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パーティと隣人①
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『なんとか私が車を出します。17時頃にお迎えにあがりますので部屋でシノと待っていて下さい』
そんな佐須杜さんからの連絡を受けていたので、私は自宅でゆっくり準備をしていた。前日のうちにクリーニングに出していた三つ揃いを午前中のうちに取りに行って、あとはゆっくりしていた。流石に人栄さんも今日は来ていないので、本当に久しぶりに一人きりの時間を過ごしているような気がする。
16時頃になって、私は準備をし始める。まずはスーツパンツとシャツを着る。せっかくパーティということなので、普段はなかなか着る機会のない水色に白襟のクレリックシャツを出す。クローゼットの奥から取り出したのでシワが心配だったが、特に問題はなさそうだ。佐須杜さんの話によればパーカーとかで来る人もいるらしいので、これくらいのカジュアルさがあってもいいだろう。
ネクタイをつける前に髪型を整える。こっちもパーティ仕様、というほどでもないが、軽くサイドバックにする。あまりにかっちりしすぎるオールバックというのもなんとなくきめすぎな気がしたので、程よく崩す。昨日散髪したばかりなので、軽めに入れた両サイドのツーブロック部分が少し気になるが……まあこんなものだろう。
次はネクタイだ。色々選択肢はあるものの、黒色に白のドットが入ったものにする。小さめのドットで使いやすく、結構気に入っている。
「うーん、これも使うかあ」
ここまで来たならこれもということで、購入したまま眠っていた銀のタイピンとカフスをつける。ストーンが配されたものも世の中に存在するが、これは特に何もついていないシンプルなものだ。こっちの方がさっぱりしていて好みなのである。
最後にジャケットを羽織り、姿見の前に立つ。特に問題はなさそうだが、美人な人栄さんの横に立つには役者不足な感が否めないものの、これが私の精一杯だ。
「おっと、これも忘れないようにしないと」
リビングに置きっぱなしになっていた神袋から例のブツを取り出す。鞄を持っていくのもなあ、と思いジャケットの胸ポケットに入れてみる。改めて姿見の前に立つと、若干膨らんでいるのが分かるが、仕方ないだろう。これで良しとした。
時間を確認すると16時半を示していた。まだ人栄さんが来る気配はないので、再度ジャケットをハンガーにかけ、時間を潰すためにテレビをつける。もちろんその内容は頭に入ってこず、ちらちらと何度も時計を確認しつつ落ち着かない気持ちで時が経つのを待つ。
結局、16時50分に人栄さんではなく佐須杜さんが私の家に来た。私はジャケットを羽織り、彼女を出迎える。
「こんばんは、目島さん。とってもいい感じです」
感心したように彼女は私の出で立ちを褒めてくれる。
「ありがとうございます。人栄さんの隣に立って、彼女に恥ずかしい思いをさせないといいのですが」
「うーん、多分目島さんが心配しているのとは逆の意味でシノは恥ずかしい思いをするかもしれませんね」
それはどういうことだろうか、と思うものの、私がそれを確認する前に佐須杜さんは話を続ける。
「あれ?シノはいないんですか?」
佐須杜さんは私の部屋の方を覗き込むようにするが、もちろんそこに人栄さんの姿はない。
「ええ。まだいらっしゃってないですよ」
「あー、どうせ部屋で躊躇しているんだと思います。すいません、玄関前に車を止めていますから先にそちらに行っていてもらえますか?」
申し訳無さそうにそう提案してくるが、私としても全く異存はない。
「分かりました。それではよろしくお願いいたしますね」
「もちろんです。では少しお待ち下さいね!」
私はダブルのチェスターコートを着込み、玄関の車の前で待機する。今日は特別寒く、今にも雪が降り出しそうな雰囲気だ。ウールとカシミヤ混の重さを感じ始めた辺りで、二人が玄関に現れた。
「すいません、お待たせしました」
佐須杜さんは申し訳無さそうにしているが、他方で人栄さんは彼女の後ろに隠れるようにしていてその格好は見えない。
「お、おまたせです!」
流石に少し緊張しているのか、彼女の口調はやや硬い。
「いえ、大丈夫ですよ」
「では、早速行きましょうか。ほら、シノ!車に乗れ!」
佐須杜さんは素早く移動し、人栄さんを私の方に押すようにする。彼女はかなり高いヒールを履いているのか少しバランスを崩す。私は彼女の体を抱きとめ、支えてあげる。
「ご、ごめん」
「大丈夫ですよ」
彼女は黒のトレンチコートを来ており、その下がどのような格好なのかまだ分からない。私も似たようなものだからお互い様である。彼女の服装は会場までのお楽しみにしておこう。それに少なくとも、うっすらとお化粧をしており、彼女のきれいな肌と唇が一層整えられており、それを至近距離で確認した私の心臓は高鳴った。
「さあ、乗って下さい!」
佐須杜さんに促され、私達は車の後部座席に乗り込んだ。
そんな佐須杜さんからの連絡を受けていたので、私は自宅でゆっくり準備をしていた。前日のうちにクリーニングに出していた三つ揃いを午前中のうちに取りに行って、あとはゆっくりしていた。流石に人栄さんも今日は来ていないので、本当に久しぶりに一人きりの時間を過ごしているような気がする。
16時頃になって、私は準備をし始める。まずはスーツパンツとシャツを着る。せっかくパーティということなので、普段はなかなか着る機会のない水色に白襟のクレリックシャツを出す。クローゼットの奥から取り出したのでシワが心配だったが、特に問題はなさそうだ。佐須杜さんの話によればパーカーとかで来る人もいるらしいので、これくらいのカジュアルさがあってもいいだろう。
ネクタイをつける前に髪型を整える。こっちもパーティ仕様、というほどでもないが、軽くサイドバックにする。あまりにかっちりしすぎるオールバックというのもなんとなくきめすぎな気がしたので、程よく崩す。昨日散髪したばかりなので、軽めに入れた両サイドのツーブロック部分が少し気になるが……まあこんなものだろう。
次はネクタイだ。色々選択肢はあるものの、黒色に白のドットが入ったものにする。小さめのドットで使いやすく、結構気に入っている。
「うーん、これも使うかあ」
ここまで来たならこれもということで、購入したまま眠っていた銀のタイピンとカフスをつける。ストーンが配されたものも世の中に存在するが、これは特に何もついていないシンプルなものだ。こっちの方がさっぱりしていて好みなのである。
最後にジャケットを羽織り、姿見の前に立つ。特に問題はなさそうだが、美人な人栄さんの横に立つには役者不足な感が否めないものの、これが私の精一杯だ。
「おっと、これも忘れないようにしないと」
リビングに置きっぱなしになっていた神袋から例のブツを取り出す。鞄を持っていくのもなあ、と思いジャケットの胸ポケットに入れてみる。改めて姿見の前に立つと、若干膨らんでいるのが分かるが、仕方ないだろう。これで良しとした。
時間を確認すると16時半を示していた。まだ人栄さんが来る気配はないので、再度ジャケットをハンガーにかけ、時間を潰すためにテレビをつける。もちろんその内容は頭に入ってこず、ちらちらと何度も時計を確認しつつ落ち着かない気持ちで時が経つのを待つ。
結局、16時50分に人栄さんではなく佐須杜さんが私の家に来た。私はジャケットを羽織り、彼女を出迎える。
「こんばんは、目島さん。とってもいい感じです」
感心したように彼女は私の出で立ちを褒めてくれる。
「ありがとうございます。人栄さんの隣に立って、彼女に恥ずかしい思いをさせないといいのですが」
「うーん、多分目島さんが心配しているのとは逆の意味でシノは恥ずかしい思いをするかもしれませんね」
それはどういうことだろうか、と思うものの、私がそれを確認する前に佐須杜さんは話を続ける。
「あれ?シノはいないんですか?」
佐須杜さんは私の部屋の方を覗き込むようにするが、もちろんそこに人栄さんの姿はない。
「ええ。まだいらっしゃってないですよ」
「あー、どうせ部屋で躊躇しているんだと思います。すいません、玄関前に車を止めていますから先にそちらに行っていてもらえますか?」
申し訳無さそうにそう提案してくるが、私としても全く異存はない。
「分かりました。それではよろしくお願いいたしますね」
「もちろんです。では少しお待ち下さいね!」
私はダブルのチェスターコートを着込み、玄関の車の前で待機する。今日は特別寒く、今にも雪が降り出しそうな雰囲気だ。ウールとカシミヤ混の重さを感じ始めた辺りで、二人が玄関に現れた。
「すいません、お待たせしました」
佐須杜さんは申し訳無さそうにしているが、他方で人栄さんは彼女の後ろに隠れるようにしていてその格好は見えない。
「お、おまたせです!」
流石に少し緊張しているのか、彼女の口調はやや硬い。
「いえ、大丈夫ですよ」
「では、早速行きましょうか。ほら、シノ!車に乗れ!」
佐須杜さんは素早く移動し、人栄さんを私の方に押すようにする。彼女はかなり高いヒールを履いているのか少しバランスを崩す。私は彼女の体を抱きとめ、支えてあげる。
「ご、ごめん」
「大丈夫ですよ」
彼女は黒のトレンチコートを来ており、その下がどのような格好なのかまだ分からない。私も似たようなものだからお互い様である。彼女の服装は会場までのお楽しみにしておこう。それに少なくとも、うっすらとお化粧をしており、彼女のきれいな肌と唇が一層整えられており、それを至近距離で確認した私の心臓は高鳴った。
「さあ、乗って下さい!」
佐須杜さんに促され、私達は車の後部座席に乗り込んだ。
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