどもこの地の枯れた温泉を復活させる神の御業をお示しになりました」
クレアは本当に誇らしげにオレを紹介する。
そしてそれを見て二人とも感服した様子で頷く。
「やはり……これまで幾度もあなた様を騙る相手は見てきましたが、本物がどれだけ違うのか一目で分かります」
「まさに我らの女神の寵愛篤きその偉大なるお姿はこの目に焼き付けました」
「あのう……どういうことなのでしょうか?」
今度はクレアの方が事情を飲み込めない様子だ。
まあ彼女は『アルタシャ』の事を知らなかったのだから、オレのニセモノがあちこちで多くの人を騙してまわり、そのために聖女教会が振り回されているなど想像もしていなかったのは間違いない。
「アルタシャ様は我ら聖女教会最高の英雄でございますが、神命により箇所にとどまることなく、常に人々を救うために移動しておられるのです。このためその尊い御名を騙るニセモノは後を絶たず、聖女教会も苦慮しているのですよ」
そう言ったアナーラは少しばかり恨めしそうな視線を注いで来る。
さぞかしオレの件で苦労しているのだろう。もちろん彼女だけでなく、大陸中で迷惑を被った聖女は大勢いるだろう。
しかしその原因は聖女教会がオレを女にした事なのだから、申し訳ないとは思わないぞ。
「それでお手間とは存じますが、アルタシャ様にはこのギルボック島の大聖堂まで我らと同行をお願いします」
表向きは丁重な態度だが、明らかに有無を言わさぬつもりだろう。
もしもオレが断ったら、この場は引くかもしれないが、次には大勢で、それもこの島をあげて追い回されるのは間違いない。
オレもどうせ遠からず大聖堂を訪れるつもりだったから、ここは言う通りにするしかないのだろうな。
「分かりました。ただ一つだけ念を押しておきますが、こちらのヴィンガさんがわたしの事を連絡しなかったのは、あくまでもわたしの意思を尊重してくださったからです。だから彼女には一切、非はありません。その事は了承していただけますか?」
「もちろんですとも。私ども別に彼女を責める気はありませんでした」
あっさりと了承したが、まあ聖女教会にとってもオレのことさえ片付けば、見習い一人などどうでもいいことだろう。
「しかし……」
ここでアルティアはオレとヴィンガを交互に見て、小さくため息をつく。
「どうしました?」
「いえ。失礼。見習いのヴィンガに対するお言葉を聞いて、少しばかり驚いたのです」
どう言う意味だろうか? オレは何か変な事でも口にしてしまったかな?
「アルタシャ様はたとえ相手がいかなる身分であろうと常に変わらぬ丁重な態度を示し、たとえ奴隷でも対等の立場で接するとうかがっておりましたが、本当なのですね」
なるほど。要するに彼女たちは『大陸のその名を轟かせる英雄』が一介の見習いの身を案じた事に驚いているのか。
そんな当たり前の事で感心されても、オレにとっては気恥ずかしいばかりだが、これから大聖堂に向かうとなるといろいろと面倒がありそうだな。
そんなわけで翌朝、早速オレはアナーラ達と共に寺院を立ち去ることとなった。
使者として来た四人はオレが逃亡する事を心配したのか、交代で寝ずの番をしていたらしい。
少なくとも今更逃げ回る気はないのだけど、それを心配する気持ちはわかる。
「それでは皆さん。短い間でしたけどありがとうございました」
「温泉を蘇らせて下さったあなた様の功業は必ずや村の全員で讃え、あの精霊と共に永遠に語り継がれる事でしょう」
クレアは涙ぐんでいる。いろいろと感動体質な人である。
「ええ。アルタシャ様とのことは決して忘れません。この命ある限り、皆にあなた様の事を伝え続けるでしょう」
ヴィンガは名残惜しそうではあるが、同時に誇らしげだ。しばらくオレと同行したことは『一生、自慢話のタネ』にする気満々だな。
たぶん次に一緒に来た見習い連中に出会ったら、間違いなく連中を見返す材料として胸を張って自慢するに違いない。
「それでは行きましょう。聖女教会の全員があなた様のお越しを待っています」
ううむ。オレだってそうそう簡単に歓迎してもらえるとは思っていない。
そんなわけでオレを乗せた馬車は出発した。
その先に何が待っているのか。それはこの時点でのオレには全く知る由もない事ではあるが、とても平穏無事には済まないだろうという予感だけはあった。
これまでは幾度もニセモノに出会って、失望してきたので、どうせ今回も空振りだろうと思っていたところで思わぬ事態に直面してしまったというところだな。
「もしや……本当にあなた様が……」
「まさかとは思っていましたが……」
硬直しているふたりに対し、クレアは意外そうに問いかける。
「いったいどうされましたか?」
「あ……これは失礼しました。私はアナーラ、こちらはアルティアと申します」
