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クズ教師編
クズ教師は今日もクズ
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バイトのない休日。
電気代の節約も兼ねて冷房は使わずに窓を開けて涼もうとした。
「そろそろ冷房使ってもいいかな……」
なんてぼやきながら、窓の外を眺めた。
「んっ……あっ! あ、あっ、あんっ……」
ふと夏の昼下がりにふさわしくない卑猥な声が聞こえてスンッ──と心が冷める。
窓開けてんのかよ……冷房使えよ。
笹森は、部活の顧問なんてしていないし、日曜は比較的家にいるようだった。
絶え間なく聞こえてくる声に、壁を蹴りたくなった。
仕方なく窓を閉めて部屋を出て、近くの冷房の効いた電気屋で時間を潰して家に帰った。
やっぱり冷房って涼しくて最高。
今度から俺の方が冷房使おう……。
◆◇◆
バイトが終わってアパートの鍵をガチャリと開けた。
すると、待っていたかのように隣のドアが開いた。
「ちぃくん、ちょっと来て」
ちぃくん……誰だ……背筋が寒くなる。
なんでそんな呼び方をするのか疑問だ。
俺に向かって手招きする。
「早く来て」
そのまま無視しようとしたら、ちぃくんと何度も呼ばれて顔が引きつる。
仕方なく笹森の方へ行けば、グイッと引っ張られて笹森の部屋の玄関に入れられた。
そのまま肩を組まれた。
笹森の部屋はやっぱり俺の部屋と同じ間取りだった。
この位置からでは、笹森の部屋にシングルのベッドが置いてあるのが見えるだけだった。
けれど、ゆっくり部屋を観察とかそれどころじゃない。
目の前の廊下には、綺麗な男の人が座り込んでいた。
「ほら、言った通りでしょ? ちぃくんが来てくれたら、帰ってくれない?」
綺麗な男の子に涙目でキッと睨まれた。
嫌な予感しかしないんだけど……。
「あんただって……すぐに捨てられるんだから!」
そう言って靴を履いて、ついでとばかりに俺を突き飛ばした。
狭い玄関では、笹森にぶつかって背後から抱き抱えるようにガシッと支えられた。
「ちぃくん、大丈夫?」
背後から耳元に掛けられた甘ったるい声音に背筋がゾッとして鳥肌が立ちそうだ。
男の人は、そんな俺たちを見て更に怒ってしまったようで、顔を真っ赤にして玄関のドアを開けた。
バタンッと勢いよく閉まったドアを見つめて唖然としていた。
「ちぃくん、ありがと」
クスクスと笑いながらまた変な名前で呼ばれた。
「その呼び方……なんなんですか? 今のは……?」
「ちぃくんって可愛いでしょ? さっきの子は何回か関係持ったんだけど、俺の恋人になりたいだなんて言い出してて、飽きてたし、どうにか縁を切りたかったんだよね」
顔が引きつる。
「だからって、俺を恋人って事にしたんじゃないでしょうね……?」
「だいせいか~い。今度からちぃくんに面倒な相手を追い払って貰えそうで良かった」
ルンルンと聞こえてきそうなくらい機嫌が良かった。
このクズ教師……。
腕を振り払って向き直れば、笹森は壁に背を預けたまま楽しそうだ。
「先生が遊ぶのは構いませんが、俺まで巻き込まないで下さい」
思い切り睨んでやれば、クスクスと笑う。
「君さ、アルバイトしてるよね?」
ドキンッと胸が鳴った。
なんでそれを……。
「休みは月曜と水曜で週3回。時々交代するシフト制かな? 休日は昼間からの時もあったり、その都度ってところかな」
その通りだった。
「ストーカーですか……」
「あははっ。そうかも。ほら、ここってドアが開く音とか聞こえるから、君の生活パターンがわかるよ。届出はしてあるの?」
ニコニコする笹森に反応ができなかった。
参った……バイトの事は黙っていてもらいたい。
学校側にバレても困るけれど、バイト先のカフェに迷惑を掛けたくない。
俺にとっても、すごく働きやすい場所だった。
「届出は……してあります……」
「あれぇ? この前、バイトしてるの隠された気がするんだよね。高校の方に確認してみていい?」
これは観念するしかなさそうだ。
「わかりました……協力してもいいです」
もっと早くバイトの届出をしておくべきだった。
「じゃ、よろしくね」
嬉しそうな笹森を見ると、ものすごく悔しい……。
だからなのか、ふとこの前の事が頭をよぎった。
「それなら、窓を開けて性行為をするのはやめて下さい」
笹森は、ニンマリと笑う。
「聞いてたんだ。エッチだね~」
このクズ教師は何を言ってるのか。
「お互いに窓開けてれば聞こえてくるでしょ! 最中に直接乗り込んであげましょうか⁉︎」
「はいはい。わかったよ、ちぃくん」
何を言ってもスポンジに話しかけているようで手応えがない。
がっくりと項垂れる。
「その呼び方もどうにかなりませんか?」
「付き合ってるなら普通でしょ?」
ドッと疲れた気がする。
もういいや……こいつに何を言っても無駄だ。
「それじゃあ、もう俺は戻ります」
「どこでバイトしてるのか教えてよ」
クスクスと笑いながらそんな風に言われる。
「どうしてですか……?」
