28 / 36
28
しおりを挟む ゲームセンターの後、一行は行き先が無くなってしまった。
ファミレスも、百貨店も、クェーサーを見るなり退店するよう言われてしまったのだ。仕方なくコンビニで軽食を買い、4人は肩を落とした。
「人もあやかしも同じ反応かよ、いいじゃねぇかロボットが店に入ったって」
「まぁ店側の対応も分からなくはないよ、クェーサーは良くも悪くも目立つし、トラブルに繋がりかねないしね」
「すみません、私のせいでご迷惑を」
「クェーサーは何も悪くないじゃろう。謝る必要はないぞ」
サヨリヒメはクェーサーを撫で、おにぎりの封を開けた。
御堂と救も同様に、軽食に手を付けた。クェーサーはそれを眺めるしか出来ない。
「見慣れたもんだけど、本当に人とあやかしって共存してるんだな。街を見渡す限り、あやかしと人が半々くらいで歩いてら。なんだって急にあやかしが見えるようになったんだか」
「羽山の者達は、わらわ達を認知したからの。わらわ達の擬態は、あやかしの存在を認知している者には通じぬのじゃ」
「じゃあ今、私と先輩の親を見たら、本当の姿が分かるって事か」
御堂と救は人とあやかしのハーフだ。それを教えられた時、多少は驚いたものの、2人ともすんなりと受け入れてしまった。
「親があやかしと知っても、落ち着いているのですね」
「んーまぁ、親は親だしな。ガキの頃ならともかく、30手前になって聞いても動じやしないさ」
「むしろ自分のルーツを知るいいきっかけになったよ。この天才的な頭脳があやかし由来ならば納得だ」
「強いのですね」
「まぁ、この程度なんて可愛い位の目に遭い続けたからね。それに比べれば軽いさ」
羽山工業の社員たちも、2人がハーフだと知っても「あっそ」程度の反応しかなかった。羽山のおおらかな社風もあるのだろうが、懐の深い者達である。
「あの、ちょっといいですか?」
子供連れの主婦が声をかけてきた。男の子はキラキラした目でクェーサーを見上げ、そわそわしている。
「この子と写真を撮ってもいいですか? あと、もしよければTwitterに上げたいんですけど」
「構いません。ボク、おいで」
クェーサーは男の子を抱き上げた。ちょっとしたサービスでヒーローっぽいポーズを取ってあげると、彼は興奮した様子でお礼を言ってくれた。
「物凄く喜んでたな、よかったじゃねぇか」
「彼の服がヒーローシリーズでしたから、その着ぐるみと勘違いしたのでしょう。喜んでくれたのなら幸いです」
「行動はいいけど、発言は気を付けようね。着ぐるみは夢壊すよ」
「気を付けます。それで、どうでしょうか。私は彼の心に、寄り添えたでしょうか」
「出来たと思うぞ。わらわ達が保証する、自信を持て」
サヨリヒメから太鼓判を押され、嬉しくはある。一部出禁はあったものの、人やあやかし達からもそれなりに受け入れられただろう。
それなのに、疎外感がぬぐえない。
むしろ時間が経つごとに、皆との距離が離れていくような気がした。
なぜ自分はこんなにも孤独を感じている、機械の手を握りしめ、クェーサーはかぶりを振った。
「……体が、重いです。出力、大幅に低下」
「おっと、稼働限界か。そろそろ羽山に戻らないと」
クェーサーのバッテリーは、羽山工業でなければ充電できない。一行は大急ぎでバスへ向かった。
ファミレスも、百貨店も、クェーサーを見るなり退店するよう言われてしまったのだ。仕方なくコンビニで軽食を買い、4人は肩を落とした。
「人もあやかしも同じ反応かよ、いいじゃねぇかロボットが店に入ったって」
「まぁ店側の対応も分からなくはないよ、クェーサーは良くも悪くも目立つし、トラブルに繋がりかねないしね」
「すみません、私のせいでご迷惑を」
「クェーサーは何も悪くないじゃろう。謝る必要はないぞ」
サヨリヒメはクェーサーを撫で、おにぎりの封を開けた。
御堂と救も同様に、軽食に手を付けた。クェーサーはそれを眺めるしか出来ない。
「見慣れたもんだけど、本当に人とあやかしって共存してるんだな。街を見渡す限り、あやかしと人が半々くらいで歩いてら。なんだって急にあやかしが見えるようになったんだか」
「羽山の者達は、わらわ達を認知したからの。わらわ達の擬態は、あやかしの存在を認知している者には通じぬのじゃ」
「じゃあ今、私と先輩の親を見たら、本当の姿が分かるって事か」
御堂と救は人とあやかしのハーフだ。それを教えられた時、多少は驚いたものの、2人ともすんなりと受け入れてしまった。
「親があやかしと知っても、落ち着いているのですね」
「んーまぁ、親は親だしな。ガキの頃ならともかく、30手前になって聞いても動じやしないさ」
「むしろ自分のルーツを知るいいきっかけになったよ。この天才的な頭脳があやかし由来ならば納得だ」
「強いのですね」
「まぁ、この程度なんて可愛い位の目に遭い続けたからね。それに比べれば軽いさ」
羽山工業の社員たちも、2人がハーフだと知っても「あっそ」程度の反応しかなかった。羽山のおおらかな社風もあるのだろうが、懐の深い者達である。
「あの、ちょっといいですか?」
子供連れの主婦が声をかけてきた。男の子はキラキラした目でクェーサーを見上げ、そわそわしている。
「この子と写真を撮ってもいいですか? あと、もしよければTwitterに上げたいんですけど」
「構いません。ボク、おいで」
クェーサーは男の子を抱き上げた。ちょっとしたサービスでヒーローっぽいポーズを取ってあげると、彼は興奮した様子でお礼を言ってくれた。
「物凄く喜んでたな、よかったじゃねぇか」
「彼の服がヒーローシリーズでしたから、その着ぐるみと勘違いしたのでしょう。喜んでくれたのなら幸いです」
「行動はいいけど、発言は気を付けようね。着ぐるみは夢壊すよ」
「気を付けます。それで、どうでしょうか。私は彼の心に、寄り添えたでしょうか」
「出来たと思うぞ。わらわ達が保証する、自信を持て」
サヨリヒメから太鼓判を押され、嬉しくはある。一部出禁はあったものの、人やあやかし達からもそれなりに受け入れられただろう。
それなのに、疎外感がぬぐえない。
むしろ時間が経つごとに、皆との距離が離れていくような気がした。
なぜ自分はこんなにも孤独を感じている、機械の手を握りしめ、クェーサーはかぶりを振った。
「……体が、重いです。出力、大幅に低下」
「おっと、稼働限界か。そろそろ羽山に戻らないと」
クェーサーのバッテリーは、羽山工業でなければ充電できない。一行は大急ぎでバスへ向かった。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
憧れていた天然色
きりか
BL
母という名ばかりの女と、継父に虐げられていた、オメガの僕。ある日、新しい女のもとに継父が出ていき、火災で母を亡くしたところ、憧れの色を纏っていたアルファの同情心を煽り…。
オメガバースですが、活かしきれていなくて申し訳ないです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
始まりの、バレンタイン
茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて……
他サイトにも公開しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君と秘密の部屋
325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。
「いつから知っていたの?」
今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。
対して僕はただのモブ。
この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。
それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。
筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる