弱みを握られた風紀委員は天敵に奴隷にされる

おみなしづき

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番外編

兎和と獅貴 side獅貴

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 僕は、恵まれた家に生まれた。
 城みたいな大きな家に、広過ぎる敷地。
 お手伝いさんと執事がいて、家庭教師もいた。
 厳しくも優しい両親に、大事に育てられた。
 欲しいと言ったものはすぐに手に入った。
 神宮寺の息子というだけで、大人が頭を下げて挨拶にくる。

 僕は、何不自由ない暮らしを満喫していた。
 そんな僕が欲しがっても手に入れられなかった人がいた。それが兎和だ。

 中等部でも張り出されるテストの順位で、常に僕の上を行っていた。
 また僕は彼に負けたな……。

 常に三位以内に名前が載るやつがどんなやつなのか興味が湧いて教室を覗きに行った。
 眼鏡のガリ勉かと思いきや、綺麗な顔をした美男子だった。眼鏡外したら美人っぽい。
 机に向かって本を読む姿が絵になる。

『獅貴。何見てんだ?』

 たまたま通りかかった圭虎が話しかけてくる。
 圭虎は初等部の時からなぜか気が合って一緒にいるようになる。
 大人の悪口でも盛り上がったし、楽しいことは共有できた。

『あのさぁ、彼、どう思う?』
『ああ……兎和ね……俺は気に入らない……』
『あれ? 知ってんの?』
『ここ、俺のクラスなんだけど』

 同じクラスだったわけね。

『どんなやつ?』
『大人しいのに……目がいくって言うか……俺の視界に入るから苛立つ』
『圭虎がそんな風に言うの珍しいね』

 興味ない人は悪口も言わないのに。

『僕さ、彼とやってみたいな』
『はぁ? あいつと? 理事長の愛人だって噂だからやめとけよ』
『えぇ……そうなの? じゃあしょうがないか……』

 あの眼鏡の向こう側はどうなっているのだろう……。
 想像は止まる事を知らない。

 そして、何もできないまま高等部になった。
 そこで奴隷なんてものがある事を知る。
 初等部も中等部も高等部も、校舎が全部違うからそんなことは知らなかった。
 奴隷のやつが無理矢理やられているのを見て興奮はするけれど、泣き顔より逆らおうと悔しそうな顔をする奴隷に欲情した。

『獅貴! 穂鷹と一緒にさ、秘密基地みたいな俺達の部屋作ろうぜ!』

 そんな圭虎の思いつきから作った特別室は、居心地が良すぎて居座るようになってしまった。
 そうすると、兎和に声を掛けられるようになる。
 ずっと手に入れたいと思っている眼鏡の美人さん。

『獅貴。授業に出ろ』
『制服を着ろ』
『挨拶ぐらいしろ』

 面倒臭いのに嫌じゃなかった。
 僕達はそうやって始まった。

 なんだかんだで兎和を奴隷にして、手に入れたような気になっていた。
 けれど、それはやっぱり間違いだった。
 奴隷の廃止をして、兎和を自由にする事で、やっとスタート地点に立った気がする。

     ◆◇◆

 特別室で兎和しかいない事を確認する。
 座って勉強している兎和の前にヒラヒラと映画のチケットをチラつかせる。

「とーわ。映画に行かない?」

 兎和は、観たがっていたアクション映画に目を輝かせた。

「映画なら……いいよ」

 やった。思惑通りだ。

「じゃあ、時間に迎えに行くから」

 コクリと頷いた兎和が可愛くて隣に座った。

「獅貴……隣じゃなくてもいいだろ?」
「ちょっとだけ……」

 兎和にキスしようとすれば、教科書で遮られた。
 奴隷だった時は素直にしてくれたのに……少しショックだ。

「兎和……嫌なの?」
「違う……キスしたら……止まらなくなるだろ……」

 え? それは……僕が? それとも兎和が?

 教科書を奪い取って兎和の顔を見れば、真っ赤になって視線を逸らす。
 確かに僕は止まらなくなる……。

 兎和の頬をガシッと掴んで半ば強引に唇を寄せた。
 柔らかい唇の感触が気持ちいい。

「んっ……はっ……んん……」

 舌を差し入れて絡み合わせる。
 時々溢れる吐息も全部が興奮する。

「誰か来るから……ん……」
「兎和が可愛いのが悪い……」
「獅貴のキス……気持ちいいから……困るんだ……」

 な、ん、で、す、と……?
 理性がぶっ飛んだ。
 ドサリとソファに押し倒した。

「兎和……」
「獅貴……ダメだって……」

 唇を合わせて堪能する。
 キスでトロンとした顔の兎和がたまらない。

 すると、ガラリと扉を開けてやってきた圭虎じゃまもの

「おい! 何やってんだ! 押し倒すな!」

 邪魔されてガッカリだ。

     ◆◇◆

「兎和。乗って」

 映画の為に迎えに行けば、少し躊躇いがちに車に乗った。
 すかさず手を握ってやれば、ギュッと握り返してくる。

「ねぇ……車が苦手な事、他の奴らって知ってるの?」
「知らない。獅貴の車しか乗った事ないから」

 まじか……。
 感じるのは優越感と、信用されているという感動だろうか。
 僕の車には乗れるという事も嬉しい。
 そういう感情がごちゃ混ぜになって胸を満たす。

 感触を確かめる為に強めに手を握った。

 目的の場所に着いて兎和と一緒に案内される。
 兎和は、個室に入って驚いていた。

「なぁ……ここって……」
「特別席」

 バルコニーになっていて、他の観客を上から見下ろせる。

「何このシート……ソファ?」
「高級家具店のね」

 青ざめる兎和を見ながら、クスクスと笑う。
 先にドカリと座って隣をポンポンと叩く。
 恐る恐る座った兎和は、キョロキョロと落ち着かなそうだ。
 ソファに座ってしまえば、完全な個室のように見える。

