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第一章
追い詰めたい レイジェル視点
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手早く馬の用意をしているとラトが話しかけてくる。
「どこを捜しますか?」
「質屋だ」
「あの時、店が閉まっていてしゃがみ込んでたんですよね」
「そうだ。なぜだか考えてみた。ミリアンナは、所持金も持たせてもらえなかったようだ。ドレスも買えない王女だった」
だからこそ、私からのドレスを受け取ってくれた。
「え? アスラーゼってそんなに貧乏でしたっけ?」
「いや、弱小国家でも、農業全般で儲けを出している。交易もそこそこあるだろう」
「なら、なんで──」
「国王とは、所持金も持たせてもらえないような関係なんだろう」
ラトの眉間の皺が深くなった。
ラトは、素直に不快感を示す。
「レイジェル様、ぜったい結婚しましょうね」
「そのつもりだ」
ミリアンナを見ていると、良い扱いを受けていなかったのではないかと思わせる。
ミリアンナが、そんな目に遭っているのならそれこそ私が助けてあげたい。
ロッシが不安そうに口を開いた。
「レイジェル様……ミリアンナ様、まさかドレスを質屋に出そうとしてませんよね?」
私も少し考えてしまったので笑ってしまう。
「ボロボロのドレスだぞ。買い取れないだろう」
「あ。売るつもりで持って行ったのじゃなくて良かったです」
全くその通りだ。余程あのドレスを気に入ってくれていたみたいだ。
質屋に着いて店主に確認を取れば、ミリアンナは手鏡と万年筆を換金したらしい。
一足遅かったようだ。馬車乗り場の方へ急ぐ。
もうすぐ馬車が出発するのか、この前の時よりも人が多かった。
馬から降りると、私に気付いた街の人に取り囲まれてしまう。
「レイジェル様! こんな所にどうしたのですか!?」
「何かあったんですか!?」
「今度私の店にも来て下さいよ」
口々に話しかけられてしまう。
「悪いが急いでいる。ここに銀の髪の女性と赤い髪の女性が来なかったか?」
みんな顔を見合わせる。
「見てないなぁ……」
「どんな人なんですか?」
「あ! 俺、見ましたよ!」
そう言って手を挙げた若者に近寄った。
「本当か?」
「二人ともすごい美人だったんで覚えてますよ。アスラーゼに行くにはどの馬車に乗ればいいのか聞かれました」
三人で顔を見合わせる。
間違いないだろう。
「その二人はどこへ行った?」
「国境の街まで行く馬車が出るのに時間があるので、時間になるまで街を見に行きましたよ」
「わかった。ありがとう」
手分けして、街の中を捜し回った。
途中で見かけた騎士団員達にも声を掛けた。
すると、足取りが段々とわかってくる。
ミリアンナを追い詰めるのももうすぐだ。
早く──早く会いたい。
「レイジェル様! さっきまでそこの露天で色々見ていたみたいです!」
ラトの報告で急いでそちらに向かった。
キョロキョロと周りを確認すれば、石橋を渡って向こう岸へ行こうとしているミリアンナとフロルを発見する。
まだ王都にいた事に安堵する。
何か話しながら歩いていた。
「ミリアンナ!」
慌てて名前を叫んだ。
橋の真ん中でこちらを振り向いたミリアンナは、銀の髪が陽の光に反射して天使みたいだと思った。
あの初恋の時のような胸の高鳴りを感じる。
私の心が叫んでいる──絶対に逃してはならないと──。
「どこを捜しますか?」
「質屋だ」
「あの時、店が閉まっていてしゃがみ込んでたんですよね」
「そうだ。なぜだか考えてみた。ミリアンナは、所持金も持たせてもらえなかったようだ。ドレスも買えない王女だった」
だからこそ、私からのドレスを受け取ってくれた。
「え? アスラーゼってそんなに貧乏でしたっけ?」
「いや、弱小国家でも、農業全般で儲けを出している。交易もそこそこあるだろう」
「なら、なんで──」
「国王とは、所持金も持たせてもらえないような関係なんだろう」
ラトの眉間の皺が深くなった。
ラトは、素直に不快感を示す。
「レイジェル様、ぜったい結婚しましょうね」
「そのつもりだ」
ミリアンナを見ていると、良い扱いを受けていなかったのではないかと思わせる。
ミリアンナが、そんな目に遭っているのならそれこそ私が助けてあげたい。
ロッシが不安そうに口を開いた。
「レイジェル様……ミリアンナ様、まさかドレスを質屋に出そうとしてませんよね?」
私も少し考えてしまったので笑ってしまう。
「ボロボロのドレスだぞ。買い取れないだろう」
「あ。売るつもりで持って行ったのじゃなくて良かったです」
全くその通りだ。余程あのドレスを気に入ってくれていたみたいだ。
質屋に着いて店主に確認を取れば、ミリアンナは手鏡と万年筆を換金したらしい。
一足遅かったようだ。馬車乗り場の方へ急ぐ。
もうすぐ馬車が出発するのか、この前の時よりも人が多かった。
馬から降りると、私に気付いた街の人に取り囲まれてしまう。
「レイジェル様! こんな所にどうしたのですか!?」
「何かあったんですか!?」
「今度私の店にも来て下さいよ」
口々に話しかけられてしまう。
「悪いが急いでいる。ここに銀の髪の女性と赤い髪の女性が来なかったか?」
みんな顔を見合わせる。
「見てないなぁ……」
「どんな人なんですか?」
「あ! 俺、見ましたよ!」
そう言って手を挙げた若者に近寄った。
「本当か?」
「二人ともすごい美人だったんで覚えてますよ。アスラーゼに行くにはどの馬車に乗ればいいのか聞かれました」
三人で顔を見合わせる。
間違いないだろう。
「その二人はどこへ行った?」
「国境の街まで行く馬車が出るのに時間があるので、時間になるまで街を見に行きましたよ」
「わかった。ありがとう」
手分けして、街の中を捜し回った。
途中で見かけた騎士団員達にも声を掛けた。
すると、足取りが段々とわかってくる。
ミリアンナを追い詰めるのももうすぐだ。
早く──早く会いたい。
「レイジェル様! さっきまでそこの露天で色々見ていたみたいです!」
ラトの報告で急いでそちらに向かった。
キョロキョロと周りを確認すれば、石橋を渡って向こう岸へ行こうとしているミリアンナとフロルを発見する。
まだ王都にいた事に安堵する。
何か話しながら歩いていた。
「ミリアンナ!」
慌てて名前を叫んだ。
橋の真ん中でこちらを振り向いたミリアンナは、銀の髪が陽の光に反射して天使みたいだと思った。
あの初恋の時のような胸の高鳴りを感じる。
私の心が叫んでいる──絶対に逃してはならないと──。
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