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助けてくれたんですよね?
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「あんた、さっきから何やってんの?」
囁くような声だけれど、低音の厳しい声が耳に響く。
「いや……その……」
誰にも見られていないと思っていた痴漢はドギマギとする。
「何でもいいけどさ、動画に撮ったよ。それ以上やったら警察に突き出すからな」
「なっ……!」
俺に痴漢をしていた男は、少し離れたようで、俺の背中にその人が割って入った。
電車が揺れると背中と背中が触れ合ってその人を意識する。
「ぼ、僕は何もしてない……」
「だから、動画に撮ったって言ってんだろ? 男子高校生相手に勃たせて何言ってんの?」
「ち、違う……!」
すると、電車内にアナウンスが響いて、電車がすぐに駅に着いた。
その男は他の乗客に混じって逃げるように降りて行った。
助かった……。
ホッと胸を撫で下ろした。
クルリと背後を向けば、広い背中にドキッとした。
痴漢男を見送って、電車が再び走り出したら、その人もこちらを振り返って向かい合った。
「大丈夫だったか?」
気遣うように声を掛けられて、慌ててお礼を言った。
「大丈夫です。あ、ありがとうございました」
「お前さ、いつもあんな目に遭ってんの?」
「違います! あんなに露骨なのは初めてです」
「露骨じゃないのは初めてじゃない訳だ」
「──見た目がコレだから……睨んでくれとか、踏んでくれとか……変な人に声は掛けられます……」
そうなのだ。
俺の見た目に寄ってくるやつは変態ばかり。
俺自身はそんな趣味はないのにだ。
シュンと落ち込めば、ポンポンと頭を叩かれた。
「お前、俺からしたらめちゃくちゃ可愛いけどな」
「か……かわいい……?」
親以外に初めて言われたかも……。
微笑みながら囁かれた言葉にハートをガシッと鷲掴みされた気分だ。
この人ドキドキする……。
「名前は?」
「い、一年の瀬上智則です」
助けてくれた男子高校生に少し緊張しながら自己紹介をする。
「一年生ね。どうりで見かけない顔だと思った。俺は二年の八木澤蒼斗。よろしくな」
「よろしくお願いします」
爽やかというよりは、どこか大人っぽい笑顔だった。
八木澤先輩か……。
こんなカッコいい人が同じ高校にいたんだ。男が憧れる男ってこういう人かもしれない。この人モテるだろうな。
「トモくん、学校まで一緒に行こうか?」
「は、はい」
トモくん!
そんな風に呼ばれたのは母親以来だ!
母親だって今はトモとしか呼ばないのに、くん付けの威力はすごい。う、嬉しい……。
そんな事を考えていたら電車が揺れて、ドアにトンッと背を預ける形になる。
八木澤先輩が俺の顔の横に手をついた。壁ドンみたいだ……でも、満員電車なのに苦しくない。
もしかして、俺がつぶれないように守ってくれてる?
そっと視線を向ければ、触れ合いそうな距離に驚いて顔を逸らした。
ち、近い!
「ごめん……」
「いえ! ぜ、全然平気です……」
全然平気じゃない!
男同士なのに意識してるのは俺だけか⁉︎
「ははっ。我慢できなくてごめんって意味ね」
「え……?」
どういう意味だ?
先輩の顔がさらに近付いた気がする。
俺達の間に隙間がなくなった。
抱き合うような格好に心臓のドキドキが止まらない。
あれ?
待って……股の間に足入れられた!
ぐ、偶然だよな?
そっと先輩を見つめると変化はない。
むしろ微笑まれてドキッとした。
「あの痴漢はわかってないな」
「へ?」
ニヤリと広角を上げた先輩に嫌な予感がした。
「トモくんは、こうする方がいい顔をする」
耳元で囁かれて、股の間の足をグイッと上に持ち上げられた。
「あ……」
自分のモノが先輩の太ももに擦れて思わず声が出た!
真っ赤になって先輩を睨む。
「やっぱりな。その顔……最高にそそる」
耳をペロリと舐められた。
「ひゃ……! や、やめて下さいよ……!」
電車が揺れた拍子に先輩の顔がまた近付く。
「っ……!」
そのまま首にガブッと噛みつかれたみたいだ。
一瞬の事で自分でも何が起きたのか分からなかった。
残っている首の痛みが噛まれたと教えてくれる。
信じられない……。
こんな満員電車で身動き取れないような状態で、人の首を噛むなんて!
何考えてんだこの人!
痛みと恐怖で震える。
涙目で睨むしかない。
「トモくん……まじでいいよ……」
ペロリと自分の上唇を舐める先輩に食べられる気がして慄く。
もうすでにちょっとかじられたしな!
