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遠距離編
近くにいる幸せ
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俺は無事に大学を卒業した。
春から創志の学園で働く事も決まっているし、住む所も決めた。
創志を追いかけると決めてから長かった。
必要のない物を処分した荷物は、スーツケース一つ分しかなかった。
使っていた部屋を綺麗に片付けた。
「行くのか?」
「はい。今までお世話になりました。色々ありがとうございました」
「少しでも俺の事好きには……」
最後までこの人は本当に諦めの悪い人だ。
クスクスと笑う。
「残念ながら、告白された後とされる前と何も変わりません」
「そっか……」
「──俺の大事な人に変わりないです」
「え……?」
面白い顔するよな。
「薫さんは、大事な友達」
「そっか。そうだな!」
友達でも充分嬉しそうだ。
「そっちの仕事があったら連絡する。その時は、ホテルじゃなくてお前の家に泊まらせて」
「はい。家政夫はどうするんですか? また羽山さんに迷惑かけるんですか?」
「まぁ……そうだな」
薫さんは、腕を組んで悩む。
「新しい家政夫を雇って下さい。薫さんには世話を焼いてくれる人がいないとダメです」
「そうだけど……信頼できる人じゃなきゃ家に入れたくないんだよな……」
「俺の大学の同級生が、内定取り消しになって仕事探してました。信頼できる人です。声を掛けてみて下さい」
「まぁ……気が向いたらな」
その人の連絡先を書いたメモを渡しておく。
「それじゃ、また」
「ああ。またな──!」
笑顔で別れる。
俺は、薫さんの涙ぐんでニカッと笑う顔を忘れないと思う。
今頃泣いてるのかも。夜はやけ酒して羽山さんに迷惑かけているかもしれない。
そう思うと微笑ましい。
可愛い弟みたいな人だった。
時々……逞しい男の人に見えた。その事は内緒にしておこう。
駅へ行って、新幹線に乗った。
長い時間を掛けて、創志の住む駅に着く。
改札を通ったら、混雑する駅構内に大好きな人が見えた。
姿を見ただけでこんなにも俺の胸を焦がすのは創志だけだ。
創志に近付けば、向こうも俺に気付いて駆け寄ってくる。
俺の引いていたスーツケースを持ってくれる。
「ちぃくん、会いたかった……抱きしめたいな」
「いきなり何言ってんだよ……」
そう言いながらも嬉しい。
「それじゃ、行こうか」
創志の後をついて行き、タクシーに乗った。
「あれ? 俺、創志にアパートの住所言ったっけ?」
「知ってるよ。先に不動産屋にも行って鍵も預かってる」
新しく住むアパートの契約時に創志の知り合いの不動産屋を紹介してもらった。
その時に創志もいたから覚えてたのか。
なんて思っていたけれど──。
着いた場所は、俺の契約したアパートじゃなかった。
「創志……ここじゃない」
「ここだよ。黙ってついてきて」
創志がスタスタと進んで鍵を開けた。
中に入るように言われる。
1LDKの少し広めの間取りだった。
家具類は揃っているし、もうすでに誰かが住んでいそうだ。
「ちぃくん、俺達の家、気に入った?」
その言葉に呆然とする。
「ちぃくんが契約した所は契約しないって事前に言ってあったんだ。それで、俺がこっちを契約した」
「嘘……」
「嘘じゃない。俺とここに住む以外、他に住む所ないよ」
ニコニコしながら、とんでもない事をしてくれる。
「嫌だった?」
「嫌でもここに住むしかないんだろ?」
創志は、俺を覗き込みながらニヤニヤする。
「本当は?」
お見通しみたいだ。
「う、嬉しい……!」
そのまま創志に抱きついた。
創志は、抱き返してチュッチュッとキスしてくる。
「でも、お前、実家は?」
「和志が大学卒業して戻ってきただろ? だから大丈夫。何かあったら和志から連絡がくる。それに、後を継ぐのは和志だ」
「一緒にいられるんだ……」
思わず呟いた言葉に創志は、とろけるような笑顔を見せてくれた。
「そう。俺とずーっと一緒にいてね」
キスしながら、ゴソゴソと服に手を突っ込んできた……。
「んっ……おい……創志……」
「話は後で。今は……ちぃくんを堪能させてね……」
久しぶりに会ってする事がこれって……。
そう思いながらも嬉しくて、創志の愛撫を受け入れた。
◆◇◆
二人でベッドの上で横になりながら余韻に浸る。
「なぁ……創志は、俺が浮気したって言ったら……別れる?」
「は!?」
創志は、ガバッと上半身を起こした。
キスって浮気に入るよな?
