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美羽の決意
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『ただいまおかけになった電話は電波の届かない所にあるか──』
美羽は、チッと舌打ちして、メッセージも確認する。数日前に送ったメッセージは既読にならない──。
学校で近嗣の姿を探すが見かけない──。
仲良くしないという約束は、緊急事態の今では無効だろう。
二年生の近嗣のクラスへ行き、クラスメイトらしき人物を捕まえた。
「え? 会長?」
「元会長だ」
生徒会の引き継ぎも終わっていて数日後には卒業だ。
クラスに何の用なんだと見られても関係なかった。
「糸崎近嗣を呼んでほしい」
「糸崎? 数日前から学校来てませんけど……」
「なぜだ?」
「知りません……」
近嗣と親しい人なんて聞いた事がない。
どうしたものかと悩んでいる時に浮かんだのは聡だった。
今度は一年生のクラスに行って聡を呼んだ。
「会長が糸崎さんに何の用っすか?」
「いや、僕は元会長だ」
美羽と言ったら会長のイメージが強すぎるらしい。
訝しげに見られても、頼る人がいない。
「糸崎くんと連絡が取れない」
「俺でも連絡取れないんすから当たり前じゃないんすか? そもそも、連絡先知ってたのが驚きですけどね」
「君もか──」
聡の嫌味も聞こえないくらい必死だった。
避けられているのが美羽だけはない事にホッとした。そうなると、原因は美羽ではない。やはり何かあったのかもしれないと怖くなる。
「何か知っている事は?」
「……糸崎さん、自分の事あまり話してくれないんす。俺も知りません……」
「そうか──」
美羽は、あの時の近嗣が欲しいと言った約束が
負担になったとは思えないのに、あれが悪かったのかもしれないと思い始めた。
(こんな風に会えなくなるぐらいなら、あんな約束をするんじゃなかった──)
そう思えるぐらい近嗣に本気だ。
美羽は、職員室で近嗣の担任にも声を掛けた。
「糸崎な……無断欠席なんだ。成績は良くても、素行がこれじゃな」
近嗣の担任は呆れの混じったため息を吐く。
近嗣をそんな風に言われて、美羽は黙っていられなかった。
「先生なら、糸崎くんが真面目な事もわかるでしょう」
ポンと肩を叩かれる。
「樋口は生徒会長で生徒思いなのはわかるが、素行の悪い生徒まで面倒見なくていいんだぞ」
美羽は、怒鳴りそうなのを堪えて笑顔を作った。悪魔の微笑は、今までで一番冷たい顔ができていたと思う。
「──何か連絡があれば知らせて下さい。例え僕が卒業しても、です。よろしくお願いします」
「あ、ああ……」
さっさと職員室を出る。あんな教師と同じ空間にいたくなかった。
先生にも連絡がないなら、近嗣は一体どうしたのか……。
美羽は、放課後に近嗣の家へ行った。
インターホンを押しても誰も居ない。暫く家の前で待ったけれど、帰ってくる気配もない。
(チカ……どこへ行った?)
諦めて家に帰るしかなかった。
美羽の母親にも聞いてみた。
「私も紀子に連絡してみるわ」
近嗣と同じで繋がらなかった。
どうしたものかと考えても、これ以上できる事は思いつかなかった。
何度も近嗣の家を訪ねては、誰も出てこないインターホンを押した。
近所の人に聞いても、知らないと言われるだけだった。
◆◇◆
美羽は、そのまま卒業式になってしまった。
近嗣のいない学校に何も未練はない。
教室の窓から校庭を眺めながら、今でも近嗣の姿を探していた。
『みぃちゃん、卒業おめでとう』
そんな声が聞こえた気がして振り返る。
誰もいなかった──。
窓からそよぐ風が、カーテンを揺らした。
無性に会いたくて……会いたくて……。
幸せだった──幸せだったんだ。
僕達は、こんな事で終わりか?