 照明が落とされて暗くなれば、映画が始まった。
 隣で映画を見る兎和を見つめる。
 久しぶりの二人きりの空間。
 アクション映画でも映画の中の主人公とヒロインは、手を繋ぐシーンもある。
 そっと兎和の手を握った。

「獅貴……?」
「映画……観てて……」

 横から兎和の頰にキスする。
 可愛い耳をペロリと舐める。

「んっ……」

 耳たぶを甘噛みして、舌でクチュリと舐める。

「んんっ……獅貴……映画……」
「観てていいってば……」

 首を上から下に舐めながら、キスマークがつかない程度に軽く吸う。
 兎和の服に手を突っ込んで乳首をイジる。

「んっ……んんっ……ふっ……獅貴……」

 ピンッと立ち上がった乳首を指で転がしながら、首に何度も吸い付いた。
 兎和は、耐えられなくなったのか、こちらを向いて何か言おうとした。
 そうはさせない。
 すかさず唇を塞いで舌を舐め回す。
 そのまま兎和をソファに押し倒した。
  
「獅貴……ダメだ……こんなところで……」
「みんな映画に夢中だよ……」

 シャツをまくれば、薄暗くても乳首が見える。
 桜の花びらみたいだった乳首は、僕達の愛情で常にさくらんぼ色になった。
 益々妖艶な体になって僕達を惑わせる。
 今は見えないけれど、今度は明るい所で見せてもらおう。
 乳首に吸い付いて舌で転がす。

「んっ……んん……」

 アクション映画は、重低音が胸に響いて、僕達の声なんて聞こえない。

「声出して大丈夫だよ……」
「でも……」
「なら、我慢できないようにしてあげるよ……」

 背中にも手を突っ込んで傷あとを撫でた。

「ひゃっ……! んんっ……あっ……!」

 執拗な愛撫で兎和が悶える姿に興奮した。
 ふと兎和のモノが勃っているのに気付く。
 今日履いていたジーンズを脱がせば、可愛く主張していた。
 尻の蕾に指を挿れて中をかき混ぜれば、僕にしがみつくのが可愛くて仕方がなかった。
 しがみついていれば、耳元で兎和の喘ぐ声が直接耳に響いた。
 我慢できなくなって、自分のモノを挿入する。
 最初はゆっくりと兎和を味わう。

「あっ……獅貴……んっ……映画……みたい……」

 そう言いながら、僕の首に腕を回してしがみついたまま目を離さない。

「また来ればいいさ……今はこっちね……」

 キスして舌を絡めれば、巧みに兎和の舌が動く。
 キス……上手くなったな……。
 初めてした時とは比べ物にならない。
 こっちが翻弄されるようになってしまった。
 今までされるがままだった兎和が応えてくれるというだけで、可愛さが増して好きでたまらなくなる。

 アクション映画の激しい銃撃戦が始まれば、思い切り激しく腰を揺らした。

 パンッ! パンッ! チュドーンッ! ズガガガガッ! ドォーンッ!

 映画も僕達もクライマックスだ。

「あっ、あんっ、はっ! ふぁ、んっ、しきっ……イクッ! イクよっ──!」
「兎和……僕と一緒にイこう──!」

 ズキューンッ──!

 主人公が適役に向けた一発の銃弾と、僕達の精液が同時に放たれた。
 はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。

『これで終わりだな……』

 兎和をギューッと抱きしめながら、主人公のそんなセリフが聞こえてきて笑ってしまった。

     ◆◇◆

「映画……観れなかった……」

 帰りの車の中で、ガッカリする兎和の頰にチュッとキスをする。

「また観に行こうよ」
「嫌だ……」

 拗ねた顔も可愛くて仕方ない。

「今度は個室にしないからさ」
「気が向いたらな……」

 しばらくは映画に行ってもらえなそうだけれど、僕はとても満足した。
 久しぶりに邪魔されずに兎和を堪能できた。

「兎和……このまま帰らないでよ……」
「え……でも……」
「もっと一緒にいてよ。兎和がいないと寂しい」
「わかった……今日だけな……」

 兎和は、寂しいと言うと断れない。
 今日だけ……そんな事を言いながら、兎和と過ごしたのは何回目かわからない。

「兎和、大好きだよ。兎和は?」
「………………好きじゃなきゃ……一緒にいない……」

 無理矢理言わせた感じはいつもある。
 でも、奴隷のままだったら絶対に言ってくれなかっただろう。
 欲しかった言葉をやっと手に入れられた。
 それなのに、満足するどころかまだ足りない。
 僕は、この先もずっと兎和を求め続けていくんだろう。
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