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衝撃の事実
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数日後の朝、たっつんを玄関で見送る。
「僕も今日から出社です。新入社員なんで、正親さんより、早めに出ますね」
キチッと決めたスーツがカッコいい。
でも、少し初々しい気がして可愛い。
「気を付けて行けよ。ほら、ネクタイ曲がってるぞ」
たっつんのネクタイを直してやる。
「ハンカチとティッシュは持ったか? 忘れ物はないのか?」
「ふふっ」
嬉しそうに笑うたっつんを訝しむ。
「なんだ? 何を笑っているんだ?」
「正親さんに色々お世話されるのも悪くないなぁって思いました」
急に恥ずかしくなってプイっとそっぽを向く。
「嬉しそうにしてないで、早く行けよ」
「はい。行ってきます。正親さん、キスして下さい」
たっつんは目を閉じて、顔を俺に近付けた。
キスしてって言われたらしないといけない。
たっつんがキス顔をして待っている。
恥ずかし過ぎる……。
なんでこんな恥ずかしいんだ?
「正親さん……」
名前を呼ばれてそっとキスすれば、たっつんは嬉しそうに笑って出社した。
◆◇◆
「今日から入った新入社員を紹介する」
そういえば、俺の会社も新入社員が入るんだったな。
各部署に1~3名程度だったはずだ。
「村住豊くんだ」
俺達の部署には一名ね。
「村住は、田杉の補佐に付いて色々教えてもらえ」
「え⁉︎ 俺が教育するんですか⁉︎」
「お前も後輩の面倒ぐらい見れるようになれ。このIT部のエースだろ?」
ニヤニヤとする富田部長に顔を引きつらせる。
「聞いてませんよ……」
「言ってないからな」
「俺、精一杯頑張ります! 田杉先輩、よろしくお願いします!」
う……村住くんはキラキラの笑顔で挨拶してくれた。
「よ、よろしく……」
俺って押しに弱いのかもしれない……。
「そんじゃ、デスクは田杉の隣ね。他部署にも挨拶行ってくるから、お前らは仕事してろよ」
「「「はーい」」」
「他部署の新入社員も挨拶に来ると思うから、それは田杉に任せるから」
また俺かよ……富田部長、あとで絶対奢らせる。
◆◇◆
新入社員は、挨拶しながら各部署を回り、社内の配置を頭の中に入れる。
それがこの会社の決まりだった。
仕事をしていれば、他部署の新入社員が挨拶に来る。
その度に立ち上がって、部長に言われた通りに俺が相手をしなきゃならない。
「総務部の新入社員です」
「おーい、みんな一瞬手を止めて注目」
新入社員の挨拶が済めば、みんな俺に任せっきりで仕事に戻る。
俺のいるIT部はそこそこ忙しい。
IT部というだけあって、会社のIT関係は全てここで管理している。
ホームページの管理もあるから、宣伝や広報もここでしていた。
上手く起動しないシステムがあれば、その部署に行って問題を解決して、円滑に仕事が進めるようにと日々努力している。そんな部署だった。
「経理部の新入社員です」
「みんな、一瞬手を止めて」
部署の空気がピリッとする。
段々と手を止められるのが嫌になってくるのは俺もわかる。
「あと少しだから頼むよ」
「「「はーい」」」
挨拶あと何部署だったかなぁ?
みんなピリピリしちゃってるな。
こっそりとため息をつく。
また他部署の新入社員が来た。
「営業部の新入社員です」
俺が手を止めてと言う前にみんなの手が止まる。
営業部は別名エリート部と呼ばれていて、出世する人が多いので大注目だ。
さっきのピリッとした空気はどこへ?
女子社員なんて肉食獣にしか見えない……。
「田杉。これがうちの新入社員ね」
「あれ? 古谷が案内してんの? 関根部長は?」
古谷は同期の中で一番仲がいい。
上品という感じがして、いい所のおぼっちゃまみたいな顔してる。
実際営業部だし、エリートなんだろう。
「出張中。忙しい人だからね。そういえば、今度同期で飲みに行こうってさ。また声掛けるね」
「いいね。待ってる。それじゃあ、新入社員のみんなは挨拶を──」
そこまで言って新入社員に視線を向けて固まった。
頭の中は真っ白だ。
「田杉? どうした?」
古谷に声を掛けられてハッとする。
「そ、それじゃあ挨拶してね」
「「はい!」」
二人の新入社員のうち、一歩前に出た新入社員をそっと見ていた。
「営業部に配属になりました。白石龍彦です。よろしくお願いします!」
ニコニコしながら挨拶しているのはたっつんだった……。
そのニコニコをこっちに向けるんじゃない!
