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第一章
腕の中のあなた レイジェル視点
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高さがそこそこあったので派手に落ちたが、川の流れは穏やかだった。河岸に泳いで辿り着いた。
川から上がって、周りを確認ずれば、それほど流されていなかった。
大人になって良かったと思う。今は、川に流されても泳ぐことができる。
遠目にラトとフロルが見えた。無事だと手を振れば、慌ててこちらに来るみたいだった。
だが、ミリアンナを見れば、ぐったりとして意識を失っていた。
馬にびっくりしたか、落ちた衝撃か……どちらにせよ、このままではいけない。
そこで気付く。腰まであったミリアンナの髪が胸辺りまで短くなっていて、とても驚いていた。
益々ミオに似ている気がする──ミオが大きくなった姿みたいだ。
「ミリアンナ、大丈夫か?」
頬を叩いても反応はない。
呼吸を確かめれば、息をしていた。
水はあまり飲んでいないようだった。けれど、震えているのがわかった。
テレフベニアの気候は暖かい。けれど、川の水は冷たかったか──。
「レイジェル殿下! 大丈夫ですか!?」
周りには、人が何人もいた。
流れていた私達を見つけて追いかけてくれたようだ。
「すまないが、休める場所が欲しい」
「うちの宿が近いので来て下さい!」
「ありがとう。ラト達が来たら、案内してやってくれ」
「はい!」
ミリアンナを抱え上げてその店主の宿に行けば、一室に案内されて暖炉に火を焚べてその前に毛布を持ってきてくれた。
「服を乾かします」
濡れた服を脱いで手渡せば、干してくれる。
「そちらの方はどうしますか?」
ミリアンナの裸を他の男に見せたくない。
「私が脱がそう。向こうを向いていてくれ」
着ていたワンピースの襟元のボタンを外して首元を緩める。極力見ないように心がけて、スカートの方から徐々に持ち上げて、腕を抜いて顔から外す。
胸は多少見てしまうのは仕方がないと思いながら気付く。
不自然に膨れた胸をおかしく思う。胸には詰め物をしているようだった。
ミリアンナの胸が──ない?
内心かなり驚いていたけれど、ミリアンナに毛布をかけて店主にワンピースを渡せば、それも干してくれた。
「この辺に医者は?」
「息子が呼びに行きました」
「ありがとう。すまないが……二人きりにしてもらえないか?」
「はい。何かあれば呼んで下さい」
二人きりになった部屋でミリアンナの隣にしゃがみ込んでもう一度確認しようと上半身だけ毛布を剥いだ。
失礼を承知で下着を外せば、現れた可愛らしい平らな胸。
何度確認しても、横たわるミリアンナは、どう見ても胸がない。
女でこんなにも胸がない人がいるんだろうか……それならかなりの貧にゅ……いや、違うな。さすがの私も動揺しているな。
これは、男の平らな胸だ。
──ミリアンナは男だ。
いつから? 最初から?
今ここにいる彼は、ミリアンナの身代わりという事なのか?
銀の髪に雨上がりの空のような瞳……そして、男──。
まさか……いや、そんなはずは……でも……。
そんな言葉を何度も何度も繰り返す。
ずっと似ていると思っていた。ミリアンナが男である事で確信に変わっていく。
ミリアンナはミオだ。間違いない。
横たわるミリアンナの頬をそっと撫でた。
手の平から味わった事のない歓喜が身体を駆け抜けた。
自分自身の心が……身体が……この人はミオなのだと証明している。
私は、初恋の相手と同じ人を好きになった──。
「は……ははっ……」
思わず笑ってしまいそうになって口元を押さえた。
こんな事があるのか?
ミオは、辛い思いをしていながらも明るく笑っていた。ミリアンナと同じだった。寧ろ、違う所を探す方が難しい。
悩むのは、ミオが男だという事を知ってしまった事を言うべきか否か……。
アスラーゼは選ばれないと思っていてこんな事をしたんだろう。私がミリアンナを選んだのはアスラーゼにとっても予想外の展開だ。
アスラーゼが何を考えているのかわからない以上、知らないふりをする方がミオは安全かもしれない。
それに、言えばそれを理由にミオに逃げられる可能性が高い。
ミオの顔を覗き込む。
心臓が激しく波打つ。
「好きだ……君が好きだ……」
ミリアンナがミオだとわかって好きだという気持ちが溢れて止まらない。
信じられないくらいの喜びを味わって自分がこの世に産まれた意味は、ミオに会う為だったのだとすら思える。
男でも好きになった。女でも好きなるなんて、私はミオという存在が好きとしか思えない。
ミオの隣に寝転んで毛布を掛けて冷えた身体をギュッと抱き寄せた。
ラト達が来る前に服を着せなければならない。けれど、もう少しだけ──。
「放したくない……」
放して欲しいと頼まれても、もうできないだろう。
ずっとずっと会いたいと思っていた。
ずっとずっと忘れた事なんてなかった。
ずっとずっと──何年も想ってきた相手が私の腕の中にいる。
「ミオ──」
私の腕の中にある奇跡を逃してなるものかと強く抱きしめた。
────────────
※下着は、コルセットなど色々考えたのですが、普通の女性用のブラとショーツだと思って下さい。それが一番わかりやすい!ついでにガーターベルトも想像して頂けたらベスト!ファンタジーなんで!
