上 下
10 / 11
娶ったのなら最後まで

それでも夜は更けていく

しおりを挟む
「ジオラ様・・・・ジークフリード・・・私、守れましたでしょうか。これからも・・・守りますからね」

 真っ暗な中、きっと見えなくてもそこにある月に向かって、叫んだ。
 背を向けたまま、待っているエフは・・・・何を考え、想っているのだろうか。


 何も知らずに、眠るジオラ。
 そんなジオラにはすでに、変化が訪れていたのではないだろうか・・・・・

***

「おかえりなさいませ、ロットバルト様」
「・・・・・」
「皆様、ご無事に帰られております」
「・・・・・」
 フードで隠した口元は緩んでいた。
 かけがえのない弟達の力を借りるしか手段のない中で、何も言わずついて来てくれた。
 まだまだ幼い気もするが、それでも確かな実力がある自慢の弟達だ。
「兄上、おかえりなさい。これで、しばらく襲撃はないかと」
「そうか・・・」
「それと、またジベルガが・・・」
 ロットバルトがはぁ、とため息を吐いたことで、ロットバルトの弟、ニルアギオは口を閉じた。
「他のは、何か言っていたか?」
「はい、言っておりました」
 ロットバルトは眉間に皺を寄せ、軽く睨んだ。「何かあるのならば、早く言え」とでも言っているような視線だった。
「その・・・・兄上がなさったことは、的な報酬以上のことではなかったと我々は思っております」
 ロットバルトの冷ややかな視線は、ますます冷たさを増した。
「今回の仕事も、報酬以上でも以下でもない。いつも通りだろう?」
 何か言いたげな顔をしながら歩き出したニルアギオに、ロットバルトは黙ってついていった。
「みんなはもう寝ました。兄上も湯に浸かってから、すぐに寝られた方が良いのでは・・・」
「通常執務に休みはない」
 冷たく言い放ったロットバルトに、ニルアギオはしびれを切らした。
「いい加減にしてくださいっ!いつもいつもあなたの口からは仕事ばかり、いつもそうやって家族から逃げて!だから、こんなふうに兄上から頼られることが、弟の私達は嬉しかったです・・・でも、でも、何か兄上は言うべきことを黙っておられるのではないでしょうか?」

「・・・・・・」

「久しぶりに見ました。
 兄上の、困った顔。心底、悩まれている顔。
 都合の悪いことは黙って、静かに逃げられる・・・

「ニルアギオ、おまえの言う通りだ。
 報酬以上の目的があった。仕事に、私情を挟んだ。エヌ、おまえはこんな俺より・・・ずっと人に信頼される国王になるだろう・・・・」

「あ、兄上、それは!」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

その遊び癖、どうすれば治りますか旦那様?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:15

【完結】継母に婚約者を寝取られましたが、何故かモテています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:944pt お気に入り:1,864

私の美しいお姉様。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:433pt お気に入り:322

かみてんせい

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:21

愛してるなら、噛みついて。(改稿中)

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:43

アディショナルタイム~皇子叙事~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:7

攻略対象の婚約者でなくても悪役令息であるというのは有効ですか

BL / 連載中 24h.ポイント:2,818pt お気に入り:1,965

処理中です...