445 / 509
第九章
第四百四十四話 vs偉大なる時の男神 後編
しおりを挟む
フォルティシモは初めてトッキーを殴ったな、という思いを得た。トッキーの頬に突き刺さった右の拳から、強い衝撃が伝わって来る。
トッキーは初めて出会った時からフォルティシモに友好的で、VRMMOファーアースオンラインのベータテスト時代からのフレンドだったから、戦うなんてことはなかった。
狩り場が被ったら話し合いで融通し合ったし、イベントやクエストでは協力し合ったことも多い。
多人数が必要なクエストの時はトッキーに頼んで人数を用意して貰った。レアアイテムを交換条件にされたが、大勢から嫌われているフォルティシモが人数を集められたのはトッキーのお陰だ。
戦闘力が無関係な人数必須なイベントでは、トッキーのパーティーに所属させて貰ったこともある。他のパーティーメンバーはフォルティシモを見ただけで睨み付けて来たが、トッキーが取り持ってくれた。
お互いのプレイスタイルは正反対だから、仲良くできているのだと思っていた。
しかしトッキーは、フォルティシモを嫌っていた。
フォルティシモはこの思いの正体を、寂しさだと理解する。
「トッキー、俺はお前とも友人だと思ってた」
「無駄な努力乙とか言っておいてそれ? いや、そうじゃねぇよね!? え!? 何が起こったの!? 俺、神の力で、フォルさんを攻撃したんだけど!?」
フォルティシモの右ストレートを受けたトッキーは叫んでいた。トッキーの頬にはフォルティシモの拳がハッキリと刻まれている。
「そうなのか? 何かしようとしているようだから、先制攻撃を仕掛けたんだが」
「前から言おうと思ってたけど、相手の攻撃をHPと防御力で受けながら攻撃するのは、先制攻撃って言わねぇから。だからそうじゃねぇよ!」
トッキーがフォルティシモを見つめるその視線には、驚愕と―――恐怖があった。
「まさ、か、フォルさん、真神に生まれ変わった? オウさんにアカウント奪取されて真神に転生したって言うのか!? 冗談だろ。人間がっ!?」
「アカウント作り直しか。言われて見ると、その通りだ。最強神フォルティシモは、さっき生まれて、新しい世界ファーアースオンライン・バージョン・フォルティシモを創世した」
偉大なる星の女神マリアステラは、全視の能力を持ち、哲学的な観測者として事象への干渉が可能らしい。
偉大なる時の男神トッキーは、おそらく四次元空間において何らかの力を自由に行使できるのだろう。
そして“偉大なる最強の神”フォルティシモは、ただ最強である。
最強という概念が神として形を持った存在、それが最強神フォルティシモだ。
概念として最強なので、フォルティシモを倒すという行為は成立しない。
それが“始まり”が創った神儀をキュウステラと一緒に完全攻略し、誰よりも先にフォルティシモが辿り着いた最強神。
「は? ふざけんなよ? そんなの、許されない。世界のバグだ。そんなもん許したら、世界は、めちゃくちゃになるだろ」
トッキーは頭を振る。
「いや待て、これはフォルさんお得意の自称最強論だ。真なる神に至ったのが事実だとすれば、何らかの干渉によって防御したんだな。もしくはこのファーアースオンライン・バージョン・フォルティシモの物理法則に、【時間】が含まれている可能性もある」
フォルティシモが答えないでいると、何かに思い至ったのか声を張り上げた。
「そうか。この『最強の世界』はAIのように自己学習をして成長するんだな。解析、攻略したものを、己のシステムへ取り込む最強厨な世界。それもフォルさんを最強にするって間違った方向で物理法則を書き換える。そうだろう、フォルさん!?」
フォルティシモはトッキーに対して、遙か天上から見下ろすように笑みを作った。
「フォルティシモは最強だ。だからフォルティシモを倒すことはできない。まだフォルティシモが最強だと理解できないか?」
「最強だから最強ですって、幼い子供でももう少し論理的じゃね?」
「PKするぞ。じゃなくて、トッキー、俺はお前が好きだったから、本気で相手をしてやる」
「フォルさんの本気か。ちょっと怖いな」
