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賭けをしようか?
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夏休みの間に、友達の雅哉から何度か連絡が来た。
雅哉は、小学校からの同級生で、家も近いので良く家に遊びに来る。
小学生の時は、毎日のように家に来ていた。
この家に引っ越してからは、遠慮したのか時々になった。
高校は俺とは違う男子校に行ってしまったけれど、今でも遊ぼうと連絡をくれる。
涼のせいで痣になっていた手首が治るまで、誰にも会わないようにしていた。
やっと手首の痣が薄くなり、雅哉と会うことにした。
雅哉は、昼下がりに俺の部屋に遊びに来て、クッションを抱えながらうつ伏せで漫画を読んでいた。
雅哉の二重で釣り上がった目は、元気な印象を与える。
髪は少しウェーブ掛かっていて、柔らかそうだ。
気安い性格で、モテそうなのに彼女がいた事はない。
俺は勉強机の椅子に座って背もたれに寄りかかりながら、棒付きアイスを頬張っていた。雅哉が不意に声を掛けてきた。
「そういえば、今日は夏祭りだろ?」
「そうだな」
「お前、行くだろ?」
「どうして?」
「どうしてって、彼女と行くだろ? 向こうで会ったら紹介しろよ」
「あー……この前別れた」
ミーンッ、ミーンッと、蝉の声が遠くで聞こえる。
雅哉は漫画から顔を上げると、俺をじっと見た。
間抜けな顔をしていて少し面白い。
「なんで? 早くね?」
「まぁ……色々あってさ」
ちゃんと説明できるわけがない。
「会ってねぇの?」
「会ってない」
「じゃあ……今日はひとりぼっち?」
「そうだな」
アイスが熱い体に冷たくて気持ち良かったのに、とうとう最後の一口を食べ終わってしまった。
「な、なぁんだ! じゃあさ! 去年みたいに、俺達と一緒に行くか⁉︎」
「いいのか?」
「ああ! もちろん!」
俺が彼女と別れたというのに、雅哉のやつはなぜか嬉しそうだ。
アイスの棒をゴミ箱に捨てながら、漫画に視線を戻して鼻唄を歌う雅哉を見てムッとする。
雅哉の背後にそっと忍び寄って、後ろから首へ腕を回して軽く締めてやった。
「おい! 何すんだっ!」
「別れたってのに、やけに嬉しそうにしやがって!」
「それは……! おい! ……苦しい!」
ドタンッ、バタンッと部屋で暴れる。
「お前! ふざけんな!」
雅哉の反撃にあった。
俺の腕から逃げると、両腕を取られて力負けした。
そのままクルリと回転されると雅哉が馬乗りになって、押し倒されたような格好になる。
雅哉の方が体格が良くて力もあると認めたくない。
ニヤリと笑われた。悔しい。
「貧弱ハルになんか負けねーよ」
決して貧弱じゃない。俺だって筋肉がついているはずだ。
「離せ! この!」
そのままバタバタ暴れても、押さえ込まれる。
「今度も俺の勝ちだな」
いつもならここで、背中に膝を入れてやるところだった。
けれど、そこで思い出したのは、俺の上で覆い被さってくる涼だ。
『ハル……』
この部屋で何度も突き上げられた記憶が戻ってくる。
雅哉が涼と被った。
──ヤバイヤバイヤバイヤバイ!
「雅哉! ごめん! どいて!」
体が熱い。
これは、夏の暑さと雅哉とふざけ合っていたせいだ。そうに違いない。
涼を思い出して体が熱くなっている訳じゃない!
「ハル?」
雅哉は、いつもと違う様子の俺を訝しんで名前を呼んだ。けれど、羞恥心で雅哉の顔を見れなくて視線を逸らす。
「あれ? ここ……」
雅哉が俺の鎖骨の辺りを撫でた。
そんな事でビクリと震えたのは、気のせいだと思いたい。
こんな体になったのも、全部涼のせいだ!
