同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき

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6夜目

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「はぁぁぁ……」

 盛大なため息で目が覚めた。

 浬だ。もう目を開けなくてもわかる。
 いつも通りベッドの横で俺を見ているようだ。

 すると、またため息が聞こえた。

「はぁ……ユキ……怒ってたな……」

 そりゃ怒る。
 合コンは勝手に断られて、童顔で低い身長を馬鹿にされたみたいだった。

「ユキ……ごめんね。ユキの事、女だなんて思ってないよ」

 そうかよ……。

「ユキに彼女ができるのが嫌だったんだよ……」

 寝ていて良かったかも……。
 俺に彼女ができるのがなんで嫌なのかと問いかけなくてすむ。

「明日は普通だといいな……仲直りしたい……」

 ちょっと落ち込んでいるような浬の言葉にグッときた。絆されたっぽい。
 こんな事で許してしまいそうになる。

「ユキ……」

 ──チュッ。

 ちゃっかりキスしやがった。

「キスするのだってユキを女だと思っているからじゃない。ユキだからだよ……誰でもいいわけじゃない……」

 俺は今寝ているから、その言葉も聞かなかった事にする……。

「名前だって……僕だけの特別な呼び方をしたいんだ……」

 そんなの……みんなと同じでいいじゃんか……。

「一言も話してくれないの辛い……」

 何度も繰り返しため息が聞こえる。

 明日は……ちゃんと話すよ……。
 俺も大人気なかった……浬……ごめんな……。

「はぁぁ……今日は勃たないな……もう寝よ……」

 今日の浬は俺に何もしなかった。

 ……あ、キスされてた。

     ◆◇◆

 パチッと目が覚めた。
 浬はもう起きていて制服に着替える所だった。
 部屋着を脱いだ体に釘付けになる。
 いい体をしている……。
 筋肉がちゃんとついているのに細身だ。
 細マッチョというやつだ。
 俺も男だ。ああいう体に憧れる。

 俺って筋肉つかないんだよな。髪も猫っ毛でサラサラとうざいし、身長も低め。
 それに比べて浬はやっぱりかっこいい。
 だから余計に腹が立ったのかもしれない。

 それにしても……まだがっかりしているのか、浬の動きがゆっくりで時々ため息が聞こえる。
 可哀想になってきた。

 着替え終わった頃に声をかけた。

「かぃり……おはょぅ……」

 寝起きで声が掠れていても、浬はパッと俺の方を向いた。

「ユキ! お、おはよう!」

 俺が声をかけたのが余程嬉しかったのか、めちゃくちゃ笑顔だ。
 仲直りしたいって言っていたし、ちょっと挨拶をしただけなのに、なんでそんなに笑顔なんだ。
 ブンブンと尻尾を振る忠犬っぽい。
 なんで俺は……浬が可愛く見えるんだ……。

「ユキ……起きる?」

 遠慮がちに声をかけてくる。
 名前……相変わらずそれで呼ぶんだ。
 変わらない浬になぜだか笑ってしまう。

「一緒に朝食食べるんだろ?」
「う、うん! 食べ行こう!」

 嬉しそうな浬を見たら、昨日の夕食を一緒に食べなかった事を後悔した。
 朝食の味付けのりを、そっと浬に差し出した。

     ◆◇◆

 一時限目の授業中に教科書を開いたら、ヒラリと机の上に落ちた小さい紙の切れ端。
 なんだろうと思って見てみれば、丁寧な文字で【ごめんね】と一言書いてあった。
 それを見たらクスリと笑えた。
 浬らいし綺麗な文字だった。
 浬は、俺が怒って話してくれなかったからと、こんな風に謝ってきた。
 チラリと斜め3つ前に座る浬の背中を見たら、なんだか微笑ましい。

 そっとノートの端っこを破って【俺もごめん】と書いて半分に折った。
 それを健人からクラスメイトに頼んでこっそりと浬までリレーのように渡してもらった。
 後ろの席の人にツンツンと突かれた浬にその切れ端が渡された。

 先生が前を向いた瞬間に浬はその切れ端をそっと見て、こちらを勢い良く振り返った。
 嬉しそうに笑った顔に優しく微笑み返した。
 再び前を見た浬の背中が嬉しそうにウキウキして見えた。
 お尻にブンブンと振られる尻尾が見えるようだった。
 やっぱりワンコみたいだ。
 優しく頭を撫でてやりたいような……そんな気がした。
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