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入学後
番外編 恐ろしいのは笑顔のあなた
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俺たちが《優良》を取ることになったのを同級生は喜んでくれた。
一部を除いて……。
「ディノも一緒に魔道具を作ったなんて信じられるか? あいつ魔法の発動は遅いし、上級魔法も中途半端だっただろ? 魔獣だって俺だったら完璧に呼べたぜ」
周りの取り巻きが頷いている。
攻撃魔法学の時に絡んできたブルーノは、俺が気に入らないらしい。ずっとそんな態度だ。
「ブルーノ、そういう悪口は本人のいない所で言ったらどうだ?」
ケフィンが庇ってくれたけれど、それってただの陰口になるだけだ。
そっちの方が意地が悪くないか?
「ケフィンなんて魔法陣学のテスト、赤点ギリだったくせに偉そうにするな」
「お前っ! ……なんで知ってんだ……?」
驚愕するところそこ? 俺はケフィンの点数に驚愕している。赤点ギリギリはまずいだろ……。
後で勉強見てやらないと。
「みんな同級生なんだ。仲良くした方がいい」
メルフィスが宥めようとした。
「俺はメルフィス様とだけ仲良くしたいんです! ディノやケフィンなんかとは全く仲良くしたくないです!」
なんて清々しいぐらい正直な男なんだ……。
メルフィスが宥めるのは逆効果のようだ。
「いや……だからみんなと……」
「メルフィス様、次は俺たちと班組みましょう」
「えっと……あの……」
「《優良》貰えるなんてさすがですよ!」
メルフィスが取り囲まれた。困っているが、俺が助けたら余計に拗れる気がするので放置だ。
「ほらほら、みんな席に着いたら? 次はベルナルド先生だから、僕は怒られたくないなぁ」
今度はエーベルトがおっとりとした口調でみんなに言った。
「お前だっておまけみたいなものだろ? 俺に指図すんな」
ブルーノは今度はエーベルトに絡む。
「眼鏡のくせして図々しいぞ」
ブルーノが眼鏡を奪ってしまった。エーベルトから怒ったオーラが出た。
俺とケフィンとメルフィスは、目を合わせると慌てて席について黙る。
「眼鏡……返してくれる?」
エーベルトは、ニッコリ笑顔で言っているが俺たちは冷気を感じていて背筋がブルッと震える。
眼鏡をしていないと笑顔にやけに迫力がある事にみんな気付いた方がいい。
その事に気付かない奴らはクスクスと笑う。
あいつらやばいぞ。
「はぁ? お前が俺にものを頼むな」
ブルーノがエーベルトの肩を押そうとした。
その瞬間にエーベルトはその腕を掴んだ。
「っ!? ──うわっ!」
ドシンッと教室中にブルーノが倒れ込んだ音が響く。
エーベルトがブルーノを背負い投げた音だった。
同級生はシーンと静まり返っている。
エーベルトは、ブルーノの手からそのまま眼鏡を奪った。
「壊れてなくて良かった」
エーベルトは、何事もなかったかのようにホッと息を吐いた。
いつも笑顔のエーベルト。普段は気の弱そうな眼鏡に見える。
滅多に怒らないが、怒るとめちゃくちゃ怖かった……。
特に眼鏡が関わると怒りやすい。眼鏡をすごく大事にしているようだった。
彼の日課は筋トレ。体が鈍るから動かしたいと言っては体術の相手をさせられる。
俺と同じような体格をしているくせに、ケフィンも身長の大きなメルフィスでさえ床に沈める。
魔法なんて使わなくても人を倒せる恐ろしいやつだ……。
きっと騎士の家系かなんかじゃないかと予想している。
「ほら、みんな、先生が来る前に早く席について?」
笑顔のエーベルトに同級生は慌てて席に座り出す。
動きがものすごく早い。
「ブルーノも、立てないなら手を貸そうか?」
自分で倒したくせに呆然としていたブルーノに笑顔で手を差し出している。恐ろしい……。
「お、お前……」
「うん?」
「いや、なんでもない……」
大人しくエーベルトの手を取ったブルーノがほんのりと頬を染めていた気がするのは……気のせいであってほしい。
この時、クラス全員の気持ちは一致した。
エーベルト・ドナフ──彼に逆らってはいけない。
一部を除いて……。
「ディノも一緒に魔道具を作ったなんて信じられるか? あいつ魔法の発動は遅いし、上級魔法も中途半端だっただろ? 魔獣だって俺だったら完璧に呼べたぜ」
周りの取り巻きが頷いている。
攻撃魔法学の時に絡んできたブルーノは、俺が気に入らないらしい。ずっとそんな態度だ。
「ブルーノ、そういう悪口は本人のいない所で言ったらどうだ?」
ケフィンが庇ってくれたけれど、それってただの陰口になるだけだ。
そっちの方が意地が悪くないか?
