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09:カラダは正直
しおりを挟む店内に流れているジャズの曲より、ぴちゃぴちゃと鳴るいやらしい音のほうが大きく聞こえて、羞恥を煽る。
俺、何やってんだろう。
普通にマッサージしに来たはずなのに、なんでこんな、初対面のやつに身体貪られてるんだ。
俺は俺で、何簡単に受け入れちゃってんだよ。
もっと、拒絶しなきゃいけないはず、なのに。
甘くも弱い愛撫に、少しだけ我に返ろうとしていた時だった。
「──……ッあぁあ!」
ガリッと勢いよく、小さな胸の突起を噛まれた。
当たり前に痛くて、びっくりして、何しやがるんだって意味で、俺は兄ちゃんを睨む。
「そんな顔しないで下さいよ、ちゃんとこっちも触ってあげますので」
「っあ、ちが、そういう、意味じゃ……っや、ぁあ!」
どう取り違えたのか、それともわざとなのか、やつはえろい綺麗な笑顔のまま、開いた作業着の隙間からパンツのなかに手を突っ込んだ。
待ち構えていた急な刺激に、背筋が一瞬仰け反る。
「っや、ぁ、あ……っ!」
焦らしに焦らされて、俺のそこは硬く反り勃ち、握られただけで先端から蜜を垂れ流す。
恥ずかしいのに、こんなこと、男として情けないはずなのに、嫌悪感はなかった。
むしろ、
「ひぁ、や、そこ、いやぁ……っ」
胸の粒を吸い上げられながら、ぐりぐりと濡れて滑る亀頭に指の腹を擦りつけられて。
目の前が真っ白になるほど、いい。
強い快感に、太ももがびくびく痙攣して、自分の口から甘ったるい声が上がった。
「っや、それ、やめろ……ッ」
「どっちを、ですか? 胸? それとも、こちらでしょうか」
先走りでぐちゃぐちゃな先端に、ぐりっ、と指が捩じ込む。
善すぎる刺激に、頭のなかがスパークする。
だから俺は、ほぼ無意識に、強すぎる快感は嫌だと悲鳴に近い声で嘆願した。
「っや、ぁあ……! どっち、も……っ!」
「畏まりました」
その言葉とともに、胸に触れていた唇も、自身を扱いていた手も、ぴたりと同時に止む。
両手首を掴んでいた手も力が緩んで離れていくのに、行為を続行する気は毛頭ないことが分かった。
うそ、だろ……、こいつ、本気でやめやがった。
「……っぁ、なん……」
なんで、こんな、中途半端……。
自分で言ったことなのに、相手に対して恨めしく思う。
意地悪すぎて、腹立つ。
だって、俺、もうすぐイきそうだった……、のに。
「杉村さんがおっしゃったんですよ? 僕は言ったはずです。貴方の望むことだけをすると」
……は?
……なんだ、それ。
にっこり、ほんとに無害そうな笑顔で、兄ちゃんはそう言う。
さっきまで俺にあんなことしてたなんて考えられないくらい、爽やかで優しい表情。
「……じゃあ、俺がしろっつったことは何でもすんのかよ?」
「ええ、今、杉村さんはお客様なので。出来る範囲のことなら致しますよ」
客だから、って。
そんなの、これは度を越えてる。
つか、あり得ないだろ。
……あり得なく、ないのか?
他のやつにも、こんなことしたことあんのかな。
マッサージされてえろい気分になった女や男に、同じことをしたんだろうか。
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