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ずっと二人で
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電車に乗って、今日も先輩と一緒に学校へ向かう。
笑顔の先輩にまだ少し緊張する。
それでも、隣にいることに慣れてきている。
そんなある日の事。
寝坊した!
とてもいい夢を見たせいで、二度寝してしまった。
時間を確認すれば、学校には間に合いそうだ。
先輩に慌ててメッセージを送った。
急いで用意をして電車に乗る。
やばい……この時間は満員電車だった……。
ドアの方へ押しやられた。
早く駅に着いて欲しいと願う。
すると、尻の辺りに違和感が……嫌な予感……。
少し体をずらしてもそれは無くならなかった。
電車の窓に映った人を見れば、いつかの痴漢……。
嘘だ……。
「はぁ……君さ……最近居なかったね。また会えて嬉しいよ……」
俺は嬉しくない。
肩の辺りから髪の匂いを嗅がれてゾワリと鳥肌が立つ。
「お、大声出しますよ……」
「いいよぉ。信じてくれる人……いるかな?」
クスクスと笑われて悔しい。
スリスリとお尻を触られた。
逃げようにも見動きが取れない……。
攻防戦は続いていた。
何駅か過ぎた辺りで、聞き覚えのある声を聞く。
「おい。お前……今度こそ警察に突き出してやる」
蒼斗先輩だった。
どうやら蒼斗先輩の乗る駅に着いたみたいだ。
俺に気付いてどうにか俺の所まで来てくれたようだ。
「先輩……!」
「電車乗る前に連絡来たからな……こうなると思ったんだ」
先輩は痴漢男の腕を掴もうとしたけれど、そいつは上手い具合にスルリと避けたみたいだ。
満員電車で俺も先輩も身動きがうまく取れないのに、そいつは隙間に入り込んで俺達から離れた。
しばらくして、駅についてドアが開けば、何食わぬ顔で降りたようで見失う。
電車が進めば、向かい合う形で先輩は俺が潰されないようにしてくれる。
初めて会った時と同じだ。
「ちっくしょー」
痴漢を取り逃したので先輩は低く唸る。
「すみません……俺が寝坊しちゃったから……」
「悪いのはあいつだ」
怒っている蒼斗先輩にクスクスと笑ってしまった。
「なんだよ……」
「いや、俺の為に怒ってくれて嬉しいなって思って」
「当たり前だろ」
「でも、最初の時は、先輩も痴漢みたいでしたよ」
蒼斗先輩は、何を思ったのかニヤリと笑った。
「こんな風に?」
股の間に足を入れられて、耳元で囁かれた。
同じシチュエーションなのに、今は胸がドキドキする。
「せ、先輩……」
「どこか触られた?」
「え?」
「トモくんは俺のだからな。他のやつに触られたらどうなるか……わかるよな?」
そんな事言われても……。
ニヤリと笑う蒼斗先輩に冷や汗をかく。
こっそりと太ももを撫でようとする先輩の手を掴む。
「だ、ダメです……!」
先輩はニヤリと笑う。
「トモくんは、俺にこうされると喜ぶ。だから、俺も止まらなくなる……」
「ぁ……ダメですって……」
ダメだと思うのに、先輩に触れられると体が熱くなる。
「その顔最高……」
散々体を撫で回されて遊ばれた。
◆◇◆
最近、ドSについて考える。
先輩は、俺が本気で嫌な事はしない……と思う。
むしろ、俺の恥ずかしがる姿や喜ぶ姿が見たいらしい。
ということは、俺が意地悪されて喜んでいるって事で……。
つまり、先輩がドSと言うよりは、俺がドMって事になるんじゃないか……?
そう考えると頭を抱えたくなる。
「トモくん、かわいい顔で何悩んでんの?」
先輩の部屋でくつろいでいる所だった。
唸っていれば、先輩は俺を覗き込んできた。
「蒼斗先輩の事ですよ……」
「へぇ? 俺にどこか不満でも?」
「不満はありません……」
それどころか、素直でかわいい先輩が大好きだ。
「俺は、トモくんの側に居させてもらって大満足」
こんな風に言ってもらえたら、SとかMとかどっちでもいいか。
「そんなの俺も大満足です!」
負けないぐらいの気持ちを返したい。
「じゃあ……ずっと二人でいような……」
はいって言おうとしたのに、言わせてくれないんだから……。
先輩は、俺の返事なんて聞かなくてもわかるって嬉しそうな顔をする。
先輩から貰うキスは、どこまでもどこまでも甘かった。
────────────
※あとがき
最後までお読み頂き感謝致します。
楽しんで頂けたなら嬉しいです。
個人的にこの二人はすごく好きです。
また別の作品でもお会いできたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
笑顔の先輩にまだ少し緊張する。
それでも、隣にいることに慣れてきている。
そんなある日の事。
寝坊した!
