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少し世界を知った
人間界はコワイ? ①
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俺はフォウレのイタズラの時よりも大きくなった。
ラヴィアスは俺が大きくなる事を良く思っていないと思う。
その証拠にお風呂はもう随分前から一緒に入らなくなった。
そして、この前から一緒に寝る事も無くなった。
部屋の外に出るなと言われた時は、ラヴィアスがいなくて不安で寝れなかったけれど、今はそうでもない。
もう諦めてしまっている自分がいる。
抱きしめられる事もなくなった……。
この頃、俺の事が必要なくなるのではないかとすごく怖い……。
捨てられたくない……。
そんな中でフォウレから薬が出来たと言われた。
フォウレの部屋に連れて行ってもらって椅子に座れば、小さい小瓶を机の上に置いた。
「リディオ、これだよ」
そう言いながら、俺の髪をサラサラといじる。
フォウレは髪をいじるのが好きみたいだから、そのままにしてあげる。
机の上に置かれた小瓶を手に取って見る。
薄口のしょうゆみたいな色をしていた。
「髪の色は、僕の髪をベースにしたから、僕とお揃い」
「フォウレ! ありがとう! どれくらいで元に戻る?」
「その一回分の効力は半日程度だよ。人間界に行くときは、予備としてもう一本持って行くといい」
「わかった」
これで人間界に行ける。
ワクワクと胸が躍る。
「一人で行ってはダメだよ。僕がついて行きたいけれど、僕は人に化けられないんだ。今度人間になる薬でも作ろうかな」
そこでハッと気付く。
フォウレの言った通り、一緒に行く人決めてもらわないとだ。
「ラヴィアスに相談してみる」
「じゃあ、ラヴィアス様の所に行こうか」
フォウレと一緒に、ラヴィアスの執務室へ向かった。
ラヴィアスは俺を見て不思議そうにする。
「リディオ。どうした?」
「俺、人間界に行ってみたいんだ。だから、付いてきてくれる人いないかな?」
「人間界だって? その髪の色じゃ無理だろう」
「フォウレに、髪の色を変える薬を作ってもらったの」
「いつの間にそんなものを……」
ラヴィアスは顎に手を当てて考え込む。
「それなら、私が一緒に行ってあげますよ」
「本当⁉︎」
ユルがニコニコしながら、そう言ってくれてとても嬉しい。
「行かないなんて言ってない。私も行く」
「おや? 私とリディオだけでもいいんですよ?」
「私も行く!」
ラヴィアスも一緒に来てくれるらしい。その事にホッとした。
日付を決めて、一緒に人間界へ行くことになった。
◆◇◆
当日は楽しみで遠足前の子供みたいになっていた。
ラヴィアスとユルは、国境付近で人間になる。
ラヴィアスは幻影魔法で髪の色を変えるだけで、ユルは何もしなくて平気。
ラヴィアスの髪色がグレーになった! カッコいいからグレーも似合う。
俺はしょうゆ色をした小瓶を一気に飲み干した。
お吸い物みたいな味がして不味くはなかった。
体に変化はない。
「ラヴィアス、ユル、俺の髪変わった?」
「おや……まぁ……」
「フォウレ……」
「え? 何? どうなっているの?」
自分じゃわからない。鏡持ってくれば良かった。
「フォウレの髪色になっていますよ(それと……香りも……随分と強く香りますね)」
「チッ……」
「ねぇ、大丈夫なの?」
自分の髪の端っこを前に持ってきて見れば、フォウレと同じ薄い金色になっていた。
金髪になっているって事だよね⁉︎
「リディオ、人間に見えるから大丈夫です。ね、ラヴィアス様(ほら、笑顔ですよ笑顔)」
「ああ……」
「本当? 良かった」
ホッとしたけれど、なぜだかラヴィアスは不機嫌そうだった。
◆◇◆
人間界は、あおい空と白い雲、なんと言っても街は食べ物の露天が出ていて賑わっていた。
た、楽しい~!
武器屋に防具屋、宿屋に道具屋に食事処。RPGで見る店が並んでいる。
遠くに見える城! あの城に王様がいて、勇者を任命するらしい。
この世界の勇者はいっぱいいる。職業も色々あるそうだ。
歩いている人も勇者みたいな格好していたり、鎧を着ていたり、ローブを来てる人もいる。魔法使いっぽい!
