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本編

穂鷹の奴隷 1

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 放課後になって制服を受け取りに特別室へ行った。
 そこには、穂鷹しかいなかった。

「二人はどうした?」
「帰りましたよ」

 帰るのは早いんだな……。

 獅貴にバイト休みって言ってない……まぁいっか。

「はい。制服」
「ありがとう。着替えるからベッドの端貸して」
「どうぞ」

 ベッドの枕の方へ行って壁を背にしてブレザーを脱いで、シャツを脱ごうとした。
 けれど、穂鷹は目の前から動かなくて、ニコニコとこちらを見つめていた。

「穂鷹? なんで見ているんだ?」
「兎和の体を目に焼き付けようと思いまして」
「冗談じゃない……」

 堂々と覗き宣言するなよ。

「見せて下さいよ」
「俺は見られたくない」
「想像だけでは限界があるんです」

 獅貴も似たような事を言っていたけれど、こいつら何を想像しているんだ……。

「触ったりしません。見せてくれるだけでいいんです」
「無理だ。あっちへ行ってくれ」

 壁を背にしても背中が見えたら嫌で、どうにか穂鷹を引き離せないかと模索する。

 そこで、スマホが着信を告げる。
 バイト先の先輩からだった。
 穂鷹から離れるようにベッドの反対側へ移動して、聞こえないように穂鷹に背を向けて通話ボタンを押した。

「はい。有栖川です」
『兎和君? 新しいバイトの子が入ったんだけど、制服の予備ってどこだったかわかる?』
「はい。休憩室のロッカーの一番端にまとめて入ってます」
『こっちか──あ、あった。まだ店長が来てなくて、僕じゃわかんないから助かったよ。ありがとう』
「いいえ。気にしないで下さい」
『兎和君、またバイトの時にね』
「はい。また」

 俺に電話をしてくるぐらいだ。困っていたんだろう。

 通話を終えると穂鷹が目の前に出てきて驚いた。
 いつの間に……。

「兎和って、バイトしているんですか?」
「聞いていたのか⁉︎」

 ニコニコとしながらズイッと近くなった距離に一歩後ずさる。

「離れたから気になりました。バレないように近付いたら偶然聞こえてきたんですよ」
「それ……聞いていたって言うんだ」

 また一歩近付かれて一歩後ずさる。
 人の電話を盗み聞きするなんて、最低なやつだ……。

「もしかして──獅貴もそれを知っているんですね」
「たまたま知られてしまって……」

 また一歩近付かれて一歩後ずさったら、ベッドに足が引っかかった。

「うわっ!」

 そのままベッドに仰向けで倒れ込んでしまった。
 すかさず上に乗って腕を押さえてきた穂鷹に危機感しかない。
 腕を動かそうにもびくともしない。
 力強くないか⁉︎

「ふふっ。私の奴隷になって下さい」

 最悪だ……。
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