「ケフィンなんて魔法陣学のテスト、赤点ギリだったくせに偉そうにするな」
「お前っ! ……なんで知ってんだ……?」
驚愕するところそこ? 俺はケフィンの点数に驚愕している。赤点ギリギリはまずいだろ……。
後で勉強見てやらないと。
「みんな同級生なんだ。仲良くした方がいい」
メルフィスが宥めようとした。
「俺はメルフィス様とだけ仲良くしたいんです! ディノやケフィンなんかとは全く仲良くしたくないです!」
なんて清々しいぐらい正直な男なんだ……。
メルフィスが宥めるのは逆効果のようだ。
「いや……だからみんなと……」
「メルフィス様、次は俺たちと班組みましょう」
「えっと……あの……」
「《優良》貰えるなんてさすがですよ!」
メルフィスが取り囲まれた。困っているが、俺が助けたら余計に拗れる気がするので放置だ。
「ほらほら、みんな席に着いたら? 次はベルナルド先生だから、僕は怒られたくないなぁ」
今度はエーベルトがおっとりとした口調でみんなに言った。
「お前だっておまけみたいなものだろ? 俺に指図すんな」
ブルーノは今度はエーベルトに絡む。
「眼鏡のくせして図々しいぞ」
ブルーノが眼鏡を奪ってしまった。エーベルトから怒ったオーラが出た。
俺とケフィンとメルフィスは、目を合わせると慌てて席について黙る。
「眼鏡……返してくれる?」
エーベルトは、ニッコリ笑顔で言っているが俺たちは冷気を感じていて背筋がブルッと震える。
眼鏡をしていないと笑顔にやけに迫力がある事にみんな気付いた方がいい。
その事に気付かない奴らはクスクスと笑う。
あいつらやばいぞ。
「はぁ? お前が俺にものを頼むな」
ブルーノがエーベルトの肩を押そうとした。
その瞬間にエーベルトはその腕を掴んだ。
「っ!? ──うわっ!」
ドシンッと教室中にブルーノが倒れ込んだ音が響く。
エーベルトがブルーノを背負い投げた音だった。
同級生はシーンと静まり返っている。
エーベルトは、ブルーノの手からそのまま眼鏡を奪った。
「壊れてなくて良かった」
エーベルトは、何事もなかったかのようにホッと息を吐いた。
いつも笑顔のエーベルト。普段は気の弱そうな眼鏡に見える。
滅多に怒らないが、怒るとめちゃくちゃ怖かった……。
特に眼鏡が関わると怒りやすい。眼鏡をすごく大事にしているようだった。
彼の日課は筋トレ。体が鈍るから動かしたいと言っては体術の相手をさせられる。
俺と同じような体格をしているくせに、ケフィンも身長の大きなメルフィスでさえ床に沈める。
魔法なんて使わなくても人を倒せる恐ろしいやつだ……。
きっと騎士の家系かなんかじゃないかと予想している。
「ほら、みんな、先生が来る前に早く席について?」
笑顔のエーベルトに同級生は慌てて席に座り出す。
動きがものすごく早い。
「ブルーノも、立てないなら手を貸そうか?」
自分で倒したくせに呆然としていたブルーノに笑顔で手を差し出している。恐ろしい……。
「お、お前……」
「うん?」
「いや、なんでもない……」
大人しくエーベルトの手を取ったブルーノがほんのりと頬を染めていた気がするのは……気のせいであってほしい。
この時、クラス全員の気持ちは一致した。
エーベルト・ドナフ──彼に逆らってはいけない。
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