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こんな妻と末長く

好きすき、大好き! あなたは私だけのもの

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「ねぇ、ジオラさまぁ」
 甘ったるい女性の声に目を覚ました。
「昨夜は・・・とぉっても楽しかったですよ」
 耳元に囁かれる声は、色気すらなく、本人は恥ずかしいことに気づいていないようだ。
「あぁ・・・悪いけど帰って?」
 ジオラはとにかく期限が悪かった。無理やり起こされて、意味もない会話を続ける苦痛に耐える時間がもったいない、そんな気分だった。
「ジオラさまはぁ、あの人をせーさいに迎えられるおつもりですかぁ?」
(ったく、帰れよ!)
「さぁな。で、さっさと帰って」
「奥さんのために?お優しいですわねぇ。でもわたしのことを放っておくのはぁ、さみしいぃですぅ」
 なかなかねばる女に、ジオラは嫌悪の眼差しで睨みつける。
 そんなことを全く気にもせず、ジオラに擦り寄る女。
「あのさ、もういいから帰って?」
 無理やり女の腕を掴んで、ベッドから引きずり落とした。下に落ちた女に服を投げつけた。
 これ以上ここに居られては、誰かに見られてしまう。それをあのうるさい馬鹿嫁が知ったらどうなるだろうか。
 常にこちらが優勢でありたい。そのためにはこちらの弱みを握らせる訳にはいかない。

 やっと女が帰った。
 まだ外は薄暗い。

 この後起きることを知らないジオラは、ゆっくりと目を閉じた。

***

「アレを陛下がご覧になったらどうなりますかね?」

「どうもこうも、陛下は別に姫様のことをなんとも思っておられないでしょう」

「昨夜も愛人と過ごされたようですよ?」

「ふっ、羨ましい限りだなぁ」

「姫様が可愛そうな気もしますが?」

「あの姫様なら平気だろうけど、まさかねぇ・・・」

 護衛達が目にしたのは、普段のオディールから想像もできないような光景だった。
 仕方がない、王族だから、と片付けられてしまう現実は緩いようで苦しいものではないだろうか。
 誰かを心底愛しても、口先から溢れる愛の言葉も、全てが嘘へと歩みだす。あなたを抱きしめた理由は、愛おしいからでも、恋しいからでも、寂しいからでもなく。
 自分の安定した未来のため。充実した暮らしのため。自らの欲望を満たすため。

 愛する理由など、あってはならないのではないだろうか

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