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第23章 女神の聖地にて真相を
第1076話 初めてつかんだ手がかり?
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とりあえずオレはここの孤児院にも、ちょっとばかり興味がある。
幾ら何でも現在、この寺院で聖女教会が性転換魔法を使っているとは考えられない。
もちろん回復魔法の素質を見せた男子を大きな寺院へと送り出して性転換させてしまっている可能性はあるけど、この世界では訓練も受けずに魔法の素養を示すのは稀な例だからそれはまずないだろう。
しかしまだ温泉があってここが栄えていた時期には、この規模の寺院ならばここで生まれた男子に回復魔法の素質があった場合、性転換魔法を使っていた可能性がある。
もちろんあの抜け目の無い聖女教会が証拠を残しているはずがないが、それでも手がかりぐらいはつかめるかもしれない。
そんなわけでオレは子供達がクレアとヴィンガを注目しているところで、聖堂を離れる。
この寺院の建物は大きいが、さほど複雑な構造では無いから奥にある離れの建物に向かう。
かつてオレが性転換されてしまったのも、あのような離れの建物だった。
見たところ離れの周囲は壁面に覆われていて、侵入が困難になっている。
もしも性転換魔法を使っていたのなら、隠れて行うにはぴったりな場所だろう。
見たところ遥か昔に放棄された様子だが、何か残っている事を期待しよう。
そう思って近づいて隙間から中を覗く。
見たところ既に物置と化しており、しかも何年も使われていないらしい様子だが、念のために足を踏みいれる。
積もり積もった埃が舞って、お世辞にも気分は良くないしオレの『魔法眼』に反応するものもの無いので、やはり外れか。
やはり重要なものは残らず持ち去られているようだ。
そう思って引き上げようとしたところ、ガラクタの中から何かが立ち上がる。
もしやこの寺院に関わる霊体か?
オレの『霊視』でかろうじて見えるだけの微弱な存在であり、その姿もぼんやりとしてはっきりしない。
恐らくはこの部屋というよりは、寺院に宿っている霊体だろう。
ただここがほとんど人が来ないので、安住の地にしているという感じだな。
しかし何かオレに呼びかけてくるように感じられるのだ。
「あなたはどなたですか?」
『私は……もう名前など忘れてしまった……』
どうやらあまりに古く、あまりに長い間、放置されていたので記憶もかなり欠落しているらしい。
これではやっぱり頼りにならないか。
そう思った時、霊体はオレに向けて一気に近寄ってくる。
『おお……あなた様は我らがあるじ……かようなところまで来てくださるとは……この地に留まり続けた甲斐がありました……』
どうやらオレをイロールと間違えているらしい。霊体は相手の外見よりも、霊力で感知するので誤解しているのだろうな。
そして先ほどまでは半ばもうろうとした意識だったはずの霊体が、急にハッキリした様子で言葉を発し始める。
ううむ。人間でも惚けていたところ、何かのきっかけでいきなりハキハキし出す事はあるから、こういうところは霊体でも同じなのだな。
『あなた様があの泉を生み出し、聖地を開闢し、この島を『我らが女神』に代わって守護するようになられて以来でございます』
え? この言い方からするとオレの事を女神イロールではなくこのギルボック島を聖地とした『最初の選ばれし者』だと思っているのか?
しかもこの霊体の言葉を信じるならば、温泉を作ったのは女神ではなく、最初の選ばれし者の方らしい。
それが事実ならば恐らくは後世に伝えられた神話がだんだんと歪んでいって、女神自身が奇跡で温泉を吹き出させた事になっていったのだろう。
皮肉にもその温泉が枯れてしまった後は、むしろ女神の汚点になりかねないので顧みられなくなっていってしまったのではないだろうか。
だが歴史学者にはともかく、オレにとって役立つ情報でも無いな。残念ながら外れだったか。
だが少しばかり落胆した時に思わぬ言葉が霊体から発せられた。
『前にも増して神々しいお姿でございます。あなた様が『女性になったとき』以上にお美しくなっておられますよ』
「え? ええ?!」
何だって? この言葉からすると『最初の選ばれし者』も元は男だったのが、性転換して女性になっていたというのか?
