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第29話 伯爵の後悔
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ジョージ・ヴァンダーウォール伯爵は、緊急事態のため至急帰れと息子のハリソンに呼び出され、不機嫌であった。
急いで領地に屋敷に戻ってみれば、当のハリソンは不在だと言う。
事情を話すよう家令に問うと、ハリソンが揃えたエヴァの犯罪の証拠の数々を見せられた。
アリステルが家出をして行方不明となった一連の事件についても、真相を聞かされ、現在、ハリソンが保護に向かっていると知らされた。
一通り目を通すと、伯爵はめまいを覚え、しばらくの間目を閉じてまんじりともしなかった。
「お前はこのことを知っていたのか」
「このこととは、アリステルお嬢様が害されておいでのことでしょうか。それでしたら、もちろん存じておりました」
「なぜ私に報告しなかった」
「聞かれませんでしたので、お知らせいたしませんでした」
「聞かなくても問題があれば知らせるのが仕事であろう」
「そう思い、お知らせしたことがございます。アリステルお嬢様が別棟に移されたころのことでございます。旦那様はそんなことは聞いていない、聞いたことだけ答えればよいと仰いました」
「そうだったか」
「左様でございます。一度でもアリステルお嬢様はどうしていると聞かれておりましたら、お答え致したかと」
それはただの一度もアリステルを顧みることのなかった自分への嫌味だとわかったが、甘んじて受け入れるしかなかった。
自分が一家の、伯爵家の主として、ふがいなかったのである。
「エヴァ様とその共犯者を捕らえております。若様に処分をお任せになりますか」
「いや、私が裁こう。自分で蒔いた種だ、息子に尻ぬぐいさせるのは格好がつかんだろう」
「御意に」
閉じ込められていた馬車の扉が開いたとき、エヴァはひどい有様だった。
食事も与えられず、水分も与えられなかったため、喉がカラカラに乾いて、喉を掻きむしった跡がみみずばれになっていた。
排泄物も垂れ流すしかなく、ものすごい悪臭を放っている。
何度も開かない扉をこじ開けようとして、爪もはがれてしまい血まみれだ。
馬車の扉が開いたら閉じ込めた奴に罵詈雑言を浴びせようと思っていたエヴァだったが、実際にはそのような気力はなく、ただ力なく扉が開くのをぼんやりと見つめていただけだった。
扉を開けたのはヴァンダーウォール伯爵であった。
「み、水を…」
「水が欲しければ、正直に答えろ。アリステルを魔の森に捨てたのは、お前か」
「ち、ちがう。私じゃない」
「そうか。正直に答えないなら、もう何日か馬車にいればいい」
そう言って、無情にも扉を閉めようとする。エヴァは取り乱して扉にすがった。
「正直に答えます…!」
「では答えろ。アリステルを魔の森に捨てるよう命じたのはお前か」
「はい…」
「アリステルを捨てに行った御者を殺すよう命じたのもお前か」
「はい…」
「御者を殺した男は何者だ」
「彼のことは、どうかお許しください。すべて私が悪いのです」
「聞いたことに答えろ。あの男は何者だ」
「私の幼馴染です。それだけの関係です」
ヴァンダーウォール伯爵は、もうエヴァの言うことは一切信じなかった。
先ほどエヴァの共犯だという男の顔を見たとき、伯爵はひどい衝撃を受けていた。
その男に会うのは初めてだったが、面差しが似ていたのだ。我が子と信じていたミネルヴァに。
確証がなくとも、伯爵にはわかった。ミネルヴァはこの男の娘だと。
「ミネルヴァの父親だと、私には言えぬか。もうよい。馬車の中で野垂れ死ね」
伯爵の冷たい視線を受けて、エヴァは発狂した。
「アハハハ、そうさ!今頃わかったのかい。ミネルヴァは彼の子よ。あんたなんか、これっぽっちも愛していなかったのさ。ざまーみろ!」