二人の聖女は揃って頭を下げる。
どうやらアナーラと名乗った方が上役らしい。
「正直に言えば話を聞いたときは『またか』と思ったものでしたが……」
「もしやそちらのお方がクレア殿が報告された『アルタシャ様』でございますか」
アナーラの声は震えている。ほぼオレが『本物』で間違い無いと思っているのだろう。
まあ見た目はともかく、オレの魔力を真似できるのは神様だけだからな。
「はい。です。つい先ほどもこの地の枯れた温泉を復活させる神の御業をお示しになりました」
クレアは本当に誇らしげにオレを紹介する。
そしてそれを見て二人とも感服した様子で頷く。
「やはり……これまで幾度もあなた様を騙る相手は見てきましたが、本物がどれだけ違うのか一目で分かります」
「まさに我らの女神の寵愛篤きその偉大なるお姿はこの目に焼き付けました」
「あのう……どういうことなのでしょうか?」
今度はクレアの方が事情を飲み込めない様子だ。
まあ彼女は『アルタシャ』の事を知らなかったのだから、オレのニセモノがあちこちで多くの人を騙してまわり、そのために聖女教会が振り回されているなど想像もしていなかったのは間違いない。
「アルタシャ様は我ら聖女教会最高の英雄でございますが、神命により箇所にとどまることなく、常に人々を救うために移動しておられるのです。このためその尊い御名を騙るニセモノは後を絶たず、聖女教会も苦慮しているのですよ」
そう言ったアナーラは少しばかり恨めしそうな視線を注いで来る。
さぞかしオレの件で苦労しているのだろう。もちろん彼女だけでなく、大陸中で迷惑を被った聖女は大勢いるだろう。
しかしその原因は聖女教会がオレを女にした事なのだから、申し訳ないとは思わないぞ。
「それでお手間とは存じますが、アルタシャ様にはこのギルボック島の大聖堂まで我らと同行をお願いします」
表向きは丁重な態度だが、明らかに有無を言わさぬつもりだろう。
もしもオレが断ったら、この場は引くかもしれないが、次には大勢で、それもこの島をあげて追い回されるのは間違いない。
オレもどうせ遠からず大聖堂を訪れるつもりだったから、ここは言う通りにするしかないのだろうな。
「分かりました。ただ一つだけ念を押しておきますが、こちらのヴィンガさんがわたしの事を連絡しなかったのは、あくまでもわたしの意思を尊重してくださったからです。だから彼女には一切、非はありません。その事は了承していただけますか?」
「もちろんですとも。私ども別に彼女を責める気はありませんでした」
あっさりと了承したが、まあ聖女教会にとってもオレのことさえ片付けば、見習い一人などどうでもいいことだろう。
「しかし……」
ここでアルティアはオレとヴィンガを交互に見て、小さくため息をつく。
「どうしました?」
「いえ。失礼。見習いのヴィンガに対するお言葉を聞いて、少しばかり驚いたのです」
どう言う意味だろうか? オレは何か変な事でも口にしてしまったかな?
「アルタシャ様はたとえ相手がいかなる身分であろうと常に変わらぬ丁重な態度を示し、たとえ奴隷でも対等の立場で接するとうかがっておりましたが、本当なのですね」
なるほど。要するに彼女たちは『大陸のその名を轟かせる英雄』が一介の見習いの身を案じた事に驚いているのか。
そんな当たり前の事で感心されても、オレにとっては気恥ずかしいばかりだが、これから大聖堂に向かうとなるといろいろと面倒がありそうだな。
そんなわけで翌朝、早速オレはアナーラ達と共に寺院を立ち去ることとなった。
使者として来た四人はオレが逃亡する事を心配したのか、交代で寝ずの番をしていたらしい。
少なくとも今更逃げ回る気はないのだけど、それを心配する気持ちはわかる。
「それでは皆さん。短い間でしたけどありがとうございました」
「温泉を蘇らせて下さったあなた様の功業は必ずや村の全員で讃え、あの精霊と共に永遠に語り継がれる事でしょう」
クレアは涙ぐんでいる。いろいろと感動体質な人である。
「ええ。アルタシャ様とのことは決して忘れません。この命ある限り、皆にあなた様の事を伝え続けるでしょう」
ヴィンガは名残惜しそうではあるが、同時に誇らしげだ。しばらくオレと同行したことは『一生、自慢話のタネ』にする気満々だな。
たぶん次に一緒に来た見習い連中に出会ったら、間違いなく連中を見返す材料として胸を張って自慢するに違いない。
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ううむ。オレだってそうそう簡単に歓迎してもらえるとは思っていない。
そんなわけでオレを乗せた馬車は出発した。
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