ガチャリ。
部屋のドアが開いた音に雅哉と共にそっちを見れば、ドアを開けたのは涼だった。
大きなため息をついて、厳しい顔つきをする。
「二人とも、うるさい」
雅哉はパッと離れると正座した。
俺も隣に正座した。
「涼さん、すんません!」
「涼……ごめん」
「まったく……二人は、いくつになっても遊びが変わらないんだから」
涼の言葉に雅哉は、へへへっと恥ずかしそうに笑ってから首をかしげた。
「あれ? ハル、さっき涼さんの事、涼って呼んだ? ハルは兄さんって呼んでたよな?」
「あ……」
まずい。普通に名前で呼んだ。
雅哉は俺達の変化に気付いただろうか?
「それね。社会人になるのに、いつまでも兄さんじゃくすぐったく思えてきて。僕が名前で呼ぶようにお願いしたんだ」
「そうなんすね」
涼が上手く誤魔化したのは、さすがと言うべきか。
父と母にも同じ説明をするんだろう。
「それより、母さんが力が有り余っているなら、下に来て家具の移動を手伝って欲しいって」
その言葉に雅哉と顔を見合わせるのだった。
◆◇◆
部屋の模様替えをしていた母の手伝いをした。
「ありがとうね。お礼は何がいいかしら?」
「じゃあ、今日ハルが夏祭りで遅くなっても怒らないであげて下さい!」
雅哉の戯けた言いように、母がコロコロと笑う。
「ハル、夏祭り行くの?」
「うん。予定もなかったからさ」
「そう……。僕も大学の同級生から誘われていたから、行くことにするよ」
「なら、向こうで会えるかもしれないっすね!」
「そうだね」
夏祭りの話で盛り上がっていれば、母さんがポンッと手を叩いた。
「それなら、浴衣着て行く? ハルも涼君も雅哉君も、母さんが着付けてあげるわ。宗輔さんの浴衣が何着かあったわ」
父が浴衣を持っているなんて知らなかった。
うーん……浴衣なんて面倒臭い。
そう言おうとした俺を押しのけて、雅哉の目が輝いた。
「マジっすか! 俺、浴衣なんて初めて着ます!」
「ふふっ。じゃあ、用意するわ。時間になったら着付けましょう」
乗り気な雅哉にやめようと言えず、夏祭りに浴衣を着ていく羽目になってため息をついてしまった。
リビングで涼と雅哉で時間を潰していた。
トランプでもするか? の雅哉の一言で始まったババ抜きは、何度やっても俺も雅哉も涼に勝てない。
ムキになって何度目かのババ抜きをしていた時に、雅哉が母に呼ばれて抜けた。
涼と二人きりになったリビング。
ダイニングテーブルに向き合う形で座る俺達の前には、トランプのカードが無造作にまとめられている。
涼の手元には2枚だけ残されたトランプのカードがあった。
俺が涼のカードを引く番だった。
「ハル、賭けをしようか?」
そう言いながらニヤリと口の端を引き上げた。
自分が絶対負けないと思っているのだろう。
それが悔しくて、負かせてやりたくなる。
けれど、涼に勝てる気がしない。
「どんな賭け?」
それを聞いてから決めてもいいんじゃないだろうか?
「僕のこの2枚のカード。一枚はババ。一枚は普通のカード。ババを引いたらハルの勝ちにしようか。勝負には負けても賭けには勝てるってのはどう?」
なるほど。いつも俺はババを引いてしまうから、賭けには勝てる可能性はある。
トランプの勝負には負けても、ババを引いたら賭けに勝てる。
これなら涼にも勝てるんじゃないか?
「俺が勝ったら?」
「なんでも言うこと聞いてあげる」
「俺が負けたら?」
「今すぐキスして」
「は⁉︎」
雅哉がいつ戻って来るかもわからないのにここでキスしろと?
