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入学前

魔力測定

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 学院の近くの宿屋で一日過ごして入学試験を受けに行った。

 30人程度しかいないのは、そもそも魔力持ちが少ないからだ。
 順番に名前を確認すると、白い魔石を渡される。

 魔法使いの資格に家柄は必要ない。
 本来なら親の爵位まで名乗るのが礼儀だけれど、ここでは名前と苗字しか名乗らないというのがルールだと説明された(知っているけれど)。
 貴族同士なら顔見知りもいるのかもしれないが、ディノは屋敷から出れなかったから、ディノの知り合いもいないはず。

 その中でも、特殊だった奴がいた。

「メルフィス・トランダムです」

 トランダム……って王族じゃないかーい!

 みんな心の中で突っ込んでいるはずだ。
 家柄は関係ないと言っても、この国の王族は国名が苗字だから名乗ったらそうなるよね。

 チラリと横目で見れば、綺麗な銀髪は確かに王子にいたな……と思い出させる。
 エルドよりも低い身長だったのに、身長も高くなって男らしくなった。
 幼さが残っていた顔は鼻筋が通り、昔の面影はあまりない。切れ長の目元に銀髪よりも暗いグレーの瞳が真っ直ぐ前を見ていた。
 耳に付いている赤いピアスに懐かしさを覚えた。

 メルフィス──大きくなったな。

 今は19歳ぐらいか。大きくなったわけだ。

 そんな事を感慨深く思っていれば、次々と名前を名乗り自分の番になる。
 俺の番は最後だった。

「ディノ・バスカルディです」

 試験官である魔法使いが頷いた。
 これで全員の確認が終わったからだ。
 俺たちに手渡された丸い魔石を見つめる。
 
「では、魔力の測定をする。各々の手元にあるのは、魔力を通せば光る魔石だ」

 ただの白い魔石だ。

「魔力測定では、魔石を光らせていられる時間を測る。魔法陣に魔力を通す要領でやればいい」

 普通のやつは5分程度。魔力量の多いやつはそれ以上から10分程度──エルドの時は……あれ? どうだっか……?

「では、用意はいいか? 全員魔石を両手の上に乗せて前に出せ」

 言われた通りに魔石を手に乗せて前に出す。

「初めっ!」

 試験が始まれば、試験官が様子を見ながら前を歩いていた。

 魔法の属性は火、水、風、土、無とそれぞれ別れているが、得意と不得意な属性があるというだけで、全員が全て使える。
 重要なのは魔力量。
 そもそも魔力量が多くなければ、上級魔法が使えない。
 これはそれを計る試験だ。

 属性は、火が得意属性のやつは、火は上級魔法まで使えるけれど、その他が初級止まりだったりする。
 風と土が上級まで使えて、水は初級も使えないというやつもいたりする。

 エルドは規格外で、全属性を究極魔法まで使えた。だから恐れられた……。
 あとは、無属性。これは他属性に入らない全ての魔法の事だ。
 結界や回復、転移、浄化なんかがそれになるが、使える人は少ない。

 俺の前に柔らかな笑みを貼り付けている試験官が来た。

「……光り方が他の方と違いませんか?」

 げっ! やらかしたか!?

 チラリと隣を見れば、俺の魔石は周りより暗めに光っている。

「魔法陣に魔力を通す事が苦手ですか?」

 そうか! 俺は魔法陣を使わないから!
 思い出した! エルドの時も同じ質問をされて、魔法陣は使わないんだと答えてしまったんだ!
 それで、実技を先にやる事になって──失敗したよな……。

「そ、そうなんです。魔法陣に魔力を通すのにまだ慣れなくて……」
「なるほど。慣れれば大丈夫ですよ。入学できたら一緒に頑張りましょうね」

 柔らかな笑みのまま、通り過ぎていきホッとする。

 俺は上位どころか下位に位置付けられた可能性がある……。
 この先が少し不安になったけれど、きっとなるようになる。

 普通からは、はみ出ていないからいいかと思いつつ視線を魔石に戻した。
 
     ◆◇◆
 
 魔石に魔力を込めてから10分経った。
 魔力量は多めにしないとさっきの事が挽回できない。
 この程度なら、普通の範囲内だろう。
 そろそろ終わりにしよう。

 周りには魔力切れで座り込んでいる人が多数だ。
 その中でもまだやり続けているやつもいた。
 チラリと見れば、メルフィスもいた。
 魔力のコントロールが上手くできるようになったみたいだ。良かったな。

 余計な事は考えずに魔力を流す事をやめて、魔力が枯渇したように膝をついた。

「魔力量は多めですね。これなら合格圏内です」

 さっきの人が用紙に何かを記入しながらそっと囁いてくれた。
 良かった……。
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