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1夜目
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俺は今、目の前の出来事に動揺している。
ここは全寮制の男子校だし、ちょっと可愛いなと思う男にドキッとする事もある。
けれど、今のこの状況に動揺するのは当たり前だと思う。
真夜中になんとも言えないセクシーな吐息が聞こえて目を覚ました。
「ふっ……はっ……」
そっと目を開ければ、寮の二段ベッドの下段で寝ていた俺の横に誰かいる。
寝起きでまだ頭がボーッとして働かない。
ベッドから少し離れた場所にある勉強机のデスクライトが点灯していて、顔がうっすら見えた。
同室の飛鳥馬浬だった。
彼は、スポーツ万能、成績優秀と誰もが憧れる爽やかイケメンだった。
そのイケメンが!
ベッドの横に座り込んで、俺の目の前で自分のモノを扱いているように見える。
その衝撃と言ったら半端ない。
脳が一気に覚醒した。
あの浬が……という他にない。
気持ち良さそうに眉根を寄せて、頬をほんのり赤く染めて、こっちを見ているような気がする。
真っ黒な前髪がサラリと揺れた。
さっきからたまに聞こえる吐息が浬の口からこぼれる。
俺が起きた事にはまだ気付いていないみたいだ。
そっと目を閉じて、俺は起きていないんだと自分に言い聞かせる。
なんで俺を見ながらやってんだ……。
これは夢……。
俺が寝ている間に見ている夢だ。
浬がこんな事をするはずがない。
そうだ! 夢だ夢!
「ユキ……」
俺の名前を呼ぶな……。
◆◇◆
「ユキ……ユキ! 起きて! 遅刻するよ!」
目を開ければ、浬がいた。
夏服を綺麗に着ていて、昨日の色気があった人とは別人だった。
「……俺は雪彦だ。そう呼ぶなって言ってんだろぅ……ふわぁぁ……」
あくびをしながら、ベッドから出る。
よく寝れた気がしない。
時計を確認して目が覚めた。
「浬! なんでもっと早く起こさねぇんだ!」
「起こしたよ! 起きなかったのはユキだよ!」
「そう呼ぶな!」
女みたいな気がして落ち着かない。
何度言っても直さない。
バタバタと慌てて顔を洗って歯を磨く。
ふと昨日の浬を思い出したけれど、さっきの浬はいつも通りだった。
やっぱり夢だったんだとホッとした。
「ユキ、僕は先に行くから」
「あー! 卑怯者ー!」
「起きないのが悪いんだよ!」
浬は俺を置いて先に行ってしまった。
寮から5分という時間で校舎まで猛ダッシュだ。
はぁはぁと呼吸を整えながら、自分の机に突っ伏した。
「どうにか間に合った……」
「雪彦、もう少しで遅刻だったな!」
俺の前の席の健人が面白そうに笑う。
「浬のやつ……俺を置いていった……」
「そりゃそうだろ。浬が遅刻なんてあり得ないからな」
「ちくしょう……」
担任が教室に入ってきた。
今日も一日が始まる。
◆◇◆
「腹減ったなぁ……」
一時限目が終わって再び机に突っ伏す。
朝寝坊したせいで朝食を食べ損ねた。
すると、目の前に置かれたあんぱん。
思わずガシッと掴み取る。
「朝食、食べなかったからね」
パッと見上げれば、クスクスと笑う浬がいた。
もしかして、俺を置いて行ったのは、これを買ってきてくれる為だったんじゃ⁉︎
「浬……」
胸にジーンと響く。
普段の浬はこうやって優しい。
「ユキのお腹の音が僕のところまで聞こえるからね」
「ははっ。違いない」
浬の言葉に健人が笑う。
「そんなに鳴ってない!」
揶揄われた。
ちょっと浬の優しさに感動したのになんだよ……そう思いながらもありがたい。
あんぱんは遠慮なくいただいた。
ここは全寮制の男子校だし、ちょっと可愛いなと思う男にドキッとする事もある。
けれど、今のこの状況に動揺するのは当たり前だと思う。
真夜中になんとも言えないセクシーな吐息が聞こえて目を覚ました。
「ふっ……はっ……」
そっと目を開ければ、寮の二段ベッドの下段で寝ていた俺の横に誰かいる。
寝起きでまだ頭がボーッとして働かない。
ベッドから少し離れた場所にある勉強机のデスクライトが点灯していて、顔がうっすら見えた。
同室の飛鳥馬浬だった。
彼は、スポーツ万能、成績優秀と誰もが憧れる爽やかイケメンだった。
そのイケメンが!
ベッドの横に座り込んで、俺の目の前で自分のモノを扱いているように見える。
その衝撃と言ったら半端ない。
脳が一気に覚醒した。
あの浬が……という他にない。
気持ち良さそうに眉根を寄せて、頬をほんのり赤く染めて、こっちを見ているような気がする。
真っ黒な前髪がサラリと揺れた。
さっきからたまに聞こえる吐息が浬の口からこぼれる。
俺が起きた事にはまだ気付いていないみたいだ。
そっと目を閉じて、俺は起きていないんだと自分に言い聞かせる。
なんで俺を見ながらやってんだ……。
これは夢……。
俺が寝ている間に見ている夢だ。
浬がこんな事をするはずがない。
そうだ! 夢だ夢!
「ユキ……」
俺の名前を呼ぶな……。
◆◇◆
「ユキ……ユキ! 起きて! 遅刻するよ!」
目を開ければ、浬がいた。
夏服を綺麗に着ていて、昨日の色気があった人とは別人だった。
「……俺は雪彦だ。そう呼ぶなって言ってんだろぅ……ふわぁぁ……」
あくびをしながら、ベッドから出る。
よく寝れた気がしない。
時計を確認して目が覚めた。
「浬! なんでもっと早く起こさねぇんだ!」
「起こしたよ! 起きなかったのはユキだよ!」
「そう呼ぶな!」
女みたいな気がして落ち着かない。
何度言っても直さない。
バタバタと慌てて顔を洗って歯を磨く。
ふと昨日の浬を思い出したけれど、さっきの浬はいつも通りだった。
やっぱり夢だったんだとホッとした。
「ユキ、僕は先に行くから」
「あー! 卑怯者ー!」
「起きないのが悪いんだよ!」
浬は俺を置いて先に行ってしまった。
寮から5分という時間で校舎まで猛ダッシュだ。
はぁはぁと呼吸を整えながら、自分の机に突っ伏した。
「どうにか間に合った……」
「雪彦、もう少しで遅刻だったな!」
俺の前の席の健人が面白そうに笑う。
「浬のやつ……俺を置いていった……」
「そりゃそうだろ。浬が遅刻なんてあり得ないからな」
「ちくしょう……」
担任が教室に入ってきた。
今日も一日が始まる。
◆◇◆
「腹減ったなぁ……」
一時限目が終わって再び机に突っ伏す。
朝寝坊したせいで朝食を食べ損ねた。
すると、目の前に置かれたあんぱん。
思わずガシッと掴み取る。
「朝食、食べなかったからね」
パッと見上げれば、クスクスと笑う浬がいた。
もしかして、俺を置いて行ったのは、これを買ってきてくれる為だったんじゃ⁉︎
「浬……」
胸にジーンと響く。
普段の浬はこうやって優しい。
「ユキのお腹の音が僕のところまで聞こえるからね」
「ははっ。違いない」
浬の言葉に健人が笑う。
「そんなに鳴ってない!」
揶揄われた。
ちょっと浬の優しさに感動したのになんだよ……そう思いながらもありがたい。
あんぱんは遠慮なくいただいた。
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