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笑顔の手招きやめて下さい
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お昼の時間になり、屋上に行こうとしたら呼び止められた。
可愛らしいキュルンッとした顔の男の子。一年の間でアイドルみたいだと言われていた殿垣真紘くんだった。
校舎の裏の誰も来ないような場所に移動する。
「智則さん、僕と付き合って下さい」
何かと思っていたら告白だった。
照れたように伝えられた言葉に顔が引きつる。
男子校だし、告白なんてのは良く聞くけれど、自分がされるとは思わなかった。
「な、なんで俺なの?」
「タイプだから……」
やっぱり見た目かな……。
面白がって付いてきた和也が校舎の影でクスクスと笑っている気配がする。
「付き合えないよ。ごめん」
断るのは少し良心が痛むけれど、これも彼の為だ。
「わかりました……でも、友達ならいいですよね?」
不安そうに聞かれる。
告白って勇気いるもんな。
「俺は友達ならいいけど、殿垣くんはいいの?」
「はい。話してもらえない事も覚悟していたので……友達として話してもらえるのは嬉しいです」
少し照れたような顔が可愛い。
「じゃあ……よろしく」
「本当ですか⁉︎」
嬉しそうにされると悪い気はしない。
友達が増えるのは良い事だしな。
「友達でいいならだからな。タメだし、その敬語もさん付けもやめて」
「ありがとう! みんなにトモって呼ばれてるよね? 僕もトモって呼ばせて。僕の事は真紘って呼んで」
「わかった」
嬉しそうな真紘が微笑ましい。
「トモ、お昼一緒に食べない?」
「あ……えっと……お昼は先輩と一緒に食べるからごめん」
「そっか……うん。わかった」
和也の事は言ってあるけれど、真紘の事は言ってないから先輩に怒られそうな気がする。
それに──告白された事を知られたら身の危険を感じるから言わないでおこう。
もう一度真紘に謝って、和也と一緒に屋上に向かう。
和也には蒼斗先輩との事はほんのりとしか言っていない。
なんて説明したらいいのか分からないのが本音だ。
「可愛い子だったな」
「そうだな。あんな子なら俺じゃなくていいのにな」
俺に何を期待していたのやら……。
「ははっ。やっぱりドMなのかな?」
「じゃなきゃ俺なんかダメでしょ……」
見た目で期待されると困る。
そんなやり取りをしながら屋上の扉を開ければ、蒼斗先輩と知らない先輩がいた。
近くに行けば、蒼斗先輩は不機嫌そうだった。
「トモくん、遅い。また逃げたのかと思った」
「逃げませんよ……」
逃げたら酷い目に遭うからね。
俺は学習したんだ。
それに、それほど遅いわけでもない。
先輩は、俺が来るのを楽しみに待ってたとか……そんな事ないよな。
「蒼斗、紹介して」
知らない先輩がニコニコとしてくれる。
「ちっ。これは沢坂圭介。一応幼なじみ」
「おい! 舌打ちした上に一応ってなんだよ!」
幼馴染というだけあってすごく仲良く見えた。
「トモくんの事は知ってるよ。と、そっちの君は?」
トモくん! 嬉しい。
「おい。圭介は智則と呼べ」
「はいはい。なら、トモならいい?」
「まぁ……仕方ねぇな」
蒼斗先輩が勝手に却下した。
トモくん呼び嬉しかったのに……。
「じゃあ、トモね。君は?」
「俺は矢内和也です。よろしくお願いします」
「和也ね。あ、俺の事は圭介でいいからね。よろしく」
屈託なく笑う圭介先輩がキラキラして見えて眩しい。
この人、蒼斗先輩とは違うカッコ良さがある。
自己紹介も済んでみんなで座り込んでご飯を食べる。
「トモは、お弁当なんだね」
圭介先輩が問いかけてきた。
「はい。両親が共働きなので、自分で作ってます」
「え⁉︎ まじで⁉︎ えらいねぇ」
圭介先輩に尊敬の眼差しで見られて照れる。
「俺の弁当も作ってこい」
「え⁉︎ 蒼斗先輩にですか⁉︎ 嫌ですよ」
「は? お前……いい度胸してるな……」
うお……不機嫌オーラ全開だ……。
作ってもいいけど……夕飯の残り物だし、自信ないし……。
「蒼斗はさ、甘党なんだから購買の菓子パンかじってればいいじゃん」
圭介先輩が蒼斗先輩に向かってクスクスと笑う。
蒼斗先輩が食べていたのはチョココロネ。
ドSオーラ出しながらチョココロネ食べるとか……ギャップがありすぎる。
「昔から甘いもの好きだよね」
「うるせー」
昔の蒼斗先輩か……きっとすごくモテたんだろうな……。
チクッと胸の奥が針で刺されたように痛んだ気がした。
気のせいか?
