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本編

閑話・圭虎のぬいぐるみ

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 圭虎二号は、ベッドの横にある棚の上に置いていた。
 初めてもらったぬいぐるみが嬉しくて、圭虎二号の頭をポンポンと叩いていると、獅貴が覗き込んできた。

「それなに?」
「圭虎二号」
「圭虎二号?」
「トラだし、この目つきの悪さ。圭虎にそっくりだ」

 ベッドの端に座って圭虎二号を膝の上に乗せて抱きしめる。

「それ……圭虎二号なんでしょ?」
「そう」
「そんな大事そうに抱えてるの嫌なんだけど……」

 そんな事言われても……。
 困っていれば、圭虎が隣に座ってきて圭虎二号をベッドの上にどかして膝枕をしてきた。

「なぁ兎和。圭虎二号だけじゃなく、圭虎も可愛いがれ」

 少し考えて、圭虎の頭を撫でてやる。
 大きな猫を撫でているような感覚だ。

「圭虎の顔が真っ赤になりましたね。本当にやってくれるとは思っていなかった顔です」
「自分で言っといて恥ずかしがるとかウケる」

 穂鷹と獅貴がクスクスと笑う。

「兎和ぁ……」

 こちらを向いた圭虎は、グリグリと頭を腹に押し付けてきた。
 恥ずかしいのを誤魔化しているようで笑ってしまう。
 赤くなりながらも少しむくれた顔で体を起こすとキスされた。
 そのままグッと押されてボスっとベッドに倒れこむ。

「ん……はっ、んん……」

 圭虎のキスは荒々しいのに気持ちいい。
 キスで翻弄されていると、圭虎は獅貴達に引き離される。
 
「そのままやるつもりだったな?」
「バレた?」
「油断も隙もありませんね」

 俺……今やられそうだったの……?

 そう思って自分を見れば、ちゃっかりブレザーのボタンを外されていた。
 そんな事を感じさせないテクニックってすごい。
 引き離されてホッとする。
 自己防衛の為に、ベッドに転がっていた圭虎二号をギュッと抱きしめた。

「見ろよ。俺、圭虎二号になりたい」
「なんであんなに大事にしているんだ」
「圭虎二号……ちょっとイラッとします」

 圭虎二号に全員の視線が集まる。

「圭虎、獅貴二号取ってこい」
「はぁ? 圭虎二号だけでいいだろ?」
「ふふっ。兎和、穂鷹二号も欲しくないですか?」

 獅貴二号と穂鷹二号……偉そうなライオンと意地悪く笑うタカのぬいぐるみ。
 絶対かわいい。

「欲しい……」

 キラキラとした瞳で圭虎を見つめた。

「わ、わぁかったよ。今度取ってくる」
「本当か! 圭虎、ありがとう」

 嬉しくてニコニコと笑顔を向ければ、圭虎はズイッと近寄ってきた。

「じゃあ前払いな。お前らも、俺に物を頼むんだからいいよな?」
「嫌だけど、今回は仕方ないか……」
「あまり無理はさせないで下さいよ」
「え……?」

 圭虎に抱きこんでいた圭虎二号をポイッと放り投げられた。
 ホテルの時のようにまた床に転がされた圭虎二号……。
 覆い被さってくる圭虎に制服を脱がされる。

「いっぱい声出して、あいつらに聞かせてやろう」
「あ……んん……圭虎……ま、待てって……! あっ、それ……ダメッ!」

 結局やられるんじゃないか!

 後日、圭虎は獅貴二号と穂鷹二号のぬいぐるみも取ってきてくれた。

「あれ? オオカミもいるけど、どうしたんだ?」
「そのシリーズ、それで全種類なんだ。兎和が好きそうだし取ってきた。いいだろ?」
「かわいい……」

 のほほんとしたオオカミは誰かに似ているような……。
 誰だったっか……。

 今は、ベッドの横の棚に4匹並んで置かれている。
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