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本編第一章:高二になりました、進級して早々に波乱の展開が続いております。
♡第十一話:この幼馴染の様子が変だなんていつものことなのかもしれない♡
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【二日前】
新学期が始まって、あっという間に二か月が経った。じめじめとした憂鬱な季節が始まり、さらには六月には祝日がないらしい。
昔「ドラえもん」でのび太君がそう嘆いていたのをふと思い出し、さらに気分が落ち込んだ。
(最近、右代のとこ行けてないな・・・)
「――――あ、いま榮倉君のこと考えてたでしょ?」
部活帰りのファストフード店。
ぼーっとしていた私は、友人の言葉で我に返った。
「あえ?な、なんの話⁇」
「まったく、あんなののどこが良いんだか・・・」
「右代はいい子だよう」
「・・・やっぱり、考えてたじゃん」
「うう、さっちゃんとまなかのいじわる・・・」
「で⁉どこまでいったの⁇もしかして、最後までしちゃった⁉」
「え、最後って?」
「・・・ああもう、だから、えっちしたのかってこと」
「―――⁉
げほ、けほ・・・」
彼女の思わぬ問いに、私は飲んでいたコーヒーを詰まらせた。
「そんなの、まだに決まってるじゃん。付き合ってもいないのに・・・」
「なんだ、まだだったんだ?好きなんでしょ?早く告っちゃえばいいのに」
「・・・簡単に言わないでよ。それに、たぶん右代は私のことそういう風に見てないと思うから」
「そうかな?好きでもない女の子とそんなに親しくしないと思うけど・・・よく家にも遊びに行くんでしょ?」
「う、うん、まあ・・・でも特になにもないっていうか、そういう話は右代の方から避けられてるような気がして」
「案外、我慢してるのかもよ?榮倉君ってどう見ても草食系だし、咲菜の美貌とその大きなおっぱいの誘惑に、日々耐えてるのかも」
「・・・・え、ええ⁉」
「でも、幼馴染だし・・・ずっと一緒にいたから、たぶん私のことは頼りになるお姉ちゃんくらいにしか思ってないと思うけどな」
「ふふふん、そこまで言うなら、試してみるっていうのはどうだね、咲菜?」
「・・・どういうこと?」
「今度咲菜が榮倉君と会うとき、いつもより積極的にアピールしてみるの。それで、動揺したり、あからさまに照れたりしたら脈ありってことで――――――」
“
「――――よし!」
私は覚悟を決めると、玄関先のチャイムを鳴らした。
「―――ん?ああ、咲菜か。普通にインターホン鳴らすなんて珍しいな。誰かと思ったぞ」
しばらくして、右代は眠そうにあくびをしながら、パジャマ姿で登場した。
「え?そう・・かな?」
「ああ、最近はドッキリが多くて、心臓に悪いと思ってたところだ。・・・どうしたんだ?早く上がれよ」
「うん」
脱いだ靴をそろえ、廊下を右代に続いて歩く。
リビングに入ると、焦げたパンのにおいが鼻を突いた。
ちょうど朝食を済ませたところだったのだろうが、流しにはたまっている洗い物の量は、どう考えても一食分ではない。
「もう、こういうのはすぐ片付けちゃわないとだめでしょ?」
「えあ?・・・いや、そんなの後でいいだろ。どうせ、また溜まるんだから・・・それより早くやろうぜ?」
「・・・・?え、ええ・・・えええ⁉
・・・やるって、なにを⁉うう、わたし、そんなつもりじゃ・・・」
「・・・いや、どうしたんだよ。エリクアッツェの冒険、やりに来たんじゃないのか?」
「んん⁉そ、そうだよ!そうだけど⁉変な勘違いしちゃだめだからね、右代‼」
「だからなにがだよ・・・」
「まあしかし、お前が興奮しているのもよくわかる。最近できてなかったからな・・・俺も、エリクアッツェが中将になったのに、部下を逃がすために1000人の敵に対峙した・・・本当に気になるところで、この前寝ちまったから、気になってたんだ」
「こ、興奮なんてしてないから‼そんな私をはしたない女の子みたいに・・・私はいたって冷静!いつものお姉ちゃんだぜ⁉」
右代がいろいろ話していた気がするが、いまの私にはもはや最初の興奮の単語しか残っていない。
「―――はあ、まあそこんところは重要じゃないんだが・・・でも、だから咲菜もこんな朝早くに来たんだろ?」
「あ・・まあ、そうだよね」
(うう・・・・まなかたちのせいでさっきから、変なことばっかり考えちゃうよ・・・)
「じゃ、じゃあ私がゲーム準備しておくから、右代はまずそれを片付けること!」
「へーい」
曇天の薄暗い室内に、テレビの淡い光が煌めく。
「いやー、この前俺、あとちょっとで伝説の剣が完成できそうだったからさあ・・・」
(・・・ん、んんんん⁉)
右代は洗い物を終えると私のそばに腰かけ、用意されたコントローラーを握った。
(いつも、こんなに近かったっけ・・・)
「ん、なんだ?・・・ってか咲菜もがんばって素材集めてくれよ?木材が全然たりん」
「う、うん」
“そこまで言うなら試してみるっていうのはどう?”