「さっき──雅哉に押し倒されて喜んでいたね。あんな顔をしていたのはどうして?」
「あれは……!」
涼との事を思い出したなんて言いたくなくて口籠る。
恥ずかしくなって視線を逸らした。
「そういう顔。僕以外にしないでね。隙がありすぎるんじゃない?」
どんな顔か知らねぇし。
「ほら、賭けをする? しない?」
「俺が勝ったら──本当になんでも言う事を聞くんだな?」
「もちろん」
勝って二度とそういうエロい事をしないと誓ってもらおう。
そうすれば、ふとした時に涼の事を思い出すこともなくなるはずだ。
「やるよ」
「じゃあ、引いて」
トランプの同じ柄の模様を睨む。
こっちは……違うかな? いや、こっち……。
涼の顔を窺ったところで、何も変化はない。
考えてもしょうがない。覚悟を決めて、思い切り引き抜いた。
「こっちだ!」
思い切り引き抜いて見たトランプは──ダイヤの3だった。
なんでこういう時だけババじゃないんだ……。しかも手元に3はなくて合わさるカードもない。
がっくりと肩を落としてダイニングテーブルに突っ伏した。
「はい。ハルの負けね」
嬉しそうにしながら顔をズイッと前に持って来られた。
キスなんて唇を合わせればいいだけだ。
パッとやってパッと終わりにしよう。
そう思ったのに、俺の胸がドキンッドキンッと異様に音を立てている気がする。
よく考えたら、俺からキスするのは初めてだった。
ゆっくりと身を乗り出して目を閉じる涼の顔に迫った。
涼のまつ毛って長いんだな……そんな事を思った。
覚悟を決めて目を閉じて、ふにっとした感触がしたかと思った瞬間に、逃げられないように後頭部を押さえられた。
「んんっ──!」
抗議の声も出せやしない。
舌が口内に侵入してきて、クチュリと音がした。
雅哉が戻ってくるかもしれない。
それなのに、涼は容赦なく口内を蹂躙した。
逃げ回っていた自分の舌を、涼の舌に応えるように絡めて少しすると、やっと満足したのか唇を離された。
ちょっと勃った……。
「なんて事するんだ……」
「ふふっ。僕も勃ったからおあいこ」
ふざけんな。
雅哉は、小学校からの同級生で、家も近いので良く家に遊びに来る。
小学生の時は、毎日のように家に来ていた。
この家に引っ越してからは、遠慮したのか時々になった。
高校は俺とは違う男子校に行ってしまったけれど、今でも遊ぼうと連絡をくれる。
涼のせいで痣になっていた手首が治るまで、誰にも会わないようにしていた。
やっと手首の痣が薄くなり、雅哉と会うことにした。
雅哉は、昼下がりに俺の部屋に遊びに来て、クッションを抱えながらうつ伏せで漫画を読んでいた。
雅哉の二重で釣り上がった目は、元気な印象を与える。
髪は少しウェーブ掛かっていて、柔らかそうだ。
気安い性格で、モテそうなのに彼女がいた事はない。
俺は勉強机の椅子に座って背もたれに寄りかかりながら、棒付きアイスを頬張っていた。雅哉が不意に声を掛けてきた。
「そういえば、今日は夏祭りだろ?」
「そうだな」
「お前、行くだろ?」
「どうして?」
「どうしてって、彼女と行くだろ? 向こうで会ったら紹介しろよ」
「あー……この前別れた」
ミーンッ、ミーンッと、蝉の声が遠くで聞こえる。
雅哉は漫画から顔を上げると、俺をじっと見た。
間抜けな顔をしていて少し面白い。
「なんで? 早くね?」
「まぁ……色々あってさ」
ちゃんと説明できるわけがない。
「会ってねぇの?」
「会ってない」
「じゃあ……今日はひとりぼっち?」
「そうだな」
アイスが熱い体に冷たくて気持ち良かったのに、とうとう最後の一口を食べ終わってしまった。
「な、なぁんだ! じゃあさ! 去年みたいに、俺達と一緒に行くか⁉︎」
「いいのか?」
「ああ! もちろん!」
俺が彼女と別れたというのに、雅哉のやつはなぜか嬉しそうだ。
アイスの棒をゴミ箱に捨てながら、漫画に視線を戻して鼻唄を歌う雅哉を見てムッとする。
雅哉の背後にそっと忍び寄って、後ろから首へ腕を回して軽く締めてやった。
「おい! 何すんだっ!」
「別れたってのに、やけに嬉しそうにしやがって!」
「それは……! おい! ……苦しい!」
ドタンッ、バタンッと部屋で暴れる。
「お前! ふざけんな!」
