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入学後
予想外の展開
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髪乾燥機を四人で提出に行った。
「これを……君達が……?」
先生方が集まって品定めされている。
「この魔法陣は作ったのか?」
まずは、魔法陣学のアンリ先生が手に取って眺めている。
「なるほど……威力を下げるためにここの文字を変えているのか。こっちの火の魔法陣……更に威力を下げているな……なるほどねぇ……」
ブツブツと終始感心しているようだった。
次に手に取ったのは、薬学のトマス先生だ。
魔力を込めた事で魔道具が発動して、温かい風が出てくる。
紫色の髪に風が当たってなびく。気持ち良さそうに目を細める。
「これはいい。僕も欲しいです。赤じゃなくてピンクにできませんか?」
トマス先生は随分と気に入ってくれている。
確かにトマス先生にはピンクの方が似合いそうだ。
「お前ら、すごいな。まだ一年坊のくせにこれを作り上げたのか」
攻撃魔法学のベルナルド先生に両手で二人ずつ頭をわしゃわしゃと遠慮なく撫でられた。四人して髪が乱れたので直す。
これは期待大だ。
「みんなの知恵を出し合った結果です」
笑顔で言えば、隣にリンゼイが来た。
それだけでドキリとしてしまう。手に変な汗をかきそうだ。
「すごいね。君たちは優秀だね。《優良》が貰えるかどうかは後日連絡します。数日待っていてね」
ニッコリ笑顔で言われると視線を逸らしたくなった。
◆◇◆
それから数日後、寮の部屋でリンゼイから聞かされたその報告は嬉しさと共に苦い想いを連れてきた。
「どういう事ですか……?」
俺の質問にリンゼイは苦笑いで答えてくれる。
「《優良》を与えるのに王家に報告するのは知ってるよね? 普通はそれで許可が出て、学長から《優良》が貰える」
確かにそれが普通だと思う。
「君たちの場合、城の魔法使いであるマベルが君たちの魔道具に興味を持ったんだ。直接見たいそうだよ。それから、メルフィスの名前があったものだから、ご兄弟の方々も喜んでいてこちらに来るそうなんだ」
《優良》を貰えることになったのは嬉しい。ケフィンもエーベルトもメルフィスも喜んでいた。
けれど、マベル達に会う事になるのは予想外だ。
マベルはなぜ魔道具を見たいだなんて……。
本当にただの興味本位なのか?
まさか──俺の魔道具で何か勘付かれたか?
色んな考えが頭の中をぐるぐると回る。
「学長室で君たちに直接会うそうだ。《優良》は、その時にノイシス殿下から渡される事になったから、君たちも緊張するだろうけれど、普段通りにすればいい」
リンゼイの言葉にみんな驚いていた。
俺も例外じゃない。
「緊張するな……」
ケフィンは深呼吸を繰り返す。
「なんか……すごい事になっちゃったね……」
エーベルトは苦笑いしている。
「兄上達もくるなんて……」
メルフィスは、嬉しさと気恥ずかしさが混じっているような雰囲気だった。
メルフィスの兄弟といえば、第一王子であるノイシスと、第二王子であるルーベンスだ。
ノイシスは、会えば話す仲だったが……ルーベンス──。
「ディノ? 大丈夫かい?」
考え込んでいる所にリンゼイに覗き込まれてギクリとした。
『エルド? 大丈夫? 顔怖いよ。気分転換にハーブティーを入れたから一緒に飲もう』
いつも俺が考え込んでいると同じように声を掛けてくれた。
その時は、二人で仲良くお茶にした。
『リンゼイ、ハーブティー飲んだら眠くなった。添い寝して』
『ば、ばか! そんなの……できない……』
真っ赤になったリンゼイにクスクス笑えば、揶揄われたのに気付いて膨れた。
それから、少し迷いながら手を差し出してきた。
『エルドが寝るまで……手を繋ぐぐらいなら……』
赤い顔のままそんな事を言うものだから、愛おしくて仕方がなかった。俺はその手を取った。
そのままベッドに横になったけれど、リンゼイの手の感触が嬉しくて、昼寝なんて出来なかった。
「ぜ、全然大丈夫です! 余裕です!」
あははと笑って誤魔化した。
「そう。それなら良かった」
優しい笑顔を向けられた。
縋り付きたくなる衝動が胸の奥から湧いてくる。
リンゼイとはあれ以来、生徒としてしか接していない。
これでいい。俺がそうなるようにしたんだ。
それなのに俺の胸はギュッと苦しくなる。
俺は……生徒扱いされる事が残念なんだ……。
「詳しい日付なんかは後日また連絡するからね」
リンゼイは、そう言って職員室へ戻って行く。
こちらを振り向かない背中を思い出して、ジッと見つめてしまった。
余計な事を考えないように頭を振る。