何を言われても、もう伯爵の心は揺らがなかった。
「そうか。やはり私の子ではなかったか。私もお前を愛したことなど、一度もなかった。お互い様だな。地下牢に連れて行け」
「かしこまりました」
共犯の男とエヴァは、伯爵家の金を横領していたので、強制労働施設へ連行され、横領した額を返金し終わるまで過酷な環境で働かされることになるだろう。
この二人の娘のミネルヴァは、何も知らないただの子供だと温情をかけ、伯爵家の子供とは認めないが、成人するまでの間、離れで養育することを決めた。
ハリソンの命を狙って馬車を襲った連中は、王立の騎士団に引き渡した。
正式な裁判を受け、罪が確定する。
伯爵家の嫡男を襲ったのだから、それなりに重い刑になるだろう。
こうして伯爵家にまつわるすべての犯罪者を処分したところで、ハリソンがアリステルを連れて帰って来た。
ハリソンは父がすべて処分を進めていたことに驚いた。
エヴァを庇って減刑するのではないかと思っていたのだが、予想に反して重い処罰を与えていたことに安堵した。
「ハリソン、この度の働きは立派であった。私がふがいないばかりに迷惑をかけたな」
「父様、伯爵家の私兵を勝手に動かしました。お許しください」
「許す」
伯爵は、もう家人が自分よりもハリソンを頼りにし、当主と認めていることを感じていた。
そこまで育った息子を誇らしく思い、事業を早めに引き継いで、自分は身を引こうと考えていた。
ハリソンは、もう立派な当主としてやっていけるだろう。
それから伯爵は、アリステルを見やった。
アリステルもいつの間にか大人に近づいている。
背も高くなり、ほっそりしていた体も、記憶よりもふくよかになった。
なにより、亡き妻の生き写しのように似ており、美しく育った。
「アリステル、こちらにおいで」
「はい」
アリステルは父の手前で立ち止まり、きれいなお辞儀をした。
「お父様、お久しぶりでございます」
「そんな礼などやめてくれ。アリステル、すまなかった。私はエヴァの言葉を信じて、お前のことを知ろうともしなかった。それにお前を除籍にまでしてしまった。すぐにでも除籍処分を取り消すよう手続きをする」
父に謝られて、アリステルは困ったように笑った。
思い返せば、父に何の恨みも抱いていなかったのだ。
父はほとんど家になどいなかったし、エヴァに虐げられても助けてくれるなど期待もしなかった。
会いたいと願ったのも、兄だけ。
だから、父に対して思うことはなかった。
「もういいのです、お父様。わたくしもお父様に助けを求めませんでした。言っても信じてもらえないと思っていたのです。わたくしがお父様を信じられなかったのですわ」
そう聞いて父親がさらに深く沈んだことには気が付かず、アリステルはほほ笑んだ。
ハリソンはひそかに父親に同情した。
「お父様、わたくしを伯爵家に戻すというお話、お断りさせてください」
「なんだと!」
アリステルの言葉は伯爵にもハリソンにも思いもかけないことで驚いた。
「何を言ってるんだ、アリス。お前はれっきとした伯爵令嬢なんだ。除籍なんて、そんな」
「お兄様、ありがとうございます」
アリステルはにこりと笑って、兄を見て、続いて父を見た。
「でも、わたくしが伯爵令嬢に戻っても、家のために何の役にもたちません」
「役に立たなくてもいい。私がいい結婚相手をみつけてきてやる。貴族として生きることが、お前の幸せだ」
アリステルは首を横に振る。
「いいえ、お父様。わたくしは、伯爵令嬢であったときは何も知らず、何もできず、役に立たない存在でした。伯爵令嬢でなくなった時、はじめ自分の力だけで生活をすることができませんでした。でも多くのみなさんに出会い、たくさんのことを教えられ、救われながら、お金を稼いでお買い物ができるようになりました。自分で働いてお金を稼いだこと、わたくしはとても嬉しかったのです。いまのわたくしは、幸せなのです」