(・・・・)
「―――あ~ちょっと、熱くない?右代は大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫だが・・・そんなに熱いか?」
羽織っていた上着を一枚脱ぎ、肌の露出を増やすが、右代は特に反応を示すどころか、テレビ画面に夢中である。
(むう・・)
別に右代がいつも私のことが気になって仕方がないとは、最初から思っていないけど・・・こうまでしてなにも反応がないと、逆に私がどう思われているのか心配にすらなってくる。
「あ~、お姉ちゃん汗かいちゃったから、着替えてこよっかな」
「たしかに、ちょっと顔も赤いな・・・まさか、熱でもあるんじゃないか?」
右代はそう言って、私の額に手のひらを近づける。
「―――ッ⁉そ、それは平気だから!これはまた別の原因で・・・」
手で必死に風を作り、ほてった顔を冷やそうと努める。
「・・・・なんだそりゃ」
「ていうか・・・あ~!どうしよ、右代!わたし、今日したっ・・・し、し、したぎ・・・つけてくるの忘れちゃった・・・かも・・・・・」
自分で言っていて恥ずかしくなり、もはや最後の方は、うつむいてまともに右代の顔すら見れない。
「はああ?・・・まあ、いいんじゃないか?気になるなら、家戻ってつけてきたらいいんじゃね?」
「あはは、た、たしかに・・・じゃあ、このままでいいや・・・」
(あ~、もう・・・なにやってんの私・・・こんなんじゃただの変態じゃん)
しかし私はめげずに、いつまでたってもこっちを向いてくれない右代に目を向け続ける。すると次の瞬間、彼は「ああ~~!!やっちまった」と叫んで、カーペットに倒れこんだ。
「すまん咲菜、いまのは完全に俺のせいだ・・・」
「え?」
「いやだから、俺がしっかりサポートしなかったせいで、お前が操作してるミルカビン中将が死んじまっただろ・・・?」
「あ、ああ・・・まったく、右代ったら。お姉ちゃんが助けてあげないと、本当になにもできないんだから・・・」
いつもの冗談でそう言ったつもりが、右代はなぜか反論もすることなく、ただ悲しそうに表情を作った。
「あれ・・・どうした、どうした?」
「―――ああ、いや・・・俺は本当に駄目な人間だよ・・・一人じゃ何もできないし、ゲームですら、いいところなんて一つも・・・」
「・・・・・そんなことないよ」
「え・・ってかお前・・・・!」
私はいつの間にか、彼の頭を自分の膝の上にのせていた。今日初めて右代の視線は、私の顔に釘付けになった。
「なに・・・?」
「いや、は、恥ずかしいんだが⁇」
「なに~、照れてるのかな~うーちゃんかわいい」
「からかうなよ・・・」
「そういう、可愛いところも右代の良いところだよ・・・とっても優しいし、実は勉強も運動だってできる。駄目な人間なんかじゃないと思うけど?」
「・・・でも俺は・・・・・」
「人間誰にだって、弱点はあるじゃん?でも安心しな?右代のそういうところは、私が補ってあげる・・・二人なら完璧だと思わない?」
そこまで言って、私は自分がなにやらものすごいことを言っているのに気が付く。
「――あっ!も、もちろん・・・・変な意味じゃ、なくて・・だからね⁇」
そこまで言うと、右代は笑顔を作った。おそらく真っ赤になっているであろう、私の顔を笑っているのかと考えたが、そうではなかった。
「咲菜には、本当に世話になったよ・・・ありがとうな。俺は多分、母さんと同じくらい咲菜のことを尊敬してるし、大好きで、大切に思ってる」
「――――――え、えええええええええ⁉⁉⁉」
「そ、それって・・・・」
「ああ、決心がついたよ」
右代の真剣な表情から、思わず目をそらす。おなかと胸のあたりが、ぽーっと温まって、心臓は、おそらく人生で一番早いくらいのペースで鼓動する。
「わ、わたしも・・・右代・・・」
「―――俺たちは、もうこうして会うのはやめよう。咲菜も、もう俺に気を使ってくれなくていいんだ・・・昔みたいに、仲のいい隣人に戻ろう」
「――――え?」
(なにそれ)
*
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