俺が考えなきゃいけないのは、エルドだとバレないように失敗しない事だ。
「これを……君達が……?」
先生方が集まって品定めされている。
「この魔法陣は作ったのか?」
まずは、魔法陣学のアンリ先生が手に取って眺めている。
「なるほど……威力を下げるためにここの文字を変えているのか。こっちの火の魔法陣……更に威力を下げているな……なるほどねぇ……」
ブツブツと終始感心しているようだった。
次に手に取ったのは、薬学のトマス先生だ。
魔力を込めた事で魔道具が発動して、温かい風が出てくる。
紫色の髪に風が当たってなびく。気持ち良さそうに目を細める。
「これはいい。僕も欲しいです。赤じゃなくてピンクにできませんか?」
トマス先生は随分と気に入ってくれている。
確かにトマス先生にはピンクの方が似合いそうだ。
「お前ら、すごいな。まだ一年坊のくせにこれを作り上げたのか」
攻撃魔法学のベルナルド先生に両手で二人ずつ頭をわしゃわしゃと遠慮なく撫でられた。四人して髪が乱れたので直す。
これは期待大だ。
「みんなの知恵を出し合った結果です」
笑顔で言えば、隣にリンゼイが来た。
それだけでドキリとしてしまう。手に変な汗をかきそうだ。
「すごいね。君たちは優秀だね。《優良》が貰えるかどうかは後日連絡します。数日待っていてね」
ニッコリ笑顔で言われると視線を逸らしたくなった。
◆◇◆
それから数日後、寮の部屋でリンゼイから聞かされたその報告は嬉しさと共に苦い想いを連れてきた。
「どういう事ですか……?」
俺の質問にリンゼイは苦笑いで答えてくれる。
「《優良》を与えるのに王家に報告するのは知ってるよね? 普通はそれで許可が出て、学長から《優良》が貰える」
確かにそれが普通だと思う。
「君たちの場合、城の魔法使いであるマベルが君たちの魔道具に興味を持ったんだ。直接見たいそうだよ。それから、メルフィスの名前があったものだから、ご兄弟の方々も喜んでいてこちらに来るそうなんだ」
《優良》を貰えることになったのは嬉しい。ケフィンもエーベルトもメルフィスも喜んでいた。
けれど、マベル達に会う事になるのは予想外だ。
マベルはなぜ魔道具を見たいだなんて……。
本当にただの興味本位なのか?
まさか──俺の魔道具で何か勘付かれたか?
色んな考えが頭の中をぐるぐると回る。
「学長室で君たちに直接会うそうだ。《優良》は、その時にノイシス殿下から渡される事になったから、君たちも緊張するだろうけれど、普段通りにすればいい」
リンゼイの言葉にみんな驚いていた。
俺も例外じゃない。
「緊張するな……」
ケフィンは深呼吸を繰り返す。
「なんか……すごい事になっちゃったね……」
エーベルトは苦笑いしている。
「兄上達もくるなんて……」
メルフィスは、嬉しさと気恥ずかしさが混じっているような雰囲気だった。
メルフィスの兄弟といえば、第一王子であるノイシスと、第二王子であるルーベンスだ。
ノイシスは、会えば話す仲だったが……ルーベンス──。
「ディノ? 大丈夫かい?」
考え込んでいる所にリンゼイに覗き込まれてギクリとした。
『エルド? 大丈夫? 顔怖いよ。気分転換にハーブティーを入れたから一緒に飲もう』
いつも俺が考え込んでいると同じように声を掛けてくれた。
その時は、二人で仲良くお茶にした。
『リンゼイ、ハーブティー飲んだら眠くなった。添い寝して』
『ば、ばか! そんなの……できない……』
真っ赤になったリンゼイにクスクス笑えば、揶揄われたのに気付いて膨れた。
それから、少し迷いながら手を差し出してきた。
『エルドが寝るまで……手を繋ぐぐらいなら……』
赤い顔のままそんな事を言うものだから、愛おしくて仕方がなかった。俺はその手を取った。
そのままベッドに横になったけれど、リンゼイの手の感触が嬉しくて、昼寝なんて出来なかった。
「ぜ、全然大丈夫です! 余裕です!」
あははと笑って誤魔化した。
「そう。それなら良かった」
優しい笑顔を向けられた。
縋り付きたくなる衝動が胸の奥から湧いてくる。
リンゼイとはあれ以来、生徒としてしか接していない。
これでいい。俺がそうなるようにしたんだ。
それなのに俺の胸はギュッと苦しくなる。
俺は……生徒扱いされる事が残念なんだ……。
「詳しい日付なんかは後日また連絡するからね」
リンゼイは、そう言って職員室へ戻って行く。
こちらを振り向かない背中を思い出して、ジッと見つめてしまった。
余計な事を考えないように頭を振る。
俺が考えなきゃいけないのは、エルドだとバレないように失敗しない事だ。
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