ひたすらイチャラブなふたり

おみなしづき

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ドライブデート side尚雪

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 車に乗ってハンドルを握る輝さんを助手席で見ていた。
 真っ直ぐ前を見る横顔。
 時たまウインカーを出す手も優雅に見えた。
 ああ……カッコいい。
 こんなカッコいい人が俺の恋人だなんて……。 

「ナオ? 黙ったままだけど……どうした?」

 前を見たままの輝さんに声を掛けられてハッと我に返る。

「……カ……」
「か?」
「……カッコいいなって思って……」

 輝さんはカッコいいんです。

 車が赤信号で止まった。
 こちらを見た輝さんにまた見惚れる。
 横顔もいいけれど、しっかり目を合わせてこちらを見る顔も最高だ……。

 春樹君の家に着いて停車した瞬間に、手を伸ばしてきた輝さんに頭を掴まれて引き寄せられた。
 そのまま口付けられれば、輝さんの事しか見えない。

「僕もいるんだけど……」

 涼君の声が聞こえたけれど、輝さんの感触を少しでも逃したくない。
 こっちのが大事……。

「輝……一緒に行くんでしょ? もう行くよ……」

 涼君の呆れた言葉に、されるがままだった自分に恥ずかしくなった。

     ◆◇◆

 輝さんと涼君で家の中に入って行った。
 輝さんも父親に会うのだそうだ。
 途中で買った手土産もきちんと持って行った。

 少しして、輝さんだけ戻ってきた。

「挨拶だけしてきたよ。父も元気そうだった。春樹君が了承すれば、後は家族で話すと思うよ。」

 輝さんと二人で車内で待っていた。
 なかなか戻ってくる気配がない。

「涼君……大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。春樹君も前向きに考えているよ」

 そのうちに輝さんは、シートを倒して、頭の下に両手を置いて目を閉じた。
 寝るわけではないけれど、少し疲れを取りたいのかもしれない。

「この後は、ナオの家にも寄るからね」

 地方から出てきていて一人暮らしの自分には、特に許しを必要とする人もいない。
 実家も母一人と兄夫婦がいるので心配するような事もない。

「あ、実家に連絡だけしてもいいですか? 引っ越すだけでも伝えておきたいので」
「そうだね。ルームシェアをすると言えばいい」

 実家に電話を掛けて数コールすると、受話器を取る音がした。
 母は特に反対する事もなく、すんなりと住所を聞いて、わかったと言って電話を切った。

「そのうち、ナオの実家にも挨拶に行かせてくれないか?」
「え? いいんですか……?」
「ルームメイトとしてでも、ナオの家族に会えたら嬉しいな」
「輝さん……」

 そんな風に言ってもらえるなんて俺の方こそ嬉しくなる。
 できる事ならその時は、恋人として紹介したい……。

「うちは複雑だからな……母には会わせたくないんだ。涼もそうだろう……」
「はい……わかってます」

 誰が相手でも猛反対しているという輝さんの母親に会うのはやっぱり怖い。
 でも、一緒に暮らしていたら会うこともあるかもしれない。
 その時は堂々と……胸を張っていないと。
 
 横になっている輝さんを見下ろした。
 この人の恋人であることは自分の誇りだ。
 目を閉じている輝さんに、先程のキスを思い出してしまい触れたくなった。
 ボーッと見つめてしまうのは、車内という初めての場所が新鮮だからだろうか。
 ふとクスクスと笑われてしまった。

「どうしたんだい? 物欲しそうな顔をしているよ」

 目を閉じていると思っていたのに……バレてる……。
 そうなれば、隠す事もない。

「カッコいいからですよ……」

 輝さんのシートに手をついて、身を乗り出して輝さんにキスをした。
 そっと唇を離して見つめ合えば、眼鏡を外された。それは、深いキスの合図。
 頭の後ろを掴まれて、そのまま口内に舌が侵入してくる。
 クチュリと音をさせて歯列をなぞり、舌を絡めあう。
 痺れるような感覚が舌に伝わると気持ちよくなってくる。

「ん……ふっ……」
「ナオ……」

 耳をサワサワと撫でられてゾクゾクした。
 輝さん……もっとです……。

 コンコンッ。

 窓を叩く音にハッとする。
 また我を忘れてキスに夢中になっていた……。
 ノックされた窓を見ると、涼君と目が合った。
 恥ずかしくなって真っ赤になる。
 春樹君も涼君の背後で赤くなって視線を逸らしていた。

