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二人が一緒にいる未来
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それは、近嗣が美羽の後を追って大学に入学して、少ししてからの事だった。
「チカ!」
美羽は、大学で近嗣を見つけて嬉しくなり、手を振りながら駆け寄った。
隣にいた清斗が名前を聞いて興味津々で近嗣を見てくる。
近嗣は、それほど笑顔を見せなかった。
美羽は、清斗がいるからかとそれほど気にはしなかった。
「もしかして……美羽の……チカちゃん?」
「……何ですか?」
清斗は驚いていた。
目の前にいる人物からは、聞いていたチカちゃんを全く想像できない。
美羽が惚気て会わせないほどの彼女だと思っていた。どこからどう見ても男だ。
(この子が料理好きでエプロンの似合う笑顔の可愛い子ぉ?)
身長も清斗よりあって、無表情で全く可愛げが見えない。
顔が整っている分、何を考えているのかわからない気がした。
美羽が清斗の前に出て遮った。
「チカ。こいつの事は気にしなくていい。昼食はまだだろう? 一緒に食べないか?」
「…………」
近嗣の反応がイマイチで美羽は首を傾げる。
すると近嗣の周りにいた人達が美羽に声をかけてきた。
「生徒会長ですよね?」
「チカちゃんと知り合いなんですか?」
どこか見覚えのある子達だった。
「君達は──同じ高校の後輩か?」
「はい。チカちゃんの同級生ですよ」
「チカちゃんの友達です」
同じ高校なら、大学も同じなのは納得できる。
けれど、美羽は内心驚いていた。
高校の頃は一人でいた近嗣に友達がいて、こうやって囲まれていると想像していなかった。
「樋口さん、俺、みんなと食べるんで……」
美羽は、他人行儀の近嗣の言葉にグッと口籠った。
一瞬で理解した。近嗣は、まだ高校の頃の事を引きずっている。
今では、近嗣の事を問題児だと言う人はいないのに、仲良くしないという約束がまだ有効であるようだった。
美羽は、目を細める。
(医大は、最低でも六年間……僕が卒業するまで五年はある……その間ずっと距離を置くつもりなのか……?)
フツフツと怒りが湧いてくる。
そもそも、高校の時ですら、あまり納得していなかった。近嗣が仲良くしないと言った事で、せっかく同じ学校でもコソコソとしていた。
「チカちゃんお弁当だよね?」
「うん……」
「どこで食べる?」
「静かなとこ……」
目の前で友達と話す近嗣を見て、美羽の心は穏やかでいられない。
周りのやつらは、近嗣と一緒に居れるのに、一番近嗣を必要としている美羽が一緒に居れないのはおかしいと思う。
美羽は、元々それほど我慢強くない。
近嗣を探してやると意気込んでいた時のように行動を起こすことにした。
「待て、チカ……」
「樋口さん……?」
「君の一番は誰だ?」
「え……」
美羽は、近嗣の胸ぐらを掴んでそのまま引き寄せると、近嗣にブチュッとキスをした。
その光景を見て、歩いていた人はピタリと立ち止まり、飲み物を手にしていた人はスルリと落とす。
周りの時間が止まる。
動いているのは美羽と、青空の背景を横切る鳥だけのような錯覚に陥った。
放心状態の近嗣の唇を舌でこじ開けて、ヌルリと近嗣の口内を犯す。
「ん、ふっ……ンン……」
そのうちに応えてきた近嗣にほくそ笑んで抱きしめた。近嗣も抱きしめ返してきた所で唇を離した。
「何か言いたい事は?」
「みぃちゃん……大胆……」
近嗣の顔がポッと赤く染まる。
「おい。違うだろ?」
「俺の一番はみぃちゃん……」
「よし」
「好き。愛してる……」
「もっと言え」
「大好き。俺のすべて……」
ドヤ顔の美羽と蕩けるような近嗣の顔に見惚れる人が多数いた。
清斗も例外じゃない。清斗が近嗣に惚れて無謀な恋をするのはまた別の話。
「これでもう隠す必要はないな」
「俺……嬉しい……」
「言っただろ? 僕の隣にはチカが必要なんだ。ずっと一緒にいてくれるんだろ?」
「うん……」
わぁっと湧いた周りの人々を無視して、二人は微笑み合ってもう一度キスを交わす。
周りの友人は驚いていたものの、二人を祝福してくれた。
二人の仲の良さは誰もが知る事実になった。
それから何年経っても、美羽の隣には近嗣がいて、二人で手を取り合って支え合い、ずっと一緒にいる未来を自分達で作り続けている。
────────────
※あとがき
初めましての方も、いつも読んで下さる方も、最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!
