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第一章
王女教育?
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短かった俺の髪は、本物のミリアンナの髪を切って作ったカツラを被せられていた。
髪が伸びて女らしくなるまでは、カツラでいなければいけないらしい。
ミリアンナのドレスは、皮肉な事に俺のサイズにピッタリだった。
元々胸もあまりなかったミリアンナ。俺の無い胸でもそれなりに誤魔化せるドレスに感服する。
どこからどう見てもミリアンナになってしまった俺を作り上げた侍女に言葉もなかった。
下着ですら女物を用意されて辛い。
何よりも王女としての教育とやらがかなり辛い。
『ミリアンナ様、大股で歩いてはいけません。歩くときは常に半歩を心がけて下さいませ』
『ミリアンナ様、お食事の時に大口を開けてはなりません。お食事のときは常にリスの如く小口で食べて下さいませ』
俺につけられた教育係は、事情を知っているうちの一人で、ことごとく悪い所をダメ出しされた。
その角の尖った眼鏡をクイッと上げるのをやめて……。
今は、ローウェンを相手にダンスの練習中だ。舞踏会なんて出た事もない。
ステップを踏む足がもたついて、ローウェンの足を踏んだ。
「ミリアンナ様、また足を踏まれましたね!」
「申し訳ない……」
ローウェンに謝ったら眩しい笑顔が返ってきた。
「いえいえ」
足を踏まれても笑顔でいられるなんて男前だ。
ローウェンも嬉々として手伝ってくれているけれど、ミリアンナと一緒に暮らせて幸せなんだろう。
こうなっているのは、お前のせいでもあるんだと思うと足を踏んでも大して罪悪感はない。
「ミリアンナ様、今日は三曲ほど覚えてください」
一日で三曲もステップを覚えろって鬼か!
そもそも舞踏会に出る訳でもないのに、なぜダンスのステップを覚えなければならないのか。
女って大変だな……。
ダンスの勉強が終わればお茶の作法だ。
「ミリアンナ様、椅子やソファに座る時は常に足を揃えて下さいませ」
開きかけていた足を綺麗に揃えた。
眠っている時間以外、付きっきりの教育は俺の心を疲弊させ、遠い目をする時間が増えた。
「ミリアンナ様──」
「今度は何だ?」
「──その言葉遣いはいけません。そういう場合は『今度はなんですか?』と問いかけて下さいませ」
疲れる……嫌だ……喋るとすぐに直されて、喋りたくない……。
元々喋らない俺は更に無口になった。
「休憩に致しましょう。少々席を外します。すぐに戻ってくるのでお待ち下さい」
やっと休憩だ。
教育係が部屋からいなくなった。
ここぞとばかりにゴロリとソファに寝転がった。
「俺……なんでこんな事してんだろう……」
流されてる感が半端ない……しかもかなりの激流に……。
国の為に覚悟を決めたつもりでも、毎日の王女教育は俺を追い詰めていく。
そもそも【冷徹な若獅子】なんて異名がある男に会わなきゃいけないなんて辛い。
目標は、必ず婚約者候補から外れて帰ってくる事。できれば報酬をもらってこいなんて言っていたけれど、無理に決まっている。
頑張ったんだからいいだろって威張れるくらいには頑張るしかない。
そうやって奮い立たせないと怖気付きそうだった……。
俺のため息が部屋に響く。
教育係の足音が聞こえてきて慌てて体を起こす。
数秒後に部屋に入ってきた教育係は、また眼鏡をクイッと上げた。
「ミリアンナ様、出発する日取りが決まったそうですよ。一週間もありません。付け焼き刃上等で行きましょう」
その言葉遣いはいいのかい?
俺のため息はさらに深く部屋に響いた。
髪が伸びて女らしくなるまでは、カツラでいなければいけないらしい。
ミリアンナのドレスは、皮肉な事に俺のサイズにピッタリだった。
元々胸もあまりなかったミリアンナ。俺の無い胸でもそれなりに誤魔化せるドレスに感服する。
どこからどう見てもミリアンナになってしまった俺を作り上げた侍女に言葉もなかった。
下着ですら女物を用意されて辛い。
何よりも王女としての教育とやらがかなり辛い。
『ミリアンナ様、大股で歩いてはいけません。歩くときは常に半歩を心がけて下さいませ』
『ミリアンナ様、お食事の時に大口を開けてはなりません。お食事のときは常にリスの如く小口で食べて下さいませ』
俺につけられた教育係は、事情を知っているうちの一人で、ことごとく悪い所をダメ出しされた。
その角の尖った眼鏡をクイッと上げるのをやめて……。
今は、ローウェンを相手にダンスの練習中だ。舞踏会なんて出た事もない。
ステップを踏む足がもたついて、ローウェンの足を踏んだ。
「ミリアンナ様、また足を踏まれましたね!」
「申し訳ない……」
ローウェンに謝ったら眩しい笑顔が返ってきた。
「いえいえ」
足を踏まれても笑顔でいられるなんて男前だ。
ローウェンも嬉々として手伝ってくれているけれど、ミリアンナと一緒に暮らせて幸せなんだろう。
こうなっているのは、お前のせいでもあるんだと思うと足を踏んでも大して罪悪感はない。
「ミリアンナ様、今日は三曲ほど覚えてください」
一日で三曲もステップを覚えろって鬼か!
そもそも舞踏会に出る訳でもないのに、なぜダンスのステップを覚えなければならないのか。
女って大変だな……。
ダンスの勉強が終わればお茶の作法だ。
「ミリアンナ様、椅子やソファに座る時は常に足を揃えて下さいませ」
開きかけていた足を綺麗に揃えた。
眠っている時間以外、付きっきりの教育は俺の心を疲弊させ、遠い目をする時間が増えた。
「ミリアンナ様──」
「今度は何だ?」
「──その言葉遣いはいけません。そういう場合は『今度はなんですか?』と問いかけて下さいませ」
疲れる……嫌だ……喋るとすぐに直されて、喋りたくない……。
元々喋らない俺は更に無口になった。
「休憩に致しましょう。少々席を外します。すぐに戻ってくるのでお待ち下さい」
やっと休憩だ。
教育係が部屋からいなくなった。
ここぞとばかりにゴロリとソファに寝転がった。
「俺……なんでこんな事してんだろう……」
流されてる感が半端ない……しかもかなりの激流に……。
国の為に覚悟を決めたつもりでも、毎日の王女教育は俺を追い詰めていく。
そもそも【冷徹な若獅子】なんて異名がある男に会わなきゃいけないなんて辛い。
目標は、必ず婚約者候補から外れて帰ってくる事。できれば報酬をもらってこいなんて言っていたけれど、無理に決まっている。
頑張ったんだからいいだろって威張れるくらいには頑張るしかない。
そうやって奮い立たせないと怖気付きそうだった……。
俺のため息が部屋に響く。
教育係の足音が聞こえてきて慌てて体を起こす。
数秒後に部屋に入ってきた教育係は、また眼鏡をクイッと上げた。
「ミリアンナ様、出発する日取りが決まったそうですよ。一週間もありません。付け焼き刃上等で行きましょう」
その言葉遣いはいいのかい?
俺のため息はさらに深く部屋に響いた。
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