「和也もパンなんだね」
「はい。俺はパンはパンでもメロンパンが大好きっす」
和也はニカッと笑って得意げだ。
「ははっ。和也は元気があっていいね。モテそう」
「モテるのはトモの方ですよ。さっきだって──」
「うわぁ! 和也! 余計な事は言わないでくれるかな?」
和也のやつは何を言い出すんだ……。
笑顔で和也に黙ってくれと訴える。
「さっきだって何だ? 和也、続き教えろ」
蒼斗先輩は聞き流してくれなかった……。
「可愛い男の子に告白されてました」
「和也ぁぁ!」
言うなよ!
怖くて蒼斗先輩の方が見れない。
「トモくん──ちょっとこっちおいで」
チラッと視線をやれば、笑顔で手招き……怖いよ……怖すぎる。
和也のせいだ!
和也を睨めば、ニヤニヤと面白そうにこちらを見ている。
こいつ……蒼斗先輩との事、勘づいてたな……。
「ほら、早く来い」
先輩の声にビクッと震えてそっと先輩を見れば、笑顔でまた手招きした……。
和也を睨んでいる場合じゃなかった。
冷や汗が止まらない。
俺に拒否権は……ないですね……。
可愛らしいキュルンッとした顔の男の子。一年の間でアイドルみたいだと言われていた殿垣真紘くんだった。
校舎の裏の誰も来ないような場所に移動する。
「智則さん、僕と付き合って下さい」
何かと思っていたら告白だった。
照れたように伝えられた言葉に顔が引きつる。
男子校だし、告白なんてのは良く聞くけれど、自分がされるとは思わなかった。
「な、なんで俺なの?」
「タイプだから……」
やっぱり見た目かな……。
面白がって付いてきた和也が校舎の影でクスクスと笑っている気配がする。
「付き合えないよ。ごめん」
断るのは少し良心が痛むけれど、これも彼の為だ。
「わかりました……でも、友達ならいいですよね?」
不安そうに聞かれる。
告白って勇気いるもんな。
「俺は友達ならいいけど、殿垣くんはいいの?」
「はい。話してもらえない事も覚悟していたので……友達として話してもらえるのは嬉しいです」
少し照れたような顔が可愛い。
「じゃあ……よろしく」
「本当ですか⁉︎」
嬉しそうにされると悪い気はしない。
友達が増えるのは良い事だしな。
「友達でいいならだからな。タメだし、その敬語もさん付けもやめて」
「ありがとう! みんなにトモって呼ばれてるよね? 僕もトモって呼ばせて。僕の事は真紘って呼んで」
「わかった」
嬉しそうな真紘が微笑ましい。
「トモ、お昼一緒に食べない?」
「あ……えっと……お昼は先輩と一緒に食べるからごめん」
「そっか……うん。わかった」
和也の事は言ってあるけれど、真紘の事は言ってないから先輩に怒られそうな気がする。
それに──告白された事を知られたら身の危険を感じるから言わないでおこう。
もう一度真紘に謝って、和也と一緒に屋上に向かう。
和也には蒼斗先輩との事はほんのりとしか言っていない。
なんて説明したらいいのか分からないのが本音だ。
「可愛い子だったな」
「そうだな。あんな子なら俺じゃなくていいのにな」
俺に何を期待していたのやら……。
「ははっ。やっぱりドMなのかな?」
「じゃなきゃ俺なんかダメでしょ……」
見た目で期待されると困る。
そんなやり取りをしながら屋上の扉を開ければ、蒼斗先輩と知らない先輩がいた。