川から上がって、周りを確認ずれば、それほど流されていなかった。
大人になって良かったと思う。今は、川に流されても泳ぐことができる。
遠目にラトとフロルが見えた。無事だと手を振れば、慌ててこちらに来るみたいだった。
だが、ミリアンナを見れば、ぐったりとして意識を失っていた。
馬にびっくりしたか、落ちた衝撃か……どちらにせよ、このままではいけない。
そこで気付く。腰まであったミリアンナの髪が胸辺りまで短くなっていて、とても驚いていた。
益々ミオに似ている気がする──ミオが大きくなった姿みたいだ。
「ミリアンナ、大丈夫か?」
頬を叩いても反応はない。
呼吸を確かめれば、息をしていた。
水はあまり飲んでいないようだった。けれど、震えているのがわかった。
テレフベニアの気候は暖かい。けれど、川の水は冷たかったか──。
「レイジェル殿下! 大丈夫ですか!?」
周りには、人が何人もいた。
流れていた私達を見つけて追いかけてくれたようだ。
「すまないが、休める場所が欲しい」
「うちの宿が近いので来て下さい!」
「ありがとう。ラト達が来たら、案内してやってくれ」
「はい!」
ミリアンナを抱え上げてその店主の宿に行けば、一室に案内されて暖炉に火を焚べてその前に毛布を持ってきてくれた。
「服を乾かします」
濡れた服を脱いで手渡せば、干してくれる。
「そちらの方はどうしますか?」
ミリアンナの裸を他の男に見せたくない。
「私が脱がそう。向こうを向いていてくれ」
着ていたワンピースの襟元のボタンを外して首元を緩める。極力見ないように心がけて、スカートの方から徐々に持ち上げて、腕を抜いて顔から外す。
胸は多少見てしまうのは仕方がないと思いながら気付く。
不自然に膨れた胸をおかしく思う。胸には詰め物をしているようだった。
ミリアンナの胸が──ない?
内心かなり驚いていたけれど、ミリアンナに毛布をかけて店主にワンピースを渡せば、それも干してくれた。
「この辺に医者は?」
「息子が呼びに行きました」
「ありがとう。すまないが……二人きりにしてもらえないか?」
「はい。何かあれば呼んで下さい」
二人きりになった部屋でミリアンナの隣にしゃがみ込んでもう一度確認しようと上半身だけ毛布を剥いだ。
失礼を承知で下着を外せば、現れた可愛らしい平らな胸。
何度確認しても、横たわるミリアンナは、どう見ても胸がない。
女でこんなにも胸がない人がいるんだろうか……それならかなりの貧にゅ……いや、違うな。さすがの私も動揺しているな。
これは、男の平らな胸だ。
──ミリアンナは男だ。
いつから? 最初から?
今ここにいる彼は、ミリアンナの身代わりという事なのか?
銀の髪に雨上がりの空のような瞳……そして、男──。
まさか……いや、そんなはずは……でも……。
そんな言葉を何度も何度も繰り返す。
ずっと似ていると思っていた。ミリアンナが男である事で確信に変わっていく。
ミリアンナはミオだ。間違いない。
横たわるミリアンナの頬をそっと撫でた。
手の平から味わった事のない歓喜が身体を駆け抜けた。
自分自身の心が……身体が……この人はミオなのだと証明している。
私は、初恋の相手と同じ人を好きになった──。
「は……ははっ……」
思わず笑ってしまいそうになって口元を押さえた。
こんな事があるのか?
ミオは、辛い思いをしていながらも明るく笑っていた。ミリアンナと同じだった。寧ろ、違う所を探す方が難しい。
悩むのは、ミオが男だという事を知ってしまった事を言うべきか否か……。
アスラーゼは選ばれないと思っていてこんな事をしたんだろう。私がミリアンナを選んだのはアスラーゼにとっても予想外の展開だ。
アスラーゼが何を考えているのかわからない以上、知らないふりをする方がミオは安全かもしれない。
それに、言えばそれを理由にミオに逃げられる可能性が高い。
ミオの顔を覗き込む。
心臓が激しく波打つ。
「好きだ……君が好きだ……」
ミリアンナがミオだとわかって好きだという気持ちが溢れて止まらない。
信じられないくらいの喜びを味わって自分がこの世に産まれた意味は、ミオに会う為だったのだとすら思える。
男でも好きになった。女でも好きなるなんて、私はミオという存在が好きとしか思えない。
ミオの隣に寝転んで毛布を掛けて冷えた身体をギュッと抱き寄せた。
ラト達が来る前に服を着せなければならない。けれど、もう少しだけ──。
「放したくない……」
放して欲しいと頼まれても、もうできないだろう。
ずっとずっと会いたいと思っていた。
ずっとずっと忘れた事なんてなかった。
ずっとずっと──何年も想ってきた相手が私の腕の中にいる。
「ミオ──」
私の腕の中にある奇跡を逃してなるものかと強く抱きしめた。
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※下着は、コルセットなど色々考えたのですが、普通の女性用のブラとショーツだと思って下さい。それが一番わかりやすい!ついでにガーターベルトも想像して頂けたらベスト!ファンタジーなんで!
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