「いい加減にして」

 涼君の蔑むような視線がやっぱり輝さんに似ているなと思った。

     ◆◇◆

 帰りの車内の中で、今後の事を取り決める。

「春樹君のご両親はなんて?」
「両親には、大学生になったら家を出るとは言ってあったんです。二人とも、涼と一緒なら一人暮らしをするより心配ないからと見送ってくれました」

 遅くなったのは、荷物を用意していたからみたいだ。
 ボストンバック一つだけの荷物。
 涼君と同じように部屋をそのままにして、いつでも帰っておいでと言われたらしい。
 優しいご両親だ。

「輝とハルは料理ができないから、僕とナオさんで料理当番ね」
「わかったよ」
「というか……家事全般は、僕とナオさんしかできない」
「ふふっ。了解」

 涼君と二人でできる時に家事をやって、できない時はその都度、臨機応変にしようということになった。
 元々俺も涼君も毎日家事をしていたから、人数が増えるだけで抵抗はない。

 春樹君は、輝さんに遠慮がちに声をかけた。

「輝さん……本当にいいんですか?」
「構わないよ」
「それでも、なるべく早く出ていきます。涼、俺もやっぱりバイトするよ。少しずつでもお金貯めたい」
「ダメ」
「なんでだよ!」

 また喧嘩になりそうなのを輝さんが窘めた。

「二人とも、少し冷静になりなさい。涼、頭から春樹君を押し付けるんじゃない。春樹君には、会社の近くの知り合いの店を紹介しよう」
「涼! それならいいよな⁉︎」
「えぇ……」

 まだ不満そうな涼くんに輝さんはニヤリと笑う。

「そこなら融通も効くし、涼も仕事が終わって春樹君と一緒に帰ってこれるようになる」
「え? 一緒に帰って来れる?」

 涼君の反応が少し良くなった。

「そう。春樹君のバイトが終わるまで、お前は春樹君のエプロン姿を眺めてコーヒーを飲んでいられるよ」
「…………」
「春樹君と仲良く帰って来れる」
「……そこならいいよ」
「やった! 輝さん、ありがとう!」

 嬉しそうな春樹君に微笑む。
 輝さんは、涼君の扱いをよく分かっているみたいだ。

「春樹君、そんなに畏まらないで。私も兄みたいに思って欲しいな。兄さんって呼んでもいいよ」
「ぜっっったいダメッ!」

 涼君の全力の拒否に輝さんとクスクスと笑ってしまった。

「ハル! 輝の事を兄さんなんて呼んだらどうなるか──わかるよね?」
「でも、輝兄さんとナオ兄さんって呼びたいかも」
「輝兄さん……」
「ナオ兄さん……」

 弟がいないから……良いかも……。
 涼君は輝さんをそんな風に呼んだ事がないみたいで、輝さんからも感動しているのが伝わってきた。

「ハル……今日は、僕を兄さんって呼んでしよっか」
「は⁉︎ 輝さん達の前で何言ってんだ⁉︎」
「そうすれば、兄さんて呼ぶごとに僕を思い出して呼べなくなる……」
「やだよ! 涼は涼だ!」
「前は可愛く呼んでくれたよ? ほら、呼んで」
「いーやーだーっ!」

 涼君って嫉妬深い……。
 後部座席で繰り広げられる攻防戦に笑ってしまう。
 輝さんと笑いながら、家に帰った。

     ◆◇◆

 もうすぐ夜になるという時間に家に着いた。
 車から降りようとしたら、輝さんに止められた。
 輝さんは、涼君と春樹君を降ろして二人に声を掛けた。

「二人は、先に戻って。ナオと一緒に行きたいところがあるんだ」

 これは──ドライブデートだ!
 ウキウキとする心を誤魔化せない。

「しばらく帰ってこないでね」
「涼、そういう事言うなよ。二人とも、気をつけて行ってらっしゃい」

 春樹君っていい子だ。
 見送ってくれる笑顔も可愛い。

「夕飯は別でね。じゃあ、行ってくるから」

 輝さんの運転で再び出発する。
 途中のイタリアンのお店で夕食を取ってまた出発した。
 その頃にはすっかり夜になっていて、街灯や街の明かりが車の窓を通り過ぎて行く。
 輝さんは、どこかの公園で車を停めたようだった。
 助手席のドアを開けてくれて、エスコートされる。
 輝さんのスマートな対応に惚れ直す。

「ここは?」
「こっちにおいで」

 輝さんの後を追いかけていけば、眼前に広がってくる街の夜景に思わず声が出た。

「うわぁ……すごい……」
「ふふっ。いい反応」

 手摺りでしっかり囲まれた公園の一角から見下ろす夜景。
 街をミニチュアにして電気を灯したみたいだ。街だけが暗闇に浮かび上がっているように見えた。
 まだ時間が早いのか、周りに人はいなかった。
 輝さんと夜景を両方独り占め──なんて贅沢なんだ。

「免許を取ったら連れてきてあげようと思ったんだ。ナオなら喜んでくれると思った」
「輝さん……ありがとう」
「ベンチがあるから座ろうか」

 輝さんと一緒にベンチに座って夜景を眺めていた。
 言葉は出ない。

「ナオ……これを君にあげるよ」
「え?」

 差し出されたのは、ギフト用の箱に入った腕時計だった。
 仕事でも使えるようなシンプルな金属製のアナログ時計だ。
 輝さんは、自分がしていた腕時計を外して、それを箱に入った腕時計と並べた。

「同じのだ……」
「そう。私が使っている物と同じだよ」

 輝さんが最近買った物で、気に入っているようで毎日使っていた。

「ネクタイのお礼だよ」
「あの! わがままを言ってもいいですか?」
「なんだい?」
「そっちの……輝さんがしていた方を頂いてもいいですか?」

 いつも輝さんが身につけていた物の方が欲しかった。

「え? 私が使っていたものでいいのかい?」
「はい……そっちが……いいです……」

 輝さんは、驚いた顔をした後に微笑んだ。
 そっと俺の腕を取ると、そこに自分がしていた方の腕時計をつけてくれた。

「こっちは私が使おう」

 輝さんの腕にも新しい方の腕時計がつけられてそれを二人で並べた。
 お揃いの腕時計が同じ時を刻む。
 やばい……嬉しい……。
 夜景を見せてもらって、こんないいプレゼントが貰えるなんて感動で胸がいっぱいだ。

「私が使っていた物の方がいいなんて……ナオには敵わないな」

 こんな照れたような笑顔はあまり見ない。
 嬉しそうに笑う輝さんにキュゥゥンと胸が鳴る。
 肩に回された腕に包まれれば、輝さんの肩に頭を乗せた。

「輝さん……大好きです……」
「ナオ……私もだよ」

 頰に手を添えられれば、見つめ合ってキスをした。

     ◆◇◆

 車に戻れば、余韻に浸っていた。
 エンジンをかけて、シートベルトをして、シフトノブを握ろうとした輝さんの左手を握った。

「もう少しだけ……」
「可愛いことを言う」

 輝さんは、エンジンを止めて自分のシートベルトを外した。
 お互いに身を乗り出してそっとキスをする。
 眼鏡を外されれば、深いキスに変わる。
 確かめるような輝さんの舌の動きに自分の舌の神経が集中する。
 輝さんの首に腕を回して夢中で貪った。
 そのうちに、服越しに胸を触られる。
 勃ち上がってきた乳首を摘まれた。

「ふぁ……」
「可愛い声……我慢できなくなってしまうよ……車じゃ満足にできない」

 そう言いながら、手を止めてくれない。

「あ……はっ……じゃあ……早く……ぁ……帰りますか?」
「ああ……そうだね……」

 もう一度チュッとキスしてから家路を急いだ。
 帰りの車の中でも疼く体を持て余していた。
 マンションに着いて、エレベーターに乗っている間も二人とも我慢ができなくて抱き合ってキスばかりしていた。
 
 玄関に入った瞬間からも、抱き合ってキスをしながら部屋に入った。
 もつれ合うように服を脱がし合って、ベッドに倒れ込んだ。

「ナオ……手加減できそうにない」
「いいんですよ……俺も……我慢できません……」

 そのまま覆い被さる輝さんに身を任せた。
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