「<時>の奴らが、今まで神様たちの世界で虐げられてきたのは、分かった………いや本当は、俺には関係ないから良く分からないが、そうなんだろうとは思った」
「やべぇ、本気って言った次の瞬間からフォルさん節だわ」
フォルティシモの価値観では理解できないのに同情するよりは、分からないと正直に言ったほうが真摯に向き合っている。
「いいか、一度しか言わないから良く聞け」
フォルティシモはできるだけ真剣な表情を作ってトッキーを指差した。
トッキーはフォルティシモのことをよく分かっているようで、表情を見ただけで茶化したり文句を言って来なかった。
「<時>の連中は、ファーアースオンラインのベータの頃から、もう顔見知り同士だ。一緒に運営に文句を言ったり、イベントやショップを盛り上げたり、アップデートでマップやボスの情報共有なんかもした」
フォルティシモはたしかに<時>のプレイヤーたちの名前を覚えていない。
けれど何も思っていない訳ではない。
「何かと俺に突っかかってきたり、【拠点攻防戦】を挑まれたり、PK合戦も良い思い出だ。掲示板の工作も、晒しも、迷惑メッセージも、ムカつくがお前らがファーアースオンラインを真剣にプレイしていたからだろう。実を言うと雑魚共から嫉妬されることに、ちょっと気分良くなったりもした」
そしてフォルティシモは次の話題へ移る時、胸の内に少しのわだかまりを感じる。それでも続きを口にした。
「あの事件について、俺は一生許せない。それは変わらない。だが、お前らとプレイしたファーアースオンラインは、楽しかった。最強厨な俺がいても、止めずに全力でやり続けてくれたお前らのこと、俺は、嫌いじゃない」
その時、トッキーの顔に浮かんだ感情は何だったのか、フォルティシモには分からない。
「………なぁ、フォルさん、分かるか? 悲劇が嫌いって言ってたけど、今、フォルさんは<時>の神々の命と、それを信仰して来た大勢の人の想いを、殺してるんだぜ?」
トッキーは天を仰ぎ、今までとはまったく違った落ち着いた声色でフォルティシモへ語り掛ける。
「後者は、最強のフォルティシモを信じられなかっただけだ。クソ信仰だな」
「ひでぇ」
「前者はまだ決定していない」
「何考えてんのか知らないけど、強さじゃすべては解決しねーよ?」
「最強なら話は別だ」
フォルティシモは手の平を上へ向けて、トッキーへ差し出した。
「トッキー、俺の事情を脇に置いて、手を差し伸べてやる。この最強のフォルティシモへ付け」
これはフォルティシモが先ほどトッキーに対し「止まれないのか」と問いたのとは、似ているようで根本的に意味の違う言葉である。
フォルティシモはトッキーがこの差し出した手を取れば、トッキーと<時>の神々たちを助けると言ったのだ。
「うーん、超上から目線。フォルさん、俺からも良い?」
「なんだ?」
「俺は今から全力でフォルさんに抵抗する。偉大なる時の男神なんて言われている俺の全力に勝てたら、フォルさんの最強をさらに証明できる」
フォルティシモは最強神まで至った。トッキーと戦っても百パーセントフォルティシモが勝つ。
キュウとマリアステラが可能性の世界を探し回っても、フォルティシモが勝つ以外の可能性はない。最初から決まり切った戦いだ。
「俺が負けたら、<時>のみんなを頼む。みんなフォルさんのこと、めちゃくちゃ嫌ってるけど、たぶん、フォルさんと同じように楽しかったと思う」
それでもトッキーは戦う。最強神フォルティシモと偉大なる時の男神クロノイグニスが戦うこと、そのものに意味があるからだろう。
「それを頼むな。俺に付けば目の前の危機だけは助けてやるってだけだ。将来まで責任を持てる訳ないだろ。俺はキュウくらい可愛くないと、責任を持って救うつもりはない」
「まあそうだよなー」
トッキーはインベントリから大型のナイフを二本取りだして、両手に装備した。
「でも、フォルさん、変わったな」
「男子三日会わざればなんて言うつもりはないが、異世界に送られたら、誰でも変わるだろ」
「俺はそれでも変わらないのが、フォルさんだと思ってた」
