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第一章
他の王女達
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専属の護衛が付くまでは、屋敷の中以外は勝手に出歩いてはいけないらしい。
仕方がないので、部屋にこもっている。他の王女達もそうらしい。
王女に何かあったら大変だという配慮らしい。
それはそれでいいのだけれど……やる事がなくて飽きた。
他にここに来ている王女は何人いるんだろうか?
多い方が国に帰れる確率が増えていい。
そもそも自分自身が選ばれる可能性はゼロだと思っている。気楽に考えている。
帰る時には、テレフベニアの王都の街を散策できたらいい。
そんな事を考えていれば、部屋に誰かが来た。
フロルが対応する。
やってきたのは、俺よりも先に到着していた王女みたいだ。
「こちらは、イリーナ・ラステー殿下です」
向こうの侍女が入ってきた王女の紹介をしてくれた。
イリーナは、金色の髪に赤い瞳の王女で、髪も綺麗に巻かれていて一見派手に見える。
挨拶に来てくれるだなんて優しい王女様だ。
今度は、フロルが俺の紹介もしてくれる。
「こちらは、ミリアンナ・ヴァーリン殿下です」
自分もイリーナと同じように礼をする。
頭を上げれば、イリーナにクスリと笑われた。
「アスラーゼの田舎王女……でよろしくて?」
鼻で笑われた……。
「田舎王女がこのテレフベニアに嫁ぐなんてできると思って?」
俺も嫁ぎたくないもん。
ニコニコと受け流す。
「イリーナ様は、オアデム王国の王女であり、テレフベニア王国に嫁ぐのに相応しいお方です」
侍女が鼻息荒くして言ってくる。
うん。頑張って。
オアデムは、結構な大国でテレフベニアと釣り合うと言ってもいいのでは?
「くれぐれも、わたくしの邪魔だけはしないで頂きたいわ」
そう言い残して去って行った。
牽制されたようだ……。
優しい王女様だなんて思ったのを撤回しよう。
王太子妃にそんなになりたいものなんだろうか?
面倒そうなのに。
大きなため息を吐いたら、フロルと目が合った。
「ミリアンナ様」
「何?」
「また喋れませんでしたね」
ニッコリ笑顔で言われて顔が引きつる。
「俺、喋ってなかった?」
「はい。それはもう見事にニコニコするだけでした」
別にいいけどね……。
◆◇◆
次に挨拶に来た王女は、シェリー・コルアーノと名乗った。
桃色の髪がサラリと揺れた。翡翠みたいな瞳が可愛らしい。
「レイジェル殿下の妃には、シェリー殿下こそ相応しいのです!」
シェリーの侍女に胸を張って言われてしまう。
こっちもかよ……。
「私もそう思うのぉ。私ってこんなに可愛いんだし? 絶対に嫁いでみせるわ!」
なんて子だ……。
メラメラと燃えているように見える。
いくら可愛くても俺はこんな子はごめんだけれど……。
頑張ってね。そう思いながらニコニコする。
「なぁんだ。大した事なさそうな子ね。これならイリーナの方がライバルになりそうだわ。じゃあね~」
手をヒラヒラと振りながら部屋から出て行った。
敵情視察を堂々とやりにきた子だな……。
またもはぁとため息を吐く。
「ミリアンナ様──」
「わかってるよ……喋ってなかったんだろ……」
「お分かりでしたらよろしいです」
ニッコリ笑顔で辛辣な!
恐ろしい子たちだった……。
他国の王女ってあんななの?
そういえば、ミリアンナもあんなものだと遠い目をする。
「彼女達は、人一倍気合が入っていらっしゃるみたいですね」
よく考えれば、彼女達が頑張ってくれれば、俺は早く国に帰れるって事だ!
「フロル……俺、早く帰れる気がしてきた」
ニコニコと笑顔になってしまうのは仕方のない事だ。
「呑気ですね……」
呆れた視線を向けないで。
「それにしても、先に到着した王女は、挨拶しなきゃいけない掟でもあるの?」
「そんな事あるわけないじゃないですか。顔合わせがありますから、挨拶など必要ありません。ここにいらっしゃる方々は全てライバルです。彼女達が特殊なのです」
それなら良かった。
自分も挨拶しなきゃいけないのかと少し心配だった。
もしかして彼女達、全員の王女に同じ挨拶してるんじゃ……ある意味根性のある子達だと思う。
「顔合わせかぁ……それっていつ?」
「全ての王女が揃ったらではありませんか?」
「そっか」
さっさと帰りたいんだけどなぁ……と、思っていたら顔合わせの日はすぐに来た。どうやら俺が最後に到着した王女だったらしい。
仕方がないので、部屋にこもっている。他の王女達もそうらしい。
王女に何かあったら大変だという配慮らしい。
それはそれでいいのだけれど……やる事がなくて飽きた。
他にここに来ている王女は何人いるんだろうか?