先日聞いたソルフ神の言葉ではかつて聖女教会では男性が女性に変身してしまう事があったそうだが、もしかしたら最初に性転換したのもその『最初の選ばれし者』だったのかもしれないぞ。
「あるじはもともと男だったのですか?」
『もちろんですとも』
霊体はあっさりと請け負う。
やはり千年前から聖女教会には性転換魔法があったのか。
ならばその中身を分かっている限り聞き出さねばなるまい。
「いったいどのようにして『女性になった』のかをあなたは覚えていますか?」
『はい。私はその場におりましたから、今でもはっきりと思い出せます』
自分の名前も覚えていないのに、どこまで頼りになるかは分からないが、考えてみればこれはオレが初めてつかんだ聖女教会の性転換魔法に関する手がかりなのだ。
オレは息を呑んで、この年古りた霊体の言葉を待った。
幾ら何でも現在、この寺院で聖女教会が性転換魔法を使っているとは考えられない。
もちろん回復魔法の素質を見せた男子を大きな寺院へと送り出して性転換させてしまっている可能性はあるけど、この世界では訓練も受けずに魔法の素養を示すのは稀な例だからそれはまずないだろう。
しかしまだ温泉があってここが栄えていた時期には、この規模の寺院ならばここで生まれた男子に回復魔法の素質があった場合、性転換魔法を使っていた可能性がある。
もちろんあの抜け目の無い聖女教会が証拠を残しているはずがないが、それでも手がかりぐらいはつかめるかもしれない。
そんなわけでオレは子供達がクレアとヴィンガを注目しているところで、聖堂を離れる。
この寺院の建物は大きいが、さほど複雑な構造では無いから奥にある離れの建物に向かう。
かつてオレが性転換されてしまったのも、あのような離れの建物だった。
見たところ離れの周囲は壁面に覆われていて、侵入が困難になっている。
もしも性転換魔法を使っていたのなら、隠れて行うにはぴったりな場所だろう。
見たところ遥か昔に放棄された様子だが、何か残っている事を期待しよう。
そう思って近づいて隙間から中を覗く。
見たところ既に物置と化しており、しかも何年も使われていないらしい様子だが、念のために足を踏みいれる。
積もり積もった埃が舞って、お世辞にも気分は良くないしオレの『魔法眼』に反応するものもの無いので、やはり外れか。
やはり重要なものは残らず持ち去られているようだ。
そう思って引き上げようとしたところ、ガラクタの中から何かが立ち上がる。
もしやこの寺院に関わる霊体か?
オレの『霊視』でかろうじて見えるだけの微弱な存在であり、その姿もぼんやりとしてはっきりしない。
恐らくはこの部屋というよりは、寺院に宿っている霊体だろう。
ただここがほとんど人が来ないので、安住の地にしているという感じだな。
しかし何かオレに呼びかけてくるように感じられるのだ。
「あなたはどなたですか?」
『私は……もう名前など忘れてしまった……』
どうやらあまりに古く、あまりに長い間、放置されていたので記憶もかなり欠落しているらしい。
これではやっぱり頼りにならないか。
そう思った時、霊体はオレに向けて一気に近寄ってくる。
『おお……あなた様は我らがあるじ……かようなところまで来てくださるとは……この地に留まり続けた甲斐がありました……』
どうやらオレをイロールと間違えているらしい。霊体は相手の外見よりも、霊力で感知するので誤解しているのだろうな。
そして先ほどまでは半ばもうろうとした意識だったはずの霊体が、急にハッキリした様子で言葉を発し始める。
ううむ。人間でも惚けていたところ、何かのきっかけでいきなりハキハキし出す事はあるから、こういうところは霊体でも同じなのだな。
『あなた様があの泉を生み出し、聖地を開闢し、この島を『我らが女神』に代わって守護するようになられて以来でございます』
え? この言い方からするとオレの事を女神イロールではなくこのギルボック島を聖地とした『最初の選ばれし者』だと思っているのか?
しかもこの霊体の言葉を信じるならば、温泉を作ったのは女神ではなく、最初の選ばれし者の方らしい。
それが事実ならば恐らくは後世に伝えられた神話がだんだんと歪んでいって、女神自身が奇跡で温泉を吹き出させた事になっていったのだろう。
皮肉にもその温泉が枯れてしまった後は、むしろ女神の汚点になりかねないので顧みられなくなっていってしまったのではないだろうか。
だが歴史学者にはともかく、オレにとって役立つ情報でも無いな。残念ながら外れだったか。
だが少しばかり落胆した時に思わぬ言葉が霊体から発せられた。
『前にも増して神々しいお姿でございます。あなた様が『女性になったとき』以上にお美しくなっておられますよ』
「え? ええ?!」
何だって? この言葉からすると『最初の選ばれし者』も元は男だったのが、性転換して女性になっていたというのか?
先日聞いたソルフ神の言葉ではかつて聖女教会では男性が女性に変身してしまう事があったそうだが、もしかしたら最初に性転換したのもその『最初の選ばれし者』だったのかもしれないぞ。
「あるじはもともと男だったのですか?」
『もちろんですとも』
霊体はあっさりと請け負う。
やはり千年前から聖女教会には性転換魔法があったのか。
ならばその中身を分かっている限り聞き出さねばなるまい。
「いったいどのようにして『女性になった』のかをあなたは覚えていますか?」
『はい。私はその場におりましたから、今でもはっきりと思い出せます』
自分の名前も覚えていないのに、どこまで頼りになるかは分からないが、考えてみればこれはオレが初めてつかんだ聖女教会の性転換魔法に関する手がかりなのだ。
オレは息を呑んで、この年古りた霊体の言葉を待った。
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