弱みを握られた風紀委員は天敵に奴隷にされる

おみなしづき

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番外編

兎和と紫狼 side紫狼

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『紫狼、お前は大日向家を継ぐ男だ。何事も妥協するんじゃない』

 オレは、父にそう言って育てられた。
 常に完璧を。
 そうやって幼い時を過ごしていた。
 
 祖父は父よりももっと厳しい人だった。
 足を悪くして杖をついていても威厳のある人だった。

『紫狼! また神宮寺の息子に負けたのか! まだ甘えているんだ!』

 そう言って、杖で殴られては、家にある蔵に閉じ込められた。

『お祖父様! ごめんなさい! 次は勝つから!』

 何度叫んでも蔵の扉は開くことはない。
 明かりは高い位置にある小窓だけ。
 時間がどれぐらい経ったのかもわからない。
 わけのわからない置き物や人形、絵画や掛け軸なども、幼い子供には恐怖の対象でしかない。

『お祖父様ぁー……開けてぇ……』

 オレはいつも薄暗い蔵の中で震えて泣いていた。

 今思えば由緒ある家系なんて面倒なだけだった。
 幼い頃は、そんな事も分からずに親の言うことを聞くしかなかった。

 何度も与えられる祖父からの折檻は、子供らしいという気持ちをオレから奪った。
 杖で殴られても反応することをやめて、歯を食いしばって黙って耐える。
 蔵に閉じ込められる事にも慣れて、蔵の中に懐中電灯を隠すようになり、お菓子や本を置いて時間を潰すようになる。
 オレという男にずる賢こさが備わる。

 そのうちに、祖父が亡くなった。
 取引先や知らない企業の息子達、たくさんの人が祖父の死を悲しむ中で、オレはやっと解放されたんだと思った。
 あの時の感情は言いようがない。

 それからオレは、開放感からやりたい放題やるようになる。
 気に入らないやつは殴ったし、物は壊した。
 中等部ではケンカばかり。

『紫狼! またケンカしただって⁉︎ いい加減にしろ!』
『成績だって落としてないし、スポーツなら獅貴に勝てる。それ以外に何をしようがオレの勝手だろ?』

 顔を合わせば説教ばかりの父とはあまり話さなくなった。

 外泊も多いし、稽古事にも行かなくなって遊びまくり。

 鷲也は幼馴染で、鷲也の家に泊まる事が多かった。
 羊助もそんな鷲也の家にいた。
 鷲也の家は家族が仲が良くて、居心地が良かったんだと思う。

『紫狼。寝ていると、いつもうなされています……大丈夫ですか?』
『えぇ? オレ記憶になぁい……』
『寝起きも随分と悪いです。紫狼専用のベッドを作って正解です』

 寝起きが悪いのは、中等部に入ってからひどくなった。
 寝られなければ気分が悪い。
 そうなると、気に入らない事があると我慢ができない。
 悪循環だった。

     ◆◇◆

『大日向君、期待しているからね』

 中等部2年だった時の担任は、そんな事をオレに言った。
 オレみたいな失敗作に何を期待しているんだ?

 ああ……今日も気分が悪い。

 ケンカで相手を殴ればスッキリするし、体は疲れて良く寝れた気がした。
 殴られても痛みなんて慣れていて感じない。
 ところが、手加減もわからず負け知らずのオレに、段々と挑む奴がいなくなってしまった。
 殴った事のあるやつなんて、オレを見て逃げる。

 ケンカをしていると何も考えられなくなって良かったけれど、相手がいないんじゃな……。

 誰にも会いたくなくて、図書室の一番奥で、床にゴロリと横になる。
 何もかも面倒だな……。
 そう思いながら目を閉じた──。


・・・・・・・・


『紫狼! 何度言わせる! お前は負ける事が許されない!』
(あんたの理想を押し付けんなよ!)

『紫狼! そんな事もできないのか!』
(杖なんかついてるくせに、あんたにはできるのかよ⁉︎)

 真っ暗な蔵の中、いつもそんな言葉と戦う。
 戦う事が辛くなった頃に蔵を見上げれば、小窓に小さな明かりが見える。
 小さな子供には決して届くことのない明かりがとても眩しく見えた。
 いつも明かりに手を伸ばしても届かない。

 けれど──今日は違った。
 明かりに手が届いた。
 あの明かりって触れたんだ。
 暖かくて、優しい感触だった。

『大丈夫だ……』

 なんだかそう言われたような気がした──。


・・・・・・・・


 ふと目を開ければ、そこは図書室だった。
 あれ?オレ……何の夢見てたっけ……?
 夢の内容はいつも覚えていない。
 でも、いつもと違って気分がいい。
 ふと隣に誰かいる事に気付く。

『兎和ぁ? あれぇ? なんでぇ?』
『手……』
『手ぇ?』

 兎和は、いつも寝起きの悪いオレの近くにいて、唯一無事だった人だ。

     ◆◇◆

 寝ていれば、何だか優しく背を撫でられているような感じがした。

「紫狼……大丈夫だ……」

 優しく声を掛けられて、ふと薄目を開けると目の前にいるのは兎和だった。
 オレ……またうなされたのかなぁ……。
 でも、まただ……兎和が近くにいると気分が悪くない。

 それどころか、寝起きなのに嬉しいなんて初めてだ。
 思わず兎和の腕を掴んで引っ張った。
 体をひねれば、ぽすっとオレの胸の上に兎和が乗るような状態だった。

「し、紫狼……? 寝ていたはずじゃ……?」

 驚いている兎和を布団の中に入れて、ギューッと胸の中に閉じ込める。

「寝てたけどぉ、兎和の声がもっと聞きたくなっちゃってぇ……」
「何言ってんだ……?」
「兎和の可愛い声……いっぱい聞かせてぇ……」

 もっとオレの大好きな兎和の声を聞かせて欲しい。
 そのままキスすれば、戸惑いながらも受け入れてくれる。
 キスしながら、シャツのボタンを外して、乳首をイジる。

「あんっ……ダメだって……そこ……触らないで……」
「ダメじゃないくせにぃ……」
「あ……紫狼……んっ」

 兎和の甘い声がもっともっと聞きたい。
 優しく愛撫する。

「んっ……あ……」

 甘い声を聞きながら、制服を脱がして背中を撫でれば、ビクッと震える。
 兎和は背中が弱いらしいと最近知った。
 傷あとを指でツーッとなぞる。

「ひゃぁ……んんっ……あっ!」

 可愛い声……。
 何度も背を撫でて、キスして、さくらんぼみたいに色づく乳首を舐める。
 その度に悶える姿と声に欲情する。
 自分のモノもギンギンに勃ち上がった。

「兎和ぁ……してもいい?」
「もうしてるだろ……今更聞かないで……」

 真っ赤になりながら了承されて、たまらなかった。

 兎和のスラックスを脱がして、自分も脱ぐ。
 兎和の勃ち上がっていたモノを見て、兎和も興奮していたんだと嬉しくなる。
 また兎和をオレの上にまたがるように乗せて、体を寄せる。

 そして、胸にあるキスマークに嫉妬する……。

「噛んでいい?」
「だめ」

 それならオレの痕もどこかに残そう。
 オレの痕はどこがいいか……兎和の腕を取って二の腕の内側に付けた。
 意外と見えそうで見えない位置かな。

 そのまま背中を撫でながら、尻の蕾をかき混ぜた。

「あっ、あんっ……はっ……」

 気持ち良さそうな兎和を見るともっとしてあげたくなる。
 赤くなりながら眉根を寄せて、気持ちよさに耐えている。
 可愛すぎて、その顔にいっぱいキスをした。

「兎和……上乗って……」
「え……?」
「兎和が挿れてよ……」

 このまま兎和に挿れて欲しかった。
 じっと見つめれば、戸惑いながら上半身を起こした。
 オレのモノを持って確認しながら自分で尻の蕾に挿し入れてくれた。
 オレの腹に手をついて、ゆっくり腰を落としていく。
 焦らされているような感覚が余計に興奮を煽る。

「ん……んんっ……はっ……しろう? 全部入ったかな?」

 コテンッと首を傾げた。
 やばすぎる。
 鼻血出そう……。

「ねぇ……動いて……」
「紫狼って……こういう時、口調が変わるな……」
「興奮すると変わるみたいなんだ……それだけ兎和に興奮してるんだ……」
「そ、そう……」
「動いてよ……ね?」

 兎和は、肌を真っ赤に染めるほど恥ずかしいのに、ゆっくりと腰を上下に動かしてくれた。
 腰を持って支えてやれば、安心したのか動きが少し早くなった。

「んっ……紫狼? これで……いい? ぅんっ……はっ……気持ちいい?」

 確認するような兎和が可愛すぎる。
 上に乗るの……初めてなんだ。
 オレが……初めて……。
 ぶわっと何かが込み上げて体を熱くした。

 激しく動いて兎和を気持ち良くさせてやりたい!
 でも、兎和の初めてをもっと味わいたい!

「兎和が気持ちいいように動けば、オレも気持ちいいよ……」

 すると、兎和が自分の気持ち良い場所に擦るように動き出した。
 段々と激しくなる動きと声に興奮が止まらない。

「あっ! あんっ……! んっ……ふぁっ!」

 兎和の中が締まって気持ちいい。
 やばい……イキそうだ……。

「兎和……待って……オレがイキそう」
「えっ……ほ、本当……?」

 すると、嬉しそうに微笑んだ。
 不意打ちの笑顔の破壊力は半端ない。

「兎和……オレがイクの……嬉しいの……?」
「あっ、あ……はっ……うん……」

 動きがならもコクリと頷いた兎和を見て、オレのモノは爆発した。

「──っ! やばい……はぁぁ……オレ、イッちゃったぁ……」

 こんなに簡単にイクなんて初めてだ。
 笑っちゃうぐらい興奮しすぎた。

 兎和はそんなオレを見下ろして、照れながら笑った。

「は、初めてだったから……紫狼が気持ち良かったなら……嬉しい……」

 そんな事を言われた。
 まぁ、また勃つよね。

 今度はオレの方が覆い被さって兎和の声が枯れるまで喘がせた。
 獅貴達にどれだけやったんだと怒られたけれど、また上に乗って動いてもらおうと画策中だ。

 最近、寝る前に兎和の声を思い出すとよく寝れる気がする。
 やってる時の声を思い出すと勃っちゃうから、普段オレを呼ぶ声や、大丈夫と言ってくれる優しい声を思い出す。
 思い出すだけで心が満たされる。

 そこで、父がオレの部屋のドアを開けて覗き込んだ。
 今帰ってきたのかスーツのままだった。

「紫狼……最近帰ってくるようになったな……」
「よく寝れるようになったからねぇ」
「ケンカもしなくなったみたいだ……父さんは……う、嬉しいぞ」

 父にそんな風に言われるとは思ってなくて、まじまじと見つめてしまった。
 父は、オレが疎ましいのだと思っていたけれど、そんな事もないらしい。
 照れるように言い逃げした父に笑ってしまった。

 兎和は、オレの人生を変えてくれた人だ。
 オレには兎和が必要だ。
 兎和がいないと生きていけない……それは、オレの本気の言葉。
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