雅哉の反撃にあった。
俺の腕から逃げると、両腕を取られて力負けした。
そのままクルリと回転されると雅哉が馬乗りになって、押し倒されたような格好になる。
雅哉の方が体格が良くて力もあると認めたくない。
ニヤリと笑われた。悔しい。
「貧弱ハルになんか負けねーよ」
決して貧弱じゃない。俺だって筋肉がついているはずだ。
「離せ! この!」
そのままバタバタ暴れても、押さえ込まれる。
「今度も俺の勝ちだな」
いつもならここで、背中に膝を入れてやるところだった。
けれど、そこで思い出したのは、俺の上で覆い被さってくる涼だ。
『ハル……』
この部屋で何度も突き上げられた記憶が戻ってくる。
雅哉が涼と被った。
──ヤバイヤバイヤバイヤバイ!
「雅哉! ごめん! どいて!」
体が熱い。
これは、夏の暑さと雅哉とふざけ合っていたせいだ。そうに違いない。
涼を思い出して体が熱くなっている訳じゃない!
「ハル?」
雅哉は、いつもと違う様子の俺を訝しんで名前を呼んだ。けれど、羞恥心で雅哉の顔を見れなくて視線を逸らす。
「あれ? ここ……」
雅哉が俺の鎖骨の辺りを撫でた。
そんな事でビクリと震えたのは、気のせいだと思いたい。
こんな体になったのも、全部涼のせいだ!
ガチャリ。
部屋のドアが開いた音に雅哉と共にそっちを見れば、ドアを開けたのは涼だった。
大きなため息をついて、厳しい顔つきをする。
「二人とも、うるさい」
雅哉はパッと離れると正座した。
俺も隣に正座した。
「涼さん、すんません!」
「涼……ごめん」
「まったく……二人は、いくつになっても遊びが変わらないんだから」
涼の言葉に雅哉は、へへへっと恥ずかしそうに笑ってから首をかしげた。
「あれ? ハル、さっき涼さんの事、涼って呼んだ? ハルは兄さんって呼んでたよな?」
「あ……」
まずい。普通に名前で呼んだ。
雅哉は俺達の変化に気付いただろうか?
「それね。社会人になるのに、いつまでも兄さんじゃくすぐったく思えてきて。僕が名前で呼ぶようにお願いしたんだ」
「そうなんすね」
涼が上手く誤魔化したのは、さすがと言うべきか。
父と母にも同じ説明をするんだろう。
「それより、母さんが力が有り余っているなら、下に来て家具の移動を手伝って欲しいって」
その言葉に雅哉と顔を見合わせるのだった。
◆◇◆
部屋の模様替えをしていた母の手伝いをした。
「ありがとうね。お礼は何がいいかしら?」
「じゃあ、今日ハルが夏祭りで遅くなっても怒らないであげて下さい!」
雅哉の戯けた言いように、母がコロコロと笑う。
「ハル、夏祭り行くの?」
「うん。予定もなかったからさ」
「そう……。僕も大学の同級生から誘われていたから、行くことにするよ」
「なら、向こうで会えるかもしれないっすね!」
「そうだね」
夏祭りの話で盛り上がっていれば、母さんがポンッと手を叩いた。
「それなら、浴衣着て行く? ハルも涼君も雅哉君も、母さんが着付けてあげるわ。宗輔さんの浴衣が何着かあったわ」
父が浴衣を持っているなんて知らなかった。
うーん……浴衣なんて面倒臭い。
そう言おうとした俺を押しのけて、雅哉の目が輝いた。
「マジっすか! 俺、浴衣なんて初めて着ます!」
「ふふっ。じゃあ、用意するわ。時間になったら着付けましょう」
乗り気な雅哉にやめようと言えず、夏祭りに浴衣を着ていく羽目になってため息をついてしまった。
リビングで涼と雅哉で時間を潰していた。
トランプでもするか? の雅哉の一言で始まったババ抜きは、何度やっても俺も雅哉も涼に勝てない。
ムキになって何度目かのババ抜きをしていた時に、雅哉が母に呼ばれて抜けた。
涼と二人きりになったリビング。
ダイニングテーブルに向き合う形で座る俺達の前には、トランプのカードが無造作にまとめられている。
涼の手元には2枚だけ残されたトランプのカードがあった。
俺が涼のカードを引く番だった。
「ハル、賭けをしようか?」
そう言いながらニヤリと口の端を引き上げた。
自分が絶対負けないと思っているのだろう。
それが悔しくて、負かせてやりたくなる。
けれど、涼に勝てる気がしない。
「どんな賭け?」
それを聞いてから決めてもいいんじゃないだろうか?