フォルティシモはそれに反論しなかった。フォルティシモが変わった理由は、異世界に来たからではないから。
何よりも大きな出会いとなったキュウ、一生共に居るはずだったエンシェントが消えた事実、一度は失われた従者たち、再会し本音で語れた親友ピアノ、異世界を必死に生きているカイルやフィーナたち、AIにも負けないラナリア、神戯によって産まれたエルミアとテディベア、同じ祖父の血筋のルナーリス。
もしも。
神戯ファーアースが開催されず、フォルティシモがVRMMOファーアースオンラインをプレイすることなく、異世界ファーアースに召喚されなかったら、当然、これらの出会いは無かった。
それに<時>の神々は、あくまで神戯ファーアースをマリアステラたちに開催させただけ。オリンピックを開催し、そのせいで誰かが死んだとしても、主催者や参加者を恨むのはお門違いだと思っている。
「別に、変わってない。フォルティシモは最強のままだ」
「今のフォルさんは、嫌いじゃねーよ?」
二本のナイフを構え、戦闘態勢を取ったトッキーは、これまでで最も穏やかな表情を見せた。それから空へ向かって話し掛ける。
「オウさーん、ごめん、俺たち、フォルさんに勝てねーや。オウさんの孫、ほとんどの点ではオウさんの遙か格下なんだけど、一つだけ、最強って意味不明な点だけ、まじで本物で、それで真神へ至ったみたいだ。俺たちはここまでだ。俺はオウさんの願いが叶うことを願っている」
二柱の偉大なる神がアクロシア大陸の空で向かい合う。
二人はそれ以上の言葉を語らず、距離とタイミングを計る。
トッキーが空を蹴る。時を超えた速度による一撃。トッキーという神の力と想いが込められた攻撃。
フォルティシモは真・魔王剣を構え、全力で迎え撃った。
「最強・乃剣!」
トッキーは『最強の世界』の法則に従って、セーブポイントへ戻っていく。再び向かって来ることもできるだろうけれど、トッキーの表情からその可能性はないと断言できた。
むしろトッキーは、VRMMOファーアースオンラインの頃と同じように、他の<時>の神々へ対して、これ以上フォルティシモの邪魔をしないように説得してくれるだろう。
トッキーは初めて出会った時からフォルティシモに友好的で、VRMMOファーアースオンラインのベータテスト時代からのフレンドだったから、戦うなんてことはなかった。
狩り場が被ったら話し合いで融通し合ったし、イベントやクエストでは協力し合ったことも多い。
多人数が必要なクエストの時はトッキーに頼んで人数を用意して貰った。レアアイテムを交換条件にされたが、大勢から嫌われているフォルティシモが人数を集められたのはトッキーのお陰だ。
戦闘力が無関係な人数必須なイベントでは、トッキーのパーティーに所属させて貰ったこともある。他のパーティーメンバーはフォルティシモを見ただけで睨み付けて来たが、トッキーが取り持ってくれた。
お互いのプレイスタイルは正反対だから、仲良くできているのだと思っていた。
しかしトッキーは、フォルティシモを嫌っていた。
フォルティシモはこの思いの正体を、寂しさだと理解する。
「トッキー、俺はお前とも友人だと思ってた」
「無駄な努力乙とか言っておいてそれ? いや、そうじゃねぇよね!? え!? 何が起こったの!? 俺、神の力で、フォルさんを攻撃したんだけど!?」
フォルティシモの右ストレートを受けたトッキーは叫んでいた。トッキーの頬にはフォルティシモの拳がハッキリと刻まれている。
「そうなのか? 何かしようとしているようだから、先制攻撃を仕掛けたんだが」
「前から言おうと思ってたけど、相手の攻撃をHPと防御力で受けながら攻撃するのは、先制攻撃って言わねぇから。だからそうじゃねぇよ!」
トッキーがフォルティシモを見つめるその視線には、驚愕と―――恐怖があった。
「まさ、か、フォルさん、真神に生まれ変わった? オウさんにアカウント奪取されて真神に転生したって言うのか!? 冗談だろ。人間がっ!?」
「アカウント作り直しか。言われて見ると、その通りだ。最強神フォルティシモは、さっき生まれて、新しい世界ファーアースオンライン・バージョン・フォルティシモを創世した」
