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入学後
懐かしい顔ぶれ
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二年生に進級してすぐに、俺たちは《優良》を貰うために学長室の前にいた。
ケフィンとエーベルトは緊張しているのが良くわかる。
メルフィスは、ソワソワと落ち着かない感じがした。
マベルの級友だった為に、リンゼイが俺たちと一緒に来てくれていた。
リンゼイが学長室のドアをノックして返事をもらうとドアを開けた。
学長とマベルは、立ったまま笑顔で話し込んでいて、ソファにはノイシスとルーベンスが座っていた。
あとは、護衛として控えている人が何人か……。
落ち着け──俺は今、ディノ・バスカルディ。
マベルもノイシスもルーベンスもディノの事なんて眼中にないはずだ。
俺はいつも通りに……何事もないように……振る舞えばいい。
リンゼイが俺たちの紹介をしてくれた。
最初に俺たちのところに来て、握手をしたのはマベルだ。
白髪を綺麗に肩で切り揃えている髪型は相変わらずだった。
「あの魔道具、見せてもらいました。よく出来ていましたね」
人当たりのいい笑顔も変わりはなかった。
「あ、ありがとうございます!」
ケフィンが対応してくれる。
「それで、あの魔法陣を描いたのは誰ですか?」
なんだこの誘導尋問みたいな問いかけは……。
「それは、みんなで試行錯誤して考えました」
「特定の誰か……ではないんですね」
俺だけが考えたものではない事にしようと先に話し合っていて良かった。
「あの形は珍しいですね。誰が作ったものですか?」
こいつ……怪しんでいる?
「それはちょうど良い品物が市場にあったんです」
エーベルトが答えてくれた。
「へぇ……それにしては、よくできていました。作られているような形でしたね」
みんなであははと笑って誤魔化す。
もしかしたら、魔法で作ったものだと見抜かれているのか?
でも、こちらからそれを確かめるつもりはない。
みんなに魔法陣で作った物だと言わないで欲しいと頼んでおいて良かった。
怪しんでいるという程度なら放っておいて大丈夫なはずだ。
「あれなら、一般向けに作っても需要がありそうです。《優良》を与えるだけの価値はあると思います」
ニッコリ笑顔で言われて、それ以上の追求はないようだった。ホッと胸を撫で下ろす。
次に声をかけてきたのはノイシスだ。
薄茶色の髪は綺麗で、金色の瞳が俺たちを見据える。
相変わらず、眼光は鋭い。
「メルフィス、よくやったな。私たちも嬉しい」
「はい! ノイシス兄上!」
メルフィスは嬉しそうだ。
「メルフィス、頑張ったね。僕もあの魔道具欲しいな」
「ルーベンス兄上も、ありがとうございます! できるかどうかは……みんなと話してみないとです」
ルーベンスもニコニコと嬉しそうにメルフィスに声をかけていた。
メルフィスと同じ銀色の髪と、ノイシスと同じ金色の瞳を持つ第二王子。
昔からノイシスもルーベンスもメルフィスには優しい。
この二人の目的は、やっぱりメルフィスに会いにきたので間違いなさそうだ。
「それでは、君たちに《優良》を渡すよ。学生証は持ってきたかな?」
学長の言葉で俺たちは、学生証を差し出した。
ノイシスがケフィンの前に行ってその学生証に魔法陣の刻まれた印章を押す。
ポンッと音がすると、魔法陣が形をかえて、学生証の顔写真の横に《優良》と刻まれた。
これは、偽造防止の為に魔法が掛かっていて、日付と何をして《優良》を取ったのかと、誰から与えられたものなのかが刻まれる。
順番に印章を押してもらってみんなで喜びを噛み締めた。
「じゃあ、形式的な事は終わりね」
学長……相変わらず年齢不詳で胡散臭い人だ。
これで大魔法使い。
『エルド、無気力だった君がそこまでする理由は何?』
『……金……かな。大魔法使いって肩書きはさ、国から使い切れないほどの金が出るからな』
嘘はついていない。これもオマケみたいな理由だ。
『ははっ。それで何するの?』
『魔道具を作る』
『ふふっ。誰の為に?』
『……あんたに関係ないだろ……』
クスクスと笑われたのを覚えている。
この人、どこまでわかっていたのかな……。
ケフィンとエーベルトは、ここぞとばかりに学長に質問をしだす。
ノイシスとルーベンスは、メルフィスと話している。
マベルは、リンゼイの所に行った。
それを横目でこっそりと見ていた。
「リンゼイ、エルドの命日にはどこへ行っているのですか?」
エルドの名前が出るとやっぱりドキリとする。
学長の話を聞くふりをして、二人の会話を聞いた。
「──なぜ?」
「あなたに会いに学院に来たのですが、いなかったので……」
「何度も言うけど、私が魔道具について知っている事はないよ」
「僕はすっかり嫌われたみたいですね」
マベルがクスクスと笑えば、リンゼイはため息をつく。
話の内容からすると、リンゼイはエルドの作った魔道具について色々と聞かれているようだ。
リンゼイがエルドの魔道具だと言わなかったのは、マベルの魔道具として世に出しているから……か。
そんな所を律儀に守ってやるなんてリンゼイって本当に真面目……。
もしかしたら、回収した魔道具で使い方がわからない物があるのかもしれない。
リンゼイが知っているはずはない。エルドの魔道具について話した事はない。
それよりも──リンゼイは、エルドの命日にどこへ行っているんだ?
