恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

文字の大きさ
上 下
99 / 107
犬を飼うということは、(side美夜飛)

06

しおりを挟む



「……ここ、まだ腫れてんの?」

 沈黙が息苦しくて、兼嗣の頬を指先でちょんと触れた。
 やつは首を横に振って、否定する。

 二日連続でおんなじところを俺と廣瀬に二回も殴られてた。
 ついでに先ほども思いっきり平手で打った。
 
 あの日キスされたときは、ずっと血の味だった。
 表面もだけど、きっと口内も痛かったはずだ。

「……ご飯食べるときとか、痛かったけど、でも俺が悪いから……」

「そこまで分かってんのに、なんで強行突破したんだよ、ほんと」

 吐息まじりに苦笑して、呆れるように呟く。
 だけど落ち着いた声で、責めるつもりはないという意味で。

 しかし兼嗣の肩が小刻みに震えていることに気づき、次いで鼻をすすった音に、心臓がドクンと大きく収縮した。 

 ちくちく、ちくちく、ザクザクと。細い針を、鋭いナイフを、何度も何度もめっさ刺しにされているみたいな感覚。

「な、んで……泣くんだよ。泣きたかったのはこっちだっての」

「そうだよね……、ごめん、でも、」

 きつい言葉を吐いた自覚はあった。
 だけど泣かれるほどとは思っておらず、どう声をかけていいか分からなくて、罪悪感がざわりと胸を抉る。

 下手に触ることもできなくて宙をふらつく俺の手を、兼嗣がするりと手にとって、指先を重ねてきた。
 ぴく、と驚いて肩をすくめる。

「我慢、できなかった……」

「え……?」

「俺はね、友達だけじゃ足りなかった」

──みーちゃんの全部がほしくて、知りたくて。
 誰にも触らせたくないって思った。

 その言葉に、目を丸くする。
 握られた手のひらが、でたらめに指を絡めてしっかりと繋がれる。

 少し手を引いただけでは、逃げられないくらいに。

「ずっと言わないでおくこともできたんだ、きっと。でも、騙してるような気分になって、もう誤魔化せないと思った」


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

処理中です...