偉大なる星の女神マリアステラは、全視の能力を持ち、哲学的な観測者として事象への干渉が可能らしい。
偉大なる時の男神トッキーは、おそらく四次元空間において何らかの力を自由に行使できるのだろう。
そして“偉大なる最強の神”フォルティシモは、ただ最強である。
最強という概念が神として形を持った存在、それが最強神フォルティシモだ。
概念として最強なので、フォルティシモを倒すという行為は成立しない。
それが“始まり”が創った神儀をキュウステラと一緒に完全攻略し、誰よりも先にフォルティシモが辿り着いた最強神。
「は? ふざけんなよ? そんなの、許されない。世界のバグだ。そんなもん許したら、世界は、めちゃくちゃになるだろ」
トッキーは頭を振る。
「いや待て、これはフォルさんお得意の自称最強論だ。真なる神に至ったのが事実だとすれば、何らかの干渉によって防御したんだな。もしくはこのファーアースオンライン・バージョン・フォルティシモの物理法則に、【時間】が含まれている可能性もある」
フォルティシモが答えないでいると、何かに思い至ったのか声を張り上げた。
「そうか。この『最強の世界』はAIのように自己学習をして成長するんだな。解析、攻略したものを、己のシステムへ取り込む最強厨な世界。それもフォルさんを最強にするって間違った方向で物理法則を書き換える。そうだろう、フォルさん!?」
フォルティシモはトッキーに対して、遙か天上から見下ろすように笑みを作った。
「フォルティシモは最強だ。だからフォルティシモを倒すことはできない。まだフォルティシモが最強だと理解できないか?」
「最強だから最強ですって、幼い子供でももう少し論理的じゃね?」
「PKするぞ。じゃなくて、トッキー、俺はお前が好きだったから、本気で相手をしてやる」
「フォルさんの本気か。ちょっと怖いな」
「<時>の奴らが、今まで神様たちの世界で虐げられてきたのは、分かった………いや本当は、俺には関係ないから良く分からないが、そうなんだろうとは思った」
「やべぇ、本気って言った次の瞬間からフォルさん節だわ」
フォルティシモの価値観では理解できないのに同情するよりは、分からないと正直に言ったほうが真摯に向き合っている。
「いいか、一度しか言わないから良く聞け」
フォルティシモはできるだけ真剣な表情を作ってトッキーを指差した。
トッキーはフォルティシモのことをよく分かっているようで、表情を見ただけで茶化したり文句を言って来なかった。
「<時>の連中は、ファーアースオンラインのベータの頃から、もう顔見知り同士だ。一緒に運営に文句を言ったり、イベントやショップを盛り上げたり、アップデートでマップやボスの情報共有なんかもした」
フォルティシモはたしかに<時>のプレイヤーたちの名前を覚えていない。
けれど何も思っていない訳ではない。
「何かと俺に突っかかってきたり、【拠点攻防戦】を挑まれたり、PK合戦も良い思い出だ。掲示板の工作も、晒しも、迷惑メッセージも、ムカつくがお前らがファーアースオンラインを真剣にプレイしていたからだろう。実を言うと雑魚共から嫉妬されることに、ちょっと気分良くなったりもした」
そしてフォルティシモは次の話題へ移る時、胸の内に少しのわだかまりを感じる。それでも続きを口にした。
「あの事件について、俺は一生許せない。それは変わらない。だが、お前らとプレイしたファーアースオンラインは、楽しかった。最強厨な俺がいても、止めずに全力でやり続けてくれたお前らのこと、俺は、嫌いじゃない」
その時、トッキーの顔に浮かんだ感情は何だったのか、フォルティシモには分からない。
「………なぁ、フォルさん、分かるか? 悲劇が嫌いって言ってたけど、今、フォルさんは<時>の神々の命と、それを信仰して来た大勢の人の想いを、殺してるんだぜ?」
トッキーは天を仰ぎ、今までとはまったく違った落ち着いた声色でフォルティシモへ語り掛ける。
「後者は、最強のフォルティシモを信じられなかっただけだ。クソ信仰だな」
「ひでぇ」
「前者はまだ決定していない」
「何考えてんのか知らないけど、強さじゃすべては解決しねーよ?」