「僕も今日から出社です。新入社員なんで、正親さんより、早めに出ますね」
キチッと決めたスーツがカッコいい。
でも、少し初々しい気がして可愛い。
「気を付けて行けよ。ほら、ネクタイ曲がってるぞ」
たっつんのネクタイを直してやる。
「ハンカチとティッシュは持ったか? 忘れ物はないのか?」
「ふふっ」
嬉しそうに笑うたっつんを訝しむ。
「なんだ? 何を笑っているんだ?」
「正親さんに色々お世話されるのも悪くないなぁって思いました」
急に恥ずかしくなってプイっとそっぽを向く。
「嬉しそうにしてないで、早く行けよ」
「はい。行ってきます。正親さん、キスして下さい」
たっつんは目を閉じて、顔を俺に近付けた。
キスしてって言われたらしないといけない。
たっつんがキス顔をして待っている。
恥ずかし過ぎる……。
なんでこんな恥ずかしいんだ?
「正親さん……」
名前を呼ばれてそっとキスすれば、たっつんは嬉しそうに笑って出社した。
◆◇◆
「今日から入った新入社員を紹介する」
そういえば、俺の会社も新入社員が入るんだったな。
各部署に1~3名程度だったはずだ。
「村住豊くんだ」
俺達の部署には一名ね。
「村住は、田杉の補佐に付いて色々教えてもらえ」
「え⁉︎ 俺が教育するんですか⁉︎」
「お前も後輩の面倒ぐらい見れるようになれ。このIT部のエースだろ?」
ニヤニヤとする富田部長に顔を引きつらせる。
「聞いてませんよ……」
「言ってないからな」
「俺、精一杯頑張ります! 田杉先輩、よろしくお願いします!」
う……村住くんはキラキラの笑顔で挨拶してくれた。
「よ、よろしく……」
俺って押しに弱いのかもしれない……。
「そんじゃ、デスクは田杉の隣ね。他部署にも挨拶行ってくるから、お前らは仕事してろよ」
「「「はーい」」」
「他部署の新入社員も挨拶に来ると思うから、それは田杉に任せるから」
また俺かよ……富田部長、あとで絶対奢らせる。
◆◇◆
新入社員は、挨拶しながら各部署を回り、社内の配置を頭の中に入れる。
それがこの会社の決まりだった。
仕事をしていれば、他部署の新入社員が挨拶に来る。
その度に立ち上がって、部長に言われた通りに俺が相手をしなきゃならない。
「総務部の新入社員です」
「おーい、みんな一瞬手を止めて注目」
新入社員の挨拶が済めば、みんな俺に任せっきりで仕事に戻る。
俺のいるIT部はそこそこ忙しい。
IT部というだけあって、会社のIT関係は全てここで管理している。
ホームページの管理もあるから、宣伝や広報もここでしていた。
上手く起動しないシステムがあれば、その部署に行って問題を解決して、円滑に仕事が進めるようにと日々努力している。そんな部署だった。
「経理部の新入社員です」
「みんな、一瞬手を止めて」
部署の空気がピリッとする。
段々と手を止められるのが嫌になってくるのは俺もわかる。
「あと少しだから頼むよ」
「「「はーい」」」
挨拶あと何部署だったかなぁ?
みんなピリピリしちゃってるな。
こっそりとため息をつく。
また他部署の新入社員が来た。
「営業部の新入社員です」
俺が手を止めてと言う前にみんなの手が止まる。
営業部は別名エリート部と呼ばれていて、出世する人が多いので大注目だ。
さっきのピリッとした空気はどこへ?
女子社員なんて肉食獣にしか見えない……。
「田杉。これがうちの新入社員ね」
「あれ? 古谷が案内してんの? 関根部長は?」
古谷は同期の中で一番仲がいい。
上品という感じがして、いい所のおぼっちゃまみたいな顔してる。
実際営業部だし、エリートなんだろう。
「出張中。忙しい人だからね。そういえば、今度同期で飲みに行こうってさ。また声掛けるね」
「いいね。待ってる。それじゃあ、新入社員のみんなは挨拶を──」
そこまで言って新入社員に視線を向けて固まった。
頭の中は真っ白だ。
「田杉? どうした?」
古谷に声を掛けられてハッとする。
「そ、それじゃあ挨拶してね」
「「はい!」」
二人の新入社員のうち、一歩前に出た新入社員をそっと見ていた。
「営業部に配属になりました。白石龍彦です。よろしくお願いします!」
ニコニコしながら挨拶しているのはたっつんだった……。
そのニコニコをこっちに向けるんじゃない!
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