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少し世界を知った

一緒に寝てやる

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 目が覚めたら、心配そうなラヴィアスの顔だった。

「リディオ。起きたか?」
「うん……りゃび……おかえりなしゃい……」

 ラヴィアスってまだうまく言えなくて、りゃびってなる。
 ユシリスもゆしゅ。シャールちゃんはしゃーりゅちゃん。ユルはゆりゅ。フォウレはふぉーだ。
 ちょっと恥ずかしいよね。

「背中はどうだ?」
「いたくにゃいよ……」

 フォウレの薬が効いたみたいだ。

「すまなかったな……」

 ラヴィアスが謝ることじゃないのに……。

「あやまりゃないで……ゆしゅもおこりゃないであげてね」
「ああ……」

 そこで、シャールちゃんがご飯を持ってきてくれた。
 ラヴィアスは俺の体をそっと起こして、野菜のスープを受け取って俺にあーんしてくれる。

 もくもぐ……このスープ美味しい。

「美味しいか?」
「うん!」

 狼男達に拒否された後だからか、優しく笑うラヴィアスを見て胸の奥がジーンとする。
 こういうの……幸せって言うんじゃないのかな……?
 魔族の人達に認めてもらえないのは悲しいけれど、俺はラヴィアスやユル達が側にいてくれれば幸せだ。

「えへへ。りゃび……」
「なんだ? ほら、あーんしろ」

 あーん。もぐもぐ……ご飯も美味しい。

「ありあと……」

 ラヴィアス……俺と家族になってくれてありがとう。
 俺と一緒にいてくれて……ありがとう。

「ふふっ。そんなにご飯が美味しいか?」
「──うん!」

 ご飯を食べ終わったら、ぶどうの皮を剥いてくれる。

「ほら、デザートだ」

 ラヴィアスの綺麗な指からパクリとぶどうを食べた。

 もぐもぐ……ぶどうも美味しいな。

 なんて思っていれば、ラヴィアスはぶどうの汁が付いた自分の親指をペロリと舐めた。
 妖艶という言葉がすごく似合った。

     ◆◇◆

 それは、背中の怪我も良くなったある日の事。

「今日から一緒に寝てやる」
「え?」

 寝るためにベッドに入ったら、ラヴィアスが黒のパジャマ姿で枕を抱えてやってきた。
 ラヴィアスもパジャマなんだ……マイ枕持ってきたんだね。なんとも可愛い姿に笑いそうになる。
 ラヴィアスはそのままにベッドに入ってきた。

「寝ている間も側にいないと落ち着かない……」

 眉根を寄せたラヴィアスの顔に申し訳なくなる。
 そんなに心配かけてしまったのかと思う。

「いっしょにねよーね」

 そう言ってラヴィアスに近付けば、ギュッと胸に抱き寄せられた。
 いつも抱っこされているので全然抵抗なかった。
 寝るのもユシリスとは良く一緒にお昼寝しているし、誰かしらのおんぶで寝る事はよくあったので問題ない。
 むしろ、トクントクンと鳴るラヴィアスの心臓の音が心地いい。
 段々と眠くなってきた。

「リディオ、眠くなったなら寝ろ。おやすみ」
「おやしゅみなしゃい……」

 その日から、ラヴィアスは俺と一緒に寝るようになった。
 先に寝ていてもいつの間にかベッドの中にいる。
 それが当たり前になって行った。

     ◆◇◆

 そしてまたある日。

「それじゃ、一緒に風呂に入るぞ」

 風呂?
 そんな疑問を感じながらもご飯を食べ終わると、抱っこされて浴室へ連れてかれた。

 いつもお風呂はシャールちゃんが入れてくれるけれど、今日はラヴィアスらしい。

 ラヴィアスは俺の服を脱がした。
 前世の記憶があるから少し恥ずかしいけれど、最初だけだった。
 まだ3歳だし、男同士だ。恥ずかしがる事もない。

 ラヴィアスも服を脱いだ。
 ラヴィアスの裸を見て驚く。
 彫刻みたいな綺麗な裸!
 その……大事な所、人間と同じの付いてた。それも立派なの。
 あまり見ないようにと思っても3歳の目線はその辺なんだから……隠して。

 そんなこんなで一緒に風呂へ。

 頭をわしゃわしゃ洗われた。

「リディオ。おめめぎゅーだぞ」

 クールっぽいラヴィアスからそんな言葉が出てきて面白い。

「ぎゅー」

 目をギュッと瞑れば上からジャバーッとお湯を掛けられる。
 それを二、三回されれば頭は綺麗になった。

「ごしごしは自分でできるんだよな?」
「あい!」

 任せて下さい!
 スポンジを泡立てて綺麗に全身を洗う。
 ラヴィアスはその間に頭を洗っていた。

「よし。ごしごし出来たな」
「あい!」

 キリッとした顔を向ければ、ラヴィアスはジャバーッとお湯で流してくれた。
 俺を広ーい湯船に入れて、今度は自分の体を洗い始めた。
 
 俺はまだ身長が低いので、湯船には立ったままでちょうどいい。掴まり立ちはお手の物です。
 体を洗い終わったラヴィアスは一緒に湯船に浸かった。

「背中は大丈夫か?」
「らいじょうぶよ」
「なら良かった」

 優しく微笑むラヴィアスにニコニコ顔を返す。

「肩まで浸かれ。10数えたら出よう。せぇの──」

 一緒に数えてくれるらしい。

「いーち、にーい、さーん……」
「いーちゅ、にーい、しゃーん……」

 俺達の数を数える声が重なる。
 こういうところパパっぽい気がする。
 なんだかくすぐったい。
 
 そのまま二人で10数えてお風呂を出た。

「ほら、タオルでわしゃわしゃしてやる」
「あい!」

 柔らかいタオルでわしゃわしゃやられるのは気持ちいい。
 着替えもしてくれて、ラヴィアスと一緒に部屋に戻ってきて就寝だ。

 その日から、ラヴィアスが手の空いている時はお風呂に入れてくれるようになった。

 なんだか俺と一緒にいてくれる時間を作ろうとしているような気がしてとても嬉しかった。
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