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遠距離編

久しぶりの熱

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 創志と並んで歩くなんて久しぶりすぎる。
 連絡は取っていた。
 何か聞くことがあるとすれば──浮気したかどうかだ。

 クズ教師だった創志が浮気もせずにいられたとは思えない。
 電話した時に誰かと一緒にいる事は多かったし、時々すごく不安になった。
 二回ぐらいなら許せる……かな……いや……無理だ。
 創志に誰かが触れるなんて……嫌だ……。
 それも浮気じゃなくて本気だったら──

「ちぃくん?」

 黙り込んでいた俺を覗き込んでくる。
 もうすぐ日も落ちる時間なのに、背景がキラキラして見えるんだよな。
 こんなにカッコ良かったかなぁ……。

「何でもない……」

 視線を創志から逸らしたら、手を繋がれた。
 思わず視線を戻す。
 創志が俺の事を見透かしているかのように笑う。

「もうすぐ家だし、いいよね?」
「……うん……」

 握られた手が熱い。
 こんな事で俺は、すごく嬉しいんだ。

「夕飯は何?」
「親子丼」
「やった。ちぃくんの親子丼、卵トロトロで大好き」

 離れていた時間を感じさせない会話がすごく心地よかった。

 そのままアパートまで帰ってきた。
 ドアの鍵を開けるのに手を離したら、すごく名残惜しかった。

 ドアを開けて先に中に入る。
 その瞬間に、肩を掴まれて振り向けば、玄関の壁に背中を押し付けられた。

「そ──」

 名前は言えなかった。
 バタンッとドアが閉まる。
 押し付けられた唇は熱くて体が沸騰しそうだ。

「家に着いたら……いいんだよね?」

 俺を見つめる創志は、欲情して物欲しそうだった。
 こういう顔されるとすごく興奮する。
 創志の首に腕を回す。

「してって言った……」

 創志がゴクリと喉を鳴らす。
 お互いの噛み付くようなキスは、俺たちらしい。

「ずっとしてなかったから……触れたら止まらないや……。このまましていい?」

 俺以外の人としてないって事でいいんだよな?
 嬉しくて腕に力を込める。

「創志の好きにすればいい……」
「ちぃくんは……俺を煽るのがうまい……」

 俺を求める時のこの少し口角を上げた顔が好きだ。

「ん──っ」

 俺の首筋に創志の舌が這う。創志の指が俺の服を脱がす。
 器用に動く指先が胸の先を摘むとビリビリとした快感で震える。

「あっ、ま、待って……久しぶりで……敏感みたいだ……」

 触れられた所から熱が引かない。

「ふふっ。ちぃくんも久しぶりって事は、浮気はしてないみたいで良かった」
「あ、当たり前だろ……! お前と一緒に……するな……っ」

 俺なんて創志みたいにモテたりしない。

「ひどいな。俺、千宙に一途なの。教えてあげる」

 創志は、履いていたズボンをずらすと自分のモノを見せつけた。

「千宙に触れただけでこれだよ……」

 妖艶に笑うと、俺の履いていたジーンズも下ろされて、俺のモノを握られた。

「んっ、創志……」

 何度も上下に動かされる。

「すごいね……もうグチュグチュ……ほら、次から次にあふれて止まらないね……」
「恥ずかしい事……言うなっ……」

 更に顔が赤くなってしまったのがわかる。

「そういう顔がたまらないんだよ……」

 乳首を舐められながら、激しく動かされたらもう無理だった。

「あっ! そうし──っ!」

 気持ち良さに震える。
 創志の手の中でイッてしまった……すごく早かった……。
 そのまま尻の蕾に指を挿れられて、動かされる。

「すごい……いっぱい濡れてるね……これだけ濡れてればもういいね」

 次から次へと与えられる快感で喘ぐ事しかできない。
 立っているのがやっとだ。

「ごめん……本当余裕なくて──」

 片足を上げられたと思ったら、創志はそのまま俺の中に侵入してくる。

「あぁ……っ!」

 久しぶりの感覚に辛いはずなのに、体も心もこんなにも創志を求めていた。

「きっついね……ちぃくん、大丈夫?」

 俺を気遣ってくれる優しい声に頭が痺れそうだ。

「平気……もっといっぱい奥まで感じさせて……」

 創志がここにいるんだと感じたい。

「問題児は健在だね……っ」

 深い口付けにずっとこのままで居たいと思うほど酔いしれた。
 俺も創志も久しぶりにお互いの熱を貪り合った。

     ◆◇◆

 親子丼を作ったのは、激しい行為が終わって俺が動けるようになってからだった。
 一緒に食べて、一緒に風呂に入って、後は寝るだけという事で布団の中で抱きしめ合っていた。

「ちぃくん、家に居るだけで良かったの?」
「いいよ。創志がいるだけでいい……」
「ちぃくん……」

 チュッとされるキスが嬉しい。

「もう一回していい?」

 していい? と聞きながら、俺の服の中に手を入れてくる。
 乳首を摘まれた。

「んっ……」

 そこで、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。

「こんな時間に誰?」

 創志の不機嫌そうな声に苦笑いしてドアを開けたら、知らない眼鏡の人に肩を貸されて酔っ払った薫さんだった。

「こんな時間にごめんねぇ~。僕は薫のマネージャーなんだけど、仕事終わりに飲みたい気分だからって付き合ったはいいけど、この通りで……君の事は薫から聞いてるから──」
「千宙だぁ~」
「薫!」

 マネージャーさんの咎める声も聞こえないのかフラリと俺に抱きついてくる。
 お酒臭い……相当酔っているみたいだ。
 俺もマネージャーさんも苦笑いだ。

「薫さんの家の鍵はどこですか?」
「それがさ、わからないんだよ。ポッケにはないみたいで、薫もこの通りで答えるどころじゃなくてね。いつもは人目を気にしてそこまで飲まないんだよ。こんなに酔っ払ってるの初めてで……」

 マネージャーさんは困り顔だ。

「千宙ぁ……泊めてぇ……」

 首元にスリスリと擦り寄ってくる。

「何言ってるんですか……今日はダメだって知ってるでしょう?」
「僕からもお願いしていい? 明日になれば、家に帰るだろうから」

 マネージャーさんに頼まれて、どうしたらいいか困っていれば、背後から創志が覗き込んできた。

「泊めてやれば?」
「いいの?」
「いいよ。その代わり──」

 俺に抱きついていた薫さんを引き剥がして、創志が肩を貸す。

「ちゃあんと説明してね」

 創志の笑顔が少し怖かった。
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