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第20章 とある国と聖なる乙女
第823話 閉鎖された教会は
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聖女教会が戦乱をあおりを受けて焼き払われ、略奪されているという最悪の事態ではないようだが、それでもこれはかなり面倒な事になっているようだ。
普通に考えても、長年伝統ある寺院を引き払って別のところに移転しろと言われ、はいそうですかと応じる教団はないだろう。
そうすると兵士の話が本当だとしたら、新王は脅迫めいた圧力をかけて聖女教会を無理やりに移転させたということか。
「教えて下さい。聖女教会はいったいどこに移転したのですか?」
「国王様のお膝元の王都パナハップさ。言っておくが、これは聖女教会だけではなく、他の主要な神様の寺院も多くが引っ越しさせられているらしいぞ」
それが本当だとしたら、新王は宗教勢力への圧力を強めているということか。
領内でバラバラに存在していたであろう、主要な勢力の寺院を王都に引っ越しをさせるのは普通に考えて、宗教勢力への監視を強めるためだろう。
あと多神教である以上、それぞれの神殿同士は決して仲がよくはないだろうから、近くに寄せてお互いに牽制させる意図もあるかもしれない。
「みなさんがここにおられるのは、聖女教会の人たちが戻ってくるのを禁止しているからですか?」
もちろんヒラの兵士が王の意図など知っているはずもないけど、何か手がかりになるものはあるかもしれない。
「そうだ。反対する連中も多かったからな。そいつらが戻って来たら、こいつで追い払うように命じられている」
「何をしにきたのか知らんが、怪我をしないうちにお前もとっとと立ち去れ」
そう言って兵士は手にした槍を掲げる。
これはまた強引なやり口だな。幾ら王の命令でも相当、反発は強いだろう。
「言っておくが王様の命令に逆らったら、たとえ聖女でも容赦は無いぞ。無理やり引っ立てられていくのは勿論、しつこく歯向かった奴らはあちらでな--」
兵士は道の先の方にその視線を飛ばす。
どうやら見るもおぞましい、見せしめの処刑が行われたようだ。
二ヶ月も前だったら、今では白骨ぐらいしか残っていないだろうけど、それを見てこの寺院や門前町の住民は諦めて、王都に引っ越す事になったというわけか。
聖女教会には武力はないから、力づくで脅されたらしぶしぶでも言うことを聞き入れざるを得ないと言うことか。
しかしそれでも引っかかる。
この地域の聖女教会は、大陸中央部ほどの力はないかもしれないが、それでもここにあるのは結構な大寺院だし、回復魔法を独占している事も変わりはないだろう。
それに聖女の多くは有力者の側室の筈だから、夫達の影響力も無視は出来ない筈だ。
新しい王の手腕がどこまでのものかは知らないが、いきなりそんな真似をしたら、自分の地位が危うくなりはしないだろうか?
強引にでも自分の権力を確立したいのか、それとも宗教界を敵に回してもどうにかなるだけの権力の裏付けがあるのか。
まだいろいろと何かありそうだ。
しかし兵士達にあれこれと詳しい事を聞くと、怪しいやつだと警戒されてしまいかねないし、ここはさっさと立ち去って他の誰かに話を聞いた方がいいだろう。
そんなわけでオレは兵士には礼を述べて、無人の廃虚と化した聖女教会の建物を後にした。
廃虚から少しばかり離れたところに小さな村があった。
聖女教会の寺院が機能していた時には旅人を受け入れて、それなりに栄えていたのだろうが今はすっかり寂れた様子だ。
客の気配の無い宿に入ると、辛気くさい顔をした中年の店主がオレをジロリとにらむ。
「すみません。ひとつ尋ねてよろしいでしょうか?」
「あちらの聖女教会なら、とっくに閉鎖されているよ」
もう答えるのは何度目か分からない、と言わんばかりに店主は応じる。
恐らく寺院の閉鎖を知らない巡礼者が何度も来て、質問していたのだろうな。
「どうしても巡礼したいなら、王都に行ってくれ。こっちではもうどうしようもないからな」
「いったいどういう理由で、新しい王様はそんな事をしたのですか?」
「そんな事を知りたいなら、王様に直接聞いてくれ。俺達なんかに分かる筈が無いだろう」
つっけんどんに答える様子を見ると、かなり投げやりになっている様子だな。
「寺院が閉鎖されてこっちは商売もあがったりだ。もうそろそろ店を閉めようと思っているぐらいだぜ」
「何か噂でもいいので、王様がそんな事をした理由についてお聞かせ願えないでしょうか」
「忠告しておいてやるがお前さん、あまり余計な事に首を突っ込まない方がいいぞ」
オレの質問を聞いて、店主は脅すようにその目を細める。
「遠くから巡礼に来て、何も残っていないのでガッカリしたのは分かるが、下手をすれば二度とそんな事を考えられないようにされてしまうかもしれないんだぜ」