近くに行けば、蒼斗先輩は不機嫌そうだった。
「トモくん、遅い。また逃げたのかと思った」
「逃げませんよ……」
逃げたら酷い目に遭うからね。
俺は学習したんだ。
それに、それほど遅いわけでもない。
先輩は、俺が来るのを楽しみに待ってたとか……そんな事ないよな。
「蒼斗、紹介して」
知らない先輩がニコニコとしてくれる。
「ちっ。これは沢坂圭介。一応幼なじみ」
「おい! 舌打ちした上に一応ってなんだよ!」
幼馴染というだけあってすごく仲良く見えた。
「トモくんの事は知ってるよ。と、そっちの君は?」
トモくん! 嬉しい。
「おい。圭介は智則と呼べ」
「はいはい。なら、トモならいい?」
「まぁ……仕方ねぇな」
蒼斗先輩が勝手に却下した。
トモくん呼び嬉しかったのに……。
「じゃあ、トモね。君は?」
「俺は矢内和也です。よろしくお願いします」
「和也ね。あ、俺の事は圭介でいいからね。よろしく」
屈託なく笑う圭介先輩がキラキラして見えて眩しい。
この人、蒼斗先輩とは違うカッコ良さがある。
自己紹介も済んでみんなで座り込んでご飯を食べる。
「トモは、お弁当なんだね」
圭介先輩が問いかけてきた。
「はい。両親が共働きなので、自分で作ってます」
「え⁉︎ まじで⁉︎ えらいねぇ」
圭介先輩に尊敬の眼差しで見られて照れる。
「俺の弁当も作ってこい」
「え⁉︎ 蒼斗先輩にですか⁉︎ 嫌ですよ」
「は? お前……いい度胸してるな……」
うお……不機嫌オーラ全開だ……。
作ってもいいけど……夕飯の残り物だし、自信ないし……。
「蒼斗はさ、甘党なんだから購買の菓子パンかじってればいいじゃん」
圭介先輩が蒼斗先輩に向かってクスクスと笑う。
蒼斗先輩が食べていたのはチョココロネ。
ドSオーラ出しながらチョココロネ食べるとか……ギャップがありすぎる。
「昔から甘いもの好きだよね」
「うるせー」
昔の蒼斗先輩か……きっとすごくモテたんだろうな……。
チクッと胸の奥が針で刺されたように痛んだ気がした。
気のせいか?
「和也もパンなんだね」
「はい。俺はパンはパンでもメロンパンが大好きっす」
和也はニカッと笑って得意げだ。
「ははっ。和也は元気があっていいね。モテそう」
「モテるのはトモの方ですよ。さっきだって──」
「うわぁ! 和也! 余計な事は言わないでくれるかな?」
和也のやつは何を言い出すんだ……。
笑顔で和也に黙ってくれと訴える。
「さっきだって何だ? 和也、続き教えろ」
蒼斗先輩は聞き流してくれなかった……。
「可愛い男の子に告白されてました」
「和也ぁぁ!」
言うなよ!
怖くて蒼斗先輩の方が見れない。
「トモくん──ちょっとこっちおいで」
チラッと視線をやれば、笑顔で手招き……怖いよ……怖すぎる。
和也のせいだ!
和也を睨めば、ニヤニヤと面白そうにこちらを見ている。
こいつ……蒼斗先輩との事、勘づいてたな……。
「ほら、早く来い」
先輩の声にビクッと震えてそっと先輩を見れば、笑顔でまた手招きした……。
和也を睨んでいる場合じゃなかった。
冷や汗が止まらない。
俺に拒否権は……ないですね……。
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