リバにするかどうかは悩みました。でも、美羽がギリギリで近嗣に騙されるのにハマってしまって……笑
悪魔の微笑が氷になっていたのも直しました。すみません。
タグが思い浮かばなくて……何か良いのがあれば知恵をお借りしたいです。
感想も頂けたら嬉しいです。
二人のドタバタは、最後まで楽しんで書けました。
また別のお話でもお会いできたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。感謝、感謝です。
「チカ!」
美羽は、大学で近嗣を見つけて嬉しくなり、手を振りながら駆け寄った。
隣にいた清斗が名前を聞いて興味津々で近嗣を見てくる。
近嗣は、それほど笑顔を見せなかった。
美羽は、清斗がいるからかとそれほど気にはしなかった。
「もしかして……美羽の……チカちゃん?」
「……何ですか?」
清斗は驚いていた。
目の前にいる人物からは、聞いていたチカちゃんを全く想像できない。
美羽が惚気て会わせないほどの彼女だと思っていた。どこからどう見ても男だ。
(この子が料理好きでエプロンの似合う笑顔の可愛い子ぉ?)
身長も清斗よりあって、無表情で全く可愛げが見えない。
顔が整っている分、何を考えているのかわからない気がした。
美羽が清斗の前に出て遮った。
「チカ。こいつの事は気にしなくていい。昼食はまだだろう? 一緒に食べないか?」
「…………」
近嗣の反応がイマイチで美羽は首を傾げる。
すると近嗣の周りにいた人達が美羽に声をかけてきた。
「生徒会長ですよね?」
「チカちゃんと知り合いなんですか?」
どこか見覚えのある子達だった。
「君達は──同じ高校の後輩か?」
「はい。チカちゃんの同級生ですよ」
「チカちゃんの友達です」
同じ高校なら、大学も同じなのは納得できる。
けれど、美羽は内心驚いていた。
高校の頃は一人でいた近嗣に友達がいて、こうやって囲まれていると想像していなかった。
「樋口さん、俺、みんなと食べるんで……」
美羽は、他人行儀の近嗣の言葉にグッと口籠った。
一瞬で理解した。近嗣は、まだ高校の頃の事を引きずっている。
今では、近嗣の事を問題児だと言う人はいないのに、仲良くしないという約束がまだ有効であるようだった。
美羽は、目を細める。
(医大は、最低でも六年間……僕が卒業するまで五年はある……その間ずっと距離を置くつもりなのか……?)
フツフツと怒りが湧いてくる。
そもそも、高校の時ですら、あまり納得していなかった。近嗣が仲良くしないと言った事で、せっかく同じ学校でもコソコソとしていた。
「チカちゃんお弁当だよね?」
「うん……」
「どこで食べる?」
「静かなとこ……」
目の前で友達と話す近嗣を見て、美羽の心は穏やかでいられない。
周りのやつらは、近嗣と一緒に居れるのに、一番近嗣を必要としている美羽が一緒に居れないのはおかしいと思う。
美羽は、元々それほど我慢強くない。
近嗣を探してやると意気込んでいた時のように行動を起こすことにした。
「待て、チカ……」
「樋口さん……?」
「君の一番は誰だ?」
「え……」
美羽は、近嗣の胸ぐらを掴んでそのまま引き寄せると、近嗣にブチュッとキスをした。
その光景を見て、歩いていた人はピタリと立ち止まり、飲み物を手にしていた人はスルリと落とす。
周りの時間が止まる。
動いているのは美羽と、青空の背景を横切る鳥だけのような錯覚に陥った。
放心状態の近嗣の唇を舌でこじ開けて、ヌルリと近嗣の口内を犯す。
「ん、ふっ……ンン……」
そのうちに応えてきた近嗣にほくそ笑んで抱きしめた。近嗣も抱きしめ返してきた所で唇を離した。
「何か言いたい事は?」
「みぃちゃん……大胆……」
近嗣の顔がポッと赤く染まる。
「おい。違うだろ?」
「俺の一番はみぃちゃん……」
「よし」
「好き。愛してる……」
「もっと言え」
「大好き。俺のすべて……」
ドヤ顔の美羽と蕩けるような近嗣の顔に見惚れる人が多数いた。
清斗も例外じゃない。清斗が近嗣に惚れて無謀な恋をするのはまた別の話。
「これでもう隠す必要はないな」
「俺……嬉しい……」
「言っただろ? 僕の隣にはチカが必要なんだ。ずっと一緒にいてくれるんだろ?」
「うん……」
わぁっと湧いた周りの人々を無視して、二人は微笑み合ってもう一度キスを交わす。
周りの友人は驚いていたものの、二人を祝福してくれた。
二人の仲の良さは誰もが知る事実になった。
それから何年経っても、美羽の隣には近嗣がいて、二人で手を取り合って支え合い、ずっと一緒にいる未来を自分達で作り続けている。
────────────
※あとがき
初めましての方も、いつも読んで下さる方も、最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!
リバにするかどうかは悩みました。でも、美羽がギリギリで近嗣に騙されるのにハマってしまって……笑
悪魔の微笑が氷になっていたのも直しました。すみません。
タグが思い浮かばなくて……何か良いのがあれば知恵をお借りしたいです。
感想も頂けたら嬉しいです。
二人のドタバタは、最後まで楽しんで書けました。
また別のお話でもお会いできたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。感謝、感謝です。
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