そういって店主は周囲にチラと視線を向ける。どうやら密告か何かを恐れているらしい。
聖女教会の移転に反対した人間は見せしめに殺されたらしいし、この国はかなりヤバい状況にあるのは間違い無いな。
しかしオレはここで更に予想外の、だが否応なくこの国の現状、そして将来に関わる話を聞かされる羽目になるのであった。
普通に考えても、長年伝統ある寺院を引き払って別のところに移転しろと言われ、はいそうですかと応じる教団はないだろう。
そうすると兵士の話が本当だとしたら、新王は脅迫めいた圧力をかけて聖女教会を無理やりに移転させたということか。
「教えて下さい。聖女教会はいったいどこに移転したのですか?」
「国王様のお膝元の王都パナハップさ。言っておくが、これは聖女教会だけではなく、他の主要な神様の寺院も多くが引っ越しさせられているらしいぞ」
それが本当だとしたら、新王は宗教勢力への圧力を強めているということか。
領内でバラバラに存在していたであろう、主要な勢力の寺院を王都に引っ越しをさせるのは普通に考えて、宗教勢力への監視を強めるためだろう。
あと多神教である以上、それぞれの神殿同士は決して仲がよくはないだろうから、近くに寄せてお互いに牽制させる意図もあるかもしれない。
「みなさんがここにおられるのは、聖女教会の人たちが戻ってくるのを禁止しているからですか?」
もちろんヒラの兵士が王の意図など知っているはずもないけど、何か手がかりになるものはあるかもしれない。
「そうだ。反対する連中も多かったからな。そいつらが戻って来たら、こいつで追い払うように命じられている」
「何をしにきたのか知らんが、怪我をしないうちにお前もとっとと立ち去れ」
そう言って兵士は手にした槍を掲げる。
これはまた強引なやり口だな。幾ら王の命令でも相当、反発は強いだろう。
「言っておくが王様の命令に逆らったら、たとえ聖女でも容赦は無いぞ。無理やり引っ立てられていくのは勿論、しつこく歯向かった奴らはあちらでな--」
兵士は道の先の方にその視線を飛ばす。
どうやら見るもおぞましい、見せしめの処刑が行われたようだ。
二ヶ月も前だったら、今では白骨ぐらいしか残っていないだろうけど、それを見てこの寺院や門前町の住民は諦めて、王都に引っ越す事になったというわけか。
聖女教会には武力はないから、力づくで脅されたらしぶしぶでも言うことを聞き入れざるを得ないと言うことか。
しかしそれでも引っかかる。
この地域の聖女教会は、大陸中央部ほどの力はないかもしれないが、それでもここにあるのは結構な大寺院だし、回復魔法を独占している事も変わりはないだろう。
それに聖女の多くは有力者の側室の筈だから、夫達の影響力も無視は出来ない筈だ。
新しい王の手腕がどこまでのものかは知らないが、いきなりそんな真似をしたら、自分の地位が危うくなりはしないだろうか?
強引にでも自分の権力を確立したいのか、それとも宗教界を敵に回してもどうにかなるだけの権力の裏付けがあるのか。
まだいろいろと何かありそうだ。
しかし兵士達にあれこれと詳しい事を聞くと、怪しいやつだと警戒されてしまいかねないし、ここはさっさと立ち去って他の誰かに話を聞いた方がいいだろう。
そんなわけでオレは兵士には礼を述べて、無人の廃虚と化した聖女教会の建物を後にした。
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客の気配の無い宿に入ると、辛気くさい顔をした中年の店主がオレをジロリとにらむ。
「すみません。ひとつ尋ねてよろしいでしょうか?」
「あちらの聖女教会なら、とっくに閉鎖されているよ」
もう答えるのは何度目か分からない、と言わんばかりに店主は応じる。
恐らく寺院の閉鎖を知らない巡礼者が何度も来て、質問していたのだろうな。
「どうしても巡礼したいなら、王都に行ってくれ。こっちではもうどうしようもないからな」
「いったいどういう理由で、新しい王様はそんな事をしたのですか?」
「そんな事を知りたいなら、王様に直接聞いてくれ。俺達なんかに分かる筈が無いだろう」
つっけんどんに答える様子を見ると、かなり投げやりになっている様子だな。
「寺院が閉鎖されてこっちは商売もあがったりだ。もうそろそろ店を閉めようと思っているぐらいだぜ」
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オレの質問を聞いて、店主は脅すようにその目を細める。
「遠くから巡礼に来て、何も残っていないのでガッカリしたのは分かるが、下手をすれば二度とそんな事を考えられないようにされてしまうかもしれないんだぜ」
そういって店主は周囲にチラと視線を向ける。どうやら密告か何かを恐れているらしい。
聖女教会の移転に反対した人間は見せしめに殺されたらしいし、この国はかなりヤバい状況にあるのは間違い無いな。
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