36 / 77
入学後
ノイシスとルーベンス
しおりを挟む
俺がエルドの時にノイシスとルーベンスに初めて会ったのは、この学院に入学してすぐだった。
四つ星の魔法使いは、王に謁見しないといけないと言われて王城に連れてかれた。
無事に謁見は終わったけれど、問題はその後だった。
二人は城の廊下で揉めていた。
二人が揉めていたというよりは、二人の取り巻きが揉めていた。
『ノイシス殿下は王太子だぞ! ノイシス殿下へ道を譲るのが当たり前だろう!』
『王妃と言っても弱小国家の王女。レイリアの王女である母を持つ、ルーベンス殿下の方が血筋は上だ』
ノイシスは王妃の子供でも、オズシロ王国という小さな国の王女だった。ルーベンスとメルフィスの母親は後から来た側室だが、レイリア王国は資源も資金も豊富な大国と言っていい国だ。
レイリアからは寄付という形の沢山の資金提供がされている。立場は側室の方が上。軽んじてはいけない状況だった。
道を譲る譲らないで揉めるとか……『めんどくさ』と思った。
俺にはどうでもいい事だ。
揉めている所を堂々と歩いて通れば、そこにいた奴らは呆気に取られて俺を見ていた。
この薄茶色の髪に金色の瞳をしたのがノイシスか……キリッとした目つきが大人っぽく見える。俺の事をジッと見てるな。
で、こっちの銀髪に金色の瞳をしたのがルーベンスね。こちらも似たような目つきでこちらを見ていた。異母兄弟だけど、目元はそっくりだな。
何食わぬ顔でその軍団を通り過ぎたところで呼び止められた。
『お、お前! 殿下方に失礼だろう!』
『あまりにも堂々と通り過ぎて見過ごす所だった!』
そのまま無視して通り過ぎようとした。
『おい! 礼儀がなってないぞ!』
ちょっとムカッとして振り向けば、注目の的だった。
俺は揉めている所を通り過ぎただけで何も悪い事はしていない。揉め事が終わるまで待つなんて馬鹿なことはしたくないし、首も突っ込みたくない。
そのまま行かせてくれればいいのに、ぎゃあぎゃあと喚くのは品がないというか何というか……。
どうするか考えていた時に、前に出てきて言葉を発したのはノイシスだった。
『お前が今日呼ばれた最年少の四つ星魔法使いか』
『四つ星? こいつが?』
ルーベンスもこちらに来て俺を品定めするように見てくる。
『その歳で四つ星だとはさぞ鼻が高いだろう?』
そう言ったのは、ノイシスだ。
こいつ俺に喧嘩売ってのんか? そう思っても相手は王子だ。
王子なんて面倒なやつは相手にしないに限る。
またなんて言おうか考えていれば、さらに言葉を続けられた。
『──城の魔法使いに興味は? 私ならすぐに雇ってやれる』
ノイシスに上から目線で言われた事でムッとした。大きなため息をついてから目を細めて腕を組み対抗する。
一応さっきまでは平和的に何て答えようか考えた。礼儀は尽くしたつもりだ。
これ以上俺がこいつらに下手に出る必要なんてないと思った。
『興味なんかあるわけねーだろ』
ざわつく周りなんて無視する。
『給料は他のやつの倍出すぞ』
『ふざけんな』
そんなもので王家の言いなりになるなんて御免だ。
周りはザワザワと不敬だとか、無礼者とかいちいちうざい。
『そうか。ならば、爵位をやろうか?』
『いらない』
『お前、魔法使いになって何がしたいんだ?』
『別に』
学院に行きながら何かできればいいと思っていた。それが、天才だと言われていつの間にか四つ星の魔法使いになってすぐに卒業だ。やりたい事なんてあるわけがない。
ルーベンスは俺たちの会話を聞いてクスクスと笑った。
『へぇ……面白いやつだねぇ。城の魔法使いじゃなくてさぁ、僕の専属にならない?』
ルーベンスもそんな事を言い出してきてマジで面倒臭い。
『ルーベンス。私が先に声を掛けた。私の専属にしたい』
『兄上は断られてたでしょ』
意味のわからない事で今度は本人たちが揉め出した。
『お前らね、俺、興味ねぇって言ったんだけど聞こえなかったのか?』
『その王子を王子とも思わない態度が気に入った。金も肩書きも興味がない所がいい』
ノイシスって本当意味わからないやつだ。
睨んでもまるで話を聞かなかった。
『君、名前は?』
ルーベンスは、興味津々という風に見てくる。
こっちも話を聞かないし、周りはザワザワとうるさいし、俺の我慢は限界を超えた。
風魔法の応用で空気を操る。
そこにいた全員の声を奪った。空気の振動を止めてこちらに伝え無くすればいいだけの簡単な魔法だ。
『…………っ』
『…………!?』
パクパクと口だけ動かすやつらをドヤ顔で見回した。
『あーうるさかった。さぁて、俺はもうここには用がないから帰ろっと。俺がこの城から出たら魔法は解除してやるよ』
笑いながらその場を去ろうとすれば、ルーベンスに腕を掴まれる。
興奮した様子で何か言っているけれど、わからないので無視して睨む。
『俺の時間は俺の為に使う。お前らの為に何かしようなんて全く思わない』
よく知りもしない王子達になんの義理があって何かしてあげようなんて思うのか。
『王家にもお前らにも小指の爪ほども興味ない』
掴まれた腕を振り払った。
『二度と声を掛けないでもらおうか』
その場にいた全員を睨んで去った。
言った通りに城を出てから魔法を解いてやった。
でも、ノイシスもルーベンスも、これで諦めたりしなかった。