多い方が国に帰れる確率が増えていい。
そもそも自分自身が選ばれる可能性はゼロだと思っている。気楽に考えている。
帰る時には、テレフベニアの王都の街を散策できたらいい。
そんな事を考えていれば、部屋に誰かが来た。
フロルが対応する。
やってきたのは、俺よりも先に到着していた王女みたいだ。
「こちらは、イリーナ・ラステー殿下です」
向こうの侍女が入ってきた王女の紹介をしてくれた。
イリーナは、金色の髪に赤い瞳の王女で、髪も綺麗に巻かれていて一見派手に見える。
挨拶に来てくれるだなんて優しい王女様だ。
今度は、フロルが俺の紹介もしてくれる。
「こちらは、ミリアンナ・ヴァーリン殿下です」
自分もイリーナと同じように礼をする。
頭を上げれば、イリーナにクスリと笑われた。
「アスラーゼの田舎王女……でよろしくて?」
鼻で笑われた……。
「田舎王女がこのテレフベニアに嫁ぐなんてできると思って?」
俺も嫁ぎたくないもん。
ニコニコと受け流す。
「イリーナ様は、オアデム王国の王女であり、テレフベニア王国に嫁ぐのに相応しいお方です」
侍女が鼻息荒くして言ってくる。
うん。頑張って。
オアデムは、結構な大国でテレフベニアと釣り合うと言ってもいいのでは?
「くれぐれも、わたくしの邪魔だけはしないで頂きたいわ」
そう言い残して去って行った。
牽制されたようだ……。
優しい王女様だなんて思ったのを撤回しよう。
王太子妃にそんなになりたいものなんだろうか?
面倒そうなのに。
大きなため息を吐いたら、フロルと目が合った。
「ミリアンナ様」
「何?」
「また喋れませんでしたね」
ニッコリ笑顔で言われて顔が引きつる。
「俺、喋ってなかった?」
「はい。それはもう見事にニコニコするだけでした」
別にいいけどね……。
◆◇◆
次に挨拶に来た王女は、シェリー・コルアーノと名乗った。
桃色の髪がサラリと揺れた。翡翠みたいな瞳が可愛らしい。
「レイジェル殿下の妃には、シェリー殿下こそ相応しいのです!」
シェリーの侍女に胸を張って言われてしまう。
こっちもかよ……。
「私もそう思うのぉ。私ってこんなに可愛いんだし? 絶対に嫁いでみせるわ!」
なんて子だ……。
メラメラと燃えているように見える。
いくら可愛くても俺はこんな子はごめんだけれど……。
頑張ってね。そう思いながらニコニコする。
「なぁんだ。大した事なさそうな子ね。これならイリーナの方がライバルになりそうだわ。じゃあね~」
手をヒラヒラと振りながら部屋から出て行った。
敵情視察を堂々とやりにきた子だな……。
またもはぁとため息を吐く。
「ミリアンナ様──」
「わかってるよ……喋ってなかったんだろ……」
「お分かりでしたらよろしいです」
ニッコリ笑顔で辛辣な!
恐ろしい子たちだった……。
他国の王女ってあんななの?
そういえば、ミリアンナもあんなものだと遠い目をする。
「彼女達は、人一倍気合が入っていらっしゃるみたいですね」
よく考えれば、彼女達が頑張ってくれれば、俺は早く国に帰れるって事だ!
「フロル……俺、早く帰れる気がしてきた」
ニコニコと笑顔になってしまうのは仕方のない事だ。
「呑気ですね……」
呆れた視線を向けないで。
「それにしても、先に到着した王女は、挨拶しなきゃいけない掟でもあるの?」
「そんな事あるわけないじゃないですか。顔合わせがありますから、挨拶など必要ありません。ここにいらっしゃる方々は全てライバルです。彼女達が特殊なのです」
それなら良かった。
自分も挨拶しなきゃいけないのかと少し心配だった。
もしかして彼女達、全員の王女に同じ挨拶してるんじゃ……ある意味根性のある子達だと思う。
「顔合わせかぁ……それっていつ?」
「全ての王女が揃ったらではありませんか?」
「そっか」
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