「これからよろしくな」
低音ボイスに腰砕けになりそうだ。
耳元でふぅーっと息を吹きかけられてゾワゾワした。
さらに股の間の足を微妙に動かされて擦られる。
「せん……ぱい……!」
駅に着くまで八木澤先輩のいたずらに真っ赤になりながら必死で耐えた。
こ、この人が痴漢だった……。
囁くような声だけれど、低音の厳しい声が耳に響く。
「いや……その……」
誰にも見られていないと思っていた痴漢はドギマギとする。
「何でもいいけどさ、動画に撮ったよ。それ以上やったら警察に突き出すからな」
「なっ……!」
俺に痴漢をしていた男は、少し離れたようで、俺の背中にその人が割って入った。
電車が揺れると背中と背中が触れ合ってその人を意識する。
「ぼ、僕は何もしてない……」
「だから、動画に撮ったって言ってんだろ? 男子高校生相手に勃たせて何言ってんの?」
「ち、違う……!」
すると、電車内にアナウンスが響いて、電車がすぐに駅に着いた。
その男は他の乗客に混じって逃げるように降りて行った。
助かった……。
ホッと胸を撫で下ろした。
クルリと背後を向けば、広い背中にドキッとした。
痴漢男を見送って、電車が再び走り出したら、その人もこちらを振り返って向かい合った。
「大丈夫だったか?」
気遣うように声を掛けられて、慌ててお礼を言った。
「大丈夫です。あ、ありがとうございました」
「お前さ、いつもあんな目に遭ってんの?」
「違います! あんなに露骨なのは初めてです」
「露骨じゃないのは初めてじゃない訳だ」
「──見た目がコレだから……睨んでくれとか、踏んでくれとか……変な人に声は掛けられます……」
そうなのだ。
俺の見た目に寄ってくるやつは変態ばかり。
俺自身はそんな趣味はないのにだ。
シュンと落ち込めば、ポンポンと頭を叩かれた。
「お前、俺からしたらめちゃくちゃ可愛いけどな」
「か……かわいい……?」
親以外に初めて言われたかも……。
微笑みながら囁かれた言葉にハートをガシッと鷲掴みされた気分だ。
この人ドキドキする……。
「名前は?」
「い、一年の瀬上智則です」
助けてくれた男子高校生に少し緊張しながら自己紹介をする。
「一年生ね。どうりで見かけない顔だと思った。俺は二年の八木澤蒼斗。よろしくな」
「よろしくお願いします」
爽やかというよりは、どこか大人っぽい笑顔だった。
八木澤先輩か……。
こんなカッコいい人が同じ高校にいたんだ。男が憧れる男ってこういう人かもしれない。この人モテるだろうな。
「トモくん、学校まで一緒に行こうか?」
「は、はい」
トモくん!
そんな風に呼ばれたのは母親以来だ!
母親だって今はトモとしか呼ばないのに、くん付けの威力はすごい。う、嬉しい……。
そんな事を考えていたら電車が揺れて、ドアにトンッと背を預ける形になる。
八木澤先輩が俺の顔の横に手をついた。壁ドンみたいだ……でも、満員電車なのに苦しくない。
もしかして、俺がつぶれないように守ってくれてる?
そっと視線を向ければ、触れ合いそうな距離に驚いて顔を逸らした。
ち、近い!
「ごめん……」
「いえ! ぜ、全然平気です……」
全然平気じゃない!
男同士なのに意識してるのは俺だけか⁉︎
「ははっ。我慢できなくてごめんって意味ね」
「え……?」
どういう意味だ?
先輩の顔がさらに近付いた気がする。
俺達の間に隙間がなくなった。
抱き合うような格好に心臓のドキドキが止まらない。
あれ?
待って……股の間に足入れられた!
ぐ、偶然だよな?
そっと先輩を見つめると変化はない。
むしろ微笑まれてドキッとした。
「あの痴漢はわかってないな」
「へ?」
ニヤリと広角を上げた先輩に嫌な予感がした。
「トモくんは、こうする方がいい顔をする」
耳元で囁かれて、股の間の足をグイッと上に持ち上げられた。
「あ……」
自分のモノが先輩の太ももに擦れて思わず声が出た!
真っ赤になって先輩を睨む。
「やっぱりな。その顔……最高にそそる」
耳をペロリと舐められた。
「ひゃ……! や、やめて下さいよ……!」
電車が揺れた拍子に先輩の顔がまた近付く。
「っ……!」
そのまま首にガブッと噛みつかれたみたいだ。
一瞬の事で自分でも何が起きたのか分からなかった。
残っている首の痛みが噛まれたと教えてくれる。
信じられない……。
こんな満員電車で身動き取れないような状態で、人の首を噛むなんて!
何考えてんだこの人!
痛みと恐怖で震える。
涙目で睨むしかない。
「トモくん……まじでいいよ……」
ペロリと自分の上唇を舐める先輩に食べられる気がして慄く。
もうすでにちょっとかじられたしな!
「これからよろしくな」
低音ボイスに腰砕けになりそうだ。
耳元でふぅーっと息を吹きかけられてゾワゾワした。
さらに股の間の足を微妙に動かされて擦られる。
「せん……ぱい……!」
駅に着くまで八木澤先輩のいたずらに真っ赤になりながら必死で耐えた。
こ、この人が痴漢だった……。
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