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本編
奴隷に好意は芽生えない?
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目覚めたらニコニコとした紫狼の腕の中だった。
「紫狼……? 寝ちゃってごめん」
「いいよぉ。オレ嬉しぃ」
紫狼から離れようとしても離してくれない。
「もう帰るから、離してくれない?」
「えぇ……もう?」
不満そうな紫狼に苦笑いだ。
「約束は守っただろ?」
「そうだねぇ……わかったぁ」
紫狼の腕から抜け出して、乱れた制服を整えていると鷲也と羊助がこちらにやってきた。
「兎和。また遊びに来てあげてよ」
「遊びにというか……俺は寝ていただけだ……」
「それでもいいのです」
二人ともニコニコとしている。
訳がわからない。
寝てるだけでいいなら別にいいかな。
「まぁ……時間があったらな……」
「待ってるぅ」
なんで紫狼はあんなに嬉しそうなんだろう。
ベッドから手をヒラヒラと振る紫狼に苦笑いしつつ遊戯室を後にした。
◆◇◆
実は、拓馬と連絡先を交換した。
家に呼んで、この間のお礼として豹の手料理をご馳走する。
「あいつらは呼ばないのか?」
「呼ばない。元はと言えば、体調を崩したのはあいつらのせいだ。感謝しているのは拓馬だけだ」
「ははっ。じゃあ遠慮なく」
豹はキッチンから色々と持ってきてくれる。
「拓馬さん……兄さんから聞きました。ありがとうございました。いっぱい食べて下さい」
「気にしないでいいよ。豹君も一緒に食べよう」
「はい」
「お。美味い! 豹君って料理上手だな。嫁に欲しい」
ボッと赤くなった豹に笑ってしまう。
三人で食卓を囲む。
食べ終われば食休みだ。
豹がキッチンで洗い物をしている間に拓馬が問いかけてきた。
「兎和はさ、あいつらの事どう思ってんの?」
「どうって言われても……」
「三人のうち誰が好きだとかないのか?」
正直……ない。
豹が聞いていないのを確認して言葉を選ぶ。
「俺は奴隷だし……言われたらやるしかない……それで好きにはなれないと思う」
「ははっ。その気持ちはわかるからな。でも、俺とは明らかに扱いが違う。兎和の事本気みたいだ」
「そうなのかな……」
あいつらには結構ひどい事された気がするけれど、そうでもないのか……?
三人が俺を好きだというのも嘘じゃないって事かな。
問題は、性欲が強すぎてついていけない……。
「あいつらに狙われたら、兎和に逃げ場はないよ」
面白そうに言われた言葉が冗談に聞こえなくて顔を引きつらせる。
何故だか肉食動物に追い詰められた小動物が震える姿が目に浮かぶ。
そこで、豹がキッチンから顔を覗かせた。
「兄さん、牛乳なくなってた。少し買い物してくるよ」
「一人で平気なのか?」
「あ、俺が一緒に行くよ」
「拓馬が?」
「ついでに買いたい物があるから。豹君、一緒に行こう」
「あ……はい」
二人を見送って考える。
獅貴は偉そうだけれど優しいと思う。
圭虎は強引だけれどやっぱり優しいかな。
穂鷹は……優しいけれど変態だ……。
この中から選べと?
──選べない。
そもそも三人以外の選択はないのか……?
考えるだけ無駄な気がして考える事を放棄した。
「紫狼……? 寝ちゃってごめん」
「いいよぉ。オレ嬉しぃ」
紫狼から離れようとしても離してくれない。
「もう帰るから、離してくれない?」
「えぇ……もう?」
不満そうな紫狼に苦笑いだ。
「約束は守っただろ?」
「そうだねぇ……わかったぁ」
紫狼の腕から抜け出して、乱れた制服を整えていると鷲也と羊助がこちらにやってきた。
「兎和。また遊びに来てあげてよ」
「遊びにというか……俺は寝ていただけだ……」
「それでもいいのです」
二人ともニコニコとしている。
訳がわからない。
寝てるだけでいいなら別にいいかな。
「まぁ……時間があったらな……」
「待ってるぅ」
なんで紫狼はあんなに嬉しそうなんだろう。
ベッドから手をヒラヒラと振る紫狼に苦笑いしつつ遊戯室を後にした。
◆◇◆
実は、拓馬と連絡先を交換した。
家に呼んで、この間のお礼として豹の手料理をご馳走する。
「あいつらは呼ばないのか?」
「呼ばない。元はと言えば、体調を崩したのはあいつらのせいだ。感謝しているのは拓馬だけだ」
「ははっ。じゃあ遠慮なく」
豹はキッチンから色々と持ってきてくれる。
「拓馬さん……兄さんから聞きました。ありがとうございました。いっぱい食べて下さい」
「気にしないでいいよ。豹君も一緒に食べよう」
「はい」
「お。美味い! 豹君って料理上手だな。嫁に欲しい」
ボッと赤くなった豹に笑ってしまう。
三人で食卓を囲む。
食べ終われば食休みだ。
豹がキッチンで洗い物をしている間に拓馬が問いかけてきた。
「兎和はさ、あいつらの事どう思ってんの?」
「どうって言われても……」
「三人のうち誰が好きだとかないのか?」
正直……ない。
豹が聞いていないのを確認して言葉を選ぶ。
「俺は奴隷だし……言われたらやるしかない……それで好きにはなれないと思う」
「ははっ。その気持ちはわかるからな。でも、俺とは明らかに扱いが違う。兎和の事本気みたいだ」
「そうなのかな……」
あいつらには結構ひどい事された気がするけれど、そうでもないのか……?
三人が俺を好きだというのも嘘じゃないって事かな。
問題は、性欲が強すぎてついていけない……。
「あいつらに狙われたら、兎和に逃げ場はないよ」
面白そうに言われた言葉が冗談に聞こえなくて顔を引きつらせる。
何故だか肉食動物に追い詰められた小動物が震える姿が目に浮かぶ。
そこで、豹がキッチンから顔を覗かせた。
「兄さん、牛乳なくなってた。少し買い物してくるよ」
「一人で平気なのか?」
「あ、俺が一緒に行くよ」
「拓馬が?」
「ついでに買いたい物があるから。豹君、一緒に行こう」
「あ……はい」
二人を見送って考える。
獅貴は偉そうだけれど優しいと思う。
圭虎は強引だけれどやっぱり優しいかな。
穂鷹は……優しいけれど変態だ……。
この中から選べと?
──選べない。
そもそも三人以外の選択はないのか……?
考えるだけ無駄な気がして考える事を放棄した。
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