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入学後
お見舞い
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グレンをアティバに引き渡すと、エーベルトとケフィンは、疲れたと言って自分の部屋に戻って行った。
リンゼイは安静にしていれば大丈夫だとトマス先生から聞いた。
他の同級生や先生方はもう休んでいた。
「リンゼイ先生の所へ行くんだろう?」
メルフィスが聞いてくる。
「はい。行ってきます」
「俺も部屋に戻ってるな……」
「メルフィス、僕の事止めてくれてありがとうございました。みんなと一緒に卒業できなくなるところでした」
「いいんだ……」
メルフィスが微笑む。
メルフィス達がいて本当に良かった。
エルドは自由奔放で何にも縛られなかった。
そんな俺が、友人に言われて思いとどまるなんて笑ってしまう。
ディノとエルドは同じだけれど──違う。
メルフィスに見送られてリンゼイのいる部屋に行った。
部屋に入れば、ベッドに横になっているリンゼイを見て胸が痛い。
リンゼイの横に行って青白い顔をじっと見つめる。
「リンゼイ……早く起きろよな」
そっと手を握った。
すると、握り返してきて驚く。
「ふふっ。もう起きてる」
俺を見て笑った……!
「ば、ばかやろう~……!」
気が抜けて泣き出してしまいそうなのを堪えて、リンゼイの手をぎゅうぎゅうと握る。
「魔力不足だった所に怪我したから、余計に力尽きてしまっただけだよ。ディノが無事で良かった」
それでもひどい怪我だった。
笑顔を向けられて心底安心した。
「俺の事よりお前だろ……っ! 俺は、怪我したって治せるんだ! 庇う必要なんかない!」
「わからないじゃないか……そのまま死んじゃうかも……そんなのは……もう嫌だ……」
リンゼイにとってエルドが死んだ事はそれほど大きな出来事だったんだ。
「リンゼイ……今回の事でよくわかった。エルドは間違えていた。お前の事、独りにしてごめんな」
「ディノ……」
リンゼイが死んだらと思っただけで、グレンを殺そうと思うほど心は黒く染まっていた。
残されるのは辛いのだと心底思い知った。
わかっているようでわかっていなかった。
リンゼイは、エルドを想ってこんな気持ちを味わっていたのかと思うと申し訳ない。
それと同時にリンゼイが生きていて良かったと思う。
「約束する。もう二度とお前を独りにしない。だから、一緒に生きよう。卒業したら一緒に暮らして欲しいんだ。ずっと一緒にいたい……」
リンゼイは、くしゃりと顔を歪ませた。
「うん……ディノが卒業するまで待ってるから……」
泣きそうに笑うリンゼイが愛おしい。
「体の具合は?」
「悪くないよ」
「本当か?」
前屈みになって、リンゼイのおでこに自分のおでこをコツンと当てた。
やっぱり熱い。怪我をしたせいで熱があるみたいだ。
「魔力は戻ったのか?」
「少しね」
「俺の……やる……」
「え──んっ」
そのまま唇を塞いで魔力を移す。
俺自身もそこそこ魔力を使ったので、それほど多くは移せなかった。
少しして唇を離して間近で見つめ合えば、クスクスと笑い合った。
「ディノの魔力……あったかい気がする」
「そんなわけないだろ……」
「すぐに元気になれそうだよ」
魔力で怪我も治せたらいいのに……。
「背中辛いだろ? 俺も休むから、リンゼイも休めよな」
「そうだね。ディノ、お疲れ様。おやすみ」
「おやすみ──」
微笑むリンゼイに今度はおやすみのキスを贈った。
リンゼイは安静にしていれば大丈夫だとトマス先生から聞いた。
他の同級生や先生方はもう休んでいた。
「リンゼイ先生の所へ行くんだろう?」
メルフィスが聞いてくる。
「はい。行ってきます」
「俺も部屋に戻ってるな……」
「メルフィス、僕の事止めてくれてありがとうございました。みんなと一緒に卒業できなくなるところでした」
「いいんだ……」
メルフィスが微笑む。
メルフィス達がいて本当に良かった。
エルドは自由奔放で何にも縛られなかった。
そんな俺が、友人に言われて思いとどまるなんて笑ってしまう。
ディノとエルドは同じだけれど──違う。
メルフィスに見送られてリンゼイのいる部屋に行った。
部屋に入れば、ベッドに横になっているリンゼイを見て胸が痛い。
リンゼイの横に行って青白い顔をじっと見つめる。
「リンゼイ……早く起きろよな」
そっと手を握った。
すると、握り返してきて驚く。
「ふふっ。もう起きてる」
俺を見て笑った……!
「ば、ばかやろう~……!」
気が抜けて泣き出してしまいそうなのを堪えて、リンゼイの手をぎゅうぎゅうと握る。
「魔力不足だった所に怪我したから、余計に力尽きてしまっただけだよ。ディノが無事で良かった」
それでもひどい怪我だった。
笑顔を向けられて心底安心した。
「俺の事よりお前だろ……っ! 俺は、怪我したって治せるんだ! 庇う必要なんかない!」
「わからないじゃないか……そのまま死んじゃうかも……そんなのは……もう嫌だ……」
リンゼイにとってエルドが死んだ事はそれほど大きな出来事だったんだ。
「リンゼイ……今回の事でよくわかった。エルドは間違えていた。お前の事、独りにしてごめんな」
「ディノ……」
リンゼイが死んだらと思っただけで、グレンを殺そうと思うほど心は黒く染まっていた。
残されるのは辛いのだと心底思い知った。
わかっているようでわかっていなかった。
リンゼイは、エルドを想ってこんな気持ちを味わっていたのかと思うと申し訳ない。
それと同時にリンゼイが生きていて良かったと思う。
「約束する。もう二度とお前を独りにしない。だから、一緒に生きよう。卒業したら一緒に暮らして欲しいんだ。ずっと一緒にいたい……」
リンゼイは、くしゃりと顔を歪ませた。
「うん……ディノが卒業するまで待ってるから……」
泣きそうに笑うリンゼイが愛おしい。
「体の具合は?」
「悪くないよ」
「本当か?」
前屈みになって、リンゼイのおでこに自分のおでこをコツンと当てた。
やっぱり熱い。怪我をしたせいで熱があるみたいだ。
「魔力は戻ったのか?」
「少しね」
「俺の……やる……」
「え──んっ」
そのまま唇を塞いで魔力を移す。
俺自身もそこそこ魔力を使ったので、それほど多くは移せなかった。
少しして唇を離して間近で見つめ合えば、クスクスと笑い合った。
「ディノの魔力……あったかい気がする」
「そんなわけないだろ……」
「すぐに元気になれそうだよ」
魔力で怪我も治せたらいいのに……。
「背中辛いだろ? 俺も休むから、リンゼイも休めよな」
「そうだね。ディノ、お疲れ様。おやすみ」
「おやすみ──」
微笑むリンゼイに今度はおやすみのキスを贈った。
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