父はアリステルの成長を感じ、時の流れを感じずにはいられなかった。
妻が若くして病気で亡くなったときに、まだ幼く、母のなきがらに縋り付いて泣いていたアリステルを思い出す。
妻を亡くした悲しみから、自分自身が立ち直れず、後妻を新しい母親役にあてがって家庭から目をそらし続けた。
その間に息子も、娘も、自分の手から離れ、立派な大人になったのだ。
「それに、わたくしは自分でみつけた人と結婚します」
そう言って、アリステルはレオンを見た。
レオンもアリステルを見ていた。
二人は視線が合い、にこりとほほ笑みあう。
伯爵はすぐさまに事情を察し、ぎろりとレオンを睨みつける。
「お前は何者だ」
レオンは物おじせず一歩前へ出ると、伯爵に丁寧にお辞儀をした。
「俺は冒険者レオンだ」
「魔の森で魔獣に襲われたときに、レオンさんが助けてくれたのですわ」
「そうか…。アリスの命を救ってくれたことには礼を言おう。しかし、冒険者などに娘をくれてやることはできない」
「お父様!なんてことをおっしゃるの?!わたくしは、もうあなたの娘ではありません!」
アリステルは人生で初めて、理性がはじけ飛んだ。
レオンの前に両手を広げて立ちはだかり、伯爵を精一杯睨みつけた。
「わたくしを娘ではないと捨てたのはお父様ですわ!わたくしがだれを愛し、だれと共に生きようと、あなたにとやかく言われる筋合いはございません!」
「アリステル…」
伯爵は娘に睨まれ、力なくうなだれた。
アリステルの言う通りだ。
その時、アリステルを後ろから軽く抱きしめ、レオンが言った。
「落ち着け」
それだけで、アリステルは我を取り戻し、レオンに向き直るとその胸に顔をうずめた。
「伯爵様、俺はしがない冒険者だが、アリスのことを心から愛している。冒険者がダメだと言うなら、他の仕事をしたっていい。何者からもアリスを守ると誓おう。必ずアリスを幸せにする。どうかアリスと共に生きる許可をいただきたい」
「アリステルが幸せなら、それでいい…」
伯爵は力なく頷いた。
急いで領地に屋敷に戻ってみれば、当のハリソンは不在だと言う。
事情を話すよう家令に問うと、ハリソンが揃えたエヴァの犯罪の証拠の数々を見せられた。
アリステルが家出をして行方不明となった一連の事件についても、真相を聞かされ、現在、ハリソンが保護に向かっていると知らされた。
一通り目を通すと、伯爵はめまいを覚え、しばらくの間目を閉じてまんじりともしなかった。
「お前はこのことを知っていたのか」
「このこととは、アリステルお嬢様が害されておいでのことでしょうか。それでしたら、もちろん存じておりました」
「なぜ私に報告しなかった」
「聞かれませんでしたので、お知らせいたしませんでした」
「聞かなくても問題があれば知らせるのが仕事であろう」
「そう思い、お知らせしたことがございます。アリステルお嬢様が別棟に移されたころのことでございます。旦那様はそんなことは聞いていない、聞いたことだけ答えればよいと仰いました」
「そうだったか」
「左様でございます。一度でもアリステルお嬢様はどうしていると聞かれておりましたら、お答え致したかと」
それはただの一度もアリステルを顧みることのなかった自分への嫌味だとわかったが、甘んじて受け入れるしかなかった。
自分が一家の、伯爵家の主として、ふがいなかったのである。
「エヴァ様とその共犯者を捕らえております。若様に処分をお任せになりますか」
「いや、私が裁こう。自分で蒔いた種だ、息子に尻ぬぐいさせるのは格好がつかんだろう」
「御意に」
閉じ込められていた馬車の扉が開いたとき、エヴァはひどい有様だった。
食事も与えられず、水分も与えられなかったため、喉がカラカラに乾いて、喉を掻きむしった跡がみみずばれになっていた。
排泄物も垂れ流すしかなく、ものすごい悪臭を放っている。