チカ……僕は君を手放していない。
少し連絡がとれなくなっただけでなんだって言うんだ。
僕の未来には、チカが隣にいるんだ。
この世界のどこかにいるのなら、必ず見つけてやる──。
美羽は、チッと舌打ちして、メッセージも確認する。数日前に送ったメッセージは既読にならない──。
学校で近嗣の姿を探すが見かけない──。
仲良くしないという約束は、緊急事態の今では無効だろう。
二年生の近嗣のクラスへ行き、クラスメイトらしき人物を捕まえた。
「え? 会長?」
「元会長だ」
生徒会の引き継ぎも終わっていて数日後には卒業だ。
クラスに何の用なんだと見られても関係なかった。
「糸崎近嗣を呼んでほしい」
「糸崎? 数日前から学校来てませんけど……」
「なぜだ?」
「知りません……」
近嗣と親しい人なんて聞いた事がない。
どうしたものかと悩んでいる時に浮かんだのは聡だった。
今度は一年生のクラスに行って聡を呼んだ。
「会長が糸崎さんに何の用っすか?」
「いや、僕は元会長だ」
美羽と言ったら会長のイメージが強すぎるらしい。
訝しげに見られても、頼る人がいない。
「糸崎くんと連絡が取れない」
「俺でも連絡取れないんすから当たり前じゃないんすか? そもそも、連絡先知ってたのが驚きですけどね」
「君もか──」
聡の嫌味も聞こえないくらい必死だった。
避けられているのが美羽だけはない事にホッとした。そうなると、原因は美羽ではない。やはり何かあったのかもしれないと怖くなる。
「何か知っている事は?」
「……糸崎さん、自分の事あまり話してくれないんす。俺も知りません……」
「そうか──」
美羽は、あの時の近嗣が欲しいと言った約束が
負担になったとは思えないのに、あれが悪かったのかもしれないと思い始めた。
(こんな風に会えなくなるぐらいなら、あんな約束をするんじゃなかった──)
そう思えるぐらい近嗣に本気だ。
美羽は、職員室で近嗣の担任にも声を掛けた。
「糸崎な……無断欠席なんだ。成績は良くても、素行がこれじゃな」
近嗣の担任は呆れの混じったため息を吐く。
近嗣をそんな風に言われて、美羽は黙っていられなかった。
「先生なら、糸崎くんが真面目な事もわかるでしょう」
ポンと肩を叩かれる。
「樋口は生徒会長で生徒思いなのはわかるが、素行の悪い生徒まで面倒見なくていいんだぞ」
美羽は、怒鳴りそうなのを堪えて笑顔を作った。悪魔の微笑は、今までで一番冷たい顔ができていたと思う。
「──何か連絡があれば知らせて下さい。例え僕が卒業しても、です。よろしくお願いします」
「あ、ああ……」
さっさと職員室を出る。あんな教師と同じ空間にいたくなかった。
先生にも連絡がないなら、近嗣は一体どうしたのか……。
美羽は、放課後に近嗣の家へ行った。
インターホンを押しても誰も居ない。暫く家の前で待ったけれど、帰ってくる気配もない。
(チカ……どこへ行った?)
諦めて家に帰るしかなかった。
美羽の母親にも聞いてみた。
「私も紀子に連絡してみるわ」
近嗣と同じで繋がらなかった。
どうしたものかと考えても、これ以上できる事は思いつかなかった。
何度も近嗣の家を訪ねては、誰も出てこないインターホンを押した。
近所の人に聞いても、知らないと言われるだけだった。
◆◇◆
美羽は、そのまま卒業式になってしまった。
近嗣のいない学校に何も未練はない。
教室の窓から校庭を眺めながら、今でも近嗣の姿を探していた。
『みぃちゃん、卒業おめでとう』
そんな声が聞こえた気がして振り返る。
誰もいなかった──。
窓からそよぐ風が、カーテンを揺らした。
無性に会いたくて……会いたくて……。
幸せだった──幸せだったんだ。
僕達は、こんな事で終わりか?
チカ……僕は君を手放していない。
少し連絡がとれなくなっただけでなんだって言うんだ。
僕の未来には、チカが隣にいるんだ。
この世界のどこかにいるのなら、必ず見つけてやる──。
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