嫌な予感しかしない。
「楽しそうだからに決まってるでしょ」
やっぱりクズはクズだ。
電気代の節約も兼ねて冷房は使わずに窓を開けて涼もうとした。
「そろそろ冷房使ってもいいかな……」
なんてぼやきながら、窓の外を眺めた。
「んっ……あっ! あ、あっ、あんっ……」
ふと夏の昼下がりにふさわしくない卑猥な声が聞こえてスンッ──と心が冷める。
窓開けてんのかよ……冷房使えよ。
笹森は、部活の顧問なんてしていないし、日曜は比較的家にいるようだった。
絶え間なく聞こえてくる声に、壁を蹴りたくなった。
仕方なく窓を閉めて部屋を出て、近くの冷房の効いた電気屋で時間を潰して家に帰った。
やっぱり冷房って涼しくて最高。
今度から俺の方が冷房使おう……。
◆◇◆
バイトが終わってアパートの鍵をガチャリと開けた。
すると、待っていたかのように隣のドアが開いた。
「ちぃくん、ちょっと来て」
ちぃくん……誰だ……背筋が寒くなる。
なんでそんな呼び方をするのか疑問だ。
俺に向かって手招きする。
「早く来て」
そのまま無視しようとしたら、ちぃくんと何度も呼ばれて顔が引きつる。
仕方なく笹森の方へ行けば、グイッと引っ張られて笹森の部屋の玄関に入れられた。
そのまま肩を組まれた。
笹森の部屋はやっぱり俺の部屋と同じ間取りだった。
この位置からでは、笹森の部屋にシングルのベッドが置いてあるのが見えるだけだった。
けれど、ゆっくり部屋を観察とかそれどころじゃない。
目の前の廊下には、綺麗な男の人が座り込んでいた。
「ほら、言った通りでしょ? ちぃくんが来てくれたら、帰ってくれない?」
綺麗な男の子に涙目でキッと睨まれた。
嫌な予感しかしないんだけど……。
「あんただって……すぐに捨てられるんだから!」
そう言って靴を履いて、ついでとばかりに俺を突き飛ばした。
狭い玄関では、笹森にぶつかって背後から抱き抱えるようにガシッと支えられた。
「ちぃくん、大丈夫?」
背後から耳元に掛けられた甘ったるい声音に背筋がゾッとして鳥肌が立ちそうだ。
男の人は、そんな俺たちを見て更に怒ってしまったようで、顔を真っ赤にして玄関のドアを開けた。
バタンッと勢いよく閉まったドアを見つめて唖然としていた。
「ちぃくん、ありがと」
クスクスと笑いながらまた変な名前で呼ばれた。
「その呼び方……なんなんですか? 今のは……?」
「ちぃくんって可愛いでしょ? さっきの子は何回か関係持ったんだけど、俺の恋人になりたいだなんて言い出してて、飽きてたし、どうにか縁を切りたかったんだよね」
顔が引きつる。
「だからって、俺を恋人って事にしたんじゃないでしょうね……?」
「だいせいか~い。今度からちぃくんに面倒な相手を追い払って貰えそうで良かった」
ルンルンと聞こえてきそうなくらい機嫌が良かった。
このクズ教師……。
腕を振り払って向き直れば、笹森は壁に背を預けたまま楽しそうだ。
「先生が遊ぶのは構いませんが、俺まで巻き込まないで下さい」
思い切り睨んでやれば、クスクスと笑う。
「君さ、アルバイトしてるよね?」
ドキンッと胸が鳴った。
なんでそれを……。
「休みは月曜と水曜で週3回。時々交代するシフト制かな? 休日は昼間からの時もあったり、その都度ってところかな」
その通りだった。
「ストーカーですか……」
「あははっ。そうかも。ほら、ここってドアが開く音とか聞こえるから、君の生活パターンがわかるよ。届出はしてあるの?」
ニコニコする笹森に反応ができなかった。
参った……バイトの事は黙っていてもらいたい。
学校側にバレても困るけれど、バイト先のカフェに迷惑を掛けたくない。
俺にとっても、すごく働きやすい場所だった。
「届出は……してあります……」
「あれぇ? この前、バイトしてるの隠された気がするんだよね。高校の方に確認してみていい?」
これは観念するしかなさそうだ。
「わかりました……協力してもいいです」
もっと早くバイトの届出をしておくべきだった。
「じゃ、よろしくね」
嬉しそうな笹森を見ると、ものすごく悔しい……。
だからなのか、ふとこの前の事が頭をよぎった。
「それなら、窓を開けて性行為をするのはやめて下さい」
笹森は、ニンマリと笑う。
「聞いてたんだ。エッチだね~」
このクズ教師は何を言ってるのか。
「お互いに窓開けてれば聞こえてくるでしょ! 最中に直接乗り込んであげましょうか⁉︎」
「はいはい。わかったよ、ちぃくん」
何を言ってもスポンジに話しかけているようで手応えがない。
がっくりと項垂れる。
「その呼び方もどうにかなりませんか?」
「付き合ってるなら普通でしょ?」
ドッと疲れた気がする。
もういいや……こいつに何を言っても無駄だ。
「それじゃあ、もう俺は戻ります」
「どこでバイトしてるのか教えてよ」
クスクスと笑いながらそんな風に言われる。
「どうしてですか……?」
嫌な予感しかしない。
「楽しそうだからに決まってるでしょ」
やっぱりクズはクズだ。
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