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嬉しすぎて

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「ナオ……手加減できそうにない」
「いいんですよ……俺も……我慢できません……」

 そんな事を言われて、理性を保てるやつなんていない。
 ずっとお互いを求め合っていた私達には、余裕が全くなかった。

 今日のナオも可愛かった。
 夜景に連れて行ったら予想以上に喜んだ。
 腕時計も大事に触れては顔を綻ばせていた。
 それも私が使っていた物の方がいいだなんて予想外の事が嬉しすぎて、愛しいが止まらない。

 自分の手でナオを乱れさせる喜びに心が震える。
 こんなにも愛しいと思う相手に出会えた私は幸運だろう。
 その想いを伝えるように、ナオの体に触れる。
 いつもより早急に事を進める自分に、セックスを覚えたての頃のようで笑ってしまう。

「ん……ぁ……あきらさん……もうキて……」

 顔を赤くして告げられた言葉にたまらなくなる。
 抱き合ったままナオに突き挿れた。

「ぁんっ──!」

 突き挿れた時に思わず出てしまうナオの声が好きだ。

「はぁっ……あっ、ふっ、ぅんっ……!」

 何度も良い所を攻めるとナオからこぼれる色っぽい声が好きだ。
 口付けた時に震える目元が好きだ。
 私のモノを締め付けるこの体が好きだ。
 ナオの全部が好きで、ひとつに溶け合うこの時間がキラキラとして宝物みたいだ。
 そのナオを絶頂に導いてやる事で、何ものにも代えられない興奮と快感が得られる。

「もうっ! イクッ! ──んああぁあっ! あきらもっ……いっしょにっ!」
「──くっ!」

 私自身もナオから与えられた快感に震えて達してしまった。
 ナオに覆い被さりながら、余韻に浸る。

「イッてしまった……すまない……」
「素敵でしたよ……」

 ギューッと抱きしめあって、微笑み合う。

「お風呂に入って……もう一度してもいいかい?」
「はい……俺も……もっとしたいです……輝さんと繋がっていると……幸せです……」

 蕩けた顔をしながら、そんな事を言うナオが可愛すぎた。
 そのせいで、自分のモノがまた反応してしまう。

「あの……あきらさん……中で……大きく……?」
「やっぱりこのままする」
「え? あっ! ……はっ……あきら、さん……ぁ、ぅん……あ、あぁ! あっ! んぁっ! ソコ……ダメッ!」

 再び勃ち上がった自分のモノが果てるまで、何度もナオを突き上げた。
 三回戦は、ナオと一緒に風呂に入ってから、時間を掛けてたっぷり可愛がった。

     ◆◇◆

 二人で抱き合って迎える朝はとても気持ちがいい。
 激しい行為の後、自分の方が先に起きるのは、ナオにいつも負担を掛けているからだろう。

 そっと柔らかい髪に口付けてナオの寝顔を堪能する。
 しばらくして、目を開けたナオに微笑めば、少し恥ずかしそうに笑う。

「ぉはょぅございます……」

 寝起きで少し掠れた声が可愛い。
 挨拶の代わりにキスをして、布団の中でじゃれ合う。
 今日は日曜日だ。少しぐらいのんびりしても許される。
 そう思いながら、昨日付けたキスマークに再び口付けた時だった。
 仕事用のスマートフォンからの呼び出しにがっかりする。

「電話……鳴ってますよ……」

 ナオに言われて仕方なくそれに手を伸ばす。
 部長である林田はやしだの名前に顔を顰めた。
 何か問題があったのかもしれない。

「はい。河西です」
『河西? 先週の案件にトラブルが出てしまって……先方が河西でないと話をしたくないと言って聞かないんだ。すまないが、あちらに足を運んでもらえないか? 高部も勉強になるだろうから、一緒に連れていけるか?』
「わかりました。すぐに向かいます。高部には私から連絡します」

 素早く電話を切って、すぐに高部に連絡した。
 取引先の会社の場所を伝えて、そこの最寄り駅で待ち合わせる事にした。
 電話を切れば、不安そうな顔でこちらを見ていたナオと目が合った。
 苦笑いして髪を撫でてやれば、その手に擦り寄る。
 可愛くて仕事に行きたくなくなる。

「車は使わないんですか?」
「ああ。あの車はプライベートだけで使うつもりなんだ」
「そうなんですね……」
「ナオ。悪いけれど、行ってくるよ。待っててくれるかい?」
「はい」

 布団から出て、シャワーを浴びてからスーツに着替えて靴を履いた。
 玄関まで見送りに来てくれたナオに行ってきますのキスをしてから外に出た。

 高部と一緒に取引先の会社に行って話を聞けば些細な事だった。
 相手の要望を聞いて解決して、部長に連絡した頃にはお昼を過ぎていた。
 すぐにナオの所に帰りたい所だけれど、高部に付き合ってもらってそのまま帰すのは忍びない。

「高部。お腹空いただろう? お昼を奢るから一緒に食べようか?」
「いいんですか⁉︎ どこにしますか⁉︎」

 素直な反応にクスクスと笑う。
 高部は可愛い部下だ。

 高部と一緒にご飯を食べてから、待ち合わせに使った最寄り駅まで一緒に行こうと足を進めていた。
 時間を確認しようと、さり気なく見た腕時計がナオと同じ物だと思い出して微笑んだ。

「その時計、恋人からのプレゼントですか?」

 高部にもわかるほど顔に出ていたようで笑ってしまう。

「大好きな人とお揃いなんだ」
「へぇ。河西主任でも、お揃いとかするんですね」
「変かな?」
「違います! イメージがないってだけで、羨ましいんですよ。そこまで想って貰えば、相手の人も嬉しいでしょうね」

 そうだといいな。

「高部は恋愛はどうなんだい?」
「いまいちピンと来ないんですよね。どこかにいい子がいるといいけれど。河西主任の彼女の友達とか紹介してもらえませんかね?」
「私の相手は男性だよ。それでもいいのかい?」

 クスクスと笑えば、とても驚いた顔をする。

「え……? そうなんですか?」
「そうさ。男性だっていいものだよ。大学時代だったら、君に教えてあげたけれどね」

 意味深に笑ってやれば、高部はゴクリと喉を鳴らした。

「河西主任なら、どんな男もその気になってしまいそうですね」
「ははっ。よく言われるし、実際そうかも」
「自信家ですね……ますます尊敬します……」

 高部をからかっていれば、そのうちに駅に着く。

「じゃあ、気をつけて帰るように」
「はい。主任も」

 そうして、高部と駅で別れて家に帰る。

 ナオは、何をしているだろうか?
 お昼はもう食べただろうな。涼達と一緒なら一人にさせなくて済む。
 そうだ。お土産に近所の洋菓子店でケーキを買って帰ろうか。
 涼と二人きりの時には思い付いた事もない。

 四人分のケーキを買い込んで、早くナオの顔が見たいとウキウキしながら家に入った。
 笑顔で部屋から出てきたナオに自分も笑顔になる。
 交わした挨拶ですら嬉しくて、しばらく恋人の出迎えを噛み締めていた。
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