そんな事を考えながら歩いていれば、不意に声を掛けられた。
「君! 稀にみる美人だね! この魔物の骨付き肉買ってかない⁉︎」
「え⁉︎ 俺⁉︎」
「そうだよ! 君以外に誰がいるのさ! 一緒の二人も男前だねぇ!」
「また今度お願いします」
ユルが笑顔で断った。
二人がカッコいいのは認めるけれど、俺はどうなんだろう。
赤ん坊の頃は将来カッコよくなるとか思っていたけれど、ラヴィアスは今の俺をよく思っていないから自信ない……。
「リディオ。どこに行きたいんだ?」
「あ……決めてない」
気にしないようにして考える。
人間界がちょっと見たいと思っていただけだったから何も思い浮かばない。
「それなら、食材屋でイチゴを買うか?」
「うん!」
嬉しくてラヴィアスに笑顔を向けたら顔を逸らされた……。
先に歩いて行ってしまう。
「(フォウレの香りがするからって、まったく……)では、行きましょうか」
「うん……」
ユルが笑顔を向けてくれたので笑顔を作った。
食材屋に向かっている最中は、ラヴィアスの背中ばかり見ていた。
「ラヴィアス様、リディオが可哀想です。手ぐらい繋いであげたらどうですか? 迷子にでもなったら大変です」
「無理だ……」
「なら、私が手を繋いで歩きますよ!」
「ダメだ」
「だったら──」
俺の前で二人で何か話しているけれど、よく聞こえない。
初めての人間界は少し切ない……。
すると、ガシッと誰かに腕を掴まれた。
驚いて叫ぼうとしたら誰かの手で口も塞がれた。
羽交い締めにされて、そのままズルズルと路地裏に引きずり込まれてしまった。
あっという間の出来事でパニックだ。
バタバタと暴れてもびくともしない。
路地裏は、賑わっていた表通りと違って薄暗かった。
仲間だと思われる男の人達に囲まれる。
怖い……震えてくる。
一番偉そうな人が近付いてきた。
「上玉だなぁ! これは高く売れるぞ」
「ずっと目をつけていたんですよ。連れがいましたけど、上手く連れてこれました。こんな美人、放って置けませんよね」
いやらしい笑い声が響く。
「連れてけ」
この人達……人攫いだ。
まさかの展開に頭が追いついてこない。
人間界……コワイ……。
ラヴィアスは俺が大きくなる事を良く思っていないと思う。
その証拠にお風呂はもう随分前から一緒に入らなくなった。
そして、この前から一緒に寝る事も無くなった。
部屋の外に出るなと言われた時は、ラヴィアスがいなくて不安で寝れなかったけれど、今はそうでもない。
もう諦めてしまっている自分がいる。
抱きしめられる事もなくなった……。
この頃、俺の事が必要なくなるのではないかとすごく怖い……。
捨てられたくない……。
そんな中でフォウレから薬が出来たと言われた。
フォウレの部屋に連れて行ってもらって椅子に座れば、小さい小瓶を机の上に置いた。
「リディオ、これだよ」
そう言いながら、俺の髪をサラサラといじる。
フォウレは髪をいじるのが好きみたいだから、そのままにしてあげる。
机の上に置かれた小瓶を手に取って見る。
薄口のしょうゆみたいな色をしていた。
「髪の色は、僕の髪をベースにしたから、僕とお揃い」
「フォウレ! ありがとう! どれくらいで元に戻る?」
「その一回分の効力は半日程度だよ。人間界に行くときは、予備としてもう一本持って行くといい」
「わかった」
これで人間界に行ける。
ワクワクと胸が躍る。
「一人で行ってはダメだよ。僕がついて行きたいけれど、僕は人に化けられないんだ。今度人間になる薬でも作ろうかな」
そこでハッと気付く。
フォウレの言った通り、一緒に行く人決めてもらわないとだ。
「ラヴィアスに相談してみる」
「じゃあ、ラヴィアス様の所に行こうか」
フォウレと一緒に、ラヴィアスの執務室へ向かった。
ラヴィアスは俺を見て不思議そうにする。
「リディオ。どうした?」
「俺、人間界に行ってみたいんだ。だから、付いてきてくれる人いないかな?」
「人間界だって? その髪の色じゃ無理だろう」
「フォウレに、髪の色を変える薬を作ってもらったの」
「いつの間にそんなものを……」
ラヴィアスは顎に手を当てて考え込む。
「それなら、私が一緒に行ってあげますよ」
「本当⁉︎」