もしかしたら……エルドの家に?
やばい……嬉しい……。
「ねぇ、リンゼイ。君とエルドとの思い出は、君に何をしてくれましたか?」
「…………」
「君は、いつまでエルドの事を想って不毛な恋を続けるのです?」
リンゼイが苦しそうな顔をしたのがわかって眉間に皺を寄せる。
マベルのこういう人の感情を逆撫でするような物言いは大嫌いだったな。
「リンゼイ、たまには僕と二人きりで会ってくれませんか? 僕はあなたと話したくてここに来たんです」
リンゼイが会いたがらないから、今日の事を利用したって事か。
マベルの目的は、リンゼイだったのか──。
「私から話すことはないよ……」
「あなたから城へ来てください。僕はいつでも待っています。悪いようにはしませんから──」
「…………」
マベルがリンゼイの手を取ろうとした。
「絶対ダメだっ!」
気付いた時には思わず叫んでいて、リンゼイの手をマベルより先に掴んでしまっていた。
ケフィンとエーベルトは緊張しているのが良くわかる。
メルフィスは、ソワソワと落ち着かない感じがした。
マベルの級友だった為に、リンゼイが俺たちと一緒に来てくれていた。
リンゼイが学長室のドアをノックして返事をもらうとドアを開けた。
学長とマベルは、立ったまま笑顔で話し込んでいて、ソファにはノイシスとルーベンスが座っていた。
あとは、護衛として控えている人が何人か……。
落ち着け──俺は今、ディノ・バスカルディ。
マベルもノイシスもルーベンスもディノの事なんて眼中にないはずだ。
俺はいつも通りに……何事もないように……振る舞えばいい。
リンゼイが俺たちの紹介をしてくれた。
最初に俺たちのところに来て、握手をしたのはマベルだ。
白髪を綺麗に肩で切り揃えている髪型は相変わらずだった。
「あの魔道具、見せてもらいました。よく出来ていましたね」
人当たりのいい笑顔も変わりはなかった。
「あ、ありがとうございます!」
ケフィンが対応してくれる。
「それで、あの魔法陣を描いたのは誰ですか?」
なんだこの誘導尋問みたいな問いかけは……。
「それは、みんなで試行錯誤して考えました」
「特定の誰か……ではないんですね」
俺だけが考えたものではない事にしようと先に話し合っていて良かった。
「あの形は珍しいですね。誰が作ったものですか?」
こいつ……怪しんでいる?
「それはちょうど良い品物が市場にあったんです」
エーベルトが答えてくれた。
「へぇ……それにしては、よくできていました。作られているような形でしたね」
みんなであははと笑って誤魔化す。
もしかしたら、魔法で作ったものだと見抜かれているのか?
