いろいろあって、俺の進路希望調査票はまだ白紙のままである。

 高二の春・・・部活、遊び、友人関係、恋愛・・・・とにかく、周りは青春真っただ中。
 榮倉右代(えいくらうしろ)は窓から彼らを眺めつつ、いつまでも白紙のままの進路希望調査票の上に伏していた。

 「―――じゃあいっそのこと甘沢咲菜さんの家に婿入りします、っていうのはどう?」

 いつの間にか、幼馴染が前の席で面白そうに自分を眺めていることに気が付く。
 今考えてみれば、俺の最初の選択肢は、この幼馴染の冗談じみた提案だったように思える。

 「―――私は、きみと仕事がしたいんだけど」
 同級生のモデルは、俺と仕事がしたいらしい。は?なんじゃそりゃ・・・。

 「―――私と一緒に、都心の大学に行かない?」
 白魔女の異名を持つ天才テニス少女は、大学進学か・・・は?俺と?なんで?

 「―――正直に言うとさ、私はきみが欲しいんだ」
 全校生徒のあこがれ・・・なんでもこなす才色兼備の先輩は、俺が欲しいって?おいおい、ちょっとまてくれ・・・!

 だからあの・・・俺は!


 ・・・・・あれ、なにがしたかったんだっけ?

 ―――これは、長い間白紙状態だった、一人の男子高校生の進路が決まるまでの物語である。
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