ユルがニコニコしながら、そう言ってくれてとても嬉しい。
「行かないなんて言ってない。私も行く」
「おや? 私とリディオだけでもいいんですよ?」
「私も行く!」
ラヴィアスも一緒に来てくれるらしい。その事にホッとした。
日付を決めて、一緒に人間界へ行くことになった。
◆◇◆
当日は楽しみで遠足前の子供みたいになっていた。
ラヴィアスとユルは、国境付近で人間になる。
ラヴィアスは幻影魔法で髪の色を変えるだけで、ユルは何もしなくて平気。
ラヴィアスの髪色がグレーになった! カッコいいからグレーも似合う。
俺はしょうゆ色をした小瓶を一気に飲み干した。
お吸い物みたいな味がして不味くはなかった。
体に変化はない。
「ラヴィアス、ユル、俺の髪変わった?」
「おや……まぁ……」
「フォウレ……」
「え? 何? どうなっているの?」
自分じゃわからない。鏡持ってくれば良かった。
「フォウレの髪色になっていますよ(それと……香りも……随分と強く香りますね)」
「チッ……」
「ねぇ、大丈夫なの?」
自分の髪の端っこを前に持ってきて見れば、フォウレと同じ薄い金色になっていた。
金髪になっているって事だよね⁉︎
「リディオ、人間に見えるから大丈夫です。ね、ラヴィアス様(ほら、笑顔ですよ笑顔)」
「ああ……」
「本当? 良かった」
ホッとしたけれど、なぜだかラヴィアスは不機嫌そうだった。
◆◇◆
人間界は、あおい空と白い雲、なんと言っても街は食べ物の露天が出ていて賑わっていた。
た、楽しい~!
武器屋に防具屋、宿屋に道具屋に食事処。RPGで見る店が並んでいる。
遠くに見える城! あの城に王様がいて、勇者を任命するらしい。
この世界の勇者はいっぱいいる。職業も色々あるそうだ。
歩いている人も勇者みたいな格好していたり、鎧を着ていたり、ローブを来てる人もいる。魔法使いっぽい!
そんな事を考えながら歩いていれば、不意に声を掛けられた。
「君! 稀にみる美人だね! この魔物の骨付き肉買ってかない⁉︎」
「え⁉︎ 俺⁉︎」
「そうだよ! 君以外に誰がいるのさ! 一緒の二人も男前だねぇ!」
「また今度お願いします」
ユルが笑顔で断った。
二人がカッコいいのは認めるけれど、俺はどうなんだろう。
赤ん坊の頃は将来カッコよくなるとか思っていたけれど、ラヴィアスは今の俺をよく思っていないから自信ない……。
「リディオ。どこに行きたいんだ?」
「あ……決めてない」
気にしないようにして考える。
人間界がちょっと見たいと思っていただけだったから何も思い浮かばない。
「それなら、食材屋でイチゴを買うか?」
「うん!」
嬉しくてラヴィアスに笑顔を向けたら顔を逸らされた……。
先に歩いて行ってしまう。
「(フォウレの香りがするからって、まったく……)では、行きましょうか」
「うん……」
ユルが笑顔を向けてくれたので笑顔を作った。
食材屋に向かっている最中は、ラヴィアスの背中ばかり見ていた。
「ラヴィアス様、リディオが可哀想です。手ぐらい繋いであげたらどうですか? 迷子にでもなったら大変です」
「無理だ……」
「なら、私が手を繋いで歩きますよ!」
「ダメだ」
「だったら──」
俺の前で二人で何か話しているけれど、よく聞こえない。
初めての人間界は少し切ない……。
すると、ガシッと誰かに腕を掴まれた。
驚いて叫ぼうとしたら誰かの手で口も塞がれた。
羽交い締めにされて、そのままズルズルと路地裏に引きずり込まれてしまった。
あっという間の出来事でパニックだ。
バタバタと暴れてもびくともしない。
路地裏は、賑わっていた表通りと違って薄暗かった。
仲間だと思われる男の人達に囲まれる。
怖い……震えてくる。
一番偉そうな人が近付いてきた。
「上玉だなぁ! これは高く売れるぞ」
「ずっと目をつけていたんですよ。連れがいましたけど、上手く連れてこれました。こんな美人、放って置けませんよね」
いやらしい笑い声が響く。
「連れてけ」
この人達……人攫いだ。
まさかの展開に頭が追いついてこない。
人間界……コワイ……。
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