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第三章

担がれた

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 帰っている途中でアウミールが借金取りに連れてかれた事を聞いて驚いた。

「おそらく、もう会えないだろう」

 レイジェルの言葉に苦笑いするしかない。

 アウミールは自業自得だ。
 家族にはもう会わないつもりでいたし、会えないと言われても大丈夫だった。

「ラト。もうすぐ街に着く。あとはゆっくり話そう」
「わかりました」

 俺の家族の事は、街中で話すような事じゃないよな。

 それから少しして、王都の端に着いた。
 店まではもう少し歩く。すると、テアロが俺の手を握って立ち止まった。
 レイジェルとラトと少し距離が空いてしまった。

「テアロ?」

 レイジェルが怪訝けげんそうにこちらを見る。

「悪いな。お前らに店の場所を教えるつもりはないんでね」
「テアロ! お前!」

 テアロは、レイジェルが延ばした手をするりとかわす。

「ミオなら明日城まで送ってやるよ。俺と一晩過ごして、ミオの気が変わらなかったら──だ」

 テアロは、ニヤリと笑うとそのままグイッと手を引っ張って走り出してしまう。

「テレフベニアの王太子が来てるってさー!」

 急に街中で大声で叫んだテアロにびっくりする。

「あの金髪がそうみたいだぞー!」

 指差してまた叫んだ。その声に反応して、街の人が集まってきた。

「え? 王太子様?」
「ほら、あれ。テレフベニアの騎士服じゃないか?」
「本当だ!」
「そういえば、城にテレフベニアの王太子が来てるって噂になってたね!」

 レイジェルとラトが街の人に囲まれてしまった。
 俺たちのところに来ようとしていたけれど、そうもいかなくなっていた。
 街のおばあちゃんが跪いて挨拶しようとしたのを慌てて立たせてなだめる。
 他の人にも苦笑いしながら対応している。

「テアロ、戻ろうよ!」
「いいんだよ! 俺は二人きりがいいんだ!」

 どうしよう……。
 テアロは路地裏に入ると俺のことを荷物みたいに肩で担ぎ上げた。

「うわっ!」
「舌噛まないように黙ってろよ!」

 テアロは、そのまま走ってしまう。
 馬みたいに速い!

「ちょ、テアにょ!」

 舌噛んだっ……!
 痛くて口元を手で押さえた。

「黙ってろって言ったろ!」

 笑いながら猛ダッシュされた……。

     ◆◇◆

 店に戻ってきたら、知らない人が店番していた……。

「お帰りなさい」

 ニコニコ笑顔を向けられたので俺もなぜかニコニコ笑顔を返す。

「どちら様ですか?」
「私はジュドと申します。ここにはテアロ様へ弁解をしに来ました。ですが、誰もいないのに店は開けっ放しだったので店番を──」
「ミオ、こいつ、俺の知り合いなんだけど、ちょっと向こう向いて耳塞いでろ」
「あ……うん……」

 言われた通りに後ろを向いて耳を塞ぐ。

(ジュド……覚悟はできてんだろうなぁ?)
(不可抗力です。あの人達テアロ様みたいに気配に敏感でして、森ではあまり近付けませんでした。しかも二手に分かれてしまったので……もう一人助っ人欲しいなとか考えているうちに見失ったので小屋の方を見ていました)
(うるせぇ)

 何やら話しているようだけれど、耳を塞いでいるのであまりよくわからない。
 少ししてポンッとテアロに肩を叩かれたので手を離して振り返れば、テアロは笑顔でジュドは傷だらけでうっとりしてた……。
 何があったかは、遠い目をして聞くのはやめた。

「それじゃ、夕飯にするだろ?」

 テアロは何事もなかったかのようにしているので俺もそうする。

「ジュドさんは?」
「やる事あるから食べてる時間がないらしい。な?」
「はい(ご飯抜きのお仕置き……)」

 うっとりしているのはなぜだ……。
 もう帰るらしいので見送ろう。

「ジュドさん、店番ありがとうございました」
「ミオ様、私に敬語など必要ありません。私はテアロ様の下僕ですから──」

 ニコニコ何言ってんだこの人……。
 よくわからない事は笑顔で誤魔化す。
 テアロは、ジュドを店から追い出した。
 扱いが雑だ……でも、見なかった事にした。

 テアロと一緒にキッチンに立つ。

「レイジェル達大丈夫かな?」
「どうもできなくて城に戻るさ」
「それならいいんだけど……」

 今日はテアロと過ごす約束だ。テアロと料理を開始した。
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