何度も開かない扉をこじ開けようとして、爪もはがれてしまい血まみれだ。
馬車の扉が開いたら閉じ込めた奴に罵詈雑言を浴びせようと思っていたエヴァだったが、実際にはそのような気力はなく、ただ力なく扉が開くのをぼんやりと見つめていただけだった。
扉を開けたのはヴァンダーウォール伯爵であった。
「み、水を…」
「水が欲しければ、正直に答えろ。アリステルを魔の森に捨てたのは、お前か」
「ち、ちがう。私じゃない」
「そうか。正直に答えないなら、もう何日か馬車にいればいい」
そう言って、無情にも扉を閉めようとする。エヴァは取り乱して扉にすがった。
「正直に答えます…!」
「では答えろ。アリステルを魔の森に捨てるよう命じたのはお前か」
「はい…」
「アリステルを捨てに行った御者を殺すよう命じたのもお前か」
「はい…」
「御者を殺した男は何者だ」
「彼のことは、どうかお許しください。すべて私が悪いのです」
「聞いたことに答えろ。あの男は何者だ」
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ヴァンダーウォール伯爵は、もうエヴァの言うことは一切信じなかった。
先ほどエヴァの共犯だという男の顔を見たとき、伯爵はひどい衝撃を受けていた。
その男に会うのは初めてだったが、面差しが似ていたのだ。我が子と信じていたミネルヴァに。
確証がなくとも、伯爵にはわかった。ミネルヴァはこの男の娘だと。
「ミネルヴァの父親だと、私には言えぬか。もうよい。馬車の中で野垂れ死ね」
伯爵の冷たい視線を受けて、エヴァは発狂した。
「アハハハ、そうさ!今頃わかったのかい。ミネルヴァは彼の子よ。あんたなんか、これっぽっちも愛していなかったのさ。ざまーみろ!」
何を言われても、もう伯爵の心は揺らがなかった。
「そうか。やはり私の子ではなかったか。私もお前を愛したことなど、一度もなかった。お互い様だな。地下牢に連れて行け」
「かしこまりました」
共犯の男とエヴァは、伯爵家の金を横領していたので、強制労働施設へ連行され、横領した額を返金し終わるまで過酷な環境で働かされることになるだろう。
この二人の娘のミネルヴァは、何も知らないただの子供だと温情をかけ、伯爵家の子供とは認めないが、成人するまでの間、離れで養育することを決めた。
ハリソンの命を狙って馬車を襲った連中は、王立の騎士団に引き渡した。
正式な裁判を受け、罪が確定する。
伯爵家の嫡男を襲ったのだから、それなりに重い刑になるだろう。
こうして伯爵家にまつわるすべての犯罪者を処分したところで、ハリソンがアリステルを連れて帰って来た。
ハリソンは父がすべて処分を進めていたことに驚いた。
エヴァを庇って減刑するのではないかと思っていたのだが、予想に反して重い処罰を与えていたことに安堵した。
「ハリソン、この度の働きは立派であった。私がふがいないばかりに迷惑をかけたな」
「父様、伯爵家の私兵を勝手に動かしました。お許しください」
「許す」
伯爵は、もう家人が自分よりもハリソンを頼りにし、当主と認めていることを感じていた。
そこまで育った息子を誇らしく思い、事業を早めに引き継いで、自分は身を引こうと考えていた。
ハリソンは、もう立派な当主としてやっていけるだろう。
それから伯爵は、アリステルを見やった。
アリステルもいつの間にか大人に近づいている。
背も高くなり、ほっそりしていた体も、記憶よりもふくよかになった。
なにより、亡き妻の生き写しのように似ており、美しく育った。
「アリステル、こちらにおいで」
「はい」
アリステルは父の手前で立ち止まり、きれいなお辞儀をした。
「お父様、お久しぶりでございます」
「そんな礼などやめてくれ。アリステル、すまなかった。私はエヴァの言葉を信じて、お前のことを知ろうともしなかった。それにお前を除籍にまでしてしまった。すぐにでも除籍処分を取り消すよう手続きをする」