「なんでセックスした後にそんな事を……?」
「話は後って言ったから……」
「も、もしかして……池入と俺を比べた……? 池入の方が良かったって事か……?」
「どうして薫さんだってわかるんだ?」
怒ると言うよりは、ショックを受けているみたいだ。
ブツブツと喋っている。
「それで──俺と別れる気なの?」
「俺が? 創志が嫌なんじゃないかって思って──……」
あれ? 創志の目が据わっている。
次には必死な表情に変わった。
「俺を捨てる気なの!?」
「捨てる!?」
上に乗られて、すかさず首筋を舐められて、胸をいじってくる。
「千宙が誰を好きになっても、俺は絶対別れない」
「ちょ、ちょっと……待てって……は、話を聞け……って……」
「いやだ……あいつの事なんか忘れさせる……また俺を好きにさせる。テクニックなら俺の方が上だ」
「か、勘違いを……あっ!」
鎖骨に吸い付かれた。創志はくっきりと付いた痕にうっとりしてそこを撫でる。
「創志……! 話を聞けって……!」
「千宙の事を一番喜ばせられるのは俺だよ!」
胸の尖りを口に含んで転がされる。
「んっ……ち、違う……キスされただけだよ……!」
「キスだけで──俺と別れるって?」
上半身を起こした創志に足をガシッと掴まれて広げられる。
尻の蕾に指を入れられて動かされた。
グチュグチュと卑猥な音が室内に響く。
「あっ、んっ、そ、そうしっ! ふっ……あっ!」
気持ち良くされて、話ができない!
「千宙の乱れる姿って……たまらないんだ……もう勃った。挿れる」
「創志!? あっ──!」
ズブリと一気に挿入されて動かれる。
「んっ、あっ! ま、待てって……! あっ、あぁ、うっ、あっ……!」
激しく動かれて、先ほどまで味わっていた熱が戻ってくる。
「千宙のいい所……知ってるよ。さっきもここでイッたよね?」
気持ちいい所を突かれながら、下腹をスルリと撫でられた。
気持ちよさで、昇り詰めてくる。
「あっ……はっ……! いやっ、だめ──っ!」
「これすると気持ちいいんだよね? こんな気持ちいい事されて──千宙は俺と別れられるの?」
体を倒してきた創志にキスされそうだった。
近付いた顔が辛そうに歪んでいて、胸がキュッとする。
「こんのっ──バカッ!」
キスされる前に創志のおでこにドカッと俺のおでこを当てて止めた。
おでこが痛いが、目を見開いて驚いている創志の唇を塞いで口内を舐め回す。
呆然として動かなかった舌が段々と俺に応えてくる。
創志のキスがいつも通りに変わったら唇を離した。
「落ち着いたか?」
「うん……」
「俺は創志と別れない。俺が他の人とキスしたから、創志が嫌なんじゃないかと思ったんだ」
真っ直ぐに創志を見つめる。その瞳に先ほどの陰りはない。
「俺が千宙と別れるって思ったの? 俺が千宙を嫌いになるって?」
キョトンとした顔で俺を見つめ返してくる。
「そうだよ! 俺だってお前にす……捨てられないか不安なんだよ!」
恥ずかしくて視線を逸らせば、クスクスと笑われた。
創志は、ひとしきり笑ってからホッと息を吐いた。
「それで……ちぃくんは池入にキスされて……どうしたの?」
「賭けをした」
「賭け?」
「そう。卒業するまでに薫さんを好きになったらそのままそこに住む。好きにならなかったら友達に戻るって賭け」
「なんでそんな事に……ちぃくん、池入の事好きになってないよね?」
創志は、はぁとため息をついて、ぐりぐりと頭を胸へ押し付けてくる。
その頭をギュッと抱きしめる。
「俺がここにいるって事が答えだろ?」
「──どうしてすぐに言わなかったの?」
「卒業までって話だったし、言った所でお前が不安になるだけだろ?」
会えないのに不安にさせたくなかった。
「そう……だね。今で良かったかも。離れてた時に言われたら、おかしくなってたな──」
先ほどの創志は確かにおかしかった。
俺のいない所であんな風になったら──やけになった創志が浮気しかねないな……。