四つ星の魔法使いは、王に謁見しないといけないと言われて王城に連れてかれた。
無事に謁見は終わったけれど、問題はその後だった。
二人は城の廊下で揉めていた。
二人が揉めていたというよりは、二人の取り巻きが揉めていた。
『ノイシス殿下は王太子だぞ! ノイシス殿下へ道を譲るのが当たり前だろう!』
『王妃と言っても弱小国家の王女。レイリアの王女である母を持つ、ルーベンス殿下の方が血筋は上だ』
ノイシスは王妃の子供でも、オズシロ王国という小さな国の王女だった。ルーベンスとメルフィスの母親は後から来た側室だが、レイリア王国は資源も資金も豊富な大国と言っていい国だ。
レイリアからは寄付という形の沢山の資金提供がされている。立場は側室の方が上。軽んじてはいけない状況だった。
道を譲る譲らないで揉めるとか……『めんどくさ』と思った。
俺にはどうでもいい事だ。
揉めている所を堂々と歩いて通れば、そこにいた奴らは呆気に取られて俺を見ていた。
この薄茶色の髪に金色の瞳をしたのがノイシスか……キリッとした目つきが大人っぽく見える。俺の事をジッと見てるな。
で、こっちの銀髪に金色の瞳をしたのがルーベンスね。こちらも似たような目つきでこちらを見ていた。異母兄弟だけど、目元はそっくりだな。
何食わぬ顔でその軍団を通り過ぎたところで呼び止められた。
『お、お前! 殿下方に失礼だろう!』
『あまりにも堂々と通り過ぎて見過ごす所だった!』
そのまま無視して通り過ぎようとした。
『おい! 礼儀がなってないぞ!』
ちょっとムカッとして振り向けば、注目の的だった。
俺は揉めている所を通り過ぎただけで何も悪い事はしていない。揉め事が終わるまで待つなんて馬鹿なことはしたくないし、首も突っ込みたくない。
そのまま行かせてくれればいいのに、ぎゃあぎゃあと喚くのは品がないというか何というか……。
どうするか考えていた時に、前に出てきて言葉を発したのはノイシスだった。
『お前が今日呼ばれた最年少の四つ星魔法使いか』
『四つ星? こいつが?』
ルーベンスもこちらに来て俺を品定めするように見てくる。
『その歳で四つ星だとはさぞ鼻が高いだろう?』
そう言ったのは、ノイシスだ。
こいつ俺に喧嘩売ってのんか? そう思っても相手は王子だ。
王子なんて面倒なやつは相手にしないに限る。
またなんて言おうか考えていれば、さらに言葉を続けられた。
『──城の魔法使いに興味は? 私ならすぐに雇ってやれる』
ノイシスに上から目線で言われた事でムッとした。大きなため息をついてから目を細めて腕を組み対抗する。
一応さっきまでは平和的に何て答えようか考えた。礼儀は尽くしたつもりだ。
これ以上俺がこいつらに下手に出る必要なんてないと思った。
『興味なんかあるわけねーだろ』
ざわつく周りなんて無視する。
『給料は他のやつの倍出すぞ』
『ふざけんな』
そんなもので王家の言いなりになるなんて御免だ。
周りはザワザワと不敬だとか、無礼者とかいちいちうざい。
『そうか。ならば、爵位をやろうか?』
『いらない』
『お前、魔法使いになって何がしたいんだ?』
『別に』
学院に行きながら何かできればいいと思っていた。それが、天才だと言われていつの間にか四つ星の魔法使いになってすぐに卒業だ。やりたい事なんてあるわけがない。
ルーベンスは俺たちの会話を聞いてクスクスと笑った。
『へぇ……面白いやつだねぇ。城の魔法使いじゃなくてさぁ、僕の専属にならない?』
ルーベンスもそんな事を言い出してきてマジで面倒臭い。
『ルーベンス。私が先に声を掛けた。私の専属にしたい』
『兄上は断られてたでしょ』
意味のわからない事で今度は本人たちが揉め出した。
『お前らね、俺、興味ねぇって言ったんだけど聞こえなかったのか?』
『その王子を王子とも思わない態度が気に入った。金も肩書きも興味がない所がいい』
ノイシスって本当意味わからないやつだ。
睨んでもまるで話を聞かなかった。
『君、名前は?』
ルーベンスは、興味津々という風に見てくる。
こっちも話を聞かないし、周りはザワザワとうるさいし、俺の我慢は限界を超えた。
風魔法の応用で空気を操る。
そこにいた全員の声を奪った。空気の振動を止めてこちらに伝え無くすればいいだけの簡単な魔法だ。
『…………っ』
『…………!?』
パクパクと口だけ動かすやつらをドヤ顔で見回した。
『あーうるさかった。さぁて、俺はもうここには用がないから帰ろっと。俺がこの城から出たら魔法は解除してやるよ』
笑いながらその場を去ろうとすれば、ルーベンスに腕を掴まれる。
興奮した様子で何か言っているけれど、わからないので無視して睨む。
『俺の時間は俺の為に使う。お前らの為に何かしようなんて全く思わない』
よく知りもしない王子達になんの義理があって何かしてあげようなんて思うのか。
『王家にもお前らにも小指の爪ほども興味ない』
掴まれた腕を振り払った。
『二度と声を掛けないでもらおうか』
その場にいた全員を睨んで去った。
言った通りに城を出てから魔法を解いてやった。
でも、ノイシスもルーベンスも、これで諦めたりしなかった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
1,314
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる