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イケおじと隣人
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幸いにして購入した小説は非常に面白い。皮肉屋の主人公、愛想の悪いヒロイン、陽気なペット。始めの数頁だけで非常に引き込まれる内容だと感じる。しかし、中々難しい言い回しや古風な漢字・単語を多様しており、いちいち検索しないと理解しにくいのも確かだ。
そういうわけで書斎のデスクトップパソコンの前に移動した(もちろん会社のPCとは別の私物である)。
調べつつ、小説にどっぷりと――
「シノ、私が言いたいことは分かるな?」
「はい……了解です、ナコちゃん」
彼女達の会話が始まったようだ。少なくとも、今回はラジオ的にでも聞かないほうが良いかも知れない。
「わたしはこの度大変なご迷惑をおかけしまして、えー、大変反省をしております……」
「おう、そうだな。ちゃんと、改めてご挨拶しておくんだぞ」
「もちろん……」
「で、体調は大丈夫なのか?」
「うん、そっちは……まあ無理がたたっただけだからさ。イラストの締切りも大丈夫」
「……まあ、無理するなよ」
佐須杜さんは心配そうにしているようだ。礼儀正しく、優しく、そして金髪。あまり会ったことのないタイプだが、好感が持てる人物だ。
「ありがとう、いつも迷惑かけてばかりでごめんね」
「いまさらだ。気にすんなよ」
二人共良いパートナーシップを築けているように思える。素晴らしいことだ。若さを失った私には少し眩しすぎるくらいだ。
「……ところで、ナコちゃん」
「どうした?」
「イラストなんだけど、ラフから全然違うものにしちゃって大丈夫?」
「は!?急にどういうことだよ!」
「いや、さっきのお隣さん、目島さんさあ……結構イケメンだったじゃない?」
……雲行きが怪しくなってきたな。
「まあそうだな。顔立ちは整っていたし、私達よりも十個近く上だと思うけどな」
「いや、まさにそこ!イケおじじゃん!しかも料理上手で紳士的!ぐへへへ、たまりませんのお!」
「きっも」
「だからさあ、わたしの創作意欲が刺激されちゃったわけなのよ……だ、か、ら、今回のイラストもそういう感じの方向性でさあ……」
私はここで書斎を出た。もちろん、しっかり扉を閉じて音が漏れないようにして、だ。これ以上聞くのも失礼だし、あまり聞いてプラスになるとも思えなかった。
……やはり、壁の穴を塞ぐ必要がありそうだ。応急処置でも自分で可能なら挑戦してみようと思う。
そういうわけで書斎のデスクトップパソコンの前に移動した(もちろん会社のPCとは別の私物である)。
調べつつ、小説にどっぷりと――
「シノ、私が言いたいことは分かるな?」
「はい……了解です、ナコちゃん」
彼女達の会話が始まったようだ。少なくとも、今回はラジオ的にでも聞かないほうが良いかも知れない。
「わたしはこの度大変なご迷惑をおかけしまして、えー、大変反省をしております……」
「おう、そうだな。ちゃんと、改めてご挨拶しておくんだぞ」
「もちろん……」
「で、体調は大丈夫なのか?」
「うん、そっちは……まあ無理がたたっただけだからさ。イラストの締切りも大丈夫」
「……まあ、無理するなよ」
佐須杜さんは心配そうにしているようだ。礼儀正しく、優しく、そして金髪。あまり会ったことのないタイプだが、好感が持てる人物だ。
「ありがとう、いつも迷惑かけてばかりでごめんね」
「いまさらだ。気にすんなよ」
二人共良いパートナーシップを築けているように思える。素晴らしいことだ。若さを失った私には少し眩しすぎるくらいだ。
「……ところで、ナコちゃん」
「どうした?」
「イラストなんだけど、ラフから全然違うものにしちゃって大丈夫?」
「は!?急にどういうことだよ!」
「いや、さっきのお隣さん、目島さんさあ……結構イケメンだったじゃない?」
……雲行きが怪しくなってきたな。
「まあそうだな。顔立ちは整っていたし、私達よりも十個近く上だと思うけどな」
「いや、まさにそこ!イケおじじゃん!しかも料理上手で紳士的!ぐへへへ、たまりませんのお!」
「きっも」
「だからさあ、わたしの創作意欲が刺激されちゃったわけなのよ……だ、か、ら、今回のイラストもそういう感じの方向性でさあ……」
私はここで書斎を出た。もちろん、しっかり扉を閉じて音が漏れないようにして、だ。これ以上聞くのも失礼だし、あまり聞いてプラスになるとも思えなかった。
……やはり、壁の穴を塞ぐ必要がありそうだ。応急処置でも自分で可能なら挑戦してみようと思う。
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