父に謝られて、アリステルは困ったように笑った。
思い返せば、父に何の恨みも抱いていなかったのだ。
父はほとんど家になどいなかったし、エヴァに虐げられても助けてくれるなど期待もしなかった。
会いたいと願ったのも、兄だけ。
だから、父に対して思うことはなかった。
「もういいのです、お父様。わたくしもお父様に助けを求めませんでした。言っても信じてもらえないと思っていたのです。わたくしがお父様を信じられなかったのですわ」
そう聞いて父親がさらに深く沈んだことには気が付かず、アリステルはほほ笑んだ。
ハリソンはひそかに父親に同情した。
「お父様、わたくしを伯爵家に戻すというお話、お断りさせてください」
「なんだと!」
アリステルの言葉は伯爵にもハリソンにも思いもかけないことで驚いた。
「何を言ってるんだ、アリス。お前はれっきとした伯爵令嬢なんだ。除籍なんて、そんな」
「お兄様、ありがとうございます」
アリステルはにこりと笑って、兄を見て、続いて父を見た。
「でも、わたくしが伯爵令嬢に戻っても、家のために何の役にもたちません」
「役に立たなくてもいい。私がいい結婚相手をみつけてきてやる。貴族として生きることが、お前の幸せだ」
アリステルは首を横に振る。
「いいえ、お父様。わたくしは、伯爵令嬢であったときは何も知らず、何もできず、役に立たない存在でした。伯爵令嬢でなくなった時、はじめ自分の力だけで生活をすることができませんでした。でも多くのみなさんに出会い、たくさんのことを教えられ、救われながら、お金を稼いでお買い物ができるようになりました。自分で働いてお金を稼いだこと、わたくしはとても嬉しかったのです。いまのわたくしは、幸せなのです」
父はアリステルの成長を感じ、時の流れを感じずにはいられなかった。
妻が若くして病気で亡くなったときに、まだ幼く、母のなきがらに縋り付いて泣いていたアリステルを思い出す。
妻を亡くした悲しみから、自分自身が立ち直れず、後妻を新しい母親役にあてがって家庭から目をそらし続けた。
その間に息子も、娘も、自分の手から離れ、立派な大人になったのだ。
「それに、わたくしは自分でみつけた人と結婚します」
そう言って、アリステルはレオンを見た。
レオンもアリステルを見ていた。
二人は視線が合い、にこりとほほ笑みあう。
伯爵はすぐさまに事情を察し、ぎろりとレオンを睨みつける。
「お前は何者だ」
レオンは物おじせず一歩前へ出ると、伯爵に丁寧にお辞儀をした。
「俺は冒険者レオンだ」
「魔の森で魔獣に襲われたときに、レオンさんが助けてくれたのですわ」
「そうか…。アリスの命を救ってくれたことには礼を言おう。しかし、冒険者などに娘をくれてやることはできない」
「お父様!なんてことをおっしゃるの?!わたくしは、もうあなたの娘ではありません!」
アリステルは人生で初めて、理性がはじけ飛んだ。
レオンの前に両手を広げて立ちはだかり、伯爵を精一杯睨みつけた。
「わたくしを娘ではないと捨てたのはお父様ですわ!わたくしがだれを愛し、だれと共に生きようと、あなたにとやかく言われる筋合いはございません!」
「アリステル…」
伯爵は娘に睨まれ、力なくうなだれた。
アリステルの言う通りだ。
その時、アリステルを後ろから軽く抱きしめ、レオンが言った。
「落ち着け」
それだけで、アリステルは我を取り戻し、レオンに向き直るとその胸に顔をうずめた。
「伯爵様、俺はしがない冒険者だが、アリスのことを心から愛している。冒険者がダメだと言うなら、他の仕事をしたっていい。何者からもアリスを守ると誓おう。必ずアリスを幸せにする。どうかアリスと共に生きる許可をいただきたい」
「アリステルが幸せなら、それでいい…」
伯爵は力なく頷いた。
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