とてもいい夢を見たせいで、二度寝してしまった。
時間を確認すれば、学校には間に合いそうだ。
先輩に慌ててメッセージを送った。
急いで用意をして電車に乗る。
やばい……この時間は満員電車だった……。
ドアの方へ押しやられた。
早く駅に着いて欲しいと願う。
すると、尻の辺りに違和感が……嫌な予感……。
少し体をずらしてもそれは無くならなかった。
電車の窓に映った人を見れば、いつかの痴漢……。
嘘だ……。
「はぁ……君さ……最近居なかったね。また会えて嬉しいよ……」
俺は嬉しくない。
肩の辺りから髪の匂いを嗅がれてゾワリと鳥肌が立つ。
「お、大声出しますよ……」
「いいよぉ。信じてくれる人……いるかな?」
クスクスと笑われて悔しい。
スリスリとお尻を触られた。
逃げようにも見動きが取れない……。
攻防戦は続いていた。
何駅か過ぎた辺りで、聞き覚えのある声を聞く。
「おい。お前……今度こそ警察に突き出してやる」
蒼斗先輩だった。
どうやら蒼斗先輩の乗る駅に着いたみたいだ。
俺に気付いてどうにか俺の所まで来てくれたようだ。
「先輩……!」
「電車乗る前に連絡来たからな……こうなると思ったんだ」
先輩は痴漢男の腕を掴もうとしたけれど、そいつは上手い具合にスルリと避けたみたいだ。
満員電車で俺も先輩も身動きがうまく取れないのに、そいつは隙間に入り込んで俺達から離れた。
しばらくして、駅についてドアが開けば、何食わぬ顔で降りたようで見失う。
電車が進めば、向かい合う形で先輩は俺が潰されないようにしてくれる。
初めて会った時と同じだ。
「ちっくしょー」
痴漢を取り逃したので先輩は低く唸る。
「すみません……俺が寝坊しちゃったから……」
「悪いのはあいつだ」
怒っている蒼斗先輩にクスクスと笑ってしまった。
「なんだよ……」
「いや、俺の為に怒ってくれて嬉しいなって思って」
「当たり前だろ」
「でも、最初の時は、先輩も痴漢みたいでしたよ」
蒼斗先輩は、何を思ったのかニヤリと笑った。
「こんな風に?」
股の間に足を入れられて、耳元で囁かれた。
同じシチュエーションなのに、今は胸がドキドキする。
「せ、先輩……」
「どこか触られた?」
「え?」
「トモくんは俺のだからな。他のやつに触られたらどうなるか……わかるよな?」
そんな事言われても……。
ニヤリと笑う蒼斗先輩に冷や汗をかく。
こっそりと太ももを撫でようとする先輩の手を掴む。
「だ、ダメです……!」
先輩はニヤリと笑う。
「トモくんは、俺にこうされると喜ぶ。だから、俺も止まらなくなる……」
「ぁ……ダメですって……」
ダメだと思うのに、先輩に触れられると体が熱くなる。
「その顔最高……」
散々体を撫で回されて遊ばれた。
◆◇◆
最近、ドSについて考える。
先輩は、俺が本気で嫌な事はしない……と思う。
むしろ、俺の恥ずかしがる姿や喜ぶ姿が見たいらしい。
ということは、俺が意地悪されて喜んでいるって事で……。
つまり、先輩がドSと言うよりは、俺がドMって事になるんじゃないか……?
そう考えると頭を抱えたくなる。
「トモくん、かわいい顔で何悩んでんの?」
先輩の部屋でくつろいでいる所だった。
唸っていれば、先輩は俺を覗き込んできた。
「蒼斗先輩の事ですよ……」
「へぇ? 俺にどこか不満でも?」
「不満はありません……」
それどころか、素直でかわいい先輩が大好きだ。
「俺は、トモくんの側に居させてもらって大満足」
こんな風に言ってもらえたら、SとかMとかどっちでもいいか。
「そんなの俺も大満足です!」
負けないぐらいの気持ちを返したい。
「じゃあ……ずっと二人でいような……」
はいって言おうとしたのに、言わせてくれないんだから……。
先輩は、俺の返事なんて聞かなくてもわかるって嬉しそうな顔をする。
先輩から貰うキスは、どこまでもどこまでも甘かった。
────────────
※あとがき
最後までお読み頂き感謝致します。
楽しんで頂けたなら嬉しいです。
個人的にこの二人はすごく好きです。
また別の作品でもお会いできたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
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完結おめでとうございます!
まだまだ蒼斗先輩とトモくんのいちゃちゃをみていたかったです!きっとこれからも甘々な二人なんでしょうね(´∀`*)
圭介先輩の恋も実るように願ってます!どんなお相手なんだろう?
最後まで本当にお疲れ様でした!
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感想ありがとうございます。
ずっと甘々で幸せな二人だと思います。
もっと見たいと言ってもらえて嬉しいです。
圭介先輩はちゃんと設定があり、切ない恋をしていますが……きっと幸せになります!
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公開にもう少し時間が掛かるかもしれませんが、また楽しんで頂ければ嬉しいです。
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