でも、こちらからそれを確かめるつもりはない。
みんなに魔法陣で作った物だと言わないで欲しいと頼んでおいて良かった。
怪しんでいるという程度なら放っておいて大丈夫なはずだ。
「あれなら、一般向けに作っても需要がありそうです。《優良》を与えるだけの価値はあると思います」
ニッコリ笑顔で言われて、それ以上の追求はないようだった。ホッと胸を撫で下ろす。
次に声をかけてきたのはノイシスだ。
薄茶色の髪は綺麗で、金色の瞳が俺たちを見据える。
相変わらず、眼光は鋭い。
「メルフィス、よくやったな。私たちも嬉しい」
「はい! ノイシス兄上!」
メルフィスは嬉しそうだ。
「メルフィス、頑張ったね。僕もあの魔道具欲しいな」
「ルーベンス兄上も、ありがとうございます! できるかどうかは……みんなと話してみないとです」
ルーベンスもニコニコと嬉しそうにメルフィスに声をかけていた。
メルフィスと同じ銀色の髪と、ノイシスと同じ金色の瞳を持つ第二王子。
昔からノイシスもルーベンスもメルフィスには優しい。
この二人の目的は、やっぱりメルフィスに会いにきたので間違いなさそうだ。
「それでは、君たちに《優良》を渡すよ。学生証は持ってきたかな?」
学長の言葉で俺たちは、学生証を差し出した。
ノイシスがケフィンの前に行ってその学生証に魔法陣の刻まれた印章を押す。
ポンッと音がすると、魔法陣が形をかえて、学生証の顔写真の横に《優良》と刻まれた。
これは、偽造防止の為に魔法が掛かっていて、日付と何をして《優良》を取ったのかと、誰から与えられたものなのかが刻まれる。
順番に印章を押してもらってみんなで喜びを噛み締めた。
「じゃあ、形式的な事は終わりね」
学長……相変わらず年齢不詳で胡散臭い人だ。
これで大魔法使い。
『エルド、無気力だった君がそこまでする理由は何?』
『……金……かな。大魔法使いって肩書きはさ、国から使い切れないほどの金が出るからな』
嘘はついていない。これもオマケみたいな理由だ。
『ははっ。それで何するの?』
『魔道具を作る』
『ふふっ。誰の為に?』
『……あんたに関係ないだろ……』
クスクスと笑われたのを覚えている。
この人、どこまでわかっていたのかな……。
ケフィンとエーベルトは、ここぞとばかりに学長に質問をしだす。
ノイシスとルーベンスは、メルフィスと話している。
マベルは、リンゼイの所に行った。
それを横目でこっそりと見ていた。
「リンゼイ、エルドの命日にはどこへ行っているのですか?」
エルドの名前が出るとやっぱりドキリとする。
学長の話を聞くふりをして、二人の会話を聞いた。
「──なぜ?」
「あなたに会いに学院に来たのですが、いなかったので……」
「何度も言うけど、私が魔道具について知っている事はないよ」
「僕はすっかり嫌われたみたいですね」
マベルがクスクスと笑えば、リンゼイはため息をつく。
話の内容からすると、リンゼイはエルドの作った魔道具について色々と聞かれているようだ。
リンゼイがエルドの魔道具だと言わなかったのは、マベルの魔道具として世に出しているから……か。
そんな所を律儀に守ってやるなんてリンゼイって本当に真面目……。
もしかしたら、回収した魔道具で使い方がわからない物があるのかもしれない。
リンゼイが知っているはずはない。エルドの魔道具について話した事はない。
それよりも──リンゼイは、エルドの命日にどこへ行っているんだ?
もしかしたら……エルドの家に?
やばい……嬉しい……。
「ねぇ、リンゼイ。君とエルドとの思い出は、君に何をしてくれましたか?」
「…………」
「君は、いつまでエルドの事を想って不毛な恋を続けるのです?」
リンゼイが苦しそうな顔をしたのがわかって眉間に皺を寄せる。
マベルのこういう人の感情を逆撫でするような物言いは大嫌いだったな。
「リンゼイ、たまには僕と二人きりで会ってくれませんか? 僕はあなたと話したくてここに来たんです」
リンゼイが会いたがらないから、今日の事を利用したって事か。
マベルの目的は、リンゼイだったのか──。
「私から話すことはないよ……」
「あなたから城へ来てください。僕はいつでも待っています。悪いようにはしませんから──」
「…………」
マベルがリンゼイの手を取ろうとした。
「絶対ダメだっ!」
気付いた時には思わず叫んでいて、リンゼイの手をマベルより先に掴んでしまっていた。
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