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20:二度目とその後
しおりを挟む今日は情けない姿ばかり見られてるな……。
「……ね、達也さん。だから、あの、もう一回しませんか?」
「ぇ、ちょ、と……、えっ?」
「誰も居ませんし、ね? さっきの怯える達也さんの姿見たら、またシたくなっちゃいました」
今度は意地悪そうに笑う。
その顔は、さっきまでは何度も見た。
いやらしいことをする前の、表情だ。
祐介は身体を擦り寄せてきて、えろい悪戯な笑顔で俺の顔を覗き込む。
さらりと頬を撫でられて、胸にキスされた。
ちゅ、と可愛らしい音がして、びくん、と大袈裟なくらいに肩が跳ねる。
まだ、行為の残滓は身体中に残っていて、与えられる微弱な刺激を無視出来ない。
「っあ、やだ……も、むりだって……ッ」
「何言ってるんですか、一回出してるし、むしろさっきより愉しめるでしょう?」
……あぁ、悪い顔だ。
触られたところから、再びじわじわと溢れてくる情欲に、俺は抗えない。
「っん、んぁ……!」
誰もいないマンションの一室、一般的なマッサージ店で。
こんなことだめだって分かってるのに、俺は覆い被さってくるやつを、また甘受してしまった。
───……
「……え?」
なんだか凄いことをされてしまったあと、いつの間にか夜もかなり更けてしまい、それでも綺麗に後処理されて服を着て、俺は今、代金を払うため受付にいる。
「延長って言っても、マッサージしてませんし、本当、結構ですから」
「……でも、」
帰り際に何を揉めているのかといえば、やつはなんと、代金はいらないとか言い出した。
確かに、使った時間の半分以上はマッサージどころじゃなかったが、一応社会人として『はい、そうですか』なんて言えるはずもなく。
「せめて一時間分だけでも払うって。あの時はほんと、ちゃんとしてもらったし、その、気持ち良かったしさ……」
「いえ、受け取れません。僕は“お客様”に対して、とんでもないことを仕出かしたんですよ? 受け取れるはずないじゃないですか」
「いやいや、でも、あれはだな……」
ほとんど俺が誘ったみたいなもんだろう。
それを言おうとして、口ごもる。
そんなこと、さすがに言えない。
黙り込んだ俺の様子から承諾したと思ったのか、兄ちゃんは納得したように微笑む。
その笑い方には、もういやらしさは一切なくなっていて、完全に仕事モードだ。
それがちょっとだけ、寂しい。
「達也さん……、今日、嫌でしたか?」
「は……?」
「僕、男性の方と、しかもお客様にあんなことをしたのは初めてだったんです。どうしても衝動が抑えられなくて……」
申し訳なさそうに話す祐介に、俺は唖然とする。
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