「俺は創志が好きだよ。信じられない?」
そう聞いたら、微笑んでキスしてくる。
「信じられる……」
「じゃあ別れないよな?」
「別れるわけない! 俺は千宙がいいんだ……千宙じゃないとだめだ……」
そのまま胸の尖りをパクリと口に含まれた。
止まっていた腰をゆっくりと動かされる。
同時に攻められると快感が一気に押し寄せてくる。
「んっ……あっ……」
「こんなエロい千宙……見られてなくて良かった……」
「もっと……もっとして……」
今度の創志の表情は嬉しそうだ。
「千宙……好き……大好き……愛してる──ほら、千宙の中、締まった……」
この嬉しそうに笑う顔が好きだ。
創志の気持ちを伝える言葉はストレートだ。
それが俺を心地良くさせる。
「千宙……俺の千宙だ。もう俺以外にキスしちゃだめだからね……」
「んっ……あっ、お前も、な……っ」
どちらかというと俺より創志の方が心配なんだけど……と思っても言わないでおく。
深くキスすれば、とろけそうだ。
「千宙……そんなに締めたら……イキそう……」
「ん、あっ、はっ……俺も……イク──っ」
激しく攻め立てられて、頭の中が真っ白になっていく。
「愛してるよ……千宙……」
「あっ、創志……俺も愛してる……あっ、あんっ……あぁ──っ!」
同時に満たされて抱きしめ合う。
こんなに近くにお互いを感じられる事が嬉しい。
「このまま千宙の中にいたい……」
「ばか……」
「俺の事を追いかけてくれてありがとう。俺、絶対千宙を後悔させない。一緒に幸せになろうね」
「もちろん」
長いキスは心も満たす。
最初の印象は、最低なクズ教師だった。
それが今はこんなにも俺の大事な人だ。
人生なんてどうなるかなんてわからない。
俺の仕事も住む場所も全部創志が中心になっている。
俺がこんなにも創志を好きだなんて……創志本人はわかっていないのかもしれない。
今では創志がいないこの先なんてもう考えられない。
俺の幸せは、創志の隣にある。
離れていた分、これからはずっと一緒にいたいと思った。
──────────
※ここまでお読み頂きありがとうございます。本編は終了ですが、番外編が少しあります。最後までよろしくお願いします。
春から創志の学園で働く事も決まっているし、住む所も決めた。
創志を追いかけると決めてから長かった。
必要のない物を処分した荷物は、スーツケース一つ分しかなかった。
使っていた部屋を綺麗に片付けた。
「行くのか?」
「はい。今までお世話になりました。色々ありがとうございました」
「少しでも俺の事好きには……」
最後までこの人は本当に諦めの悪い人だ。
クスクスと笑う。
「残念ながら、告白された後とされる前と何も変わりません」
「そっか……」
「──俺の大事な人に変わりないです」
「え……?」
面白い顔するよな。
「薫さんは、大事な友達」
「そっか。そうだな!」
友達でも充分嬉しそうだ。
「そっちの仕事があったら連絡する。その時は、ホテルじゃなくてお前の家に泊まらせて」
「はい。家政夫はどうするんですか? また羽山さんに迷惑かけるんですか?」
「まぁ……そうだな」
薫さんは、腕を組んで悩む。
「新しい家政夫を雇って下さい。薫さんには世話を焼いてくれる人がいないとダメです」
「そうだけど……信頼できる人じゃなきゃ家に入れたくないんだよな……」
「俺の大学の同級生が、内定取り消しになって仕事探してました。信頼できる人です。声を掛けてみて下さい」
「まぁ……気が向いたらな」
その人の連絡先を書いたメモを渡しておく。
「それじゃ、また」
「ああ。またな──!」
笑顔で別れる。
俺は、薫さんの涙ぐんでニカッと笑う顔を忘れないと思う。
今頃泣いてるのかも。夜はやけ酒して羽山さんに迷惑かけているかもしれない。
そう思うと微笑ましい。
可愛い弟みたいな人だった。
時々……逞しい男の人に見えた。その事は内緒にしておこう。
駅へ行って、新幹線に乗った。
長い時間を掛けて、創志の住む駅に着く。
改札を通ったら、混雑する駅構内に大好きな人が見えた。
姿を見ただけでこんなにも俺の胸を焦がすのは創志だけだ。
創志に近付けば、向こうも俺に気付いて駆け寄ってくる。
俺の引いていたスーツケースを持ってくれる。
「ちぃくん、会いたかった……抱きしめたいな」
「いきなり何言ってんだよ……」
そう言いながらも嬉しい。
「それじゃ、行こうか」
創志の後をついて行き、タクシーに乗った。
「あれ? 俺、創志にアパートの住所言ったっけ?」
「知ってるよ。先に不動産屋にも行って鍵も預かってる」
新しく住むアパートの契約時に創志の知り合いの不動産屋を紹介してもらった。
その時に創志もいたから覚えてたのか。
なんて思っていたけれど──。
着いた場所は、俺の契約したアパートじゃなかった。
「創志……ここじゃない」
「ここだよ。黙ってついてきて」
創志がスタスタと進んで鍵を開けた。
中に入るように言われる。
1LDKの少し広めの間取りだった。
家具類は揃っているし、もうすでに誰かが住んでいそうだ。
「ちぃくん、俺達の家、気に入った?」
その言葉に呆然とする。
「ちぃくんが契約した所は契約しないって事前に言ってあったんだ。それで、俺がこっちを契約した」
「嘘……」
「嘘じゃない。俺とここに住む以外、他に住む所ないよ」
ニコニコしながら、とんでもない事をしてくれる。
「嫌だった?」
「嫌でもここに住むしかないんだろ?」
創志は、俺を覗き込みながらニヤニヤする。
「本当は?」
お見通しみたいだ。
「う、嬉しい……!」
そのまま創志に抱きついた。
創志は、抱き返してチュッチュッとキスしてくる。
「でも、お前、実家は?」
「和志が大学卒業して戻ってきただろ? だから大丈夫。何かあったら和志から連絡がくる。それに、後を継ぐのは和志だ」
「一緒にいられるんだ……」
思わず呟いた言葉に創志は、とろけるような笑顔を見せてくれた。
「そう。俺とずーっと一緒にいてね」
キスしながら、ゴソゴソと服に手を突っ込んできた……。
「んっ……おい……創志……」
「話は後で。今は……ちぃくんを堪能させてね……」
久しぶりに会ってする事がこれって……。
そう思いながらも嬉しくて、創志の愛撫を受け入れた。
◆◇◆
二人でベッドの上で横になりながら余韻に浸る。
「なぁ……創志は、俺が浮気したって言ったら……別れる?」
「は!?」
創志は、ガバッと上半身を起こした。
キスって浮気に入るよな?
「なんでセックスした後にそんな事を……?」
「話は後って言ったから……」
「も、もしかして……池入と俺を比べた……? 池入の方が良かったって事か……?」
「どうして薫さんだってわかるんだ?」
怒ると言うよりは、ショックを受けているみたいだ。
ブツブツと喋っている。
「それで──俺と別れる気なの?」
「俺が? 創志が嫌なんじゃないかって思って──……」
あれ? 創志の目が据わっている。
次には必死な表情に変わった。
「俺を捨てる気なの!?」
「捨てる!?」
上に乗られて、すかさず首筋を舐められて、胸をいじってくる。
「千宙が誰を好きになっても、俺は絶対別れない」
「ちょ、ちょっと……待てって……は、話を聞け……って……」
「いやだ……あいつの事なんか忘れさせる……また俺を好きにさせる。テクニックなら俺の方が上だ」
「か、勘違いを……あっ!」
鎖骨に吸い付かれた。創志はくっきりと付いた痕にうっとりしてそこを撫でる。
「創志……! 話を聞けって……!」
「千宙の事を一番喜ばせられるのは俺だよ!」
胸の尖りを口に含んで転がされる。
「んっ……ち、違う……キスされただけだよ……!」
「キスだけで──俺と別れるって?」
上半身を起こした創志に足をガシッと掴まれて広げられる。
尻の蕾に指を入れられて動かされた。
グチュグチュと卑猥な音が室内に響く。
「あっ、んっ、そ、そうしっ! ふっ……あっ!」
気持ち良くされて、話ができない!
「千宙の乱れる姿って……たまらないんだ……もう勃った。挿れる」
「創志!? あっ──!」
ズブリと一気に挿入されて動かれる。
「んっ、あっ! ま、待てって……! あっ、あぁ、うっ、あっ……!」
激しく動かれて、先ほどまで味わっていた熱が戻ってくる。
「千宙のいい所……知ってるよ。さっきもここでイッたよね?」
気持ちいい所を突かれながら、下腹をスルリと撫でられた。
気持ちよさで、昇り詰めてくる。
「あっ……はっ……! いやっ、だめ──っ!」
「これすると気持ちいいんだよね? こんな気持ちいい事されて──千宙は俺と別れられるの?」
体を倒してきた創志にキスされそうだった。
近付いた顔が辛そうに歪んでいて、胸がキュッとする。
「こんのっ──バカッ!」
キスされる前に創志のおでこにドカッと俺のおでこを当てて止めた。
おでこが痛いが、目を見開いて驚いている創志の唇を塞いで口内を舐め回す。
呆然として動かなかった舌が段々と俺に応えてくる。
創志のキスがいつも通りに変わったら唇を離した。
「落ち着いたか?」
「うん……」
「俺は創志と別れない。俺が他の人とキスしたから、創志が嫌なんじゃないかと思ったんだ」
真っ直ぐに創志を見つめる。その瞳に先ほどの陰りはない。
「俺が千宙と別れるって思ったの? 俺が千宙を嫌いになるって?」
キョトンとした顔で俺を見つめ返してくる。
「そうだよ! 俺だってお前にす……捨てられないか不安なんだよ!」
恥ずかしくて視線を逸らせば、クスクスと笑われた。
創志は、ひとしきり笑ってからホッと息を吐いた。
「それで……ちぃくんは池入にキスされて……どうしたの?」
「賭けをした」
「賭け?」
「そう。卒業するまでに薫さんを好きになったらそのままそこに住む。好きにならなかったら友達に戻るって賭け」
「なんでそんな事に……ちぃくん、池入の事好きになってないよね?」
創志は、はぁとため息をついて、ぐりぐりと頭を胸へ押し付けてくる。
その頭をギュッと抱きしめる。
「俺がここにいるって事が答えだろ?」
「──どうしてすぐに言わなかったの?」
「卒業までって話だったし、言った所でお前が不安になるだけだろ?」
会えないのに不安にさせたくなかった。
「そう……だね。今で良かったかも。離れてた時に言われたら、おかしくなってたな──」
先ほどの創志は確かにおかしかった。
俺のいない所であんな風になったら──やけになった創志が浮気しかねないな……。
「俺は創志が好きだよ。信じられない?」
そう聞いたら、微笑んでキスしてくる。
「信じられる……」
「じゃあ別れないよな?」
「別れるわけない! 俺は千宙がいいんだ……千宙じゃないとだめだ……」
そのまま胸の尖りをパクリと口に含まれた。
止まっていた腰をゆっくりと動かされる。
同時に攻められると快感が一気に押し寄せてくる。
「んっ……あっ……」
「こんなエロい千宙……見られてなくて良かった……」
「もっと……もっとして……」
今度の創志の表情は嬉しそうだ。
「千宙……好き……大好き……愛してる──ほら、千宙の中、締まった……」
この嬉しそうに笑う顔が好きだ。
創志の気持ちを伝える言葉はストレートだ。
それが俺を心地良くさせる。
「千宙……俺の千宙だ。もう俺以外にキスしちゃだめだからね……」
「んっ……あっ、お前も、な……っ」
どちらかというと俺より創志の方が心配なんだけど……と思っても言わないでおく。
深くキスすれば、とろけそうだ。
「千宙……そんなに締めたら……イキそう……」
「ん、あっ、はっ……俺も……イク──っ」
激しく攻め立てられて、頭の中が真っ白になっていく。
「愛してるよ……千宙……」
「あっ、創志……俺も愛してる……あっ、あんっ……あぁ──っ!」
同時に満たされて抱きしめ合う。
こんなに近くにお互いを感じられる事が嬉しい。
「このまま千宙の中にいたい……」
「ばか……」
「俺の事を追いかけてくれてありがとう。俺、絶対千宙を後悔させない。一緒に幸せになろうね」
「もちろん」
長いキスは心も満たす。
最初の印象は、最低なクズ教師だった。
それが今はこんなにも俺の大事な人だ。
人生なんてどうなるかなんてわからない。
俺の仕事も住む場所も全部創志が中心になっている。
俺がこんなにも創志を好きだなんて……創志本人はわかっていないのかもしれない。
今では創志がいないこの先なんてもう考えられない。
俺の幸せは、創志の隣にある。
離れていた分、これからはずっと一緒にいたいと思った。
──────────
※ここまでお読み頂きありがとうございます。本編は終了ですが、番外編が少しあります。最後までよろしくお願いします。
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