「僕のこの2枚のカード。一枚はババ。一枚は普通のカード。ババを引いたらハルの勝ちにしようか。勝負には負けても賭けには勝てるってのはどう?」
なるほど。いつも俺はババを引いてしまうから、賭けには勝てる可能性はある。
トランプの勝負には負けても、ババを引いたら賭けに勝てる。
これなら涼にも勝てるんじゃないか?
「俺が勝ったら?」
「なんでも言うこと聞いてあげる」
「俺が負けたら?」
「今すぐキスして」
「は⁉︎」
雅哉がいつ戻って来るかもわからないのにここでキスしろと?
「さっき──雅哉に押し倒されて喜んでいたね。あんな顔をしていたのはどうして?」
「あれは……!」
涼との事を思い出したなんて言いたくなくて口籠る。
恥ずかしくなって視線を逸らした。
「そういう顔。僕以外にしないでね。隙がありすぎるんじゃない?」
どんな顔か知らねぇし。
「ほら、賭けをする? しない?」
「俺が勝ったら──本当になんでも言う事を聞くんだな?」
「もちろん」
勝って二度とそういうエロい事をしないと誓ってもらおう。
そうすれば、ふとした時に涼の事を思い出すこともなくなるはずだ。
「やるよ」
「じゃあ、引いて」
トランプの同じ柄の模様を睨む。
こっちは……違うかな? いや、こっち……。
涼の顔を窺ったところで、何も変化はない。
考えてもしょうがない。覚悟を決めて、思い切り引き抜いた。
「こっちだ!」
思い切り引き抜いて見たトランプは──ダイヤの3だった。
なんでこういう時だけババじゃないんだ……。しかも手元に3はなくて合わさるカードもない。
がっくりと肩を落としてダイニングテーブルに突っ伏した。
「はい。ハルの負けね」
嬉しそうにしながら顔をズイッと前に持って来られた。
キスなんて唇を合わせればいいだけだ。
パッとやってパッと終わりにしよう。
そう思ったのに、俺の胸がドキンッドキンッと異様に音を立てている気がする。
よく考えたら、俺からキスするのは初めてだった。
ゆっくりと身を乗り出して目を閉じる涼の顔に迫った。
涼のまつ毛って長いんだな……そんな事を思った。
覚悟を決めて目を閉じて、ふにっとした感触がしたかと思った瞬間に、逃げられないように後頭部を押さえられた。
「んんっ──!」
抗議の声も出せやしない。
舌が口内に侵入してきて、クチュリと音がした。
雅哉が戻ってくるかもしれない。
それなのに、涼は容赦なく口内を蹂躙した。
逃げ回っていた自分の舌を、涼の舌に応えるように絡めて少しすると、やっと満足したのか唇を離された。
ちょっと勃った……。
「なんて事するんだ……」
「ふふっ。僕も勃ったからおあいこ」
ふざけんな。
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