隣の家の住人がクズ教師でした

おみなしづき

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遠距離編

初ケンカ?自分を棚に上げるな

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 布団を敷いてそこに薫さんを寝かせた。

「千宙ぁ……」
「はいはい、ここにいますよ」

 返事をすれば薫さんはヘラッと笑ってそのまま寝てしまったみたいだ。
 まったくと呆れても微笑ましい。
 寝顔が可愛らしい。本当に年上なのかと思う。
 世話の焼ける弟ってこんな感じかな?

 創志は、俺達の布団の上で胡座をかいて腕を組んでいる。
 なんとなくその前に正座する。

「ちぃくん、彼はどなた?」
「隣の家の池入薫さん」
「どこかで……聞いたことあるね……」
「俳優さんらしいので、創志でも知っているのかも……」

 創志が目を細めて見てくる。怖い。

「どういう関係?」
「……友達?」
「疑問形なの?」
「いや、ちゃんと友達」

 悪い事をしてないのに取り調べを受けている気分だ。

「──気軽に彼に近付かないこと。わかった?」
「なんで?」

 友達なのに、近付いちゃだめ? 納得いかない。

「抱きつかれてたでしょ!」
「それは、酔っ払っているからだろ? 抱きつかれたのは初めてだ」
「酔っ払っていれば、抱きついていいって?」

 なんでいちいち突っかかってくるのか。

「創志だって酔うと抱きついてくるじゃないか」

 創志なんて抱きつくだけじゃ終わらない。

「俺はいいの!」
「なんで薫さんはダメなの?」
「それはっ……! お、俺が友達に抱きつかれてもいいの!?」

 少し怒っている創志にこっちも胸がもやもやしてくる。

「──抱きつかれてたよね?」

 今度はこっちが目を細める番だ。

「それも、友達じゃない人に──」

 視線を逸らさずに見つめれば、創志はグッと口ごもる。

「い、いつの話をしてるんだ!」
「アパートの前で抱き合ってた」
「抱き合ってない! 一方的に抱きつかれただけ!」

 創志がセフレに抱きつかれた時の事を思い出す。キスまでされそうだった。酔っていない分だけタチが悪いと思う。

「俺と離れてる間に飲み会にも何度か行ったよな? そこで誰かに抱きつかれたりした記憶ないのか?」
「え──な、ないと……思う……」

 歯切れが悪い。これ──あるな。
 胸がもやっとする。

、同じですよね? むしろ、酔ったふりした下心のある女性や、セフレに抱きつかれる方が悪いですよね?」

 自分で言いながらイライラしてきた。

「な、なんでそんな喋り方……」
「このまま話しても意味がない気がします。今日はもう寝ませんか?」

 ニッコリ優等生スマイルだ。

「う、うん……」

 創志を黙らせて布団に入る。
 どうしてこうなったのかとため息をつく。
 背中を向けていれば、背後から抱きつかれた。お前も抱きついてくるじゃないか……。

「ちぃくん……怒った?」

 不安そうな声に絆される。
 創志はずるいんだ……。

「怒ってません」
「このまま寝ていい?」
「……好きにして下さい」

 ゴソゴソと服の中に手を入れてきた。
 声は不安そうなのに、やる事がおかしい。

「ちょっと……」
「好きにしていいって……」
「そういう意味じゃない……」

 素肌を撫でられて、声が出そうで慌てて声を抑える。

「さっきもう一回していいって言った……」
「さっきと状況が違う! それにいいなんて言ってない……!」

 胸に手を這わされる。

「ぁ……」

 胸の頂を摘んで捏ね回される。
 首筋に舌を這わされた。

「んっ……んっ、はっ……」
「体は正直だね……」

 耳たぶをカプッと噛まれた。
 気持ち良さにゾクッと震えた。

 これ以上はだめだ!
 創志の脇腹を肘でドカッと殴った。

「ぐっ……! 痛いよっ……!」
「天誅だ! 離れて寝ろ。変態」

 冷ややかに言い放つ。

「そんなぁ……もうしないからこのまま寝ていいでしょ?」

 情けない声で言われても、もう絆されないぞ。

「クズ教師」
「ちぃく~ん」

 ギュウギュウ抱きついてくる。

「好きだよ。好き。大好き……どんな千宙も全部好き……」

 やっぱりずるい……。
 俺の心臓は、そんな言葉で早鐘を打ってしまう。

「機嫌直った? ──ふふっ。聞くまでもないね。すごい心臓の音……くっついてるとよく分かっていいね」

 創志を無視して寝ようとしたのに、なかなか眠れなかった。
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