「最強なら話は別だ」
フォルティシモは手の平を上へ向けて、トッキーへ差し出した。
「トッキー、俺の事情を脇に置いて、手を差し伸べてやる。この最強のフォルティシモへ付け」
これはフォルティシモが先ほどトッキーに対し「止まれないのか」と問いたのとは、似ているようで根本的に意味の違う言葉である。
フォルティシモはトッキーがこの差し出した手を取れば、トッキーと<時>の神々たちを助けると言ったのだ。
「うーん、超上から目線。フォルさん、俺からも良い?」
「なんだ?」
「俺は今から全力でフォルさんに抵抗する。偉大なる時の男神なんて言われている俺の全力に勝てたら、フォルさんの最強をさらに証明できる」
フォルティシモは最強神まで至った。トッキーと戦っても百パーセントフォルティシモが勝つ。
キュウとマリアステラが可能性の世界を探し回っても、フォルティシモが勝つ以外の可能性はない。最初から決まり切った戦いだ。
「俺が負けたら、<時>のみんなを頼む。みんなフォルさんのこと、めちゃくちゃ嫌ってるけど、たぶん、フォルさんと同じように楽しかったと思う」
それでもトッキーは戦う。最強神フォルティシモと偉大なる時の男神クロノイグニスが戦うこと、そのものに意味があるからだろう。
「それを頼むな。俺に付けば目の前の危機だけは助けてやるってだけだ。将来まで責任を持てる訳ないだろ。俺はキュウくらい可愛くないと、責任を持って救うつもりはない」
「まあそうだよなー」
トッキーはインベントリから大型のナイフを二本取りだして、両手に装備した。
「でも、フォルさん、変わったな」
「男子三日会わざればなんて言うつもりはないが、異世界に送られたら、誰でも変わるだろ」
「俺はそれでも変わらないのが、フォルさんだと思ってた」
フォルティシモはそれに反論しなかった。フォルティシモが変わった理由は、異世界に来たからではないから。
何よりも大きな出会いとなったキュウ、一生共に居るはずだったエンシェントが消えた事実、一度は失われた従者たち、再会し本音で語れた親友ピアノ、異世界を必死に生きているカイルやフィーナたち、AIにも負けないラナリア、神戯によって産まれたエルミアとテディベア、同じ祖父の血筋のルナーリス。
もしも。
神戯ファーアースが開催されず、フォルティシモがVRMMOファーアースオンラインをプレイすることなく、異世界ファーアースに召喚されなかったら、当然、これらの出会いは無かった。
それに<時>の神々は、あくまで神戯ファーアースをマリアステラたちに開催させただけ。オリンピックを開催し、そのせいで誰かが死んだとしても、主催者や参加者を恨むのはお門違いだと思っている。
「別に、変わってない。フォルティシモは最強のままだ」
「今のフォルさんは、嫌いじゃねーよ?」
二本のナイフを構え、戦闘態勢を取ったトッキーは、これまでで最も穏やかな表情を見せた。それから空へ向かって話し掛ける。
「オウさーん、ごめん、俺たち、フォルさんに勝てねーや。オウさんの孫、ほとんどの点ではオウさんの遙か格下なんだけど、一つだけ、最強って意味不明な点だけ、まじで本物で、それで真神へ至ったみたいだ。俺たちはここまでだ。俺はオウさんの願いが叶うことを願っている」
二柱の偉大なる神がアクロシア大陸の空で向かい合う。
二人はそれ以上の言葉を語らず、距離とタイミングを計る。
トッキーが空を蹴る。時を超えた速度による一撃。トッキーという神の力と想いが込められた攻撃。
フォルティシモは真・魔王剣を構え、全力で迎え撃った。
「最強・乃剣!」
トッキーは『最強の世界』の法則に従って、セーブポイントへ戻っていく。再び向かって来ることもできるだろうけれど、トッキーの表情からその可能性はないと断言できた。
むしろトッキーは、VRMMOファーアースオンラインの頃と同じように、他の<時>の神々へ対して、これ以上フォルティシモの邪魔をしないように説得してくれるだろう。
1
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる