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第二章
本物のミリアンナ レイジェル視点
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部屋に戻ってきたのは、ミリアンナとフロルだった。
本物のミリアンナはやはり美しかった。さすが双子だけある。だが、一目で別人だとわかる。ミオが月ならこちらは太陽と言ったところか。笑い方ですら違う。
「レイジェル殿下、どうかしら?」
ミオにはレイジェルと呼ぶ事を許している。入れ替わるのなら、口裏ぐらい合わせてこいと思う。
入れ替わった事がバレても問題ないと思っているのか……ただの馬鹿か?
「ああ。とても良く似合っている」
クルリと回ったミリアンナに微笑む。
そのドレスはミオの為に用意した訳ではない。ミオ以外が着るのなら、ドレスなんてなんでも良かった。
「ふふっ。嬉しいわ」
頬を染めて自分から私の腕に捕まってくる。ミオでは絶対にしないだろうと思う。ラトも苦笑いだ。
「レイジェル殿下、結婚式は盛大にしましょうね」
「そうだな……」
ミオならば言わないであろう言葉が次々に出てくる。
ミオだったなら『質素で目立たずにお願いします』と言いそうだ。そもそも結婚したくないと言われているからな……思い出すとちょっと切ない。
「君には双子の兄がいるんだったな?」
「はい! お兄様は、いてもいなくても同じですわ。今だって留学してますけど、なんら変わりありませんもの」
「そうか」
心置きなくミオを連れて行ける。
ここはミオの居場所ではない。
「その兄の事はどう思っているんだ?」
「お兄様は、そうね……便利かしら? 昔から私の代わりに色々してくれるの」
「それで兄に対して悪いとか感謝の気持ちはあるのか?」
「私の代わりができるって幸せだと思いますわ。お兄様は幸せです」
ニコニコと笑いながら言うミリアンナに、なるほど……頭がおかしいのかと納得する。
そもそもミオが自分から私の所に来ようだなんて思うはずがない。
ミリアンナが行きたくないと言ったのは目に見えている。だが、何を思ったのか私は歓迎されているらしい。
そのまま入れ替わって結婚しようだなんてどうしてそんな事が考えられるのか謎だ……。
「まだ少し時間がありますわね。座って待ちましょう」
長椅子に連れてかれて隣同士で座る。
ゼロ距離だな……鬱陶しい。
馬車の中であれほど離れて欲しいと言っていたミオがこんな風になるわけがない。
改めてこれは別人なんだと思える。
「フロル、紅茶を入れなさい。レイジェル殿下の分もね」
「はい」
フロルへの対応も全く違うらしい。
フロルが私の前に紅茶を置いた時、私の方をチラリと見た。
その目は『別人だとわかりますでしょう?』と問いかけていた。
フロルは、ミオの味方なんだとはっきりとわかる。それが嬉しかった。
「あっつ! ちょっと! 熱いわよ!」
紅茶を飲み始めたミリアンナがフロルに抗議する。
「申し訳ありません。いつものミリアンナ様と同じ温度にしてしまいました」
フロルの言いように笑ってしまいそうになる。
自分も一口飲んでみる。いつもより熱い紅茶に笑うのを堪える。
フロルは、熱い紅茶でささやかな反抗をしているらしい。
ミリアンナに笑顔を向ける。
「確かにいつもと同じ温度のようだ」
私もフロルの反抗に乗ってやる。
「そ、そうでしたわね……」
強がるミリアンナに、またも笑いそうになって顔を背ける。
結局ミリアンナは、紅茶が冷めるまで待つ事にしたようだ。
そのうちに、国王が時間になったと呼びにきた。
「楽しみだわぁ」
ミリアンナは、想像通りの王女らしい。傲慢で他人の事などお構いなし。
ミオの事も何とも思っていない。少しでもミオに対して思いやりがあったなら、酷いことはするつもりはなかったが、遠慮する必要はなさそうだ。
「ミリアンナ……君が楽しめる最後のパーティーかもしれないね」
「そうですわね! こんなに楽しいパーティーは、最初で最後かもしれませんわね!」
はしゃぐミリアンナを腕に掴まらせて会場である広間へと足を向けた。
本物のミリアンナはやはり美しかった。さすが双子だけある。だが、一目で別人だとわかる。ミオが月ならこちらは太陽と言ったところか。笑い方ですら違う。
「レイジェル殿下、どうかしら?」
ミオにはレイジェルと呼ぶ事を許している。入れ替わるのなら、口裏ぐらい合わせてこいと思う。
入れ替わった事がバレても問題ないと思っているのか……ただの馬鹿か?
「ああ。とても良く似合っている」
クルリと回ったミリアンナに微笑む。
そのドレスはミオの為に用意した訳ではない。ミオ以外が着るのなら、ドレスなんてなんでも良かった。
「ふふっ。嬉しいわ」
頬を染めて自分から私の腕に捕まってくる。ミオでは絶対にしないだろうと思う。ラトも苦笑いだ。
「レイジェル殿下、結婚式は盛大にしましょうね」
「そうだな……」
ミオならば言わないであろう言葉が次々に出てくる。
ミオだったなら『質素で目立たずにお願いします』と言いそうだ。そもそも結婚したくないと言われているからな……思い出すとちょっと切ない。
「君には双子の兄がいるんだったな?」
「はい! お兄様は、いてもいなくても同じですわ。今だって留学してますけど、なんら変わりありませんもの」
「そうか」
心置きなくミオを連れて行ける。
ここはミオの居場所ではない。
「その兄の事はどう思っているんだ?」
「お兄様は、そうね……便利かしら? 昔から私の代わりに色々してくれるの」
「それで兄に対して悪いとか感謝の気持ちはあるのか?」
「私の代わりができるって幸せだと思いますわ。お兄様は幸せです」
ニコニコと笑いながら言うミリアンナに、なるほど……頭がおかしいのかと納得する。
そもそもミオが自分から私の所に来ようだなんて思うはずがない。
ミリアンナが行きたくないと言ったのは目に見えている。だが、何を思ったのか私は歓迎されているらしい。
そのまま入れ替わって結婚しようだなんてどうしてそんな事が考えられるのか謎だ……。
「まだ少し時間がありますわね。座って待ちましょう」
長椅子に連れてかれて隣同士で座る。
ゼロ距離だな……鬱陶しい。
馬車の中であれほど離れて欲しいと言っていたミオがこんな風になるわけがない。
改めてこれは別人なんだと思える。
「フロル、紅茶を入れなさい。レイジェル殿下の分もね」
「はい」
フロルへの対応も全く違うらしい。
フロルが私の前に紅茶を置いた時、私の方をチラリと見た。
その目は『別人だとわかりますでしょう?』と問いかけていた。
フロルは、ミオの味方なんだとはっきりとわかる。それが嬉しかった。
「あっつ! ちょっと! 熱いわよ!」
紅茶を飲み始めたミリアンナがフロルに抗議する。
「申し訳ありません。いつものミリアンナ様と同じ温度にしてしまいました」
フロルの言いように笑ってしまいそうになる。
自分も一口飲んでみる。いつもより熱い紅茶に笑うのを堪える。
フロルは、熱い紅茶でささやかな反抗をしているらしい。
ミリアンナに笑顔を向ける。
「確かにいつもと同じ温度のようだ」
私もフロルの反抗に乗ってやる。
「そ、そうでしたわね……」
強がるミリアンナに、またも笑いそうになって顔を背ける。
結局ミリアンナは、紅茶が冷めるまで待つ事にしたようだ。
そのうちに、国王が時間になったと呼びにきた。
「楽しみだわぁ」
ミリアンナは、想像通りの王女らしい。傲慢で他人の事などお構いなし。
ミオの事も何とも思っていない。少しでもミオに対して思いやりがあったなら、酷いことはするつもりはなかったが、遠慮する必要はなさそうだ。
「ミリアンナ……君が楽しめる最後のパーティーかもしれないね」
「そうですわね! こんなに楽しいパーティーは、最初で最後かもしれませんわね!」
はしゃぐミリアンナを腕に掴まらせて会場である広間へと足を向けた。
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